[2343] 二日目の神戸 2007年05月18日 (金)

ひきつづき、「綱手」二十周年大会に参加。
本日は歌会。
招待参加されている不識書院の中静勇さんが「全国から集ま
った会員が顔をあわせておこなう大会の歌会はもっとも重
要な大会の花であり、また、そうでなければならない」と、
私に言う。虚をつかれたような発現だったが、まったく、そ
のとおりだ。中静さんの短歌とそのつくり手が集まる結社に
対する思いをあらためて知らされた気分だった。

私も各作品に対して、できるかぎり発言させてもらったが、
やはり、集団の短歌認識と私の内なる短歌認識とのずれがあ
ることがわかった。
一例をあげれば、私は「抽象的な言葉だけで一首が構成され
るのは避けるべきだ」と発言したところ、井上美地さんと柳
川創造さんから反論があった。
井上さんは「抽象的であっても意味がとれないことはない」
との意見であり、柳川さんは「短歌の言葉はもっと抽象的で
もよい」というものだった。
もちろん、これは私にも納得できるところでもあるのだが、
井上さん、柳川さんという年長者の方たちに、こういう自由
な短歌感覚が健在であることに、感動をおぼえた。

四時前まで歌会に参加させていただき、四時過ぎの新幹線で
帰京する。


[2342] 「綱手」二十周年大会 2007年05月17日 (木)

勤め先にある自己啓発休暇という制度にしたがい、二日間の
休暇をとり、神戸で開催された「綱手」二十周年大会に参加
させていただく。

「現代短歌の諸問題」と題して、一時間半ほどしゃべらせて
いただいたのだが、要は「短歌は韻文であることを思い出そ
う」ということを、しどろもどろになりながらしゃべったよ
うに思う。
「綱手」が創刊された1987年は「サラダ記念日」刊行の
年でもあり、現代短歌が変質と溶解を始めた年である、と私
は思っている。それ以降、個々の歌人の目をみはるべき仕事
はいくつもあるが、全体としての歌壇は地滑り現象をとめら
れずにいるのではないか。

懇親会では、米口實、楠田立身、吉岡生夫、益永典子、西海
隆子、中野昭子、落合けい子といった他結社から参加されて
いたかたたちとおしゃべりすることができてうれしかった。

夜は「綱手」のメンバーの方たちと零時近くまで歓談する。
これもまた、自己啓発という言葉を裏切らない、刺激的な良
い経験をさせていただいた。


[2341] 昨日と今日 2007年05月16日 (水)

昨日は、オフィスをはやめに出て、デックスの小香港で、マー
ボ豆腐を食べたあと、神谷町のラジオ日本に行く。
藤井青銅さんがパーソナリティをつとめる「ラクゴ@マクラ」に
ゲストとして出演するため。
つまり、落語に出てくる俳句、川柳、短歌、都都逸などを解説
するという、年寄り臭い役回りである。

落語では「崇徳院」「千早ふる」「道灌」が、もろに和歌をテ
ーマにしている。
これらの落語がつくられた時代には、お客もそれらの和歌はよ
く知っていて、だから、笑えたということなのだ。

俳句では実は宝井其角の作品がよく落語のマクラにつかわれている。

闇の夜は吉原ばかり月夜かな
鐘ひとつ売れぬ日はなし江戸の春
わがものと思へはかろし傘の雪

これらすべて其角の俳句である。

ラジオ日本の社内、ユニオンと会社側との掲示板に、それぞれの
刷り物が掲示してあり、労使問題がなかなかたいへんのように
思えた。

今日はひたすらオフィスで雑事にいそしんでいる。


[2340] 一週間メモランダム 2007年05月15日 (火)

とりこみごとが発生して、こまかく日記がかけないので、メモ
だけかきつけておく。

9日・水曜日
事業部長会。書評原稿を一本書く。

10日・木曜日
朝から気がめいる。一日休暇をとって、しかし、ウツウツとすごす。塚本邦雄全集をひっぱりだしてきて、中期から後期の歌
集を拾い読みする。

11日・金曜日
今日も朝から気がめいる。
出社するも一日じゅう、気分がいらだち続けている。
疲労感が深い。

12日・土曜日
午前中は平和島のTクリニックに行く。
点滴の時、看護士さんがあまり巧くなく、右手左手と何度も針
を刺される。
渋谷にまわって、ムルギーの卵入りカレーを食べる。
ブックファーストにより、豊洲に帰って、紀伊国屋によって、
時間をつぶす。
競馬は福永が臭いと感づいたのだが、とりこみごとで、気分が
集中せず、買い損なう。

13日・日曜日
短歌人の月例歌会。池袋の東京芸術劇場へ行く。
前半の司会を担当。新しい出席者がかなり増えていて、その方
たちも、きちんと発言してくれるので、うまくまわすことがで
きたように思える。後半の司会は平野久美子さん。

勉強会は、高島裕の「短歌往来」に掲載された33首をテキスト
にして、村田馨さんがレポート。
私は高島裕の作品は信頼しているので、最近の沈潜した抒情が
すきなのだが、彼の作品に対して否定的な意見では「あまった
れたヒロイズム、ナルシシズム」というようなことも言われて、
ああ、そういう風に読めてしまうこともあるのかと反省した。
短歌の読み、読解、感受というのは、やはり難しい。

ヴィクトリアマイルは予想はあたって、馬券は失敗。
松岡騎手の騎乗馬の単複を機械的に買っているので、コイウタ
の単複はきわめてささやかに的中したのだが、アサヒライジン
グとの馬連は、みごとに買い損なう。

14日・月曜日
うっとうしさは続いているが、もはや、居直るしかない。
坂井修一さんの『斎藤茂吉から塚本邦雄へ』の中の評論に、
蓑田胸喜と茂吉の国家観を対比させたものがあったので、興味
をおぼえる。
私が蓑田胸喜の名前をしったのは、佐藤優の著作による。
美濃部達吉や滝川幸辰を攻撃した、国家主義者である。短歌で
は三井甲之の弟子すじにあたる人だ。


[2339] シュリークスとじゅんとネネ 2007年05月08日 (火)

午後、赤坂プリンスホテルで、元シュリークスのリーダーの
神部和夫さんを偲ぶ会に出席。
神部さんはイルカさんの夫であり、つまり、神部冬馬君の父である。
私は神部さん本人とは仕事をしたことはないが、イルカさんの
番組はディレクターとしてもプロデューサーとしても担当して
いたので、縁はふかい。今は小学生の子供がいる冬馬君も、高
校生の頃から知っている。
大仁田厚の1000針突破記念パーティで、イルカさんと冬馬
君とスペル・デルフィンと一緒に写真を撮ったことなどもなつ
かしく思い出した。
神部さんの早稲田フォークソング研究会の仲間とイルカさんの
多摩美フォークソング同好会の同級生がたくさんいらしていた
が、実際、フォーク第一世代の方たちは、もう、リタイアの年
齢になっているということだ。
杉田二郎、谷村慎二、山本コータローらフォーク関係者も参集
していて、こなかったのは、さだまさしくらいだったかと思う。

夜は島敏光さんと斎藤安弘さんと一緒に、銀座一丁目にある
「大海」という小料理屋に行く。
実はここのママさんが、じゅんとネネのじゅんさんなのだ。
今は金髪で和服で、いかにも、色っぽい。
私は高校生の時にじゅんとネネの「愛するってこわい」のドー
ナツ盤を買い、さらに「みずいろの世界」「花になりたい」と、
連続してシングルを買うほどのファンだったのだ。
じゅんさんと話をすることができて、ニッポン放送時代に、
桂銀淑と握手したときにもまさる感激であった。

午後はフォーク系、夜は日本的ポップスと、バラエティ豊かな
一日だった。


[2338] 国家と神とマルクス 2007年05月07日 (月)

