乾電池売場に迷う六月の蝶、やわらかな訃音の果てを

http://www2.spitz.net/hinatsu/

部屋によぶ口実だろうその風邪は　桃缶ひとつコンビニで買う

http://mizukiuta.exblog.jp/

よいところだけ摘まむのは早過ぎる泥付く靴の紐まだ解くな

http://www.scn.tv/user/nisi-t/takashi/

兎さん亀さん問わずマラソンのランナーたちに草冠を

http://www.aa.aeonnet.ne.jp/~kyo/page/Beran/u.ber.html

おほをその見逃すまいか生ゴミを埋めるさ中の進捗状況

シベリア翼龍ぷてらのどん。ほら！空を飛べ。帰れ祖国へ！祖国へ帰れ！

http://www12.ocn.ne.jp/~kitten/

カへリタイ帰れない人魚のこころ波のまにまに寄するたそがれ

新しい制汗スプレー　すれちがうたび違う顔していもうとは

組みふせば夕べの海のほのあかく汝がやはらかき髪はひろがる

http://www6.plala.or.jp/a_mutsuki/

愛あらば…硝子のごとき階段の螺旋をのぼる薔薇の降るなか

http://www6.plala.or.jp/a_mutsuki/

まなじりを落つる心のいろ滲みて泣きぼくろあり　姉の右目に

http://www6.plala.or.jp/a_mutsuki/

月は今宵しろがねの弓　わがゆめに鹿の顔持つ男あらわる

胸騒ぎ静めるために珈琲を薬にみたて何杯も飲む

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受験生にはラーメンてあまりにもはまりすぎだよやめてよ母さん

http://www7.plala.or.jp/laurie/

紺色の靴下並べた物干し竿　父の靴下娘の靴下

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黒板に数式を書きつけているせんせいの髪ほどいてみたい

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どうしようまだここにいるたそがれにかわっていてもまだいるここに

風強き日の朝９時にすれ違ふ泣きぼくろ持つ人の自転車

http://homepage2.nifty.com/sora_uta/index.htm

友情と愛情と欲情ボクはただ他人になるのが恐かったんだ

うふうふふうふうふうふふこうみえて裏切り主義の私の明日

復讐心　笑顔はすでにこげついて脱力のなか帰る地下鉄

胸の中あふれる言葉にメガホンをあててはみても君に届かず

あかねさすまばゆき皿に取り分けしサラダ菜の上ゆかし幼虫

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海に棲む青き魚を淡水に住まわせたような居心地わるさだ

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私の内なるつぼみは硬いまま夢で叫んだら落ちてしまった

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海に沈む夕陽金色撒き散らし何故だか君は蒼く透けてて

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西風が鈴懸の実を吹き抜けるそんな声だった　もう忘れたけど

