人生の真ん中にある書斎にて煮つ転がしの極意を学ぶ

キャンデーをつかみたいけどぬひぐるみ達も随分待たせてるので

携帯用もしくは非常用トイレいくつか買ひてランチに並ぶ

蜂蜜のやうな櫛あり永遠に戸惑ふやうな夜のありけり

大根を刻むリズムに慣れなくて気休めに見る六本木ヒルズ

続柄を言ひ淀みたる窓口よおやつの時にまだまだ遠き

曼珠沙華ゆつくり咬めば麻酔より醒めたる夜の心地こそすれ

夢に見る額縁ショーのかたはらにあれば嬉しき黒葡萄など

売り物にならぬ林檎を描きつつインクの残り五ミリとなりぬ

二次元をつくづく思ふ俎板の烏賊をはげしく細く切るとき

トーストはぱさぱさ椅子は重すぎて名曲喫茶の午後をまどろむ

美しき女性（ひと）の骸を見るような真紅の薔薇のドライフラワー

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食べられる花束ならば全身を口にしたいと思ふけれども

四卓の胡椒の瓶よ透明なものを恋ひたるひとのはげしき

蕎麦蜜柑パスタ鍋焼親子丼　スーツを通り過ぎた食べ物

消費税90円はああさうか、メインディッシュの後半ぶんか

あの時に死ぬべきだつた人とゐて白鳥城の皿をかなしむ

とくと見たまへ科学博物館前のスープカレーの色の薄さを

点鬼簿の三ページ目に棲むといふ昔愛した人の箸箱

ぽつたりと風邪心地なる日の暮を果汁ぽたぽた狂はせてくれ

じやがいもの芽を取る、そして手紙焼く。ほんに楽しき自由時間は

人類の進歩と調和の踊り場で梢見上げる長久手の森

嗚咽だけ嗚咽だけくり返す闇「泣きぼくろとかあればいいのに」

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３年後偶然キミに出会うため東南口よ変わらずにいて。

http://funky.gonna.jp

リセットの代わりに１回死んでみた。血液みたいなワインを浴びて。

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君と僕夫婦という名の続柄ずっと変えずにいるつもりだが

麻酔なく切られてもなお花は咲く命の短さ知らぬそぶりで

満面の笑みを浮かべる君の顔 額縁飾る悲しき黒リボン

インク瓶投げつけ砕け色をつけ明日を壊した己の意志で

あくまでも次元が違うと突っぱねる断る理由は他にあるけど

濃きうすき縞目うつくし卓の上のおぼろ昆布の潮の香を食む

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真夜中のセルフのEssoにたたずんで見よ宇宙樹の螺旋状の星