朝から慶応病院へ定期健診に行く。
システムが変わっていて、いつもより、かなり時間がかかる。
8時半に入って、結局、病院を出たのは12時半。

佐藤優の『国家と神とマルクス』を待っている間に読み続けて
いたのだが、かなり読み進むことができた。
しかし、本人も書いているが「月刊日本」と「情況」に同時に
登場する文筆家というのは、佐藤優ひとりだろう。
佐藤優に対して懐疑的な文章が、最近は各誌に載ることもある
が、やはり、佐藤の文章を読むと、説得される。

夜、20字28行という短い文章を書いてから就寝。



[2337] ピンクでカメオな日曜日 2007年05月06日 (日)

一日じゅう、原稿を書きながら、午後は競馬を聞く。
NHKマイルカップはテレビを見る。

勝ったのは18頭立て17番人気のピンクカメオという牝馬。
典型的な後智恵ではあるが、この馬が勝てる可能性もいくつか
考えられた。
3歳のこの時期までは、強い牝馬は1600メートルくらいな
ら、牡馬に劣らない。現に一昨年はラインクラフトという牝馬
が勝ち、2着も牝馬だった。
このレースに出走した牝馬はピンクカメオとエクスキューズの
2頭。そして、エクスキューズは穴人気になっていた。私の買
った専門紙「1馬」ではなんと本紙本命だった。
しかし、実はピンクカメオは2走前の菜の花賞というレースで
エクスキューズを負かしていた。
ピンクカメオのローテーションはゆったりしたものであり、他
の馬より余力を残していそうだった。また、デビュー以来、ピ
ンクカメオは勝ちと負けを一戦ごとに繰り返していて、前走の
桜花賞に負けていたので、今回は勝つ番だった。

と、こんなことを挙げてみても、結局、いざ馬券を買う時には
それらを根拠にして、強く出ることなどできない。
だからこそ、たいへんな大穴になったわけなのだけれど。

しかし、この結果でウトウトしていた目が覚めた。

おかげで、そのあと、原稿が一気に書けた。


[2336] ラジオな日々 2007年05月05日 (土)

原稿を書くつもりでいたのだが、藤井青銅さんから贈呈して
いただいた『ラジオな日々』(小学館刊・1680円)を読
み始めたら、やめられなくなり、一気に読んでしまう。

これは、藤井青銅さんが、星新一ショートショートコンテス
トに入選したのがきっかけで、先輩の放送作家の導きによって
ラジオの放送作家になってゆく過程を実名小説風に綴った読物。
1979年から1984年までの6年間のラジオの現場を舞台
にした、青春グラフィティでもある。
「夜のドラマハウス」というラジオドラマ番組での声優との
仕事をはじめとして、復活した元キャンディーズの伊藤蘭や
デビューしたばかりの松田聖子といった、今までは別世界に
居たタレントたちとの仕事。
さらに、宇宙戦艦ヤマト、機動戦士ガンダム、幻魔大戦、風
の谷のナウシカといったアニメをテーマにした数々のオール
ナイトニッポンの特番の現場。
藤井氏をこの世界で鍛えてくれたドン上野という伝説のプロ
デューサーは、私がニッポン放送に入社してまもなく、定年で、
ニッポン放送を去っていったので、私自身は伝説しかしらない
のだが、その後は、低迷していたFM東京で、そのFM的番
組編成を一新して、赤坂泰彦を発掘するなど、またまた、ラ
ジオの歴史の伝説となる偉業をはたした。

さまざまなラジオの現場に私が入って行くのは、この物語が
ひとまず終った次の年1985年。
そして1987年に藤井さんと出会い、古舘伊知郎の番組、
いっこく堂のイベントなどを、一緒におこなうことになる。
続編が書かれれば私もでてくるはすなので、ぜひ、この本が
売れて、小学館には続編を刊行してもらいたいものだ。

読んでいただけばわかるが、この物語がテレビドラマになっ
たら、面白いだろうなと思う。
ドン上野や若い頃の松田聖子を誰が演じるかを考えるだけで
も心がわくわくする。
なんとか、実現しないものだろうか。


[2335] みどりの日・編集会議 2007年05月04日 (金)

今年から今日はみどりの日ということになった。

池袋の東京芸術劇場で「短歌人」の編集会議。
正午に会場に行き、夜八時過ぎまで一緒にいた。

二年前、この日に退院したことを思い出す。
検査入院ではあったが、ほとんど手術に近いハードな検査だ
ったこと、息も絶え絶えに病室に戻ってきたら、福知山線の
列車事故がおこっていてびっくりしたことなど、切れ切れに思い出す。


[2334] 一日じゅう読書 2007年05月03日 (木)

憲法記念日。

朝からずっと最相葉月著『星新一 1001話をつくった人』を
読み続けて、深夜にようやく読了。
一気に読ませる力をもった、ドキュメンタリー・テイストの評伝。
SFの世界とさほど接点のなかった著者ゆえに、取材できた事実や
証言もあったように思える。
星製薬時代の苦労はもちろんのこと、異母兄の出沢珊太郎の存在や
晩年の癌のこと。さらには、SFの世界でも文壇でも別格扱いゆえに
本はたくさん売れても評価がともなわないことへのいらにだちが
あったというあたりは、星新一の外面的なキャラクターからは
想像しにくいことで、緻密な取材のたまものだろう。

こまかい部分では、思い違いや微妙なニュアンスの違いがある
のかもしれないが、星新一像をくっきりと浮かびあがらせた本として
多くの人たちに読んでほしいと思う。

このあと、読もうとしている藤井青銅著『ラジオな日々』の著者の
藤井青銅さんも、星新一ショートショートコンテストに入選した
ことが、放送作家になったきっかけになっているし、私の読書の
シンクロニシティとして、この大冊評伝を読めたことは今年の
ゴールデンウィークの収穫だったといえる。

私も実ははじめて活字になったのは「ボーイズライフ」という雑誌で
星新一が選考していた「1000字コント」というショートショートの
投稿欄だったので、星新一の血をかすかにでも継いでいるわけだ。
これからそう言おう。


[2333] ヴェヌスの秘録 2007年05月02日 (水)

仕事の関連で、
やや、心理的ストレスが過剰になっている。
そのため、ちょっと過食気味。
お昼も、激辛マーボ豆腐を食べてしまった。
昨日のカレーに続いて、刺激が強くしかも量が多いものが食
べたくなるという悪循環。

産業編集センターからタニス・リーの「ヴェヌスの秘録」シ
リーズが刊行されている。
全4巻で、現在は『水底の仮面』と『炎の聖少女』の二冊が出ている。
翻訳は私のワセダミステリクラブ時代の同級生・柿沼瑛子さん。
作品中に出てくる詩篇や歌謡の部分を文語体にしたり、俗謡調に
したりするのを、ほんの少しだけお手伝いさせていただいた。
丸の内オアゾの丸善では平積みになっている。
タニス・リーのマニアの方は、ぜひ、買って読んでください。


[2332] 山藤亭・公開駄句駄句会 2007年05月01日 (火)

お昼を、ちょっと遠出して、汐留の「夢眠」というカレー専門店に行った。
大辛を食べてみたが、辛さはそれほどでもないのだけれど、ご飯の量が
ものすごく多い。うっかり、中盛というのを頼んで失敗。
少し残さざるをえなかった。大盛を頼んだら、とても、食べられなかっただろう。

夕方は少し早めにオフィスを出て、新宿・紀伊国屋ホールの山藤亭へ。
久しぶりの紀伊国屋のような気がする。
今日は、駄句駄句会の公開句会に、立川左談次さん、林家たい平さんの落語に、
島敏光さんの歌とおしゃべり。
楽屋に挨拶にゆき、しばらく、歓談の様子を拝見。
島さんと一緒に出る、俵山さんがティナ・ターナー風の黒塗りになるのを
ずっと見学させてもらう。

会場は思った以上の盛り上がり。
出演者は、三魔宗匠、一顔、漂金、駄郎、風眠、斜断鬼、寝ん猫、中瀞、邪夢、粕利のみなさん。
山藤章二宗匠直筆の筆文字の俳句をプレゼントというのが好企画。
ウチアゲにも参加させていただき、放送作家のベン村さ来、松田健次氏らとも、
しばらくぶりに歓談。よく考えると、私のバブル時代は、1992年頃、
連日、落語会やお笑いライブに通って、うちあげに参加していた頃かもしれない。


