框には母の忘れた硬貨ありじっとみつめれば胸騒ぎする

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白衣着ぬ精神科医のポリシーは卓上インク・万年筆の紺

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四次元の世界を翔りたつ列車　銀河をめぐり祈りをのせて

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初夏の陽が射し込む廊下のはじっこで君が奏でる曲を聴いてた

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振り向いた君にぶつかる勢いで花束渡す「遅れてごめん！」

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雀卓をかこむ四番目賭けるのはおばあちゃんのおむつ当番

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似合わないグレーのスーツに身を固め自己ＰＲおさらいをする

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朝もやの白い湖面をわたる鷺　脚ぎくしゃくと消えうせてゆく

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　　　6月、変な人

いつもいつもワインドアップの野茂のごと腋をさらして立ちたき銀河

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生姜味の珈琲は癖になるらしくアラビアン・カフェに風あまた寄る

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人生でたったの一度じいちゃんが額縁を買ってくれた出来事

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取り出したインクリボンをばら撒いた私の言葉の海は黒色

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四次元に住んでいること言い訳にしている君の定義が嫌い

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　　6月、変な人

袖移しにわたされしものを背へかくしふたりで雲をみあげてゐたり

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触れたのも汗のしずくをなめたのもただ太陽がまぶしかったから

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西風にさらわれたぼくの風船を見つけてください　名探偵様

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室内に立ち入ることを禁じられ蛍かなしくベランダに舞う

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居留守して真昼間家でパズルとはさぞ悩ましく御暮らしでせう

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一寸した生活感を消すために一〇〇円ショップの香りをつかふ

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上様が馬駆る場面好まれて瞬時通過の背景の町

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官僚の家並つづき真昼間の掃き出し窓のすべて締めきり

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迷惑な来客ありて居間にある書架隅々を立ちながら見る

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官僚の記名入りなるプライドが埋め立ててある舞洲、夢洲

こころには四つ瞳（め）がある　洪水になるから嘘をつかないでいて

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「通行区分違反、２点、９千円。」泣きぼくろある女性警官が

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美しい負け方ばかりを説いていた無政府主義者の放つ歌声

四苦まさに螺旋のごとしものなれど簡単にには受け入れられぬ

歌声となってあふれた焦燥で青く染まった8月の空

あの人の部屋にいまでもあるはずの漱石全集全十二巻

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空爆と食糧援助　思惑の外でその身に受くる子らゐて

人偏の二画加へてわれの名の合計画数変へむ計画（もくろみ）

ささやかな願望成就　半切りの小玉西瓜を独り占めして

menopause 抱へてわれの飼ひ馴らす＜胸騒ぎ＞＜鬱＞＜涙＞その他

様々な葉に逢ひ枝に逢ひながら雑木林を奏でゆく風

うつぶせに畳に本居（お）り眠る前と変わらぬ文字が並びていたり

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ひとつだけ残った額の賞状の昔の姓がはねる時々

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独楽のごといつかたふるる首都ひとつまだみづぎはにまはりをりたり

箱罠がきみの腋窩に在ることの、その夜 < Norwegian Wood > 流れき

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中華街山下公園をめぐり行き横浜の街にガス灯点きぬ　　

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壊すのも翔ぶのも自分変わらない日々を選んでいるのも自分

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どこまでも続く廊下は一本の迷路と思う　結核病棟

怪我の子を吸い込むドアの明るさを信じつつ昼の教室を去る

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君からの葉書のインクがにじんでる降る雨のなか紫陽花色に

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王子、だいぶ不安

ラプンツェル！そなたの髪は本物か？　最近抜け毛で悩んでないか？

われ先にここを出でんと　ひとびとが螺旋を描く排水のごと

書割りの青空の下　泣きぼくろは子なきじじいにあげちゃいました

耀変を遂げよ炎に弄られて　酸化還元酸化還元

信号で曲がるところを間違えた団地の先に団地がつづく

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花束がほどけたように産みだして殖える彼女を肯定しない

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四のつく部屋番号を意識する受話器を元にもどしたあとで

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桃缶をぶら下げ姫は我が城に上がりこむなり食料チェック

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くぐもった声を吸い取るアンダンテ　ワイングラスが光を撥ねる

