半額の値札を外すまだすこしあまいにおいの雨の駅ビル

トゥインクルリトルスターとくちずさむほんとはもっとなでてほしいの

言葉とは違う次元で体とも違う次元であいしあいたい

鬱鬱と籠る机の引出しへ人影ひそと閉込めしこと

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山法師十字に咲きて涼しかり風も日もある青空のなか

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守るべき我身に持ちて哀しさよ言葉と言へど人討つ剣を

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春の日の階段に擦れ乙女等の袴は制服もどきに揺るる

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注連縄の張直されし菊日和夫婦岩には松の傾き

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並びゐる人ふたりづつ手をつなぎラーメン店の前の歩道よ

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手のやうに五本そろへて畳みたる靴下にして踵の薄き

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切りたての髪を洗ひて幾年ののちの長さへ命を惜しむ

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乗り越えることなく壁へ添ふこころ生は螺旋の軌跡にてあれば

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首筋に衣裳持ちてふものもあり親のこころを泣きぼくろかな

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セーラー服で背広の腕にしがみつき「少女」を殺す　つぼみ落下す

http://d.hatena.ne.jp/neko-yashiki

赤江瀑を読み終へてより落城のごとく咲きをり凌霄かづら

臆病な言挙げをする　色づかぬまま地に墜ちる林檎のように

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朝食に焦がしてしまった目玉焼き　カリリと苦い今日の始まり

橋の上自転車止めて両の手をメガホンにして僕を呼ぶ君

巧妙に仕掛けた罠に自らが嵌るを遠き穴より見ている

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決まらない５曲誰にも渡せないBatonを置いて聴くライダーズ

花束も言葉もさかさづりのまま乾いていった さようなら春

汗ばんだその手と乾いた白砂にはさまれたまま海を見ている

ここだけはと思うところばかり似る不思議不可思議螺旋の威力

右頬のあなたに貰った泣きぼくろ泣き虫なのは遺伝でしょうか

雨やんでのちの公園くちなしの香りはくちなしの腐ったかおり

母さんは白馬の騎士に連れ去られ･･･冗談言うたらしばかれました

迷子札三枚下げて青年の形の刃（やいば）玄関に立つ

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深夜二時ひそひそ声に起こされてふとも目が合うぬいぐるみ達

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おとうとがいたことがあるあさがおのたねがはじけてこぼれてしまう

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紫にしおれてしまう夕暮れに手をふりながら動く歩道に

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軽々と押し戻してよ光るもの横浜９時の観覧車たち

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たそかれは化石の色におりたちぬ薔薇をさうびとよぶ唇へ

http://page.freett.com/willows/zp_tanka/pillow.htm

椎茸に十字の切れ目入れぬことだれも気づかずチゲ鍋を食む

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ベビースターラーメンひとつ捧げます許されたくない嘘があります

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浪人は剣先咥え峠越す味を占めたり噛めば噛むほど

鸚鵡の舌を備えた女の耳打ちはワインより甘く毒より熱い

自販機の缶にも製造元がある大和製罐株式会社

産直の宅配便を開いたら泥付きのままの彗星の氷

そのうちにきっとこぼれてくるだろうパズルのようなひとときだから

珈琲の香りがしている傘でした　あの日のことは覚えています

緑濃き山の辺に咲く白百合の名を何ゆえか鬼百合といふ

風邪気味と信じたままで入院し叔父は一度も戻りては来ず

じゃがいもの崩れて美味しおふくろの煮つころがしの記憶は遠い

大人には従う主義で中指のささくれ剥いて気を紛らわす

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地球発見知らぬ人の詠むうたは声のとどかぬ海の砂底

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小刻みに夕暮れを待つながき陽は時計の針を狂わせている

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せっかちに料理する日は蟹サラダ。ほんとの蟹はスカスカの夏。

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淡水魚、ギラギラとした皮膚の色、どんよりとした大きな瞳。

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またふたつ薔薇のつぼみが膨らんで、いつ終わるのか、肌寒い初夏。

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壁の色、薄いベージュのその前は薄いグレーじゃ変わらないのに。