[2331] 資料つくり 2007年04月30日 (月)

月曜日で休日。

午前中、丸の内オアゾの丸善に行く。
さすがに、本屋はすいている印象。

午後、帰宅してからは、現代短歌の状況に関して、多少の意見を
言うための資料づくり。
ひさしぶりに、さまざまな歌集を読み返す。
ラジオを聴きながら、5時間ほどかけて、なんとか格好をつける。

夜は静かに読書。


[2330] 天皇賞買い間違え 2007年04月29日 (日)

天皇賞である。
菊花賞のときから長距離のエキスパートだと思っていたネヴ
ァプションが出走してきたので、この馬の単複および、流し
馬券など、けっこう大量に買う。
最後に、ネヴァプションのほかにメイショウサムソン、マツ
リダゴッホ、トウカイトリック、デルタブルースの馬連とワ
イドのボックスを買った。

そして、ご存じのように、ネヴァプションは完敗。結局、
サムソンとトウカイのワイドだけが的中しただけだ、と思い、
I−PATの残額を確認したら、なんと、そこそこに増えている。
よくよくチェックしてみると、ワイドボックスが15のデル
タブルースのかわりに、間違えて16エリモエクスパイアで
買っていたのだ。これて、サムソン、エリモとエリモ、トウ
カイのワイドも当たったことになる。
夏の終わり頃に、馬連を的中したと喜んだら、買い間違えて
がっかりということがあったが、今日は買い間違いが、幸運
となった。
どうせなら、馬連も買い間違えていれば、さらに儲かったのだが
それは欲張りすぎ、というより、あれこれ予想した意味がない。
まあ、こういうことも、あるのかもしれない。

今週読了した本。
福永憲弘著『夢に見れば死もなつかしや−小説・木歩と声風』
筒井康隆著『巨船ベラス・レトラス』
東直子著『とりつくしま』


[2329] 巨船ベラス・レトラス 2007年04月28日 (土)

筒井康隆の新作長編『巨船ベラス・レトラス』読了。

巨船ベラス・レトラスとは文学の世界の象徴であり愚者の船でもある。
『俗物図鑑』などでおなじみのスノッブな文壇人たちが、そ
れぞれに文学の危機をしりつつ、右往左往し、ついには彼ら
が書いた小説の登場人物とともに、巨船ベラス・レトラスに
いつのまにか乗り込んで、議論したり、騒ぎ立てたりする。
最後になると、筒井康隆自身も登場して、北宋社という出版
社が、著者にことわりなしに短篇集を出したという信じがた
い事件が語られ、最後はタイタニック風の悲劇を予感させて終わる。

『銀齢の果て』の時と同様、長編を一気に読ませる筆力はすごい。
文壇の話だが、小説中で語られる危機は、歌壇にも俳壇にも
読み替えることができる。
書き手と読み手の問題、文学の歴史の断絶の問題、商業主義
と新人賞の低年齢化の問題など、まさしく、他人事ではない
と、私は身につまされつつ読んだ。

午後と夜にマンションの理事会で五時間拘束される。
あと二年間、理事としてこの会議に出席しなければならない
のだが、先が思いやられる。マンションの理事会というの
も、一種のベラス・レトラスにちがいない。


[2328] ルルKで回復 2007年04月27日 (金)

黄金週間がはじまったかのように、オフィス内はひっ
そりとしている。
しかし、一歩、ビルの外に出ると、お台場学園2007とい
うイベントの準備が突貫工事ですすめられている。
明日からイベントが始まるのだから、突貫工事にならざるを
えないわけである。

風邪がなおらなかったら、病院に行こうと思っていたのだが、
昨日、豊洲で買ったルルKという薬が予想以上に効いて、と
ても楽になっていたので、病院にはゆかずに帰宅。

三連休で、きちんと原稿を書くか、集中した読書をするか、
あるいは、天皇賞をずはりと的中するかしたいものだ。


[2327] 木曜の男 2007年04月26日 (木)

風邪気味で午後3時過ぎから身体の節々が痛くなってくる。
オフィスにあった適当な風邪薬をのんでみたが、はかばかしく
体調は改善しない。
退社時に、豊洲のかねまん薬局で「ルルK」の顆粒を買って、
帰宅後にのむ。
これが思ったより効いて、けっこう楽になってしまう。

風邪っぽいということだからではないが、ここのところ読書の
スピードが落ちている気がする。目がちらちらしたりもする。
寝ながら本を読んでいると、すぐに眠くなってしまう。
これも老化なのだろうか。

夜、喜国雅彦の『本棚探偵の回想』を再読しはじめたら、つい
つい、読みふけってしまった。
本を読むことの楽しみではなく、本を探して買うことの快楽が
実に気持ちよく、また、面白いおかしく書いてある。
再読どころか、いずれ、三読、四読してしまいそうだ。

・ラヂオより流るる音は聞きおぼえあり曲の名は定かならねど/今泉重子『龍在峠』(遺歌集)


[2326] 反省会兼慰労会 2007年04月25日 (水)

新入社員研修のスタッフの反省会兼慰労会。
お台場のアクアシティの中のイタメシ屋。
しつこくて、カロリーが高そうなものばかりなのに、ついつい
意地汚く食べてしまう。情けない。

昨日、久しぶりに夜中までかかって原稿を書いたので、疲れて
いる。こうやって、一段階ずつ、体力が落ちて、できないこと
が、増えてゆくことで、老いに入ってゆくのだろう。

またまた、五月の予定でダブルブッキングをしてしまったこと
に気づく。原稿の締切忘却も、ダブルブッキングも老いの深ま
りなのかもしれない。いお、そうだろう。

「創」5月号に「「週刊ゴング」休刊の内幕とプロレスジャー
ナリズム」という鼎談が載っている。出席者は吉田豪、金澤克
彦、ターザン山本。
ゴングの身売りと休刊の経緯がくわしく語られている。
経営者の質の問題でもあるのだが、プロレスというジャンルの
衰退がやはり最大の問題ではある。

・休刊は廃刊であり水曜に立ち読みをせし「週刊ゴング」よ/宇田川寛之
・丸見えの底なし沼の衰弱を見せて「週刊ゴング」休刊/藤原龍一郎


[2325] うっとうしい雨が降る 2007年04月24日 (火)

池袋で「短歌人」の編集会議。
雨が降り始めて、けっこう、うっとうしい夜。

電車の中で、福永法弘著『夢に見れば死もなつかしや−小説・
木歩と声風』を読み始める。
吉屋信子が「墨堤に消ゆ」という短篇で書いた大正時代の俳人
富田木歩とその庇護者であった新井声風の友情を描いた長編小説。
声風の性格をエピソードをまじえて丁寧に描写しているところ
が特徴といえる。面白く読みすすめる。

帰宅後、24時過ぎまでかかって、一本、原稿を書く。
これは実は締切をとっくに過ぎたもの。
今月2度目の締切忘却である。笑いごとではない。
ゴールデンウィーク進行だというのに、迷惑をかけてしまった。
アタマが興奮状態で眠れずにいたら、向かいのマンションに
救急車が到着。しばらく見ていたら、短歌で男性らしい人が
運ばれて、車に乗せられていた。
こんな雨の夜にも、いろいろなことがおこっているわけだ。


[2324] 理論社ミステリーYA!など 2007年04月23日 (月)

「短歌」5月号の松村正直氏の「「批評と礼節」に答える」を読む。
きわめて明晰で論理的な文章であり、前号の佐佐木幸綱氏の
「批評と礼節」への異論をきちんと書いている。
「嘘」という言葉を佐佐木氏が「子規をふまえたもの」なのだ
と書いた点など、わたしは何でこんないいがかりに等しいこと
を佐佐木氏は書くのだろうと、哀しくおもっていたのだが、そ
の点についても、松村氏は明解に反論していて、気持ちが良い。
これだけ、理路整然としかも礼節をわきまえた文章での反論を
書ける松村正直氏にはいっそうの信頼感がわく。

