老い初めの肌へと貰う化粧品無料であれば不思議の多し

やもめに男を宛がう村の畑(はた)に雷二つ落ち至りたり

唇の紅き人形胸元にふくらみあれや罪の深さよ

「世の中で俺しかお前を愛さない」その捨て台詞まだ捨てられず

胎内で聞いた鼓動に繋がって太鼓の音は眠りを誘う

着流しのギター侍波田陽区摩訶不思議なる顔は見飽きず

天国も地獄も常に側にありわが行く先はいづれになるや

マメ芝のケージの前で身じろがぬ少女を追うは閉店の声

恋をした男と女のはずなのに女は男の怪談に出る

母校にて作例として歌詠めば「老練ですね」と感心されて

見出しにて相変わらずの友に会う≪家元激高！花器投げつける!!≫

せんせいの酔歩の影を踏みあるく秋の夜わかれはわれだけのもの

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ワ行音わづかに浮かぶくちびるがをんなだからと言つて噤んだ

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潮騒をたそがれが濾過してしまふひとつのこゑがここへ滴る

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巻き爪の痛いまひるだ　けれど海老ピラフ作ってあげられるのだ

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長男は父を捨て次男は母を捨て三男は高台の墓を守らむ

マッチ箱揺籃ならむ檻ならむ　とかげ抜け出す須臾の間に

矛盾するできないことを命令する父哀れなリ生返事をする

八岳(はちがく)の山の骨ゆけ青雲よどこまでも高くどこまでも清く

(註:八岳=八ヶ岳のこと)

氷河のごとき表情を火焦(く)べてとんとんとんと銃殺刑に

**く(火へん+焦)の字が出てきませんので火焦で代用します。

孤を磨き判決を待つ秋の午後調停員の名前も知らず

おさなごの泣き声とジイジのお人柄廊下伝いに伝わりてきぬ

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ほんとうににせものなのかわからない いちばんおくでもまだわからない　

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歴代のすべての奴隷の幸せを全部あわせてやさしくシェイク

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｢急な雨だったとしても１本に人、入りすぎ｣(傘は言いたい)

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寿命分程度のビデオをとったから死ぬまで生きる要因はある

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鋼鉄のメダルをもらい堂々と猫背で生きる権利をもらう

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美しき誤算もありぬ砂浜に埋めた手紙風となりたり

バス停に下りてゆけば折々の風に乗り来る木琴の音

万歩計いつかしまわれ時折はメトロノームのごとく歩めり

順境に俳句は強し逆境に短歌は強しむべなるかなと

混沌の雨が降ります紫陽花に七変化とふ浮名は楽し

アレルギーの子は毎日薬塗る難しい名も覚えてしまい

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夏の色小麦色の肌まだ残る秋の気配の足音聞いて

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そのむかし頼っただろう父の手を思う　持ち手の太い黒い傘

年毎に夏が辛いとあさがおの朝のあること祈りにも似て

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ぼろぼろな駝鳥憂ひて涼しげなキリン喜ぶ詩人かや吾は

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子が走りビデオカメラを抱へたる親も走れる　運動会なり

玉鋼（たまはがね）うたれしのちに長船の美（は）しき姿の刀となりぬ

妻となる前世（まへ）のけぶれるははきぐさ　　筑紫磐井
　　　　
　妻となる前世（まへ）のけぶれるＷからＳに変はりしイニシャルもよし

みづの色は水色にあらずそらいろは空の色なり何ぞ不可思議

新しき畳を入れてふと思ふ松の廊下の畳のことを

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受動的人生だから抱き枕なんて存在さえしてないし

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クリックすれば虹えがくごとネットの友へ旨き秋茄子とどかぬものか

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冗談といえなくもないマゼンダに片寄ったままの免許証写真

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絶唱する彼岸の夜の虫にしてこの生（よ）をいやに澄みわたらしにけり

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淋しさを独りで堪へるこの夜さは海老寝のままにただ息をして