両親の優れた遺伝子受け継がず次元のひくき平凡なわたし

東洋ぞ渡るが悲劇スープスパズルズル箸で乙女に吸われ

刃には刃を向けるわれの我を隠すごと着る真白きスーツ

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うぐいすの笹鳴き今や自慢げに我が庭に来て「一曲いかが?」

花束と生徒読む辞に送られて去るに淋しき三年(みとせ)の校舎

時として腹立たしくも諦める四角四面の役所仕事に

父さんの鞄に袖珍コンサイス英和辞典と仁丹ケース

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守られてゐるゆゑ美(は)しき櫛名田よ櫛のままにて千年ねむれ

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水面の月が欠けてる部分だけ一緒に浮かぶ泳げないから

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スーツケースを枕に転寝する息子日焼けの顔は半分大人

父親のおとす一喝子供らの喧嘩の声を一瞬に消す

夫(つま)も子もめったに入らぬ台所ドアを閉ぢればわれの城なり

今もなほ衰へしらず悪を討つ科学の生んだ子鉄腕アトム

雷神のふんどしの柄に似てるかも反り返り咲く鬼百合の花

風邪の子の熱治まりて安らげる寝息と共に夜(よ)の白みゆく

見ていないようでいて見ているのです親の背中に循環思考

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さらせない理由があるのごめんなさいと言い訳できる人魚姫なら

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襞深く闇をたためる春キャベツ暴かば裂けむ柔きさみどり

I wanna do ワナと呼ぶ時誘惑は罠と知りつつ堕ちたき迷路

空模様　洗濯指数　猫の髭　しげしげと見て水無月長し

但し書き付されて寓居のごとく在る昆虫図鑑のクモの項目

首くの字に折られてキリンのぬいぐるみ　そうかおまえは＜燃やせるゴミ＞か

過ぎし恋水パイプもてくゆらせるアラビアの夜男らの熱

忘れてたすみっこの影よびだして名前をつける六月の遊び

十字路で右折車通す　ふるふるとサンクステイルにあがる歓声

なまくらな剣振り回し舞い上がる紙屑に足をとられてばかり

猜疑心を洗濯ばさみに銜へさせ乾梅雨空にはためかせたし

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古書のまちかっぱ横丁ぶらついてパチンコすればうたの浮かび来

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ソムリエになるにはいささか咲き過ぎたワインレッドの歌でも詠んでよ

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ディズニーの映画に閉じ込められた城　かあさんが寝たら今夜も探検

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科学者になりそこなったＮ先生　軽自動車に妻のせる日曜

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じゃんけんで負けていつも鬼になるあの子の髪をひっぱったのは僕

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風邪気味の子が半数を超える朝　先生の鼻もむずむずとする

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ここまでが陸、ここからは海の色　垂直に掘る土の涼しさ

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誠実な言葉も持てず歯がゆくてセピアカラーの野薔薇のつぼみ

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できすぎの夜のとばりをくるくると力を込めて巻きあげている

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日に焼けたくすりゆびから立ち昇る見えない夢を食べるまよなか

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計画を取り消したあと見あげれば濃いだいだいの月が近づく

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占いに頼る夜です無駄のない言葉をさがす夏至のあとさき

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みずうみの濃霧も晴れて宵越しの胸騒ぎまできえて火曜日

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ゆるやかに凪いでゆく午後　めざめれば　防風林にかこまれている

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おいかけて行けば東京とうとつに目くばせをする沿線キャベツ

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試されていたと今ころ気づいてるららららりるれ六月の罠

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洗濯をすませたあとのあしもとのきいろ菜の花なにが恋しい

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書き留めてしまえばきっとほっとする今日の天気の晴れのちふおん

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空ながめ夕焼け小焼けたましいを持っていかれたぬいぐるみ群

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えいえんに鳴るはずのないその人の行進曲を秘めた携帯

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ひとりからひとりへわたす声のためひなげしの花ふるえやまざり

