われはいまやうやう歌に出会ひたり長生きするゆゑ希望は捨てず

ピーナッツを大皿いっぱい食い尽くす　噴出すべし罪びとの血は

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けだものの矜持うつくし横たわるはつかねずみに後ろ傷なく

冷える膝そのままにするモザイクが画面半ばを占めるころには

「連合」の字面がたぐる古傷とオイルの匂い、真夜のファミレス

恋人の愛嬌・愛想も尽き果てて鉄筋長屋に芽吹くじゃがいも

水色の水筒ひとつお花見の騒ぎの中から転がって出る

イニシャルがＳで始まる三人が家族ごっこを続ける夕べ

雷が鳴るまで離れぬ鼈と鳴るから離れぬ私のどちらの生き血をご所望ですか

刻みたる文字ごと空へ投げ捨てむ胸元に光る銀のプレート

青空と海とが見える高台でヘルマンやしきはしずかに朽ちる

天国への片道切符を放り投げ刹那の痛みにわが身を委ぬ

高台に逃げる暇などないだらう。中尾彬のなまづ面念（も）ふ

病室の窓辺で林檎の皮剥けば青すぎる芝も巻きついてくる

ネットより癒されてゆく言の葉は魔法の如くあまたあふれて

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膿盆にそとのせらるる無花果が絶叫のごとかすか声あぐ

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私は罪人ですか　ただただに君に溺れる溺れそうです

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曖昧な男を愛す夢を見て心乱れし己が曖昧

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爛漫のセンター街に夜ごとまた未知原人の類あらわれむ

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幟旗鬢付け油香り寄す両国の夜ことに艶めく

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「東京の墓標のようだ」君の言ふヒルズが見える遠く近くに

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幸せが列なし向かふ九段坂　この幸せよ永久に続けよ

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簡潔に裸足のあしで駆けあがり猫はバルコニーよりわれを見下ろす

指さきの傷がゆるぶる夕つかた男は犬歯にガーゼを裂けり

リストにはゴーダチーズ（合田千鶴）も記されてわれはよろこぶあぢよかるべし

　　ありがとう、高瀬さん。
ネットにて折々語るうす青きインクの文字や眼鏡のことや

絶唱のような五月のひかりなり胸にひとりの名を叫ぶとき

ひと壜の薬液に在る魚の眼に　溺るるごとく夕闇は来る

わたくしと秘密の箱を開ける時、聞こえてくるのあのオルゴール

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曖昧なる応えを返すあきらかにわれに向けくる青き敵意に

「比類なき美しさ」とう帯古び書架に眠れる立原正秋

胡麻油ほのかに匂う夕路地やかの日の母がわれを呼びいる

黄金に彩られたる秋の日の麦の穂先よ光の糸よ

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必然の天の裸足の足跡も黒きテラスに消え去りにけり

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天才の家元なれば感情も活けてしまって水の微笑み

金メダルに日の丸あがる感動と強制されることへの矛盾

捨て台詞拾って洗って乾かしてまた捨てる日を待って六年

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せやからぁ、球が小さい球技は苦手やっていうたやーん。

緑川蘭子のつもりやったのにでんでん太鼓と言いやがったな

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めくれゆく案内板をひたすらに見る待ち人もなき到着ロビー

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天国にもしもいけたら蜘蛛の糸垂らしてそして切ってあげるわ

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壊される芝居小屋にて最後の稽古最後の台詞　「おやすみ、スプーン」