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追伸は名前のあとに小さめに心開いてささやくやうに

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にせさつが使はれましたアナウンスにせもの並ぶ仲見世通り

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このあさがおとうとにくるそれだけのやくそくでいいふゆはもうそこ

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憮然たる表情にして繋がれし奴隷の記録見つつ何喰ふ

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なくならず変わらないものキリンさえ夢を見ている幼いころの

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一階の廊下吹き抜ける風そして空が好きだと笑う君も

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折り畳み傘と日傘と雨傘と数へてみたき今の女子寮

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行くあてのない爪先で転がした缶から流れだす熱帯夜

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文机にコトリと置いた掌に包めるほどの旧い機械を

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銀色のボウルの中を夕闇が浸したらよく練りまぜる事。

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お仕置きにも作法のありて家元が愛猫の頸に巻く銀の鈴

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まわりまわるアンリ・マティスのダンスの環　なにが最後に残るのだろう

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或る夜の底に吉増剛造は詩の沸点を高め尽くして

辛ければ海老の姿勢をとって寝るぎっくり腰もこれで治した

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追憶の中のあなたの春先のめまい　すき間はうめるだけです

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文字と共にそれも消えた感熱紙のうすむらさきの雲の彼方へ

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機械ではないものとして揺れてゐた天まで熟れる秋の時間に

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くるくると回る握りの甘海老の桃色よりもウブな僕達

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酢酸にアギトの奥を侵されて疼く痛みは潮騒のよう

熱がある日々上がったり下がったり君に夢中の僕熱がある

機械式アンティークウォッチした腕は最新鋭のマニピュレーター

昨日まで地獄のように暑かった練兵場に秋雨そぼふる

地団駄流操兎家元超グルメお台場温泉殺人事件

ネットチャットの絵文字のごとき君なりき　(^_^)　!(^^)!　m(_ _)m　(^_^)/~　どう読みゃいいの

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ここにある黄色い水に手を浸す　河かお前はおまえは！！（絶唱）

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水の上あんな顔して見ているよ溺れるってのもへへふへふふ

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大鋸屑に海老の団体ねかしつけ食欲きざす夜やりすごす

ひとつだけ君にきいてもいいですか　夢をどこまで追いかけますか

夜たけてをんなの膝はさしむかふいちにんの膝を撫でやまなくに

潮騒のとどろかぬ村に人ねむりわれは河原に菊石ひろふ

向日葵の黄熱（くわうねつ）といふにあらざれどかのひとの一世はげしかりけり

形容詞を吸ふ機械なり日は落ちて吸ひこみ口をわが歌に当つ

練り薬ぬらむとしつつわが背中わが手のおよばざる場所にある

家元の子として弔辞のべにけり外はただるるごとき炎天

いつせいにダンスホールゆ出できたる人のまなこは金のみすまる

濃淡をなして緋色に染まりゆく雲を破りてあらはるるもの

千の穴ひらききるとき汗ひえて映画の中の歩兵となりつ

解くための帯より持たぬけものにて花咲けば花血（ちい）降れば血（ちい）

王子にはなれないけれど奴隷ならなってもいいとゆうちゃんは言う

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生理箱に入るるを羞じて溺愛の倅（こ）は入れずなり自慰の紙かくす

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ビニールの傘越しに見るローソンの雨に滲んだ青の淋しさ

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ばらばらのステップだけど許してよ　ダンスはあんまり得意じゃないの

「痛ければ左手あげてくださいね」笑った歯科医は我慢を促す

柔らかいあのひと間違いないくらい「おんなのこ」だって思いました

３年前拾った名無しの貝がらから聞こえたどこかの遠い潮騒

知恵熱が出たのは誰のせいだろか、そこで知らないフリしてるキミ。

ぜんまいを巻いてください　動かない機械仕掛けのかたい心臓

朝練の時間は厳守　裏門はずっと開けていてあげるから

もうここはネヴァーランド　ピーター・パン流三代目家元は言う

閉店後ビデオショップの片隅で光る婚約(破棄済み)指輪

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放たれた言葉はときにあやふやで捨て台詞さへ詩のやうになる