柳広司著『漱石先生の事件簿・猫の巻』(理論社)を読了。
理論社ミステリーYA!という、若者向けの書き下ろしミステリの
シリーズの一冊。
漱石の「我輩は猫である」の世界を借りて、夏目家に書生とし
て住み込んでいる、探偵小説好きの人間が、夏目家で起こる、
猫が酔っ払ったり、泥棒がヤマイモを盗んだり、隣の中学が
急に野球を始めて夏目家に球を打ち込んだりする事件を解明
していく連続短篇。
漱石好きの人、殺人嫌いの人には、気持ちよく読めるはず。
このシリーズには、皆川博子や奥泉光や牧野修や鯨統一郎と
いったクセモノ作家がラインナップされていて、おおいに期待
がもてる。


[2323] 緊張もする日曜日 2007年04月22日 (日)

朝、近くのセブンイレブンにサンケイスポーツを買いに行き、
ついでに、福本伸行の『天』の総集編も購入。

公園のベンチに腰掛けて『天』を読む。
ちょうど、強度のアルツハイマーを自覚したアカギが自殺を決
意して、生涯のライバルたちが、それぞれの思いをこめて、ア
カギに自殺を思いとどまらせようとするあたり。
この部分は単行本で、何度も読んでいたが、実際、何度読んで
も、緊張する。
特に、僧我というアカギの仇敵が、最後の勝負として、ナイン
という牌合せのゲームを挑むところは、ぞくぞくする。筋の展
開としては、この部分はご都合主義ではあるが、最後にアカギ
が、自分がすでに勝っているにもかかわらず、牌を出し、僧我
が、アカギが本当に洞察力もなくしていると気づくあたりは、
わたしにとっては圧巻。
なんとなく、午前中から緊張してしまった。

午後からは上野の文化センターで「短歌人」月例歌会。
冒頭で、若林のぶさんが立ち上がり、もう、短歌に真摯に真迎
えなくなったので、これで退会する、と宣言して、会場を去っ
て行った。
若林のぶさんは、1960年代に結成された青年歌人会議の初
期メンバーであり、当時の代表的な青年歌人の一人だった。
当時は地方在住でありながら、青年歌人会議の創立時に声をか
けられているわけで、それだけ、傑出した存在だったのだろう。
その若林さんが、短歌をやめるというのは、アカギ的決断なの
かとも思う。
その後の歌会から勉強会にかけてずっと緊張感が体の奥底に残
り続けていた。

帰宅後、三田完著『俳風三麗花』(文藝春秋刊)を読了。
昭和7年から8年にかけてを舞台にして、令嬢、女子医大生、
芸者の三人の女性が、粋人の大学教授の主宰する句会で、さま
ざまな人間模様をくり広げるという連作短篇集。

一作に必ず一回は句会の場面が出てきて、そこでは席題が明示
されて、その作品の語り手として選ばれている三人の女性のう
ちの一人の句作の心理が丁寧に描写される。
披講も点取りも描写され、そこでの心理も活写され、それが次
の物語の展開を生んでゆく。
帯に「史上初の句会小説」なるコピーが書いてあるが、とりあ
えず、そのコピーにいつわりはない。
句会以外の場面では、夏の大川下りの屋形船とか酉の市とかの
昭和ヒトケタの頃の風物詩が丁寧に描写されている。
特に奇をてらった描写も筋もないので、この小説を好きになる
人は少ないかもしれないが、戦前の「新青年」にのってもおか
しくない、洒落た小説だと思う。久生十蘭の「キャラコさん」
とか、獅子文六のユーモア家庭小説の平成版を書こうという意
志が、作者にあるのではないだろうか。

ということで、この小説を読み終わって、ようやく、朝からの
緊張がとけたようだった。


[2322] 戦後東京の歴史の中で 2007年04月21日 (土)

「週刊読書人」の今週号の一面の「戦後東京の歴史の中で」
というタイトルの康芳夫と坪内祐三の対談は、戦後の東京
のブラックな側面に興味をもっている人には必読の濃密な
対談になっている。
具体的には、山本信太郎の『東京アンダーナイト』と七尾和
晃の『闇市の帝王』とを素材にして、坪内が康に、さらなる
裏話をたずねるというかたちになっているのだが、まあ、裏
には裏があるということを思い知らせる。
作家の室井佑月の母親がデヴィ夫人と同じコパカパーナとい
う店でホステスをしていたとか、デヴィをスカルノにとりも
った東日貿易の久保という人物が、同時に高倉健や長嶋茂雄
の後見人もしていたとか、黒い話がバンバン出てくる。
後見人ってなんなのよ?いわゆるウシロダテなのかな。

さらに、さりげなく、坪内の口から「うちの祖父が児玉機
関の吉田彦太郎さんをすごくかわいがっていたらしい」とか
「お袋に上海時代の話を聞いたりすると、中国マフィアの
話もよく出てくる。」とか「実は学生の頃から、らどんな
に通っていたんです。上海お春の名で知られた瀬尾春さん
がやっていた。実は僕の母方の祖父の親友がお春さんの恋
人だったんです」等々。

室井佑月がデビュー後、急に有名になったり、坪内祐三が
四十代の若さで文壇に確固たるポジションを確立している
ことなどを不思議に思っていたのだが、そうか、そういう
ことだったのか。


[2321] 漱石先生の事件簿・猫の巻 2007年04月20日 (金)

児童文学といってよいのかどうか、講談社のミステリーランド
のシリーズや理論社のミステリーYAに最近興味がわいている。

今、読んでいるのはミステリーYAの方の新刊、柳広司著『漱
石先生の事件簿・猫の巻』。
夏目家に書生として住み込んでいる中学2年生の少年を語り手
にして、『我輩は猫である』の世界を借りながら、そこで起こ
る小さな事件(お琴のお師匠さんの猫の失踪事件とかの日常の
他愛ない事件)を語り、それを少年が解決するという設定。
時代背景を日露戦争のさなかの1905年(明治38年)に
しているので、株式投資ブームとかの世相も、事件に巧くとり
入れている。先生をはじめとして迷亭や寒月といった「猫」の
登場人物たちも当然登場する。
一種のパスティーシユといっても良いのだろうが、よくできた
連作ミステリになっていると思う。

こういう、一線のミステリ作家による書き下ろしの作品シリー
ズがあるというのを、私は情報不足で最近知ったのだが、これ
は文句なく面白いので、もっと読んでみようと思う。

講談社ミステリーランドの方では、山口雅也の『ステーション
の奥の奥』というのをすでに買ってあるので、近々、こちらも
読むことになるだろう。


[2320] ?ガルシアマルケス? 2007年04月18日 (水)

オンライン書店のプープルのページに下のような見出しが出て
いたので、マルケスの新作?とびっくりしたのだが。

「妊娠生活 ガルシアマルケスの母子手帳ケース付き」 

ガルシアマルケスってブランド名だったんだ!!