くろぐろと橋の下には川流れ橋の真上を天の川かな

憧れてなれるものではなきゆゑにならずものてふ崇高な夢

世界中のどの島よりも国らしき停泊中の空母へと月

痛かつた傷を見つめてつくづくと液体なんだな人の身体は

その強さその美しさ蜘蛛の巣に勝るものなしどの建築も

割り切れぬ解答迫る二進脳イエスかノーか友達なのに

立泳ぎして陸見れば陸遠しさりとて海のものにもなれず

手品師に騙されてゐる心地よさ本格ビターチヨコレート割る

ラーメンはとんこつよりも味噌がよく味噌ラーメンをコンビニで買う

http://www.mnet.ne.jp/~miusin/

靴下をはかずに靴をはくひとが愛を語っているバラエティー

http://www.mnet.ne.jp/~miusin/

さう言へば地球が黒くなつたなと月のうさぎが呟いてをり

髪の毛がカットしたまま伸びなけりゃいつかは抜けてハゲになるだけ

http://www.mnet.ne.jp/~miusin/

メビウスの輪だった　ぼくがひたすらに昇りつづけた螺旋階段

http://www.mnet.ne.jp/~miusin/

停電を幸ひとしてしばらくは弓張月をたのしむとせむ

産声をあげず生まれてきたぼくの泪を吐いたこの泣きぼくろ

http://www.mnet.ne.jp/~miusin/

うたた寝に恋しき人と味噌ラーメン食ふをうつかり頼みそこねき

この国の官僚よりもしたたかに少女は指を髪にからめて

http://user.shikoku.ne.jp/retoro/index2.htm

あなたとはしたくないこともあります嫌いなものは剣山に挿す

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カーブする自宅玄関のポスターまえ共産党のメガホンの点呼

ならずものの張り紙風にあおられて千切れて荒野のくずとなりたる

眺望の都心27階に終日を過ごす君よりメールは真夜に

題詠の「線路」でつまり２０日すぐ中秋の名月もやせて雲間に

深夜二時　儀式のように書き込まれるあなたも名無しわたしも名無し

　　　君たちは何の奴婢かと

　　　　　　　　　　　　　　　　　市を過ぎ

　　　松風はなお
　　　海原を

　　　過ぐ　

（当該と使者）

こころみに私たちも待ちラーメンの最後の列に列をのばす

そこだけは秘祭のごとき。人絹の靴下の静謐を納めて

どうしてこんなに　髪が落ちゆく　そして黒く　ああまれびとが御座ましし由

冬楡の
　　　枝渡り神の
　　　　　　　　おはしまし

　　　　　　　　　　　　　　　　「そやし
　　　　　　　　　　　　　螺旋に
　　　　　　　　　舞い上

　　　　がらんか」

※神＝たま

おとうとがうつつに植うる葱の色もしそがあらば食べなむそを

「食」＝「たう」

女の子同士恋することが変だと言い切るの？　愛しい貴女

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シカゴにて、ふたり秘密の酒蔵で熟成されたワインを飲もう

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もう少し側にいてねとわがままにフランスレェスの袖を握りて

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めらめらと火群(ほむら)あれど月影のドアを開ければ断崖絶壁

霜月の白い十字架人生の鞄の内(なか)を点検するなり

巨大な剣(つるぎ)持て切り取られたやうな青空と錆びた鎖を潜(くぐ)り抜け

チョコレート割って大きな片割れを与えし日より姉として生く

アクリルの箱に飼われし白うさぎ悲しむべくもなく菜をはめり

的中の矢を送り出し末弭(うらはず)の僅かに揺るる弓のしずけさ

死際の書きつけ「WF」の謎　「Writing Fluid」すなわちインク

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数かぎりない切片の降り積もる冬の次元に立ち上がる貌（かお）

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胸の血が錆びる疼きに膝折れば　朱（あか）　雪崩れ落つ下降曲線

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その腕に何があったの　海百合の花束のように残された骨

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夏を裂くジャックナイフで飛び込めばフエが鳴るなり県民プール

僕の字は書道教えるあなたには見せられないからメールにします

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脱いだ後パジャマにキティのぬいぐるみ入れてそおっと部屋を出て行く

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ケータイを「電話」と思う人あれどはやり「携帯」だけでいいでしょ

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わが妻は櫛もブラシも不要なり今度切るときゃ俺が剃っちゃる

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テンポ良く話題連ねる話しぶり君のリズムに引き込まれて

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三十年続くと誰が思ったか決めた当時は若すぎたけど

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目にメスは麻酔しててもまだ恐い力入らぬ緊張の時

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スーパーマンになったつもりで飛び降りて切った額の傷痕がある

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糊と刷毛印刷インク現像液私の昔の職場のにおい

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今だからワードローブを通り抜け異次元の国ナルニアへ行こう

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乙女子の太腿で巻くハバナ産のタバコ最高と言いし君はも

消印を指でなぞってにじませるただ暗闇の満ちてくるまで

そのリズムつづけてつづけて止めないでだんだん意識が遠のく踊り

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幸せを続けるためにときめきの風船毎朝割ってはじけよう

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麻酔打ち無痛になるまで長かった陣痛なのにも一人産みたい

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影踏みを未来永劫繰り返すドロンジョ様の美しい脚

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妖精の冠みたい額あじさい花に興味はないのか？息子！

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”陰気くさー” インクで日記書きながら駄洒落出たとき消え失せた鬱（うつ）

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世間ではネット上という異次元で売る買う出会う夢を見る住む？