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懸賞で貰った額に雑誌から紫陽花の絵を切り抜いて入れ

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ワイシャツのインクの跡は後悔で梅雨入り前に友と分かれる

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曽祖父の棺を穴に異次元の旋風吹き土煙の中

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流行という制服の親切と滑稽するり穿くローライズ

松蔵と桐子だっけとおばあちゃん　ここはすっかりアロンゾ・タウン

ラーメンに白菜は邪道というのなら食うなよそんなしあわせそうに

気に入りのものから順にだめになる　カップ・靴下　それだけじゃなく

切りすぎた前髪眠い目をしてる次の五年はこいつが自分

きぬぎぬの厨で君が照れながらうさぎのしっぽを茹でる朝です

http://blogs.dion.ne.jp/shirohi/

新進歌人kittenさんの歌はへん。顔もへん。でも、いいの。えへん！

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エノラゲイ悪魔の翼今もなお地獄の業火煽り羽撃く

http://www.rak1.jp/one/user/owo/

登山にも将棋にも詰めの妙味あり詰めあっけなきジグソーパズル

http://www.scn.tv/user/nisi-t/takashi/

苦みあるワインはちょっと苦手でもサングリアなら無限にいける

カサカサとカラスの足おとうとうと聞いて朝の眠気がまだ深い

日焼けした肌に真夏のドラマを描いて海が眩しい紫外線

店じまいライオン像まで寂しい貌で三越横浜店の錆び

失敗の汗を知ってるスパイク重くロッカールームはただ無口

真夜中へ息を殺した双眼鏡へ探偵稼業がチョー眠い

披露宴祝辞のここにも禁句があって新郎新婦のバツの数

土壇場の土壇場に立つ二死満塁へエースの背中が頼りない

看板の赤は魚民白木屋和民大して変わらぬ酒を酌む

充電の時間を露天の湯気から貰う明日から仕事の乾電池

あの日から風を盗まれ光を消され私の不幸なフラれ癖

スーツ着てメガネを掛けてそれだけでにやけるなんてなんて女だ

http://hp11.0zero.jp/173/25345225/

心臓に合わせて音が消えていく心電計なら苦しすぎてた

http://hp11.0zero.jp/173/25345225/

王子様みたいな人とお城っぽいところに入った王子でないんだ

http://hp11.0zero.jp/173/25345225/

欲しかった・・・手紙に夢をふりかける封蝋印とペーパーナイフ

ペリカンの謎に迫ってみたいなら袖口の糸引っ張ってみて

http://www4.diary.ne.jp/user/463976/

蹴散らして蹴散らしてまた着ぐるみん大和の国にマンバ上陸

http://www4.diary.ne.jp/user/463976/

雪どけの泥流地帯に五、六匹泥んこ泥んこうり坊うりゃりゃ

http://www4.diary.ne.jp/user/463976/

今日で十歳になりました。

雨の日に生まれたひとが混ぜている浅く眠ったままのゼラチン

http://www.geocities.jp/ymizusu/

嵌る場所探して入れて世の中はまだまだ続くジグソーパズル

http://blog.goo.ne.jp/casuminn/

暖流の尽きなむところさみしさはさびしさに変わる陽は紅きまま

グリーンの乳液体に塗りつけり　若葉の季節に同化するため

蜘蛛の糸でもおかしくは無し　水無月の菖蒲の花に降り来る雨は

砂浜にジャックナイフを埋めたのは圭一郎か星のままなる

それなりに蠢動します雨をうけ珍竹林も妙竹林も

http://www.aa.aeonnet.ne.jp/~kyo/page/Beran/u.ber.html

たくひれの空を遊泳するやうな白き鴎を仰ぐ浜梨

歯ごたえのないドーナツを食べながらミスドの隅でパズル解く午後

http://yumi.myfws.com/

六月はアジサイが咲く枇杷熟れる桑の実色づく笹ユリ香る

http://www.scn.tv/user/nisi-t/takashi/

　　　6月、変な人

真つ白なパズルあがなひ式典に出ずバイトせしわが二十歳の日

http://www15.plala.or.jp/kasane/

クール便夜間指定でチョコレート届く記念日クロネコマーク

「うさぎってマジ馬鹿じゃんね」反例を挙げたい月の満ちる夜には

なんだって跳び越えられるポスターの少女からだを弓なりにして

おとうとがほしい息子の短冊に時世かなしむリストラ夫婦

声を出す　世界にむけてはっきりと　僕が僕だと響き分かるよ

http://ringlink.no-blog.jp/1/

祝宴の果てしホールにわれは持つ今日より姑となれる花束

あかときの背中をなぞる　お前にもふるい記憶はあるのだろうね

苦みあるワインはちょっと苦手でもサングリアなら無限にいける

あたしよりサラダを選ぶ人ならばついでにうさぎになっちゃえばいい

http://9257.easter.ne.jp/

ポケツトの暗がりに棲むバタフライナイフ勇気の証ではない

http://homepage3.nifty.com/flat_m3/

深々と傘さし曲がるこの角の先はどこじゃの細道こみち

あめあがり噴水は空に花束をさしだす虹のカードを添えて

おつかいの帰りは赤い電車みようね、母とりんごと四ツ谷の夕日

ひさびさにスーツ姿の父をみて折り目正しき老いに目を伏す

ローズマリーを友にたはむれる日々はつなつの陽を蜥蜴は浴びて

その轍は踏まぬと斜め上をみて世故に優れしおとうと育つ

風も絶えものの輪郭おぼろにて紫のエアあなたを染める

横浜の伊勢佐木町を徘徊し皮膚より港吸いし若き日

労働は汗に嫌われ後釜を独占しているスポーツエリート