上田一成さんの第三歌集『スモーク』を頂戴した。
おとなの感性から導き出される自然観照、文明批評の歌が、
心に残る。
作品を引用してみる。

・雨雲の去りたる空のまさをより柳は萌葱のひかりを垂らす
・やはらかき日ざしの中にぼうたんの褐色の芽はギヤマンのやう
・お手拭きは手を拭くものよさりながら午後より疲るる目にあてがひぬ
・朝ごとに飲み干す水が蛇口より出る必定の時に怖ろし
・消灯の一瞬ことにかがやけるポインセチアの純粋の赤
・戦後否戦前である今のいまさくら若木の太りつつあり
・容疑者を乗せる車の<スモーク>をテレビ画面に終日見をり
・水鳥の蹼はいくたび湖の面を蹴りてをりしがつひに飛ばざり


[2319] 佐藤優という罠 2007年04月17日 (火)

「AERA」の今週号の「佐藤優という「罠」」という巻頭記事
が面白い。
編集部の大鹿靖明という人の署名記事で「久米島フォーラム2
007」という宮崎学、魚住昭、山口二郎らとおこなわれたシ
ンポジウムの同行取材である。
久米島は佐藤優の母親の故郷。組めば間の亀甲墓に立つ佐藤優
の写真、親戚の家の縁側に座って縁者と雑談する姿など、珍し
い写真が載っているのも興味深い。

佐藤優の本は全部持っているし、とにかく、全部読むことに決
めている。私は別に政治論文を読む習慣はないが、佐藤優が論
壇に登場して、常に刺激を撒き続けていることは有益なこと、
だと思う。なにより、その文章力には敬服する。わかりにくい
ことをわかりやすく語る、という姿勢が貫かれている。

記事の中には、佐藤優肯定派として柄谷行人、批判派として
小谷野敦が、短文を書いているが、小谷野の言う「佐藤優は
言論界のみのもんたにすぎない」という意見は、私には納得
できない気がするのだが。やはり、私には柄谷の肯定の意見の
ほうが納得できる。
特集とは別に、「ラスプーチン流情報の捌き方」という情報整
理術は、心弱っている私の心をおおいにかきたててくれたもの
だった。やっぱり、だまされているのだろうか。

というわけで、佐藤優のまだ読んでいない本を読まなくては。


[2318] 急変・寒波到来 2007年04月16日 (月)

週があけたら急に寒くなった。
コートを洗濯に出してしまったので、寒くてもスーツだけで
通勤しなければならない。まるで、マッチ売りの少女か、フ
ランダースの犬のようである。

土曜日に一気に読書の集中力をつかってしまったらしく、今
日はまったく本を読もうとしてもアタマに入らない。

児童文学として刊行されている本に、けっこう、良質な作品
があり、ミステリ作家が書き下ろしにチャレンジしているこ
とに、最近ようやく気づく。
講談社の「ミステリーランド」シリーズや理論社の「ミステ
リーYA」といったシリーズを少しずつ集めてみようと思う。
大書店に入って、今までまったくスルーしていた児童向け書
籍のエリアをくわしく見ていくことには、新鮮な喜びがある。


[2317] 新人は短歌に何を求めるか 2007年04月15日 (日)

第五回ニューウエーブ短歌コミュニケーションに参加するために
午後、神楽坂の日本出版クラブに向かう。
途中、神楽坂の交差点で宇田川寛之さん、鶴田伊津さん、M生ちゃんの
一家に出会い、一緒に坂をのぼって会場に到着。

歌葉新人賞の受賞者が「短歌人」の廣西昌也さんなので、私は
同じ結社の仲間として、お祝いの言葉を述べる。
要は、いわゆる歌葉的ではない作風の廣西昌也さんが、5年間
歌葉新人賞にチャレンジし続けて、ついに受賞したのはきわめ
て貴重なことだ。各誌の新人賞をやたらに応募する人が多いが
賞と選者をよく吟味して、これぞと的をしぼることの大切さを
今回の廣西さんの受賞が教えてくれた、というようなことをしゃべった
つもりだが、ちゃんと伝えられたかどうか。

その後、加藤治郎、穂村弘、荻原裕幸の三氏によって
「短歌は新人に何を求めるか」というテーマの鼎談。
その後、廣西昌也、生沼義朗、石川美南、ひぐらしひなつ氏ら
による「新人は短歌に何を求めるか」というテーマのディスカッション。
ただ、この4人の人たちは、すでに、10年近いキャリアがあるわけで
新人というわけでもなかったが。

面白く記憶に残ったのは、穂村氏の発言で「歌壇が新人に何
を求めるか」ということ。すなわち下記のとおり。

1:あなたはどれだけ他人の短歌を読んでいますか?
2:あなたは短歌の歴史につながる意識がありますか?
3:あなたは短歌にかかわる文章を書けますか?
4:あなたは啓蒙活動(選歌や結社活動)をやる気がありますか?

ということで、これらをきちんとクリアしないと、歌壇に認知
してはもらえない。
こういう項目をクリアした上で、アカデミズムで古典短歌につ
なかっている場合は、さらにポイントが加算される。

まったく、そのとおりで、巧いことを言うものだと感心する。

もうひとつ、ボーダー論という視点を穂村さんが言い出して
これもあまりに的確なので、その後の意見がみなそれにひきず
られてしまった。

すなわち、歌壇のインに居ると、ボーダーまでし見えない。
たとえば、穂村弘はボーダーに居るのだが、努力し続けないと
インから忘れられる。米川千嘉子や吉川宏志といった結社のス
ーパーエリートは、はじめからインに居る。
結社に属さず、ネットだけで作歌するというような人はアウト
に居るのであり、歌壇のインの人からは、アウトは見えない。

と、こういうたとえだったのだが、それを受けて荻原裕幸氏が
的確な発言をする。すなわち、
俵万智が出てきた時、歌壇は手放しで迎えいれようとはしなか
った。その時点で俵万智はボーダーだった。しかし、穂村弘が
出てくると、俵まではインにして、穂村をボーダーにするとい
うことにした。さらに、枡野浩一が出てくると、こんどは穂村
までをインにして、枡野をボーダーに置こうとしたように、常
に、ボーダーラインも動いている。
これもまったくそのとおりだな、とやたらに感心してしまう。

こういうホンネが聞けたのは収穫だった。
たぶん、当初の企画意図とは離れた話の展開になってしまった
のだろうが、私などはいろいろと考えるきっかけをもらった気
がする。


[2316] 二階堂黎人の小説 2007年04月4日 (土)

この土日に書き終わらなくてはならない原稿が2本あるのだけれど
巧く書き始めるきっかけがつかめない。
気晴らしに本が読みたくなり、二階堂黎人の『吸血の家』を読み始める。
文庫本で600ページもある本なので、とても一日では読める
はずはないと思っていたのだが、原稿を書くよりは読書のほうが
楽しいということで、どんどん読み進んでしまう。
途中で改心して、原稿も書き始めたのだが、それでも夜までかかって
読み終わってしまった。

旧家にいる美貌の三姉妹をめぐる連続殺人。それに、血吸い姫なる呪いの伝説がからまるミステリ。
ディクスン・カーと横溝正史を思わせるおどろおどろしい物語を
作者の文章力が、飽きさせずに読ませてくれる。ポケミスの初期の
ディクスン・カーやカーター・ディクスンの翻訳は、悪訳ということで
わけがわからないこともあったのだが、この作者はそういう悪訳で
カーの世界を咀嚼して、みごとに換骨奪胎してみせてくれている。
カーの『テニスコートの殺人』のシチュエーションを踏襲して
まったく異なった解決を二つ提示したり、さらに別の状況での
足跡のない殺人を設定してみせてくれたり、とにかく、サービス精神旺盛で
飽きずに読了させてくれる。
物理的なトリックの部分に、カーよりはましだけれども、やはり、
現実的には少しムリがあるんじゃないのかと思わせる部分もなきにしも
あらずだが、事件の動機がきわめて心理的なものなので、ここに
私は説得力を感じた。
とりあえず、こんどは同じ作者の『地獄の奇術師』という作品を
読んでみようと思う。
それを読み終わることができたら、いよいよ、『人狼城の恐怖』四部作に
挑戦しようと思っているのだが。なにしろ、この四部作は1000枚の長編が4巻で
一つの作品を構成している、現時点では、世界最長の本格探偵小説との
ことなのである。読めるだろうか。


[2315] 安立スハルの歌 2007年04月13日 (金)

オフィスにいる間は、ずっと報告書、議事録つくり。
金曜日となるとさすがに少し集中力が失せてくる。
昼休みは、一緒に昼食をとってツカちゃんと密談。

帰宅前に、豊洲のauショップでケータイをワンセグに機種
変更する。この時、私の相手をしてくれたのが、研修生だっ
たので、要領が悪い上に段取りも悪く手間がかかる。
しかし、あこかれのワンセグになったので我慢する。

