あこがれのドーナツショップの店員にマクドナルドで声かけられた

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雪女は美人だけれど海女さんがきれいだという話は聞かぬ

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よわたりが下手な私の渡世とはいつか土星に行くようなもの

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神様に祈りましょうよ爆弾を未来に向けて落とすのだから

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奪ったり奪われたりして人間はそれでもせまい地球にあふれ

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自分でもよくわからない歌なんて夢みるように忘れてしまえ

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線路の上に身体を置いたことがある夏の野はるか雲が湧いてた

精一杯走つたよね　ちよつとだけつまづいたよね　麦茶をどうぞ

十月のことばのはらに落ちている縞の靴下　渡世って何

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「恋は病」　サナトリウムを抜け出しぬひとの音せぬそのあかつきに

夢んなかのあたしのみる夢んなかのあたしもウィンクができない

眠らない資格を取って君の目の連れていかれるところを見たい

呼ばれないままの名前は座席から完璧な目で見つめ返した

暖かい色素を埋め込むコツコツと早く来てよ私の部屋に

さよならと大きい背中にしがみつく窓にぶつかる子犬のように

手をつなぐ存在だけで害なのね消えてなくなれこっぱみじん

痒いとう言葉発せぬ犬ゆえに足掻く癖の痛ましき日々

今は昔大学の庭に生まれゐしキャラメルママはいまや多数派

ホークスの三番を打つ強打者の名を呼んでみる井口資仁

助手席に君の香りを確かめて少し遠くに出かけてみよう

君を待つ夕暮れの街暮れなずみいつしか夢に食われ始めむ

胸元を開いてなせしあれこれはおぼろおぼろのゆめとなりゆく

クドカンは渡世の風をひやらひやらと軽くかはしてんふんふ笑ふ

たぶんか、と呟く女(ひと)よ多文化と多分化の間に眠る獅子あり

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蛇の裔たらむぼくらに挟まれて鶫(つぐみ)の腹に沈むトリュフは

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秋霖をするどく弾くぼくたちに視野狭窄の夜明けは届く

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雲　とおすぎて　燕たち　秋煮る鍋に　円を書きつつ

昼　まどろみて　夢みてし　予言の夢を　今無き家を

市つぁんが金髪になる御時世になっちまったよ「やな渡世だね」

掃除機に何か詰まって神様に祈ったことをすべて取り消す

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画家志望だった男の描いた円なぞれば指に残るぎざぎざ

冷蔵庫の扉をあける　仏壇はいつも暗くてどこか冷たい

どうでもいい自慢のひとつその昔「敵中横断三百里」を読んだ

饒舌の東浩紀を対岸に置き宴卓は深夜の大河

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煮出さるる麦茶の匂ふゆふまぐれ蜻蛉(とんぼ)を千切る少年たりき

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青年の眠りに光る唇はサナトリウムゆ去るとき思ふ

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喉鳴らし麦茶を飲み干す夏の子の耳の後ろに小さな切り傷

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日常は少しの色で運ばれるサナトリウムの朝から朝まで

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アクリルの箱にきっちり詰め込まれ憎悪はそっと冷蔵庫の奥

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ほんとうの敵はこんな小者じゃないと言い聞かせつつ職員室へ

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採れたての南瓜がハウスにくろぐろと積み上げられて出荷を待ち居り

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ピーマンが嫌いだなんていつまでも小さな男の子みたいだね君

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「夢も見ずただただ眠るだけのこと」と小さな叔母は５歳で逝きたり

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捨てられたみたいな旧河川に沿う小道にネジバナ今年も咲きおり

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ＯＬ風お姉さんに呼び止められて「あなたは変はる」と予言を受けぬ