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声たてて笑ってみてよ。少しだけ空の景色が違う気がする。

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目にうつる全ての人よありがとう乾電池はまだ満タンだった

肌寒い夜に盗んだ金色のピアス　くすくすおそろいだよ

泣きながら駈けあがって行く歩道橋（最後の夜の最後の競争）

加速する夜階段で寂しくて響かせてみる「ならずもの」だれ

アラビアの切尖でゆび切りにけり血溜りゆかば地図を閉ぢよう

30粒入り教室を１ダースあまやかに統ぶ４月の風は

線路わき花は揺れても元通り　やわらかいから強くもなれる

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眠たくてたまらない朝ゆんゆんと金魚ゆらめくこめかみ辺り

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いつも買うコンビニサラダは君に会う口実でした。一昨日までは

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淡色の記憶には蓋（さようなら）涙は出ない、もう大丈夫

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名探偵コナンの頭上に現れる住民投票開票速報

おとうととするくちづけのやさしさのいろづくまえにくちるあじさい

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誰も皆間違え読んだ経験があると言うのが　「おことの教室」

四十を越えたばかりの若さでは　水平線に陸は見えない

ヴラド家はたそがれ時に朝食を　テーブルの上　並ぶ　幼子

切なさと淋しさ辛さ供にして　貿易風の果てから友が

心臓が１６ビート刻んでる　刃亜度六区な　♪主義裸米兵衛〜♪

ケータイのケーキマークが点いている　サイフと叫ぶ　焦る　焦るゼ

八月の動物園に浮遊するつぶを蹴散らせ青い傲慢

国の為りっぱに死ねとみなの言う・・・官僚の過労死(自殺)件数

「長靴を履いた男のお子様が〜」羨ましかった迷子放送

顔見れば安らぐ思ひ吾子ほどに可愛さは増す大和撫子

崇高と表現すべき泥沼は蓮を育む清しさを持つ

赤んばう、人間よりもよいものの仔と思ふ見えぬ巻き尾にさはる

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クリームをたくさん入れてじやがいもの冷製スープこつてり作る

今にして思えば母の影響か未だに料理は薄味が好き

二死満塁歓声の中指名されロペスは小さく十字切りたり

その昔三亀松（みきまつ）の剣舞を見しことが今でも夫の密かな自慢

制服の紺の事務服脱ぐときに営業用の表情も解く

「松の葉」と熨斗袋に書き小遣ひをくれし伯母なりき・・・去年（きぞ）逝きたりき

銀翼とナスカの地上絵影かさね異常に長き首の鳥見ゆ

「とぶな」とは云えない力ある君に (十字靭帯痛めぬように）

アラビアの香水商の店先の香水瓶の中の旋律

たそがれの空を迷子のメールゆく鏡の間の光のように

船室としての２０５教室長い旅だから授業を受ける

偉い人はみな変わってはるという本の谷沢センセもそうか

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赤ワイン白ワイン赤緑色盲のあなたがおいしそうに飲む

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うっかりと深い心を見せたのは無い袖なのに触れたからかと

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大和には大和ことのは蝦夷には蝦夷ことのは天の計らい

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泥だんごおでこの汗を拭いた手でどうぞと出したときに壊れる

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パズル解くように入れ替え差し替えてみそひともじの心の言葉

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白花が黄に変わるとき香は夜のひとのかたちとなって佇む

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一本の棒は命の藁に似て銀河のなかを回転木馬

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勤勉であって官僚人格の夫と別に日中がある

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ぶらんこも幼い日々の葛藤も意識の奥の迷宮に揺れ

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ぐっすりと眠るねこに寄りゆきて三角定規で額を測る

ある父はうさぎのパイにされました　童話はやはり美しくない

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未来（みき）という友達の名をものすごくうらやましいと思っていた頃

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　　　7月、健康的

飛び降りでいつしよに逝つてくれる人　募集目にして胸に剣たつ

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生れ落ちスタートラインまちまちの競走馬となりダート転がる