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思い出の一曲たちを集めたら「恋の遍歴アルバム」できそう

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ステージを降りた踊り子花束に埋もれた日々もひとときの夢

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四度目の夏は特別二度とない命を賭けるほどの青春

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久々のスーツ姿の鏡には実年齢のわたくしがいた

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救急車パトロールカー消防車みな「ちゅうちゅうちゃ」指差す息子

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伝え聞く沙漠の悲し物語　高昌故城に待つ人はなく

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攪拌ですべてを終える画期的文明の機器洗濯機かな

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しやぶしやぶ店より聞こえし合唱の＜官僚なんてららーらららららーら＞

納豆はわさびで食べてもＯＫだ　ひいらぎ荘に春の激震

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年の瀬の母の手伝いおせちの準備くるりと楽しいたづなこんにゃく

両の手で掬い上げればきらきらとこぼれ落ちてく液体の君

ならずものになりきれぬ兄こそこそと裏の床屋でバイトしてゐる

海峡の日ざしが洗ふ甲板に子規が吐きたる痰の紫

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つまらない罠につまらぬ人の影　灯りに群れた羽がまた落つ

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四次会やラーメン「とん亭」あかるくてどろどろに寝てしまふなりけり

小夜更けて洗濯籠に舌をだすけふの汚れの靴下、べろり

いつしかとつはりたまへば垂れ髪もにほふ母御となりにけるかも

わが生も螺旋なるかな水槽の縁に田螺を突つついてゐる

縁＝へり

各各が洗濯物に噛み付いて皆迅しく朝を離れり

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めざめればまくらに刺さる木の葉髪どちらからともなく笑いたり

変わってる？待ち受け画面は我が夫慕う気持は今も変わらず

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酔ったのかワインに浮ぶ茜い月ちりばむ星も天を渦巻く

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物言わずそっと袖引き振り向くと愛しく語るは小さな瞳

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良き個性頑固な粘りの大和芋　頑固な息子も難ありも良し

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艶光る娘の宝は泥団子　だれのがおおきい？だれのがかたい？

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この先も予定調和であることを疑いもせぬおとうとの痣

なんとなく悲しくなると紫の夜を背負って腹這いになる

横浜に待つ男いてジャカルタに待つ女いて完璧な恋

妹の汗に湿った前髪が台風のくる兆しとなって

一定のリズムで動く心臓に八分音符をとり入れてみる

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檜原の道が描く曲線は体が覚えた今でもきっと

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誰が来て生けていったか事務室の机に薔薇の花束一つ

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二学期は四回だけで試験する高三授業の日程苦し

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暑き日にＹシャツ・ネクタイ・スーツ着てリーマンは乗る満員電車に

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消すことのできぬ記憶があることの辛きことなど友は語りぬ

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にばんめのおとうとだっていったでしょアハ・オエ・フェイイあら、やいてるの

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去り際にぶつけた脛の血の色が紫に黄になり癒えゆくを

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道綱母（みちつなのはは）と呼ばれるかなしみを自己存在の証明として

リンパ液体の中をめぐるうち隠した傷に出会つてしまふ

<後水尾　蜘蛛手>と打てばｗｅｂ上に綾なす言のあらはれ出でぬ

遥かなる兵どもの夢のあと水泳ニッポン体操ニッポン

くいしばり続けてきた歯　こんなにもゆるされているのに気づいてよ

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抜け落ちた髪の毛ぐらい幸せを取り逃がしてる残りはわずか

延々と螺旋階段続いてる　新たに段が生まれるみたいに

泣きぼくろ　目尻の皺に仕舞い込みいつでも笑顔「男はつらいよ」

湖に小石をひとつ投げ込んで立ち上がった君何かが変わった

ぴかぴかのワイングラスが倒れたら「ロマネコンティ」も血のようなシミ

キスケさん愛していると呟いてふとうつむけば十字路にいた

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選挙権あればどうすると十七歳（じゅうしち）の子に聞いてみる曲り角にて

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誕生日きたれば我に花束を買わんと思い花舗の前過ぐ

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診察台で「十四歳。」と答えている息子の顎の鋭角の線

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東京メトロ虎ノ門駅に降り立ちてダークスーツの列にまぎれる

