早朝のバスのタイヤはかすめ行くつぼみのままで落ちた椿を

鈍色のねじを失くしたその函をオルゴールだといつか忘れる

今日からは青い背びれの淡水魚行き場のなさをさらして生きる

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人さし指のさかむけを剥く夜半には降り積もるだけ遠い呼び声

輪郭の淡くなるほど降りしきる春すこし前の雨の朝かも

君はまたつぼみのような指先で遠慮もなしに僕を愛した

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明るめの色で染めてはみたけれどこころは髪のようにはいかず

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辞めるべくして辞めるのだ　６年に積もる言の葉ざりざりサラダ

ふるさとの線路高架となり赤き夕日の胴を貫きてをり

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絨毯のうえ歩むとき幻の罠と敵とを子猫おそれぬ

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並べ置く旅行鞄その距離ほどのはにかみのまま夏駅に二人

一息にシーザーサラダ平らげて丸ごと残る我と向き合う

淡白な君に会う日はそれとなく自己主張してディオールの赤

洗濯は川でするものそのように猫もネズミを食料としつ

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大輪の花の香りは秘められたつぼみの中で作られるもの

なばなの黄色鮮やかによみがえる　君の笑顔はかえらないのに

魂の色を探して歌を詠むたぶん一生満たされぬまま

この声がきっと最後と確信する　僕は静かに目を閉じている

今までもこれからもそう自らの心の声に耳を澄まして

葉よりまず花咲く不思議発見する歌ごころ継ぐとはなお不思議

死者の書に猫の頭の女神バステトが存在すること息子くわしい

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洗いたるぬいぐるみの猫一日で乾く日射しとなりにけるかな

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粉吹きし闇で買いたるチョコレート一かけもらいわれら狂喜す

飼いおりしうさぎは鼬（イタチ）に喰われけり白き毛皮の骸（むくろ）残して

年の瀬に海へ還った君の声忘れまじとて反芻する夜

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歌うまき五輪真弓の『恋人よ』歌詞の古きに時代を想う

わがもとも古き記憶に　木の床のあぶらびきたる　黒き茶のしづみゐたる　天井のたかくありけり　窓広くあかるかりしか　わがかたへに女人添ひ給ひて　ありけるに若きははなり　大阪市立東淡路小学校　わが母校にしてわが二人子の通ふものなり