別れれば夫婦は他人うっすらと螺旋を描き紫煙は消える

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（親方たちが立派なマグロと一緒に厨房に篭ってから３時間が経過した。ようやく厨房の方からおいしそうな匂いが漂ってきた。おもわず爺のお腹がグウと鳴った。爺はあわてて三十四回目のテーブルクロスの皺伸ばしを始めた。姫様のお腹もクウと鳴った。そのとき、もわあと良い香りの湯気とともに厨房の扉が開いた）

お待ちどさん　わしらは粋な料理稼業　香草料理はお手のものだよ

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恋情が気化して愛になるのだと思い込んでた　液体を飲む

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あきらめるとはなんだろう蜘蛛の巣にしずく連なる　愛しい　愛しい

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官僚と言う名の横暴国冷やす財政無駄食い福祉薄情

おぼれてるみたいな泳ぎ方だって私はここにたどりついたよ

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去年から甘くならないチョコレート溶かして固め溶かして固め

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うれしくて腕を振り子にして歩く　うさぎもめっちゃもちつきしてる

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本当の仕事はこれかもしれないと思ってひとり弓を引いてる

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ブレーキを踏むのもエネルギーがいる　うたた寝してるひとのくちびる

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ことばさえことばに定義されていてそれでも楽しい初恋でした

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「禁じ手は使った者勝ち」泣きまねのおまえにあの日教わったこと

次元すら異なる世界に生まれても逢える手立てを考えようね

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事急くは制服さんの悪い癖名句の王は空挺でゆく

燕をめざした君を待ってるとから松を過ぐ風に託そう

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永遠に続く影踏み空蝉の夏は暗くてみんな　消え　た　よ

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五線譜に十字を切ればニケーアに夕陽が沈む（呪われなさい）

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物語は青き叙情をさしかけて唇には歌剣には毒を

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携帯が蒼く光ればわたくしも光りはじめる真夜中の繭

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またひとつ櫛の歯が欠け隙間から三日月の夜するんと落ちる

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ワタシのと主張するんだ君のその身体に私の名前を書くんだ

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満月を背にして歩く足元の影は私の知らないワタシ

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優しげで抱き締められる事は無い　ぬいぐるみ的君の特徴

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ひとり占めできない犬が鳴らす鼻　晴れてないのにあかるい庭で

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消されゆく跡形もなく消されゆくバックアップ不能の私の恋が

炎天のお城の庭を歩み来るナウマン像の象牙の重み

未来では恋愛科学明白に解かれてしまう歌人によりて

題詠のお題をめぐる鬼ごっこお歌が詠めず日が暮れにけり

額づきて祈る異国の女性あり美男におわす大仏様は

何となく合わぬ感じで行きすぎて味を知らないラーメンの店

確かめてみたい貴方の現実を脱ぎ捨てられた靴下ひろう

音も無く映像だけが繰り返す黒い髪の毛黒い髪の毛

収斂も発散もないおだやかな螺旋であって下さい地球

よく食べる美人の母の泣きぼくろ幼く死んだ妹のかたみ

ベルメール写真展にてなつかしきおとうと数千(すせん)、いもうと数万(すまん)