たぶん雪。ふたり口数少なめに太鼓の音をとほく聞く夜は

たんぽぽの綿毛の飛んできたるのみ到着時刻もはるかに過ぎて

きのふまで咲いてゐた花　天国はひとりぼつちのしづかなこころ

人の世のひと日をビデオいく度も塔を崩せりふたつの塔を

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ゆさはりの憂き世にひとよとどまりてうたひて去りぬゴンドラの唄

さう、おれも半球は夜　ぬばたまの朝に眩しく片目瞑れば

恋したり絶望したり金のメダル欲るなど病めば購ふ秘薬

ひと肌にぬるく醒めれば世界は雨赤い鉄塔とほくけぶれる

おほぞらを赤く染めたる蜜月の終はり　夕陽は鋼となりぬ

捨て台詞吐くほど怒るおろおろとする僕と子は顔色を見る

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遠くから太鼓の音が静けさの中に聞こえる子守の響きよ

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今はただ泣く機械でいたいおしみなく水を湧かせる泉でいたい

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収穫の葡萄をしぼるおんなたち腰に構えた素敵なこぶし

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恋姫の呪いの歌は潮騒にまぎれて船に届かなかった

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熱量の多い食事を無意識に選びとる　まだ闘っている

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練乳にまみれて泳ぐかわいそうな苺たっぷりつぶしてあげる

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チャンネルを変えた途端に家元が金子を持ってふふと笑った

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ソシアル・ダンス・クラブの床に刻まれた無数の（（（が何かを示す

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標的は何だっていい端的に言えば「濃紺のスカート」でさえ

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いくつかの映画の記憶混ぜ合わせ視界のなかの解を求める

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すがしきは未明の駅舎　血族を乗せた列車が今し発ちゆく

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２４：０５奇跡は訪れず遠くなりゆくプラットホーム

若者が夏の休暇で故郷(ふるさと)に帰る日中(ひなか)の鈍行列車

いつまでも父に背中を向けている家族写真のなかの私は

まだ房と呼べぬくらいに曖昧に膨らみて子の乳房かなしき

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揺らいだり消えたりしないにせものの炎をもとめやまざるこころ

何にでも屹度なれるとさゝやかれ何処へ行つても自由の奴隷

失くしたる傘のぜんぶが死ぬときに迎へにきたらこはいだらうな

映画「さゞなみ」のビデオを繰り返し繰り返し見た夏があつたよ

鉄鋼の工場を見に行つたのは三年生のときであつくて、

水色にこんがらがつて水色のくるまに乗つて水をみてゐた

古書店の西行伝に鉛筆で書き込んであるイニシャルはG

雷がこはい蚯蚓が台風が愛蘭（あいるらんど）の国歌がこはい

きみどりにこんがらがつて胸元に揺らしてゐたよけると十字架

高台にゐたとき風が吹いてゐて夏でもなくて秋ぢやなかつた

人々をときどき空を　たぶんもう十年以上とかげをみない。

漢文の入門として学ばせる（学ばせられる）矛盾のことを

八かける八は六十四。かける八は五百と十二。生きよう。

出かけるよと頭撫でても追いかけて来るでもなくて尻尾をパタリ

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にせものと思われていても腹が立たぬこの気持ちは本物らしい

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わたくしの坩堝のはずの擂り鉢を滑り落ちてく胡麻粒ひとつ

安心して見てられるのが特徴の母の時代の恋愛シネマ

乱気流の中であまやかに死を思えど見送りのない旅立ちだった

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細長くちぎって火中に投げ込んだ蜜柑の皮が　じく　と爛れ

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ぢりぢりと巻き上げてゆくオルゴールの一番もろい場所を壊しに

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極彩の夏の尾を踏む逃がしてはいけないものが確かにあるから