帰宅後、『安立スハル全歌集』を少しづつ読む。

・雨しぶく昭和最後の夜の更けの大き寂寥はのちも思はむ
・娼婦にてあらざることはしかし我が人に誇るべきことにもあらず
・大正に生れ教育勅語など学びたりしよあなや遣る瀬な
・とりとめなきこころに思ふわが生れし日にレーニンはまだ生きをりき
・歎かふといふにはあらぬパチンコを知らず回転寿司を知らずも

平成元年、安立スハル66歳の時の作品から5首引用。


[2314] 安立スハル全歌集が出た 2007年04月12日 (木)

地球環境大賞という賞の贈賞式の手伝いに、朝から明治記念館
に行き、夕方まで立ちっぱなしだったので、足が痛くてたまら
ない。

柊書房から予約しておいた『安立スハル全歌集』が到着。
予約価格は9000円。
しかし、それだけの値打ちはある歌集。
安立スハルさんは「コスモス」所属の女性歌人。
今までに歌集は『この梅生ずべし』一冊しかない。
しかし、彼女の作品が形成している抒情世界は個性的なもので
多くの人に読まれるべき価値がある。
わたしも、前記の歌集一冊しか読んでいないので、喜んでこの
全歌集を読ませてもらおうと思う。


[2313] ネットの古書価格 2007年04月11日 (水)

アマゾンにはマーケットプレイスという、古書のマーケット
が付属している。
たとえば、ディクスン・カーの『エドマンド・ゴドフリー卿
殺害事件』を検索したとすると、最近の創元推理文庫版の新
本、以前の国書刊行会版がいちおう出てきて、国書刊行会版
はアマゾンでは品切れと出てくる。
一方、ユーズド・マーケット・プレイスということで、古書
店が、国書刊行会版、創元推理文庫版の古書を、古書価格で
提示しているので、特に新本にこだわらなければ、古書を安
い価格で買うことができる。
私はしばしばこの安い方の古書を買っている。

ただ、時々、なぜこの本がこんなに高いの!とびっくりする
ような価格がついていることがあって、びっくりする。
確かまだ新刊書店で買えるはずの本が、何千円という定価の
数倍の値段がついているのだ。
こういうことを不思議に思っていたのだが、昨日買った『と
学会年鑑 ORANGE』に山本弘氏が、自分の新刊著書が
とんでもなく高いネット古書価格がついているのに驚き、そ
の値段をつけている古書店に問い合わせたというエピソード
が書いてある。
その回答によると、ネットオークションなどで、一度高い値
段がつくと、その値段に右へならえ、ということになってし
まうのだそうだ。要は、きちんと適正な古書価格をつけてい
る、正しい商品知識のある店だけでなく、古書売買の利益だ
けを追求するシロウトの古書売り手が混在しているというこ
とらしい。
もちろん、高ければ買わなければ良いので、買い手に損害は
ないのだが、変な値段がついているということには、本好き
の心は勝手に乱れてしまうのである。


[2312] 朝日のあたる家 2007年04月10日 (火)

会社帰りに久しぶりに門前仲町のブックオフに行く。
詩歌のコーナーがほとんどなくなってしまっている。
ほとんど買ったことはないけれど、チェックだけはいつもして
いたのだけれど。

ミステリ中心にけっこう歯止めなく買ってしまう。
嗜好の方向がここ二ヶ月ばかりミステリに向いている。
とはいえ、本を買うばかりでほとんど読んではいない。

自分の短歌がますますカルト的方向に向っているという気がする。

・朝日のあたる家とは朝日楼にして言わずもがなのことかも知れぬ

十数年前の「短歌人」に発表した作品。
たぶん、歌集には入ってないと思う。
この歌に対して緒形光生が例月の批評欄で、ちあきなおみが
歌う日本語の「朝日のあたる家」を下敷きにしている一首だ
ときちんと解釈してくれた。
「あたしが着いたのはニューオリンズの、朝日楼という名の
女郎屋だった」という歌詞を「ソング・デイズ」で聞いて泣
いたのは、もう十数年前のことだ。


[2311] こまやかに空充ちゐたる日よ 2007年04月09日 (月)

横山未来子さんの新しい歌集『花の線画』(青磁社刊・2500円)を
お送りいただいた。

帯のコピーが横山未来子作品の特徴を的確に言いとめているので
引用する。

 ことさらにかなしみをうたう訳ではない、
 諦念を声高にさけぶ訳でもない。
 身めぐりの猫を鳥を虫を風を四季を
 現からのほどよい距離感を保ちつつ掬いとっていく。
 そのうたい方はどこか幻想的でさえあるのだが、
 人がこの世に生きる哀しさを教えてくれるようである。

ということで、優れたコピーだと感心する。
いちばんいい加減なのは「待望の第X歌集」という手のもの。
その歌集を待望しているのは著者だけだろう。
そういうわけで、青磁社は丁寧な良い仕事をしていると思う。

『花の線画』から5首引用する。引用したい作品ばかりである。

・校庭の寒空ひろく幾重にも白きボールの跡光りあふ
・言葉にてかたちづくられたる鳩を放てよといふ声は降るなり
・膝立ちの姿にありぬ抗ひえぬものに触れたる初夏のひと日は
・感情に溺れゐし夜もいつか明け身を平らかにわれは在りけり
・水に油膜浮かべて墨を磨り始むこまやかに空充ちゐたる日よ

今、短歌を始めようとしている人に勧めるなら、この横山未来子
さんの歌集を読んでほしい。


[2310] ダイワスカーレット 2007年04月08日 (日)

桜花賞はダイワスカーレット・
牡馬と勝ち負けしている馬なんだから、冷静に考えればいちば
ん強いはず。冷静になれなかった私が悪い。

目白の塩の屋で、岩田儀一さんの歌集『内線二〇一』の批評会。
田中槐さんの手配で有志の会という顔ぶれ。
岡井隆さん、日高尭子さん、田村雅之さん、ほかに中沢直人さ
んをはじめとする「未来」の有志。
岩田さんは私より学齢で一年上。もろに同世代。
1970年代に短歌を独学でつくっており、その後中断して
4年前からまた作歌を再開したという。

作品や詞書に「磁場」や「村上一郎」や「湊合(ジンテー
ゼ)」といった言葉、固有名詞が出てくることに、私はいやお
うなく共鳴してしまう。また、徹底して自己の精神生活をのみ
詠っている方法にも、私の作歌の方法と共通するものを感じる。

心に残る歌を引く。
・遊撃隊(パルチザン)求ム智恵ナル武器ヲ持ツ 澄ンダ口笛吹ケレバ尚可
・黒龍という名の酒が喉を落ち突き詰めて辛し世代論とは
・朴の花が割れるように咲き家という概念はさらに取り残されて
・冬空に龍のごときが連れた立てり「何よりもさきに書くことの態度」が
・『Return to Forever』低く鴎舞う日本海の曇天の下
・海港より妻に送りしエアメール「生活(たつき)こそ太く」この言葉より


[2309] マンションの理事会など 2007年04月07日 (土)

今年から2年間、輪番制のマンションの理事をつとめなければ
ならず、夜、初めての理事会に出たところ、3時間もかかって
しまい、先が思いやられる。
ただ、大規模改修などの大きな案件はすでに片付いているので
まあ、もめそうなことはさほどない。

午前中に豊洲のララポートに行って、光文社文庫から出ていた
新訳シャーロック・ホームズ全集というシリーズの本をみつけた。
光文社文庫からこんな本が出ていたとはまったく知らなかった。
光文社文庫は世界文学の新訳シリーズの陰で、ひっそりとホー
ムズの新訳など刊行していたわけだ。翻訳はホームズの研究家
でもある日暮雅通さん。
とりあえず『四つの署名』と『シャーロック・ホームズの生
還』を買う。
「空家の冒険」「第二のシミ」とアタマと最後の2作品を読ん
でみたが、これが読みやすく面白い。中学時代に延原謙翻訳の
新潮文庫で読んで以来の再読だから、ストーリーは忘れていた
のだが、やはり、ホームズ譚は面白いということを再確認した
しだい。