紫陽花もまたしかばねの上に咲きべらべらと喋り続けて居った

八月の風よまた来よ、白き帆に　あなたを夢の大陸として

テッセンは弦を支柱に抗いて巻きたき向きにかたくなに這う

だんだらに浸食された砲台跡イソギンチャクがゆらり潮吹く

一粒の種が秘めたる計画を読み解けぬままただ水をやる

うしがえる池の岩場に上陸し　ワレ占拠セリ　ぼうぼうと鳴く

むくむくと海より起きた乱雲のあまりの白に胸騒ぎたり

雨雲が遠く駆け抜け竹林は天衣無縫に青空を突く

夏前のキャベツ畑はボムボムとあおきにおいでふくらみており

あのひとが通る垣根に一輪の烈火ひまわり罠をしかける

陽に泳ぐ洗濯物にしがみつく若きバッタよ広野をめざせ

地下道の髑髏（しゃれこうべ）の落書きはトカゲの赤に毒を抜かれる

　　　　ロールシャッハ実習

こんなもので何がわかるの　十枚のレポート仕上げぬインクのシミ見て

会談に弓引き絞るごとライス米国務長官は足を組みけり

変化する未来(みく)の姿を楽しめばパズル解くやう不思議なニゲラ

銀盤に踊るマドンナ礼をして花の夕べは香辛料にも

アクセント強く呼ぶとき横浜は夕焼け色のカクテルになる

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誕生日7月11日はおとうとの四歳の吾の名が姉となる

日の差せば引越しの手を休めるか今年も咲きたる紫陽花眺めて

あの人の「おとうと」あの子の「おにいちゃん」 私の「あなた」とすこしちがって

http://www.geocities.jp/black_2_sheep/index.html

紫の空を見つけて今すぐに逢いたい君はどこにもいなくて。

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馬鹿だねと君は微かに微笑んだ想い出しては真似た口癖

金と欲名誉と媚で築かれた砂上の塔に官僚は棲む

こんな夜は迷子のこころを抱いて寝る星も見えない都会の隅で

「良かったよ俺はあんたのおとうとで」兄は黙って空を見あげた

　　　１０月は怒りの遣り場に困るゆゑ佐野朋子去月と名付けむ。　　

ためらはず誤謬を生くる神去月（じふぐわつ）の人よ静かに凹みゆくべし

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　　　夏休み明け、僕らは１０月を待つしかなくて。

佐野朋子をらぬ九月の教室に留守神（るすがみ）さまのちよこんと御座（おは）す

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色紙で折りし手裏剣金と銀あくにん倒すパワーを潜む

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　　　野球帽をかぶつてゐる子どもがめつきり減つた。　
　　　僕が小学生の時分は、阪急ブレーブスの黄金期。

ベースボール・キャップのつばを折り曲げし翼で少年われは翔けゐき

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捨てるなら高く遠くに投げてよね檸檬じゃないけどじゃがいもだけど

川べりのブルーテントに影落とす高層住居に棲むひとの独り

安達太良の鬼婆ふいに現るや　総戸数二十字(あざ)古家には

我が汝に懸想してゐるとふ仮説その科学的根拠を述べよ

むらさきの夜明けのたびに殺さるるわが眼底のうつくしき鬼

風邪声で般若心経読みゐたる若き僧侶の白鳥に似て

去る夏は自転車の速度夕陽負う背中が遠くなる下校道

夏の夜のないしょ話のきつねたち「じゃがいも畑に星が降ったよ」

鋭角の影法師つれやってくる二重まぶたの羽根布団売り

何の咎ゆゑか夜明けの鳥たちは十字架の形なして飛び立つ

カルピスを濃い目にいれる刀剣の名に似る薬のみこむために

運転士の白き制服着たるとき父は清しき猛禽となる

形見なる市松人形笑ひをり　けふ姉さまの歳を越えます

ゆふぐれの風をはらみて夏暖簾「京風ラーメンぼへみ庵」とぞ

海松色の燐寸を擦ればあはあはと船を愛せし人の新盆

真白なるレエス飾りの靴下をはかせば光る人形の髪

ラーメンはあくまで細く醤油味　月の下にて啜りたきもの

月の色の髪の嫗とすれ違ふ右京区太秦和泉式部町

秋の灯に堕天使満ちる夜なれば螺旋階段ジュラ紀へつづく

おみやげは「東京ばな奈」を好みたる係長に泣きぼくろあり

もう風邪もひかなく無くなって元気だとテレホンに聴く恩師のお声

あつあつのじゃがいもを食む止みがたき愛の想いを胸にいだきつ

鄙里（ひなさと）の夏草の影濃くなりぬ訪ぬる人の音の絶えなば

遭うたれば恋人たちの胸深く輝きひそむ　南十字は

宙（そら）に満ち戦い挑む若者の光りの剣の真実祈る

制服が遺品となりし慟哭に夏の夜の風 南から来る

あおとうとししとうは別ものかしら？トレイあおまめ弾ける５月

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薩摩切子のグラスがほしいと母が言う　そこに満たせるものは何か

返事するのためらう僕に琥珀色のその液体をかけてもいいよ

憧れの横浜 あなたのいた街は 昔見たより寂しげでした

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たとえればただ一匹でふわふわと静かの海を泳ぐ巨大魚

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人は皆いつかは死ぬと割り切ればこの十字路も怖くなどない

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