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なじまない変ロ長調は刻まれて君が放つ言葉を手繰った

http://www.tcp-ip.or.jp/~panse219/index.htm

三本立ての映画みたあと五十円の支那そば食った。ラーメンじゃないッ

関係を続けられるか　朝空の四方より降る鴉らの声

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体温は麻酔にあれば夜ごとに歓楽街は熱源を売る

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遠ざかる君に告げたり　額の熱はかりてくれし掌のすずしきを

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君に書くつひの手紙となりぬべし　便箋の字のインクが滲む

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体温のあらぬ光の二次元に言葉はうかぶ　去るのか君も

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Ａさんの名前何度も出したのは友が毛先をいじりだすから

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指先は音も笑顔も消し去ってまる結びしたわたしをほどく

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蜂捕りに林の中を突き進むいつか巨大な巣の中までも

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ヒマだからキャベツ畑でイモムシを集めて鶏のえさにしてみる

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白菜のひと葉ひと葉に具を詰めて罠を仕掛ける秋の夕暮れ

http://spaces.msn.com/members/matsugumi/

洗濯のアワがだんだん消えていく気持ちが軽く季節が軽ーく

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図書館に吉川英治借りに行く棚の前に嗚呼ライバルがいる

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一人でも淋しくないよ、と繰り返す午前１時のホットチョコレート

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名を知らぬ花名をよべず三連符みっつのリズムを風に転がす

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自転車は押す主義であり今日からは自分にもっと優しくしよう

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困憊の頭に一時の携帯用ビニール枕といふを寂びしむ

自（し）と他人（ひと）と世界を祈り飲み干せと櫛田神社の神水苦し

ヘッドフォンの曲に籠れる少女らの髪それぞれのリズムに揺れて

蝋燭の光チロチロ映りたりアニバーサリーのワイングラスに

訪問着を袖畳みする大胆さ　カナダ生まれの二十四歳

つなぐ手の向こうは異次元世界かもしれない霧ふかき夜をゆく

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冷房の効き弱けれどしんしんと腕時計は冷ゆ袖の中にて

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（運転を見合わせています）散らかったスーツの中に人がいるのだ

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アドレスが裏に書かれたナプキンを線路に投げて快速を待つ

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ドンペリとビールのせいで眠いからプロポーズなら明日にしてくれ

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石ころを帰りのバスが轢いたため、鞄の中で散らばるアポロ

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帰るまで君に発見されなくて意味を失う私の巻き毛

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動けない乾電池切れ（ぎれ）動けないそんな動きで動き出すわれは

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盗んではいけないものと盗んでもかまわないものの境界を越え

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缶蹴りの鬼置き去りのあの日よりわたしに濃くなる木々の夕暮れ

夏風邪にはらばいになり殴り画く赤のくれよん青のくれよん

じゃがいものベーコンいためにパセリ添え瞬き消える夏の恒星

平日の濃き影落とす昼顔がまた一つ咲く無職の父へ

どくだみの十字の花は板塀に輪郭薄き伯母の住む家

長剣を帯びる少尉のまなざしにまためぐり来ぬ夏去らんとす

埃くさい制服の襞思い出は二十年後に乾ききるかも

「のたり松太郎」その後を知らず喫茶「白鳥」起重機の下

神楽坂早稲田へ連なるラーメンの店の混沌、暗黒の汁

「ほら伝線」、くるぶし上げるバランスを抱きとめられてキスされる昼

ドライヤーうわんうわんと髪にあて別れの台詞考えている

夏空へ白き円柱軸にして螺旋に消える十六分音符

体育が苦手で下手で泣きぼくろ新見南吉斉藤茂吉

曲馬団に攫われるちゃうよ母たちの脅し文句に怯えていた頃

百ほどの玉子焼きつつ百ほどの改札も越えマラソンを終ふ

百ほどの玉子焼きつつ百ほどの改札も超えマラソンを終ふ

動の花としてひまはり天道に振り向く顔の素直なりけり

きみの抱く消火器は空　ねがえりをページをめくるようにつづける

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城跡をみずうみにする計画をだれが立てたかおしえてあげる

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月面という設定の部屋に立ち棒で地球をたたく科学者

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スカートのひざがいくつも降りてくる鬼火がたまるように歩道に