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洋風の寝具に到るぼくたちは安心と二度くり返した

ラ行との戦い終わりサ行との戦いなかば空を云えない

春が来た海の底にも　棲む者の歓びのダンス　波もさざめく

戦いの坩堝と化せる中近の幼き子らの瞳の暗し

降り止まぬハワイの雨に驚きぬ地球の悩みか戸惑いて居り

紫と赤青あさがお裏庭に朝毎数えし幼き日の顕つ

アフリカのサバンナに立つ親子キリンサハリバスにも微動だにせず

カネオヘの平等院回廊に日本歌曲の友の声満つ

天ぷらは何といっても車海老の肉の厚きをハワイで愛でる

わが脊より大きセパードに追われたるあの日の恐れ今に消ざる

うつすらとかきたる汗に目覚むれば一番太鼓とほく聞こゆる

「サ行」にて「終着駅」を歌ひたる奥村ちよの鎖骨のくぼみ

アメリカの学者日本で買い物しにせものこそが市民の知恵とう

エジプトの奴隷となりしイスラエルの救出助けしモーゼの偉業

やはらかに春を迎えし公園の幼女の肌にひかり滑りて

日本の蛇の目傘は風流よ姿美し雨音も良し

若き日に教室風景撮影のビデオに少し誇りを持てり

ゴンドラの船頭櫂を操りぬ鋼の腕歌声高らに

水色のワルツ懐かし若き日の高木東六ピアノの音冴ゆ

イニシアル彫られし手製の皮鞄いずくへ行くも吾れと離れず

午前２時扉を開けるその時にガタリと動くロビーの自販

「つ」で太鼓打てばどこまで悲しいかひさびさに読む中原中也

http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/9392/?