ところで、最近、大書店に行くと、意識的に児童書の棚を見る
ようにしているのだが、これがまた驚くことが多い。
なにしろ、「ハリー・ポッター」や「指輪物語」や「ゲド戦
記」のブームのためか、私の知らない外国作家のファンタシー
が、ハードカバーの豪華な装丁でたくさん並んでいる。
また、宗田理の「ぼくらの七日間戦争」などの「ぼくら」シリ
ーズがやはり中学生向けの新装丁でシリーズとして並んでいる。
文庫で絶版になっても、こちらで生き残っていたわけだ。
もうひとつ、偕成社、福音館、講談社、ポプラ社、岩波書店な
どから、それぞれの文庫(おとなの文庫サイズより大きい)が
出ているのだが、偕成社文庫ではドイルやクリスティやヴェル
ヌの作品を完訳版として刊行している。つまり、子供向けのリ
ライト版ではないわけだ。ルパンのシリーズも全冊完訳で出て
いるし、南洋一郎の翻案版も全冊そろっている。
というわけで、これらの文庫の値段は700円から800円な
ので、一般の文庫で買うよりも安いのではないかと思うのだ。
今後、もう少しチェックして、安かったり、読みやすかったり
したものは、買ってみようと思っている。


[2308] ミステリ落穂ひろい 2007年04月06日 (金)

日中はだらだら過ごしてしまう。
読書傾向がミステリの方向へ傾いてきたので、少しは読んで
いないミステリの名作を落穂ひろい式に読んで、つぶしてい
こうかと思う。

たとえば、ヴァン・ダインの12作品で、はっきりと読んだ
ことをおぼえているのは『ベンスン』『僧正』『甲虫』くら
い。どうも『グリーン家』は読んでないと思う。
クイーンの国名シリーズも全作品は読んではいない。
『ギリシァ棺の謎』を読んでいない気がする。
クリスティーに関してはけっこう読んでいる。有名どころで
読んでいないのは『カーテン』くらいか。

原稿を書かなければいけないのに、やはり、今夜も集中力が出ない。


[2307] 偏愛する作家12人 2007年04月05日 (木)

音楽小委員会があり、いくつか面白い情報を聞く。

退勤時に豊洲でパンを買って帰宅。
夜はひたすら本の整理をする。

俳句鑑賞に関する原稿依頼が一つあった。
以前は、こういう依頼があっても、参考の書籍がどこにある
のかわからなくて、返事がすぐにできなかったのだが、多少
整理がついたので、今回はすぐに必要な句集が出てきたので
すぐに執筆受諾の返事ができた。
こういう状況なら、かなりストレスが解消される。

石塚公昭さんから『Objectglass12』という写
真集を送っていただく。
出版社は風濤社(03−3813−3421)定価2000円+消費税
石塚氏自身が制作した12人の作家の人形を、それぞれにふ
さわしい状況設定で撮影した写真と、その作家への偏愛を語
り、人形の製作過程にもふれたエッセイの本。
とりあげられた作家は以下のとおり。
・江戸川乱歩
・永井荷風
・稲垣足穂
・澁澤龍彦
・泉鏡花
・寺山修司
・村山槐多
・谷崎潤一郎
・中井英夫
・夢野久作
・三島由紀夫
・ジャン・コクトー

生き人形という古臭い言葉が実はリアルだということを実感
させてくりる素晴らしい写真とエッセイはまったく見飽きる
ことがない。

石塚公昭氏のウェブサイト
http://www.kimiaki.net


[2306] 降雪と驟雨 2007年04月04日 (水)

グループ新入社員の研修で、箱根に昨夜から来ている。
昨夜はなんと雪がぱらついた。
夜、関西テレビの検証番組「わたしたちはどうまちがったの
か」を見る。見ているうちにうとうとしてきと寝てしまう。

六時おきで研修の続き。
宿泊していた小湧園で朝食をすませて、彫刻の森美術館まで
全員で徒歩移動。
午前中は館長と専務理事のスピーチのあと、館内見学。
昼食をおえたあとで、90秒ナマCMの発表。
27組連続というのは疲れるが、フジサンケイグループの全
新入社員が、一生に一度だけ共同作業をするというこの研修
は貴重だと私は思う。

発表後、バスで箱根湯元経由で小田原駅まで出て解散。
新幹線で帰京。
東京は驟雨。潮見駅についた時はやんでいたが、街じゅうは
雨に濡れて光っている。


[2305] ポケミスを並べる 2007年04月01日 (日)

本日も一日じゅう、昨日とはちがう原稿を書き続ける。
ダービー卿チャレンジトロフィーはまたまたインセンティブ
ガイに裏切られてしまった。インセンティブガイが出ていな
ければ、確実にピカレスクコートは買っている。めぐりあわ
せがチグハグなのである。
アタマを古馬戦線から春のクラシックに切り替えなければならない。

ここのところ、ネットの古書店やヤフーオークションで早川
書房のポケミスを買っている。
長らく変わり映えのしなかった本棚を並び替えて、ポケミス
を並べてみたくなったのだ。ミステリなら、定年後にじっく
り読むこともできるだろう。

やはり、夜になってなんとか原稿を書き終えることができた。
昨日と今日で量だけはけっこう書いたのではないか。

ジョイス・ポーターの『ドーヴァー1』を読みながら就寝。


[2304] 戦後史の華やかな闇 2007年03月31日 (土)

ムリヤリ短歌モードにアタマを切り替えて、一日じゅう原稿
を書き続ける。
いちおう、集中力が出てくる。

山本信太郎著『東京アンダーナイト』(廣済堂刊)を送って
いただいたので、読み始める。
ニューラテンクォーターの社長だった人の回想録。
力道山が刺されたキャバレーとして有名な場所だが、戦後の
政治、経済、興行、芸能、スポーツといったさまざまな分野
の華やかな闇の娯楽場だったといえる。
著者が力道山が刺された現場を目撃していたということは、
この本ではじめて語られることかもしれない。

本を読み、気分転換をしたら原稿を書く、ということを夜ま
で続けていたら、なんとか、書き終わることができてほっとする。


[2303] 横浜BJブルース 2007年03月30日 (金)

朝からホテルオークラへ行ってFCG懇話会の受付の手伝い。
午後3時前にお台場のオフィスへ戻り、こんどは新入社員研
修の資料つくり。

昨日の項目に書き忘れたが、夜、お台場キネマ倶楽部の上映
会で、工藤栄一監督、松田優作主演の「横浜BJブルース」を
見た。
徹底したB級テーストで、そこそこ楽しめるように出来ている。
松田優作が元刑事で、今はクラブのブルース歌手兼私立探偵
という、日本ではありえないが、アメリカの軽ハードボイル
ドにはよくある設定。
ストーリーもテンポよく、信頼していた者が実は裏切り者と
いうトリックも定石どおり。
ホモのギャングのボスを財津一郎が怪演している。
このホモセクシャルな人間関係をサブストーリーとする意図
があったようで、ボスのペットの美少年と松田優作とのほの
かな恋情が意外と巧く描けている。最後に、ボスに殺された
美少年の死体の髪を洗い、化粧をして、全身に女のヌードグ
ラビアをはりつけてやるシーンは、巧いなと思った。

ということで、1980年代にはこんな映画がつくられてい
たのだということを知っただけでももうけものだつた。


[2302] コートを脱ぐ 2007年03月29日 (木)

さすがに今日からコートを脱ぐ。
確かに風はすでに晩春から初夏の陽気を感じさせる。
グループ新入社員研修の準備に追われている。
雑事ばかりしているうちに日が暮れる。
途中で定例会議がはさまり、その議事録をつくらなければなら
ないのだが、それ以前の雑事のために、それもできない。

本ばかり買っている。
それが欲求不満の解消行為、代償行為になっているのだろう。

漆黒の影も海鵜の十数羽陽の夕焼けに立ちて身を張る/安永蕗子


[2301] アタマが切り替わらない 2007年03月28日 (水)