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青空はむかむかするよまして木の深みどり　だから消火器噴射

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城西町二丁目三番十九号　古き手紙に母の筆跡

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核開発推進したる科学者の名前記せり少年図鑑

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追い出されたその後の鬼のことなどは語ることなく節分会過ぐ

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手短かに用のみ伝えんとしていしが風邪声なりき受話器のきみは

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じゃがいもが夜のシンクにころがりて暗がりにあり我を驚かす

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こみ上げる何もなき夏の終はりにはアラビアータの辛みに泣きぬ

恐きまで椅子・机整へられて聖域となる夕の教室

こうやって滅ぶのだろう　ナイフもて崩されてゆく白き大陸

朝もやの中で線路を踏み越えて十三歳のわたしに出逢う

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（ミラレス執政官は、いきなり胸ポケットから鼈甲色の鋭く光るものを取り出し、呪文を唱えながら西の山の銃身に向かって「えい！」と放った）

お城に来る床屋の不思議な魔法櫛よ　西の山の狙撃手に刺され

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旋律の底から深く痛ましく哀しみが届く“I'm　sorry，Mama”

おそらくは１２回目のわたくしをしたためている　青いインクで

夜明け前のこの風景がとても好き幻想的で異次元的で

幼き日盗みたいと自覚した小さきガラスの鹿の可憐さ

五家荘樅の木のつり橋渡り終え胸高鳴りて唾を飲み込む

ならず者のはりがみ風にあおられて千切れて荒野のくずとなりたる

ボーイらがざらざら捨てるかたつむり　螺旋はいのちのすがたって嘘

母二人の生見届けし故郷の川は静けき内海に入る

たゆたゆと液体静もる幾千本農薬倉庫の空気冷たし

泣きぼくろあたしぁここにあんのよと口の上のを指さして言う

母屋より離れし戸外の厠の戸開ければ大き蜘蛛の待ちゐる

ひとたちはいつのじだいも泣くのですひとは変わるというさびしさに

居間の水槽泳ぐ金魚たちが家族の幸せのシンボルだった頃

ラズベリーとチョレートクリームのしま模様春のケーキに心ときめく

狭き公舎の狭きベランダに飼われたるいちわのうさぎ名前はピョンコ

あやふやな心のままに生き来しが君に向かって今日弓を引く

雨雲が戻り来るのか低空を曲芸飛行するつばくらめ

大台を越えたと嘆くきみのため真紅の薔薇の花束贈る

残された左目にひかりあるうちに四季折々の花を撮りに行く

ス−ツケ−スはパンドラの箱ハネム−ン帰りのふたりは凭れて眠る

眠りいる重機に消されゆく山野造成地に青く月光は降る

忘れ行く歴史の真実城壁に不穏な風が渦巻いて吹く

解かれゆくいのちの神秘最先端科学の先の更なる迷路

浮游するほたる追いつつ僕達もやがて鬼籍に名を連ね行く

ドゴール空港で忽然と消えてしまいたるスーツケースの角の疵痕

風邪声のあなたに触れる額からとろりと燃えている唇へ

消極的消去消却消防署雲散霧消みんな好きです

城の街に来たりてみれば悄然とカフカ歩みし石畳あり

ふるさとはじゃがいものまち初夏の大地に白い花が広がる

図書館よりも美術部室に入り浸る国文科学生たりし日のあり

鬼の霍乱などといわれて三年に一回くらいぶっ倒れます

線路には石を置いてはいけません石を置くのは腐つた脳の上

書割の背景しょって歩いてる二年経っても変わらぬ場面

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この城差し上げます※婆は付きませんが亡霊が付いてきます

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ぬいぐるみ抱いて眠ることもなくかと言って君に抱かれることすら

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携帯のどこでも繋がる哀しみを覚えて深みにハマルひとり寝

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櫛になる君のゆびさき想いつつ君のゆびさき想い出しつつ

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のんこうの長次郎のと論じつつ海苔茶漬食ふこの楽茶碗

アラビアの空にかかれる三日月は乳香の香のするにあらずや

外に出でて蜻蛉薄に囲まれよ天井のなき教室もよし