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日本歌人クラブ創立五五周年記念大会開かる

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たばかりて人殺めしや我が庭に今年ひっそり彼岸花開く

奪うのも奪われるのもじゃんけんで勝負がついた頃があったね

三歳の私が今でもこっそりと父の夢には出ているらしい

こんな時手をにぎってて欲しいのがたぶん一番好きな人だね

ちび蛇は悲しくなると丸まって蚊取り線香みたいに眠る

野良猫と家つき猫の会合は道路予定地にて二十二時

テーブルに置かれたままの朝刊のような貴方を何処から開く

南瓜や胡瓜を先触れにして練り歩く百鬼夜行をいちどだけ見た

「そんなにも俺が嫌ひか？」少年が振りかへる空　その夏の青

死してなほ饒舌な奴はだれだらう「現代短歌大事典」閉づ

欲望に沿ふごと置かれし手のひらのしとど濡れをる新緑の夜

南蛮のお船に乗りたい月の船　信長どのやぱあどれ様と

祈るごとくれなゐの点滅はあり救急車夜の橋を渡る

夕食の献立よりも象のこと真剣に今考えている

夏　ほろびたり　埋葬虫の　屍一つ　弔いの歌

空　あおすぎて　少年は　千本ノックに鬱晴らさまじ

見覚えのある文字の癖エアメール開けば海が広がっていく

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川沿ひを走つても走つても追ひかけまはすポルノ雑誌の少女の視線

鬼となれ　余剰人員贅肉のごと切り落とせまづ役員たちを

あの女に夫がなくてわたくしに明日などなければ結ばれていた

雅蘭童（がらんどう）といふ名の喫茶店なりきあるいはさうでもないかもしれず

直実に殺されながら敦盛がその肩越しに見た海と空

鍋釜さげて、と母たのしげに語りだす苦労が苦労に聞こえぬ話

クセノフォンとつぶやいてゐる　もうそれが何の意味かも忘れたままで

練兵場につづく木陰の物語母より聞きし祖母の初恋

ゆきあひの空を仰げばひた走るすずしきさみづゆふぐれは見ゆ

蒟蒻を十二等分にちぎり捨て芽が出た数だけ妻をめといし

パンの耳奪ひあふ鯉たちのざざざざ顎鬚の擦れる音す

異常異常異常異常異常異常異常異常異常気象だ

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岩にしみ入る蝉の句のやうに朝焼る空つて素敵ですよ

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日本列島の晩夏とらんぽりん効果のごと気温乱高下

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限定の言葉に踊りデパ地下を目指して走る食欲の秋

うっすらと心につきし贅肉がちいさな刺を消化していく

一夜干し　賞味期限はあしたまで明日へ持ち越す決断の時

さくさくととんかつきざむ包丁が合いの手いれる母のはなうた

39番・お題「贅肉」　なんだそりやあこのあたしへの挑戦状かい？

明日世界が終はつたとしてもわたしにはつづきが読みたい小説がある

つゆだくの恋でしたわね。とんかつをあの夜一緒にいただきましたね。

遺伝子に従ひ猫が猫として生まれる不思議　ありがたきかな

やさしさの象徴として君は立つちょうど昨日が終わったあたりに

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民族の苦しみの嵩負ふごときアフリカ象は闇に消へゆく

潮の香にまじりて烏賊を焼く臭ひ猥雑にして朝市の立つ

日盛りに草の匂いのひと待てば閉じたまぶたにはじける滴

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塩こぼしつつ入る夜の玄関に金木犀の微かな匂い

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夜のコインパーキングエリア　はみださぬようにさみしさ重ね合わせた

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贅肉を揺らして笑う姉さんの頭上のあおを餞として

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聞き飽きたあなたの明日を葬って泣けとばかりに磨くバスタブ

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そろそろと玄関のドアを押し開けるそこが寝場所の犬は逝きしに

一枚のコインで道の選択を占うような生き方もいい

君が逝き君によく似たをみなごが献花してゐるはや一周忌

玄関に芳香剤を置くような人かと少し見下し思う

コインロッカー０１７の向こうには青海原が広がるらしい

あなたによく似た娘を見ました父親の顔して笑うあなたの傍の

暗がりの鏡の前で鏡など見ずにべろりと化粧を落す

秋は世界が僕を見離す一瞬に薄野原にあかりを灯す

ほろびたる城跡のうへうす蒼きものが佇(た)ちたりいざなひたまふな

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−　まふらーを織るわだってかんたんだもん　ただましかくにただひたすらに　−