小学にはいれるまへのてつづきの　教室ならばははとわがゐし

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猫たちのごろ寝うたた寝するを真似人も転がる床暖房に

楠の葉のさやぎきらめき目にすれば春一番の吹くも楽しく

アラビアのロレンスなるは虚像たり問わるは歴史誰の目で見ん

教室でキカンジュンシ（机間巡視）をしたなんて平気で言うな若い教師よ

１００：マラソン
我の指示道の向かいで選手待つびわ湖マラソン君大写し

０９９：動
遂に観たエルミタージュのナンバーワン、マチスの「ダンス」躍動美満つ

０９８：未来
人類の未来を託すサイエンス環境守り平和に利用

０９７：静
冷静に君冷静に冷静にお陰でもめず解決早し

０９６：留守
待つ人の無き留守宅は誰あらん泥棒のみが目を輝かす

０９５： 翼
暗闇を飛び立つ灯り遠望す主翼の二つとんぼの目玉

０９４：進
千葉に住み一歩及ばず投書名利根川ならぬ江戸川進

０９３：ナイフ
アンケート回答すれど試飲せず万能ナイフ送られて来ず

０９２：届
気になるはポスト投函ラブレター明日は届くか明後日着くか

０９１：暖
麗江の暖房効かぬ部屋寒しシーサンパンナ冷房涼し

０９０：薔薇
深夜発つ「赤い矢」号の１等車薔薇が飾られ軽食も付き

０８９：巻
「君の名は」当時流行った「真知子巻」若き女性の何人が知る

０８８：食
花市場ポルトのホテル近くあり朝食済ます順に皆会う

０８７：計画
我いつも海外旅行計画す君予定あり実現難し

０８６：占
女性とは理性二の次占いや迷信信じ理解し難し

０８５：胸騒ぎ
スタートが半日遅れ完走者誰か一番胸騒ぎする

０８４：林
石林の二ヶ月前に開通すフォレスト（ＦＯＲＥＳＴ）のティー（Ｔ）落つ料金所

０８３：キャベツ
最近はお好み焼もトンカツも食べずキャベツと縁も切れおり

０８２：罠
昨今の振り込め詐欺の電話来い罠と知りつつ騙された振り

０８１：洗濯
洗濯機一人暮らしとなりて尚働き続け勤続賞だ

０８０：書
箱根行きホテル専用無料バス車体に書かる「ＯＮ泉ＯＦＦ呂」

０７９：ぬいぐるみ
小涌園玄関・広間・おみやげ屋ぬいぐるみあり記念撮影

０７８：携帯
阿波踊り街中そこここ大太鼓（たいこ）の音携帯話す場見付け難し

０７７：櫛
大櫛家叔母持つ壷は柿右衛門国宝級か１２代作

０７６：リズム
カーニバル、リオのサンバは日本ではリズム軽やかマツケンサンバ

０７５：続
客居らぬビジネスクラス・カウンター我等に続くツアー客なし

０７４：麻酔
親知らずペンチで抜歯麻酔され痛そうに見え痛み感じず

０７３：額
有名画鑑定結果贋作で額のみ値段結構高い

０７２：インク
インク壷久しくペンを使わないサイドボードにいつまで残る

０７１：次元
我世界君ローカルで時折は次元が合わず擦れ違いあり

０７０：曲
ジャズ響くレストランにて中国語通じて替わる中国の曲

０６９：花束
花束を君誕生日いつまでも持って来さすな同級生に

０６８：四
フーテンの寅をならいて我もまた四国・九州気ままに旅行

０６７：スーツ
リタイアし服装一切構い無し偶のスーツでビシッと決める

０６６：消
アルジェリア、アラビア語との併記消え道路標識フランス語なし

０６５：城
「踊子」と「天城越え」とに引かれ行く下田街道浄蓮の滝

０６４：科学
富士山に似た山ありと言う君に富士はコニーデ科学説く我

０６３：鬼
「フェーベ」なる土星の衛星天邪鬼他の衛星と逆回りする

０６２：風邪
風邪を引くバカも居るゆえ風邪引きが利巧かバカの判断ならず

０６１：じゃがいも
我好むどちらかと言えばクリームのコロッケよりもじゃがいものそれ

０６０：影
太陽も涙を流すこともある明治以来の金星の影

０５９：十字
南アにて見慣れし南十字星再会果たすニュージーランド

０５８：剣
ビール好き添乗員は我が味方冷えたビールを真剣に説く

０５７：制服
電車にて制服学生忘れたる傘届けるに校名を告げ

携帯の猫の写真をみせられて名前知る時はつかときめく

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０５６：松
ドイツ人車メーカー・ホンダ出ず気持分るよ森の石松

０５５：ラーメン
デートではよく寿司・うどん時たまはフランス料理一度ラーメン

０５４：靴下
靴下を穿こうに腹が出っ張って前屈みにも苦労は絶えず

０５３：髪
大津なる滋賀の都に住まう君湖（うみ）の浜風なびく黒髪

０５２：螺旋
米映画やはり豊かさ垣間見る豪邸にある螺旋階段

０５１：泣きぼくろ
アクセント良し悪し如何泣きぼくろちょっぴり見えるエロチックにも

０５０：変
「フェーベ」なる「リーベ」似の名の衛星は変わりものゆえ愛しさ覚ゆ

０４９：ワイン
グルジアの赤きワインを君と飲む夢心地して我を忘れる

０４８：袖
手を繋ぎ共に歩むに袖上げる接触面積我増やしたし

０４７：大和
今わずかパチンコ屋にて曲残す撃沈されし戦艦大和

０４６：泥
上の者部下の不始末泥被る男らしさと潔さ要る

０４５：パズル
パズルには芸能除き得意なり森羅万象知らざるは無し

０４４：香
香りよき紅茶の味も苦きかなセイロン茶にてその名もリストラ（ｒｉｓｔｏｒａ）

０４３：馬
「一豊（かずとよ）」は名馬贈られ活躍し「千代」の知恵にて高知の城主

　泊まり明け　眠い眼(まなこ)を　こじ開けて　プログ書き込む　ほのぼの時間

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０４２：官僚
数年で担当変わる官僚は責任感もプロ意識なく

０４１：迷
ヒチコック「迷走迷路」リバイバルＮＨＫ観てワウワウ（ＷＯＷＯＷ）も観る

０４０：おとうと
これ程に幸せ者の存するや与謝野晶子のおとうとのこと

０３９：紫
紫陽花は登るにつれて厳しいか色付き遅く花も小さき

０３８：横浜
横浜に馴染みなき君我誘うみなとみらいと中華街行こ

　鞄(かばん)には　ケータイ、パソコン　デジカメと　本何冊か　通勤のさま

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０３７：汗
１月のシーサンパンナ汗をかく冷房入れてベープも有りて