カナリアよ清らに歌へ朝影の緩く届かむその窓際で

貴船川の床に盛りの香魚食めば身ぬちにさらに匂ふ藻のみどり

http://blog.goo.ne.jp/casuminn/

千個あるパズルのピ−スつなぎゆく今日は一個の願いが叶い

もう長く記すること無き日記帳　梅雨の晴れ間に香草を摘む

笛の音の微かに聴こゆ芦原に駿馬はすでに耳そばだてむ

野薊をコップにさして夏は来ぬ霞が関の官僚の席

映画『二十四時間の情事』マルグリット・デュラスが見つめたヒロシマを観る

http://kazuminogi.hp.infoseek.co.jp/

恋人の唯美主義には敵わないガラスの部屋で我は襤褸だ

http://members.goo.ne.jp/home/orangemoon1103

淡い想い抱きしめたまま理科室の人体模型の前でくちづけ

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2104/

薄紅のフリルの靴下留めだつた　＜羨む＞といふ最初の記憶

ヘナに染めし髪が匂へり今日ひとひ日向の草のやうにそよがむ

刻まれし螺旋おぼろとなるままに雄螺子（をねぢ）雌螺子（めねぢ）の錆びて円けし

熱のない風邪ひきの夜 愛のないkissは鼻腔がツーンと痛む

http://blog.drecom.jp/a_yaya/

川沿いの接骨院の待合の焦げた鞄の中の水飴

http://www.geocities.jp/ymizusu/

赤札は剥がす真っ赤な花束を抱いて激しく歌う女の

http://love.ap.teacup.com/watashinouta/

恋なんて泥つきじゃがいもごろごろと転がったまま夢を見ている

http://blog.drecom.jp/a_yaya/

若葉から雨へと変はりゆく匂ひ踏み出すために下ばかり見る

http://homepage2.nifty.com/sora_uta/index.htm

オレンジに染まった頬をたそがれに隠したきみに手をにぎられて

http://diary.jp.aol.com/zwvruqv/

降り注ぐ光のすべてを遮断してワインレッドが満ちるキスを

http://www.tcp-ip.or.jp/~panse219/index.htm

薔薇の邪眼に射すくめられて二つ目の肋差し出す、俺だけのイブ

懐中に櫛を秘めもつごとき思慕　塚本邦雄の歌に魅せられ

かの国を想えば透けてゆく身体　輪廻には巻き取られたくない

いぎりすのたんすにあまた隠さるる　異次元は驚くにあたらず

http://page.freett.com/willows/zp_tanka/pillow.htm

好きだよの「よ」が終わるのを見計らうように線香花火がぽとり

http://yumi.myfws.com/

出国の前に食べたいものを買う蒟蒻、そうめん、枝豆、ひもの

百日草になれるまで、あと［002日］未来は待っていてくれるから

http://www.aa.aeonnet.ne.jp/~kyo/page/Beran/u.ber.html

虹色に縁取らるる世の不思議さにかざししプリズム友くれしもの

　　　6月、変な人

六月の半そでほのか樟脳の香りのたちて翠雨(すいう)へと出づ

http://www15.plala.or.jp/kasane/

六月の雨ごと弥勒に包まれぬ子宮と似たる暖かさかな

瓶混ぜて紫蘇汁染みし祖母の手は塩梅を知る梅干近し

やぶへびが届くころには口さがない噂の出どこのどこにもあらず

目を細めマリモ見る猫愛でる俺　飼い主馬鹿のマトリョーシカだ

http://catwalk.squares.net/

（僕の目が悪いのか）あの官僚とこの官僚は違う官僚？

http://catwalk.squares.net/

雨上がり散歩に行ってきた猫が迷子のマリモを飼いたいと云う

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去っていくものを見つめる影ひとつ 思い出はいつだってしあわせ

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しなやかにベスパに乗って探偵が距離を縮める昨日と明日の

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たくさんの鞄を持って出かけてもいつも何かが足りない旅だ

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その恋の発見現場はマンモスの切手シートのポスターの前

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寄り道のできない距離の我が家です曲がり角まで何歩か数え

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野の花で花束つくる妹の手伝いをする無口のままに

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四の字は死の番号と忌み嫌いトイレのドアを欠番にする

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年ごとに祖父に似てくるスーツ姿三角眉は愛嬌のような

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台風の夜はちょこっと楽しい電気が消えてろうそく灯して

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青空のスケッチ大会城跡でみんな大樹の木霊となって

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探偵を雇って君の一日を知ったところで傘はいるから

発見の日々に疲れてエイモリー卿は呷りぬ珈琲の澱（おり）

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苦しくて、まっすぐに歩けないのです。陸に上がったサカナみたいに