−　よふけにて眼薬さすのなんとなく　ないてるようなきぶんのために　−

−　うっなんだ「殺しちゃうの」ああなんだてれびのこえかすこしねてたわ　−

−　みたいのよだんしといれの落書きをだからゆこうよすぐにゆこうよ　−

−　てかてかの　すーつこんどもきてきたらぜっこうよそれだけいいたい　−

−　痒いとこありますかなんてかりすまのびようしのまねやめてよよじれる　−

−　キャラメルは　まけないこどものえねるぎぃだけどきょうだけなみだあじだな　−

−　つかれたわ　ゆうひあかいろあかねいろ「資ゲンゴミ」のもじに染まるの　−

旧かなの駅の名読めば若き日の新婚旅行の父と母なり

心ここにあらざる人魚の誘惑のひややかにして深淵の瞳

「中ぐらゐの男に出物があるのよね」雨の夜をんなも品定めする

メイド・イン・オキュパイド・ジャパンとしるされし玩具のピエロは星条旗持つ

雨に傘あり雨に咲く花もあり 青きキヤベツに映ゆるとんかつ

男子校の廊下は暗くポスターの猫耳少女が手招く真昼

やがて朝もう待たなくていいから着信履歴リセットにする

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口のなかだんだん酸っぱくなっていく甘い紅茶をゆるした朝は

あぶくぶく小さくなった石鹸の消えてゆく頃気づく存在

満ちる事知らない人の世に続く線路の脇に彼岸花咲く　　　　

時間差の文字がきらきら踊る頃条件なしの恋は始まる

野の井戸に墜ちし蟋蟀飛び跳ねる枯れ草の山とらんぽりんに

いつだって嬉しいことは南から鈴を鳴らしてスキップして来る

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「心配はしないで。そんな大それた予言じゃなくて、ただ見えるもの。」

ほろぼしてしまうとおもう　胸のなかでときどきひかるあかいぎざぎざ

見えないのはノックしている人の顔　降りだす前につけた足跡

蟻の眼でみれば草生は深き森　踏み寄る人の姿はいかに

蟻の眼でみれば草生は深き森　踏み寄る人の姿はいかに

ささやかな予定調和の日もあってベシャメルソース鍋につやめく

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「要するに」とまとめるわたしのこのクセが嫌いなんだなあなたは要……