０３６：探偵
シャーロック・ホームズ稀有な名探偵緻密な頭脳我及ばずや

０３５：禁
君の歌時に「裸」の文字が出る気品ある人それ禁句（タブー）だよ

０３４：背中
痒くても痒くなくても掻きたいよ肌細やかな君の背中を

０３３：魚
回遊魚水族館の円筒の水槽中もぐるぐる回る

０３２：乾電池
乾電池おもちゃ動かし寿命来てさらに時計で余命まっとう

０３１：盗
同居人別荘表札書き換えるこれ「ひさし貸し母屋盗られる」

平櫛田中の「鏡獅子」機嫌よければお前そのもの

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０３０：橋
君が手に我が手を重ぬ停車中標識見れば名はかさね橋

０２９：ならずもの
ならずもの国家とブッシュに名指しさる北朝鮮は懲りず恫喝

０２８：母
鳥類は生まれた時に初めての動くものを見母鳥と思う

０２７：液体
小袋のドライアイスが蒸発し液体を経ず炭酸ガスに

０２６：蜘蛛
蜘蛛の糸先に２ミリの蜘蛛がいて我は怖しと助け求めリ

０２５：泳
クリオネはオホーツク海氷下羽根を開閉優雅に泳ぐ

０２４：チョコレート
チョコレートポリフェノールを含むゆえテレビ観ながら栄養補給

０２３：うさぎ
ホームレス迷子のうさぎ可愛がり子孫が増えて堤防に穴

０２２：弓
どの国もどの民族も狩猟には弓矢使いし文明のあり

０２１：うたた寝
ビール飲みリラックスしてテレビ観るついうたた寝し観たきを逃す

０２０：楽
後二人雲南旅行に加わりて煩わしくも楽しくもあり

０１９：アラビア
アラビア語ミミズの走る字に興味アルジェリアにて本２冊買う

０１８：教室
君通う短歌教室ついて行く生徒ほとんど老老男女

０１７：陸
台風はいつもテレビで観るものを今上陸の高知にぞ居る

０１６：たそがれ
世界一実力者には杭を打つたそがれ迫る大会社あり

０１５：友
ぶっ飛ばす夜の高速地獄道友も道連れ天国の道

０１４：主義
主義主張意地を通せば紛糾す相手の立場に立てば解決

０１３：焦
話し合い話あちこち飛んで行き焦点ずれて収拾つかず

途中よりバイオリズムを変えた猫ひる間はいつもおみなごと遊ぶ

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０１２：メガホン
ツアー客メガホンの声聞きづらくガイドの回りぐるりと囲む

０１１：都
夜遅くモスクワ都心一人行く我を心配それが心配

　出会ったの　四十年前　いまだに毎日　新発見　うん、君のこと

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０１０：線路
台風で新幹線がストップすホテルの屋根が線路を覆う

００９：眠
四尺を隔てて眠るいとし君抱（いだ）けぬ故に余りの遠さよ

００８：鞄
お気に入り通勤鞄リタイア後いずこに保管気に留めるなし

００７：発見
金印の発見場所は志賀島金印公園交通不便

００６：時
高知城入場時間１５分過ぐるも頼み入場果たす

　「時は、いま」　「時は、いま」だと　思いつめ　走り続けた　人生やよし

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００５：サラダ
寒いねと話せばすぐに抱き合える人いる我も「サラダ記念日」

００４：淡
リスボンでファド歌う歌手年配で誰が名付けし淡谷のり子と

００３：つぼみ
東京の桜の開花予想日は靖国の木のつぼみ見て出す

００２：色
巣作りしダンスまでしてメス誘う青い色したオスの鳥いる

　サラダって　はっきりいって　好きじゃない　肉食べ続け　こうなっちゃった

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００１：声
「あ痛い！」電話一声心配す聞けば「会いたい」破顔一笑

続くこと厭う気持ちも深層にあれど老舗の柚子味噌を買う

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　淡々と　怒(いか)り抑えて　生きる子よ　激怒の父の　因子はどうした

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　五十八　つぼみのままで　過ごしてる　ひと花咲かせて　はびこりたいもの

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麻酔からさめない猫と死んだ猫区別がつかず乗車拒否さる

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鈍色でなぐるあなたの後頭部シカゴみたいにきらきら光る

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わが猫を称えてみれば秀麗な額のしたに碧きみずうみ

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　いい色を　写し撮ったよ　ご機嫌だ　プログに載せるよ　みんな、見て見て

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　いま僕は　何をすべきか　「天の声」　聞いてみたくて　書に線を引く