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なおらない風邪の出口にみちびかれ無賃乗車でゆく昼の海

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「めくらやなぎと、眠る女」の 、（とうてん）のやうな針出できぬひぐるみより

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「屍を越えろよ」とだけ記された　ならずもの風遺書が書きたい

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たそがれを照り返すたび手鏡の面（おもて）に青き細波は散る

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赤丸のいくつか残る地図旧りてもう続編は書かれぬ書斎

麻酔針受け入れむため一滴のキシロカインを青き壜より

額髪掻き上げてまたキーを打つ　言葉　言葉だ　ことばをつかめ！

『ぬいぐるみ』　その柔らかき体には子どもの頃の涙が染みぬ

おそろいのスーツケースを並べても別々のもの詰めて旅立つ

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消しゴムがふたりの間を行き来するたび少しずつ丸みをおびる

http://yaplog.jp/noma-iga/

路地裏のコスモスもつれにもつれつつ探偵も人さらいもさびし

いままでに食べたいちばんおいしいと思ったものは何という問い

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地に足の着かぬ心地で機内食お新香なくて喉を通らず

　　　6月、変な人

すこしづつさびしくなりし日曜の連想ゲームと大和田獏と

http://www15.plala.or.jp/kasane/

きみが白きガゼルを密猟する夢の続きを見たし情婦のわれは

http://page.freett.com/willows/zp_tanka/pillow.htm

　　　久しぶりに『神の子どもたちはみな踊る』を再読する。

携帯電話（ケータイ）のＣＭで踊るチョ・ミョンエのづじやうの甕のなかの暗闇

http://www8.plala.or.jp/haru3-kan/

青インク吸はせて染めし花のやうに贋の言葉が萎れゆく午後

Web閉ぢて窓開け放て 異次元に憑かれて浮腫む脳（なづき）を冷やせ

ゆつくりと耳より覚めぬ　うたた寝に「別れの曲」は淡く入りきて

ただ一度母は告げにき自らの手で「始末した」おとうとのこと

７割は液体ですから僕なんて手動の脱水機からペラペラ

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留守の部屋ふるはせるベル仄暗き隅々までをひたひた濡らす

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苦しくも恋しいいとしい愛憎の集大成なりチョコレートパルフェめ

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泣きながら書いたかのよな文面と滲むインクが滲ませる嘘

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懸命に幼子は笑むこつそりと涙拭ゐし母が袖口

苦しげにモロボシ・ダンが吐き捨てた「悲しいマラソン」人類よ、おお

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ゆっくりと運命の輪が動き出す　彼と彼女と私の上で

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彼らには輝く未来にみえるだろ結婚というラインの前では

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夫には言うべきことはありません修復できぬ静かな怒り

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母さんは留守にしてますベランダでビールを空ける午後のそよかぜ

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翼など持っていたとて何になる私を囲う見えないケージ

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すっぱりと別れた後の気持ちよさ　北北西に進路を取ろう

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僕の持つナイフで切れないものがある　親子の縁と左手首と

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届かない手紙があります物理的距離より遠い温度のひらき

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シャワーより暖まるんだブランデーよりウオトカよりも君を抱きたい

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濁流にもまれ続けるぬいぐるみ毒ある色で自己主張する

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鹿児島で携帯合羽身につける二泊三日の修学旅行

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べっ甲の櫛を土産に祖父帰宅春の井戸端母が髪洗う

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初参加近所総出の田植えではリズムに遅れすぐに脱落

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紙芝居拙い絵には慣れぬけど続き聞きたい名調子の

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抜歯後の唇から漏れる緑茶よ麻酔のせいでボクが壊れる

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人里を離れた場所で降る雨のように効くのは母のお仕置き

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水無月に大和言葉で潤してミヤコワスレを栞に飾る

友引の通夜に集いし嫗（おうな）らの黒きエプロンみな新しき

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風よけに君の背中が良いんです　振り向かないでどうぞそのまま

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