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世間で言う旬を過ぎて素になれた甘えられる可愛い女

混沌と殺伐の世をたれ創り政治？経済？我も一因？

追いすがる右手を払う　僕はもう前しか見ないことにしたんだ

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にせものの街の向こうにかかる虹　その向こうにもほんものは無い

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この臍を雷様にあげましょう僕が人ではなくなるために

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七つ八つ未来の自分想像外チョークの輪を蹴りグーパーグーパー

一年後携帯メールの再会はもう心踊るものはなし

曖昧な速度で人が落ちてくる影の向こうに春があります

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明日から類人猿になるためにサバンナ走る足があるから

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物置の石油ストーブ掃除する去年は父の仕事だったな

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捨て台詞いちどだけ吐きこの昏き地上をやつと綱渡りする

身を反らす虹の絶巓太鼓腹すなはちキミのすべり台かな

まなかひに秋めく君がよぎるときわれはおもへり着衣の美神、と

天国の空気は薄くくるしくてただゆふすげの花咲きみだる

お祭りの太鼓の音に誘われて子供みたいな君とつなぐ手

着陸に心はずませ離陸には心切なく君との別れ

帰国した君といられる限られた日々は私の幸せ天国

「今日昼は芝るぞ」君に誘われて食べるカレーは芝生の上で

君の手を握るか耳をふさごうか怪談みながら手をもてあそぶ

真夜中のミニストップで待ち合わせアイス頬張り君との逢瀬

望むのは君の幸せなんてウソ飛行機雲はまだ伸びていく

どちらかといったらモダンバレエよりモダンダンスの息づかいへと

引き出物抱えて歩く上野駅君と私の空気は微妙

胃の中に石をつめこまれたかのごとくずしりと重い君のひとこと

大好きな君といっしょに遊園地ふたりじゃないけどドキドキ止まず

遠いならそこで足踏みしていれば波がはこぶよ君らも僕らも
（作家　中島らもさんを偲んで詠む）

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待合室の行数列（マトリックス）を司る杉原重子さんのおはなし

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すずらんの花がたわわに咲いていた家族のように（かぞくのように）

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正確にもののかたちをなぞるとき夜はなるべく濃いほうがいい

煮詰めれば二時間ほどの映画にもならない恋の、それでも恋は

高台の一番上から駆け下りる勢いで君に告げたいよ　「好き」

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ステージを降りねば永遠に指揮棒のきみの魔法にかかりたるまま

大空に自由にさえずる声のする小鳥遊くんてそんな子だよね

ほおづえをついてコーヒー待っているあと何分かお湯が沸くまで

たくさんの私がひしめきあっている私の心のロビーの中に

とりたての免許がうれしい週末は海をめざして冬のドライブ

乱暴にことばを切るのはいつだってつづきをあなたに言わせたいから

あさがおに拳を入れて吹くきみのペールギュントの「朝」のまぶしさ

日曜のキリンレモンを飲む夜は家に帰って怒られるはず

教室で見てる廊下のシルエット魔王がリスに怒られている

ネムノキの下に指輪が埋まったのイエロー・サファイヤ僕が埋めたの

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揚々と拡げた羽根の４番目が欠け抜けている木琴のおと

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姉弟はお着替えごっこ弟は髪まで縛られその気になって

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天国と地獄行きの案内のアトラクションに悩む子がいる

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歯磨きを済まして待っているような男にあげるものなどないです。

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色ペンで交換日記に詰め込んだ魔法は今も有効ですか？

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この恋に潜むリスクは一晩でクスリになった。麻が付く方の。

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ブランチのイカ墨パスタで真っ黒になった胃腸をなで合う正午。

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分類する　「こんな時代もあったねといつか笑って見れるビデオ」と

馬鹿らしいほど青い空　さよならの奴隷にだけはならないつもり

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甘皮をオレンジウッドスティックで押す　噛み癖はもうありません

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にせものも嘘もわたしを満たすならおんなじ　だけど喉が痛いの

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山門に立ち尽くしたる一対の風神雷神いづれぞ強き