日の沈む南の島のたそがれを閉じ込めている珊瑚のピアス

恋をして、離れていくのも友ならば、破れて戻るあなたの御胸

作戦はひとり密かに練り始め人には言えない恋をする主義

ほどかれて流れ始める風時計画聖の筆に春香り立つ

出廷する在外被爆者ぎこちないスーツ姿で遺影を抱いて

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あなた待つわたしのように片方の靴下軒に今日も孤独で

長き髪丸髷桃割れパーマネント散切り御河童 髪の変遷

公園の吹き溜まりに舞ふ枯落葉竜巻のごと螺旋描きて

友達の境を越えておちてゆく想いあつめた6月の雨

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泣きぼくろとは思えない朗らかに笑いこげる彼女の目尻

青虫が蝶々に蝌蚪が蛙へと変身遂げるはいずれが勝る

夏祭りワインレッドの紅さして今宵かぎりの神輿をかつぐ

あの世にても罷り通るか袖の下亡者は用意す三途の岸辺

とろろ汁も山かけもよし大和芋<手芋>と呼んで家族親しむ

野良猫に一尾とられて皿をひくドジなわたしはいつも泥縄

じゃがいもをいきなり放り投げられたような気がしてエリコと笑う

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人が皆チェロのかたちの影をもつ日になるでしょうと天気予報が

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６年が結び閉じられゆく痛みのみがただいま胸を占めおる

みづうみに庭ありピアノ組曲を聴くとあまがみする魚（いを）もをり

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寂しさは硝子の部屋の三人や二人静や一人静や

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裏道の秘密と美とが楽しくて止められないな探偵ごっこ

儲け過ぎもて過ぎなどは不愉快だ禁じるほどの事ではないが

逃げる時無防備のまま標的にされて射たれる人の背中は

食べられて喜ぶはずもないけれど魚はきれい魚はうまい

消費され捨てられる為箱の中君も辛いね乾電池君

町に出て行き会う人のファッシヨンを盗んでまわる楽しい初夏だ

アルコールなる液体をどうしても忘れられない　チャイムが鳴った

文部科学省推薦の蜘蛛の巣はこともあろうに破れていたり

ここからは立入禁止と言うのなら家庭は一体どんな入れ物

雨の日は昔のことを思い出す　誰の背中を見て育ったのか

背の青い魚を食べて貧血を治せ、か　それだけ？外は雨だよ

乾電池交換しなよ　止まってる時間を今すぐ動かしたいなら

盗まれた！盗んだ？撹拌されたハートの行方ジョーカーはどこ

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わが歩く森林の中ぽつぽつと置かれておりぬ悲しい卵

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泳ぎきる自信がなくて空を見た　人生遠泳ゴールは遠し

世にも弱きわれといふ者は　ひとひとりとして撫でられぬ　ひと茎の草さへ救へぬ　ちからなきいきものならば　おろおろとただ目覚めては　この世の堅き地上に　落とされし卵の割れて　崩るるばかり

ほんそこに泣いてゐる妻ふたりの子らにもわが弱き手の届かぬ

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別れゆくあなたの部屋に一輪のせめて黄薔薇の咲きますやうに

やどかりの失せた淋しい巻貝をふと虹色に染めてみたくて

ただただに歩み来し今とどまれば迷い迷えるばかりなりけり

　我を慕う若き人ありおとうとと言い聞かせてむや我にも彼にも

うす紫のキャミソールがよく似合うねと告げる人あり心はずむ我は

もの言わぬ人となりたり二時間あまり新幹線は横浜を過ぐ

脱ぎ捨てし汗の臭える背広あり梅雨の季節やアジサイの花

多発するドラマのような事件ばかり名探偵コナンはいまだ現れず

言いかけて禁忌（タブー）の一語を飲み込めば曇なき空はただ高かりき

言い訳も疑うまいと思えども素直になれず背中向けいる

トラックで魚商う行商の来たるを告げる声が近づく

乾電池はかなくなりてとろとろと我が行く道は手探りに似たり

なんとなく晶子に逢ひたし叡電で鞍馬へ行かむ歌碑を訪ねて

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塚本邦雄八十四歳不帰の客「老いざらむわれは」と言いし人はや

午前四時盗汗(ねあせ）おぼえて目覚めけりようやくしらじら夜は明けんとす

新緑と橋の上から海を見て高速バスはただひた走る

大空にわが魂を解き放てならずものとなりて帰り来たれよ

故郷で母が手摘みしエンドウの皮をむきおり今夜は豆ご飯

個体から液体に変わる一瞬の口腔内は我のみの宇宙

中指でメガネのピンクのフレームを動かす癖も愛せば五月

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はかなげに蜘蛛の糸のように繋がれりただただ君のメール待つ我は

未来さえ暗く閉ざして眠りけり。大人へとなりしかの童貞は。

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静寂の朝を切り裂き降臨す大国主命なりけり

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「この部屋はずっと留守です。住人は紅い海へと向かっています。」

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たおやかに黒い翼をはためかせ西明かりの空ひたに進まん

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進むことに疲れてしまった古時計見つめつつ呑む甘いシャンペン

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闇の中ジャックナイフを閃かせ、二度と帰れぬ道を歩めり。

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