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君測る　方位磁針を揺らしてはサナトリウムの冬の早さを

ただ開けて閉めるときあるでしょ？冷蔵庫　神様いるって知ってるからよ

探しにはゆきませんもしいるのならここで待ちます敵というもの

シンデレラを閉ぢし世界のくづれより南瓜の蔓は伸びほつれたり

嫌いとふ気持ちは鍋で煮崩れる緑黄色の野菜の中か

次々と死滅する話題　食卓の家族それぞれの肖像画となる

大きなるガラスボウルに陽は沿いて地球を起こすみたいにレタスを

青空がぽんと近づくぽんぽらりん　とらんぽりんでぽんぽん跳ねる

集めだす中学生らが段ボール文化祭に体育大会

みちみちて足りるをしらぬものなればひといつくしむこころそだたず

阪神の優勝記念に選手らと同じ名前の表札を集める

七番目の転校生も同じ名だ　今度の森くん暗くてこはい

早口でただしく三回言へますか「シャア少佐」赤い星に願ひを

森茉莉の愛したタバコの銘柄も遠くに忘れ流星雨の降る

「その妻」と巡査に名乗つて橋のうへ前世で読んだ鏡花の一節

「明日また来るから」こんな不確かなわたしには鈴つけてをかねば

とんかつにする日くらゐは知らしめよ　豚にも豚の生のあるゆゑ

さっくさっくきれいな遺伝子注ぎたいから念入りに手入れしておく

紅顔中也なほ群衆にまぎれざる１９２３京都駅頭

いちりんの名もなき花を控へ目にささげる　といふ誘惑もある

中ぐらゐの快楽拾ひほくほくと寝ねむ人口千万の魔都に

恋の歌説いてゐるより　君達のひとりを星へ連れ去つてみる

福引きで当たつてしまつた招き猫　持て余すには丁度いい客

福引きで当たつてしまつた招き猫　持て余すにはちょうどいい客

９回表　予定調和が近いって？　このまま帰れるなんて思うな

花に遊び風に乗つて飛ぶ夢を見しままかへらぬ繭いくつか

入社間もなく榧の碁盤より高価だった銀杏の碁盤買へなかつたよ

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地球、月、太陽も円い、円周率を１としてあるピラミッド

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「予言」宗教上のジャーゴンされど「人類の滅亡」は確実

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わが国になかりしノックなどのプライバシー文化国ほろぶやも

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ノックなどではなくソ連兵が台尻でドア破らむとする音

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頭（ず）の痛み放ちやらむと仰ぎ見る銀杏に秋の虹かかり見ゆ

夢の中円関数など現れて吾を悩ます驢馬にもなれず

「織る」を「織女」などと使へば差別用語になるかも機会均等法

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短歌誌にわが作載りてはじめての稿料入りぬ金二〇〇〇也

六畳に鎮座するとき冥府への通用口として冷蔵庫

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テレビ売り場に並ぶ無数のアラファトに吾は味方か敵か知らねど

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アメリカといふ力にて割られたる南瓜ゆゑその種の薄さよ

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劣性の遺伝形質　わが祖父の遺影の相に後顧の憂ひ

癒し系短歌というべききみのうた杯ささげつつきょう方代忌

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触れねども絹はかさかさ騒ぎだす星にきぬずれ教え込むため

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秋深し虫の音ばかりが生きてをり予言・蜚語など褪せゆくばかり

癌細胞じんわり侵蝕遂げてゆき滅ぶまで見る命の無惨

そういえば蒟蒻久しく喰ってないそろそろ冬の仕度もしよう

泣くたってどうなるわけでもないからねでもあかん坊がうらやましいな

どうかしてつかみ食べたし乗ってもみたしとおくとおくの雲だもの

手と足と紅さす頬の冷たくて乳飲み子つよくつよく掻き抱く

往来の楓ひろがる葉陰にはやまばとねむる巣篭もりの秋

わが身より愛しいものが何ゆえにこの世にあらん摩訶不思議

突破ってそんなおそろしいこと考えられないわが身の小ささ

それはいずくんぞ聞くほどのこともなきことあまたありたとえればイオン

秋の絹雲冬の湯の花春の朧月夏のかげろひ浮くものぞ

休みやすみ休みやすみ生きてけばなんのうれいも溜まらざらまし

ばあちゃんにつれられ海で泳げた日むかしむかしをふと思い出し

加藤千恵の『たぶん絶対』読みながら自分の歌を模索している

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蛇革のバッグを提げているやつに愛のありかは教えてやらぬ

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いきいきと散りそこなった野いちごを運動靴のかかとでつぶす

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たましいをベッドサイドに置いたままシーツのうえでとけあうぼくら

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匿ひしをんなは夜毎に絹糸のごときを吐きて繭ごもりたり

きらきらと吉良上野介のご領地は野山かがやき大石はきらひ

「亡き詩人のためのパヴァーヌ」奏でつつ竪琴の弦はにんげんの髪

真夜中のアーケードいつもしんとしてがらんどうの劇場みたい

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うつくしき人ら笑みつつ素麺をいただくを読む『オイディプスの刃』に

蝿を殺すわたしの目がこわあいと子ら恐れおり昼寝の前に

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深夜窓からわたしは捨てる　時計・剣・手袋・木馬・こひびとの靴

害鳥獣捕獲の時期が提示され豊穣の秋たけなはとなる

セカイ系の短歌ばかりにならぬやうこころのドアをノックしつづけよ

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