紺色のリボンの帽子が流されてからというもの目ざとくなりぬ

＜雷＞に草の冠つけたなら＜蕾＞かぁ　弥生ゆっくりと往く

お日さまのペンダントトップ胸元に揺れる日はそっとしておいてくれる？

高台に建つマンションの草臥れた畳に陽だまり　私はバター

両の手で死にかけたとかげ庇い持つ君を迎えた生ぬるい宵

「むちゃ矛盾！」そこだけ漢字の音で言う君の怒りは何色ですか？

なにがなんだか我を失くしかけている。とろんとわたし半熟卵

http://homepage3.nifty.com/flat_m3/

ひとつだけ判らないことそのひとの犬のふぐりを恐れしことは

http://homepage3.nifty.com/masaki-maho/

盛り合わせチーズはなんで少ないのいつもぼくたち取り合いになる

http://homepage3.nifty.com/masaki-maho/

キーボード叩くあなたに寄り添ってわたしはあなたの圏外にいる

http://homepage3.nifty.com/masaki-maho/

本当は姫と呼びたい人がいるにぎやかな部屋そっと離れて

http://homepage3.nifty.com/masaki-maho/

　　　もうおしまひ、ですね。

帰るまへ髪は乱れてゐないかとたづねる癖もいとほしかつた

http://tadarei.com/

血痕の乾く春昼　父の手にたしか印度の名残りありたる　

天井のねずみの数の五、六と父の性格受け継ぐ夜明け

館山で二日で取ったダイビングの免許だけでも子は産めました

http://homepage2.nifty.com/mizusu/

遊星になれないセドナそうやって何も変わらず夜は明けてく

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

沸々と寒暖計が茹でられて食卓に飾る赤いデイジイ

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

繊細なカレイドスコープ見るような大和ホテルのロビーで５時に

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

医師免許保管されてる密室で盗み見してる本籍地（千葉！）　

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

Ｙだけが無性生殖しはじめてカリグラフィの文字は乱れる

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

いい人なだけではもの足りないから蜜柑のような男を捨てた

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

彼ひとり『鉄道員』を選んでた　オルゴール彫る美術室、午後

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

百色（ももいろ）に彩る花のかたびらは土に還して（与えて、捨てて）

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

骨太のリバーシブルの裸足なら作れるだろうクラインの壺

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

聞き捨てのならない犬を転がして歯形の痕にかけるハチミツ

http://members.at.infoseek.co.jp/tamayu_ra69/

真実と感じた恋に身を投げる覚悟が欲しくて人魚姫読む

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/2104/

遠く住む息子への思いは弾けるグレイ修学旅行のオルゴール奏でる

手と足の爪の伸びゆくはやさほど齟齬は生まれぬ裸足を見せて

http://8555.teacup.com/planche/bbs

裸足ではどうにもならない。ガリバーがのそのそ歩むポリスという砂

ブリトニー「Toxic」の目にいざなわれ犬とウェーブ４月のついたち

嘘なんですそこから始めるものがたりチーズに日の丸刺してみながら

キスをする時にそうっと息を吸うような安心感で生きたい

http://www.h7.dion.ne.jp/~hinauta/

木琴のほごれしごとき橋さげて演なき終演しづかなる谷

子育ての思い出の日々詰まってる玉手箱の紐とく彩の国

行く先のきっともうないわれの目に歩みだすさまの聖像凝る

罠のなか半身のこしてごきぶり去る凶しきうたの句割れのごとく

あの人の蜜柑のような肌に触れ　募る想いは春の面影

http://mini.pussycat.jp/

ファンヒーターの吹き出し口にひしめく裸足暖冬なれど団欒の夜に

怪談の途中にひとり寝入れるを才能として朝風呂つかる

お空には遊園地などないのだと知らされてただ俯いていた

http://www.tcp-ip.or.jp/~shibatae/index.htm

愛情や悲しみなんて人生に軽ーく添える彩り程度さ。

http://www11.ocn.ne.jp/~speed/

わすれたい事がある時白いすじ剥き切るために買う冬蜜柑

降る雨の　彩化（サイケ）いろどり　踊る色　光　虹色　風に溶けだせ

オルゴール　沈殿し思い出の海　水流れ萎え声よ　時間の海に

尾形くんあなたが隠し持っている公認サディスト免許を出しな

http://replicaprince.easter.ne.jp/

新しい罰はまだなの？　耳鳴りも乱視も君にももう慣れたから

http://replicaprince.easter.ne.jp/

不意打ちのように私に満ちる虹わたしは裸足のあなたと居たい

犬は皆幸せでなければならぬとや　狂信者めく自称犬好き

オルゴールがとぎれるやうなあしどりで渡り来し人が背後につきぬ

http://www.geocities.jp/kogawa96/

2004年3月26日、六本木ヒルズ森タワーの回転ドアに挟まれ、溝川涼ちゃん（６）が死亡。

天国のとびらが回転ドアでないことを涼ちゃんのために祈る

http://www.mnet.ne.jp/~miusin/

雨の夜、芝生の上に寝ころんで見えない星をかぞえつづけた

http://www.mnet.ne.jp/~miusin/

仲見世を行ったり来たり四月馬鹿でんでん太鼓遠く聞こえる

http://blog.livedoor.jp/tantan234/

肌の上すべる水滴自慢する父と入りし木桶のお風呂

http://hull.jugem.cc/

無防備はおんなの武器だ　冷え切ったトカレフのような裸足のつまさき

午後の日のしろき光のなかにゐてとかげは徐々に恐竜となる

理不尽も矛盾も罪ものみこんで春三月の日ざしやわらか

八百万（やおろづ）の神よ言祝ぎたまへかし花咲き満つる今朝のめざめを

桃色は枝垂桜の捨て台詞　繁く淫らに舞い散れば、春

営業に疲れて眠る父親の太鼓っ腹に犬が寝そべる

思い出に必死に紙やすりをかけてつやがでるまで磨けばいいさ

読み返す時に綺麗でいたいから、日記に真実なんて書かない

うるさいな。リスクは背負えばいいでしょ？何のためあると思ってるの？背中

子狸は檸檬に化けたつもりだがこりゃどう見ても蜜柑だよな

出目金に名前をつけて呼ぶ男（きみに的屋は無理かもしれず）

すみません新月は埋めました　望月はまう海馬にゐないし

http://homepage1.nifty.com/HANTAMA/

鳴神の雷（らい）と名乗ればとよもしてわたしはここにをりますあなた

胸元がゆるびほとびれ羅（うすもの）を滑らせながら全裸は立てり

晩秋の高台院の夜鏡に恋を落としてのちの抜け殻

スリット・タンのとかげに罪はないものを二枚舌とふことばをきみに

永遠に落ちつづけゐる月読みの月の矛盾を纏ふはをとこ

「もののふ」と声に呼ばへばわたくしの八十のをとめの滾つ血が「応！」

いささゑの笑酒（ゑぐし）高笑（たかゑ）の君ながらゑわらふ暗き表情を見す

大いなる川の流れに刻まれて磨かれ時の詞たれ　歌

共寝の「ぬ」独り寝の「いぬ」と散らしてはをんなもすなる日記のあそび

滅ぶ美のリスク伴ひなほ伸ばすかひなの先のくるほしき真緋（あけ）

とかげのとかげによるとかげのためのしつぽきりと薔薇を折る千利休

金色の渚に返す波をゆく大きな白い犬を見てゐた

http://www2.plala.or.jp/barrack/milky/index.html

ためらひぬワイン開けても何故かしら輸入チーズの白い黴とか

http://www2.plala.or.jp/barrack/milky/index.html

圏外の携帯電話に届かざる思ひ散り散り闇に浮遊す

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手探りに進む八幡の藪知らずゴールに見えてまたも振り出し

穴は胃にあけるものではありませんアスファルトうえあなたは笑う

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遠く高く歌い上げたしこの春の鳥を一樹をそしてこころを

申の春なれや諏訪びとの列なして神の御柱（みはしら）唄いつつ曳く

未完なることうつくしくおそろしく月下に仰ぐ聖家族教会（サグラダ・ファミリア）

「埋み火」を引くとたどれる『広辞苑』祖父の形見の天眼鏡に

ついに太鼓が聞えはじめて遅れたる者らはそこに両膝を折る

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良薬も度を過ぎたれば毒なるにおのれのいのち見ざる人あり

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なめくじり・毛虫・ごきぶり・どぶねずみ・百足・蜘蛛・蛇・私も命　