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色らしき色なき原に唯一の色らし黄色い福寿草萌ゆ

　いま僕は　何をすべきか　「天の声」　聞いてみたくて　書に線を引く

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筆圧のかげん絶妙なインク文字この人の賀状われの宝ぞ

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外（と）つ国の家族の暮らす一室ゆニンニクの香せり笑い声せり

色褪せし発禁本をめくりつつめくるめくわが夜のはじまり

http://user.shikoku.ne.jp/retoro/index4-tanka.htm

高一のときのあなたの声がするあの日の赤い星になりたい

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アッサムの香りをほどく要領で練り込んでいる時差、いえ、淡く

戦中の平和主義者の苛立ちに比すれば軽きものとは思えど

今朝もまた分厚き新聞開きおり安堵と焦り綯い交ぜにして

お互いに眠気こらえて長電話「また明日」とは言い出せなくて

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虹色に光ってるのがうれしくていろんな角度で眺めています

http://brown.ap.teacup.com/agarix/

メガホンの指示に合わせて叫びたるデモも遺物となりて久しき

驚いて逃げられちゃうとつらいから小さな声で叫んでいます

http://brown.ap.teacup.com/agarix/

久々に出でし都心の夜なれば雨降る道をゆっくり歩む

列車起こす風に煽られ線路脇のすすきの穂群れ激しく揺れる

物なき日タバコ代わりのイタドリを吸いいし父もここに眠れる

聞き馴れし目覚しの音聞こえ来る小さな旅の鞄の中で

ブリキ製の装甲の中に　天皇の赤子を強ひて　本物の戦車に当てる　虫けらの如く殺しき　天皇の赤子を　愚かなる軍人のあり　いちいちの名を出すことも　おろかに過ぎれ

日露以後なほそのままの装備して陸軍が国を亡ぼす遊びす　

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コロンブスの「発見」前より住みていしインディアンらの「母国」やいずこ

数十年の異なる時を持ち来たる友ら集いて酒飲む今宵

取り呉れしサラダ残せば妻が睨むリゾートホテルの朝食ビュッフェ

日没の延び来たるらし正月の赤坂見附の淡き夕映え

まだつぼみと思いいし娘（こ）がとれたてのつぼみを抱いて挨拶に来ぬ

旅に出れば我れは少年　地図片手に景色ばかりをキョロキョロ見ている

六十年前の焦土に根を張りて芽ばゆるものを枯らされむとす

既成事実作ってしまえば勝ちだよと誰かの嘯く（うそぶく）声が聞こえる

バカボンのパパがメガホン取ってとかとんとん大道具のやろ何をやってる

遠ざかる鞄の中に百万の薄紅の蝶がいた日々

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東京都は狭いようで広かったどれだけたっても駅に着かない

発見は夜中の居間の片隅に一瞬開く透明なドア

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産声をあげたあの日がよみがえる娘十八巣立つ佳き日に

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身の傍に友と呼びたき人もなし春一番のごうごうと鳴る

菜食主義通し続くと軽やかな人の眼は偽善に満ちて

雛壇の五人囃しの笛の音に焦点合わせり欝の日続けば

メガホンで津波被害者の寄付募る少女らの声悲鳴の如し

庭隅に母が植えしか一叢の都わすれの薄き紫

メガホンががんがん飛ばせり秋の声運動会はもうないですか

何故か今日とても寂しい僕だから眠る人魚の封印を解く

滑らかで濡れ濡れとした魚を飼う鞄ひとつで充分だから

検屍官僚友と在り夕暮れの花散る下のイタリアンカフェ

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マフラーのままで抱かれる　 発車前 　淡雪 髪に しばし停まる

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紫陽花のむらさき匂ふ日々にしてかの迷走をわが思いおり

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陥（おと）しめて母を哭かしむおとうとの掲ぐ黄薔薇にカインの殺意

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白き都を飛び出した人をおもう夕入り日のように女は痛い

霏々と散る花はまぼろし孤の窓に夜はとばりを紫に曳く

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幼き日線路に小石敷き並べ腹這ひて見し粉砕の刻（とき）

午後五時が定時のむかし　速やかに家路にありて　夏の日はあかるきうちに　母がゐませるおうちにかへりき

たそがれの夏のおうちに玄関のあけはなしあれ　涼しかりけり

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くろぐろと窓居並びてはつなつの午後は無人の横浜のビル

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風そよぎ桜花びら散る昼に猫の眠りは平和裡の中

満身に汗しとどなり性欲を欠きし老いたる馬駆ける見ゆ

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