ばらばらの心あつめてモザイクに夜の歯磨きどこで終ろう

連綿と男と女の与太話愛想尽かしに死ぬの生きるの

愛嬌も度胸もなくて逃げ場所を厨に求め葱きざみをり

暗緑を着てくれなゐに逢ひにゆく陽ざしあまねきしたに咳して

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感動の濃度を薄めないようにシャッターを切る醍醐の桜

アスファルトにも捨て台詞あるのかな言いたいときとかありそうだよね

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あの夏に冒険したこといつまでも太鼓のように響く勲章

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地平線着替えて僕らは先へ行く世界に触れに未来の中へ

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天国のフラクタル化をすすめてる天使が織った虹のミサンガ

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国といふつひに寂しきイメージを空にひらきて「天国」と呼ぶ

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この痛さ男に我慢はさせられぬ出産終へし娘と笑ふ

わがうちの「をんな」が時に窒息す「電話は五分」と決められてより

潮騒に耳がやうやくなれた頃旅の終はりが明日にせまる

逸りたる気持ちを和音に閉じ込めてソナタ「熱情｣第二楽章

指貫をはずせと花が誘うので羽二重餅を作ってみようか

着色料入りの入浴剤入りのバスタブに入り温められて

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ご近所の犬の名前は天国といふ。天国がつながれてゐる

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公園の芝生が心地よい真昼。悲劇は何度あつたのだらう

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じわじわと冒されてゆくアナタ熱 毒が薬になる日はくるの

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芝、脛を輝かしめてゐる朝を踏みつつ遠く過ぎたる者よ

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みちびかれつつ冷えてゆくくちづけは怪談牡丹灯籠の露

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　　山川晃史へ

ドミニオン、あるいは自治領とも呼べり若き日を輝やかにかすめて

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北大路辺りを夫婦で散歩せし上野瞭氏の姿もう亡い

日の暮のモスクモザイクアラベスク父を異教のひとりとみなす

父と娘は不連続なる首飾り　真珠は真珠私は私

愛嬌のあふるる服を持たずして父を拒みし初夏のことなど

山頂の駅に着くまでゴンドラは揺れるだらうがそれだけのこと

望まないのならさう言へ、黄昏の酢を湛へたる皿の前にて

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じんたいのほの暗がりに吊るされて胃は春の日を運ばれてゆく

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遊ばせてあげよう淡き火を焚いて影が揺らめくそのうしろなら

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「数学得意だったでしょ？」は褒め言葉では決してなかった初恋

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趣味の項「土いじり」と書く履歴書を携え歩く母の求職

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其の名前二度とは口にいたしませぬそれで世界が保たれるのなら

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無造作に脱ぎ捨てた朱のブルゾン　そのぬくもりがこの世の全て

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ひさしぶりの真夜中だから握手する半分砂にほどけた腕と

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百つぶの眠り薬のねむたさでバナナ・ボートが眉毛をはこぶ

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やや低くとどまる月に鳥肌が浮いて再入力のパスワード

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厳寒の上野、木立の影は冴えことばがＫを追いつめてゆく

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古の貴人が遊びし着到和歌「題詠マラソン」に列する誉れ

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青空に映える黄色いシーソーは多分何かの比喩だと思う

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イカロスという鳥、アルジャーノンというねずみ　どちらがさみしい名前

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天国行片道切符（ワンウェイチケット）予約する「ジパング」で行く銀河鉄道

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公園につづく路上に埋められたモザイクの樹をたどって歩く

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連写するシャッターの音（あおぞらを撃つ音）街は硝煙くさい

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末黒野を盲導犬の人と往く隣の芝はもっと焦げてる

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食べかけのチーズを保存しておいていざってときにつきつけてやる

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