もう、コートはいらないほどの陽気だが、あえてコートを着て
でかける。
本日はニッポン放送経由でお台場へゆく。
ニッポン放送での会議中はひたすらメモをとる。
終了後、マーブルのインドカレーゆで卵入りをたべて、お台場へ。
こちらでも会議。

短歌のことを考えていないわけでもないが、しばらく、短歌に
関する文章は書いていない。そのため、アタマが短歌モードに
切り替わっていないのは確かである。

午前二時アシュケナージのショパンありしつかり覚めてFMを聴く/宮英子


[2299] 集中できず 2007年03月27日 (火)

オフィスでは一日じゅう資料つくり。

心がおちつかず、集中力の出ない日々はあいかわらず。
心やすらかな思いで、塚本邦雄全集などひもときたいのだが
いつになったら、そういう心境になれるのだろうか。

行きづまり行きづまり考へし挙句にて辿りつきたる自己否定の説/清水房雄『巳哉微吟』


[2298] 地球環境大賞打合せ 2007年03月26日 (月)

オフィスでデスクワークのあと、明治記念館で、4月の地球環
境大賞贈賞式の打合せ。
スタッフは100人近い。
全体打合せのあと、各持ち場ごとの分科会。
終了したのは、五時半過ぎ。
そのまま、Nさんと一緒に信濃町駅まで行き、Nさんは新宿方
面、私は御茶ノ水方面とわかれる。

お台場から明治記念館に行く間、Nさんからバブル期のヘッド
ハンティングのエピソードなど聞いたのだが、まさに、当時は
桁違いの話が乱舞していたようだ。
バブルのシンボルの一つのジュリアナ東京には、一度だけ、行
ったことがある。
タレントの山田邦子の誕生日が、ジュリアナ東京のVIPルー
ムでおこなわれ、ラジオの彼女の番組のディレクターとして、
NアナウンサーとMディレクターと一緒に行ったのだった。

当時は例のジュリアナ扇子というのが真っ盛りで、カラフルな
羽扇子を掲げて、女性たちがお立ち台で踊っている。
そこへ、山田邦子が同じく羽扇子をふりながら入ってゆくと、
お客はすぐに山田邦子だと気づいて、拍手と歓声がわきあがった。
ちょうど、この時期、山田邦子は好感度ナンバー1のタレントだった。
驚いたのは、一緒にお立ち台にあがった、太田プロの副社長ま
でもが、のりのりで踊りだしたことだ。ビートたけしの本に
「これはこれはのフクシャ」といって出てくるやり手の女性副
社長である。やはり、こういう場でもっともふさわしい行為が
できるというのが、やり手の根性の底に存在している、と、私
は感服したものだった。

ということで、帰宅すると、bk1から、早川書房の異色作家
短篇集のアンソロジー篇2冊が届いていたので、それを拾い読
みする。
前のシリーズでは、アンソロジーは『壜詰めの女房』一冊だけ
だったが、今回は、その『壜詰めの女房』がないかわりに、先
月配本になった『狼の一族』ほか、今月の『棄ててきた女』と
『エソルド座の怪人』の2冊が加わって、アメリカ篇、イギリ
ス篇、その他の国篇と3冊があらたに加わったわけだ。

就寝前に、短編小説をしみじみと読むというのは、とても、贅
沢な楽しみだと思う。しばらく、それを続けられそうだ。


[2297] 東京駅着午前2時55分 2007年03月25日 (日)

土曜日の昼間は大阪で、現代歌人協会50周年記念の短歌フ
ェスティバルに出席。
篠弘さんと永田和宏さんの対談。
栗木京子さん司会で、香川ヒサ、小池光、穂村弘さんによる
ディスカッション「短歌の可能性、不可能性」。
私も出た、島田修三さん司会で、池田はるみ、小高賢、大野
道夫、江戸雪、小黒世茂し参加の「東京人の歌、大阪人の
歌」と、どれもそれぞれ私には面白い内容だった。

そして、ウチアゲに参加させてもらって、栗木京子さん、香
川ヒサさん、落合けい子さんらとしゃべることもできて、午
後8時10分新大阪発ののぞみに乗ったまではよかったのだ
が、朝刊各紙に報道されている、新幹線から落下死?という
静岡と掛川の間の線路に人が倒れていたという事件にもろに
まきこまれた。
掛川駅で約3時間40分緊急停車したため、東京駅についた
のは、午前2時55分。タクシー待ちの列も長くて、帰宅は
ほとんど午前4時というありさま。
一眠りして、今起きて、これを書いている。
新幹線の車内で、おかげさまで、「短歌」「短歌研究」「短
歌現代」の各4月号をすっかり読んでしまった。


[2296] 女性の警官が主役の小説 2007年03月23日 (金)

あいかわらず、新入社員研修のための諸作業に忙殺される。
会議も一つあり、こちらは座っているだけだったので、適度
な休息になった。

ハヤカワ・ミステリのローリー・リンド・ドラモンド著『あ
なたに不利な証拠として』を読了。
複数の女性の警官を主人公とした連作短篇集。
87分署などとちがうのは、どの短篇も一人称で語られるの
で、その語り手となる女性警察官の心理がとても丁寧に描写
されること。
殺人現場での血や汚物の臭気、さらには死体そのものの発す
る異臭が制服や髪の毛にしみこむという描写なども、そうな
のだろうな、と、読者を納得させる実感がある。
犯人に向けて、銃を発射しなければならないこともあるわけ
で、その状況の中で、警察学校や先輩に教えられたことを、
必死に思い出して心構えをする、というあたりもリアルな迫
力がある。
謎解きものとはまた異なった味わい、女性の警察官の人生の
ありようが、小説としてみごとに表現されている一冊だ。

ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』
早川書房 ハヤカワ・ミステリ  1783番 1300円。


[2295] 忙しく一日を過ごし 2007年03月22日 (木)

四月の新入社員の研修のための資料つくり。
途中でヘッドラインニュースの編集もあり、会社に朝入ってから
退社するまで、ひたすら、パソコンの画面を見ながら作業を続ける。
新入社員200余名の一覧をエクセルに打ち込んで、班、部屋、バスなどの分類をする。エクセルの初歩的機能を使っている
だけなのだろうが、便利なソフトだなと感心する。

夜は「短歌人」の編集会議。
今年に入ってから、新入会員が増えているとのこと。
そういえば、誌面に新しい名前がふえている。
ぜひ、定着して長く短歌をつくり続けてほしい。


[2294] 初期化する 2007年03月21日 (水)

実は新しいパソコンを買った。
プロバイダとの契約も通信の工事も無事に月曜日に終ったので
昨日の夜、インターネットの接続とメールの設定をおこなった。
そして、今日、午前中にセキュリティソフトをインストール
したら、なんと、インターネットにつながらなくなり、メール
の送受信もできなくなってしまった。
セキュリティソフトが強すぎて、インターネットへの接続を邪魔
しているらしい。
そして、このセキュリティソフトをアンインストールしようと
しても、どうしてもできない。

プロバイダ、ソフトメーカー、端末のメーカーとサポートに
電話をかけまくったが、どうにもトラブルが解消しない。
結局、ハードディスクを初期化して、「office2007」
のみ、再びインストールするしかないということになる。
そして、さきほど、初期化及び再インストールとインターネット
接続とメール設定が終った。

結局、一日がかりで、また、朝と同じ状態にもどっただけ。
まさに骨折り損の草臥れ儲けの一日だった。


[2293] またまた本の整理 2007年03月18日 (日)

今日もほぼ一日じゅう本の整理。
書棚を移動したので、今まで開かなかった書棚の扉が開くよ
うになり、そこからむかし買ったりいただいたりした歌集が
どっと出てくる。

岡部桂一郎歌集『戸塚閑吟集』
今野寿美歌集『世紀末の桃』
福島泰樹歌集『夕暮』『柘榴杯の歌』
伊藤一彦歌集『月語抄』
藤井幸子歌集『無音のH』

何か私の短歌への初心を思い出させてくれるような歌集群である
初心を思い出せとの短歌大明神のお告げなのだろうか。


[2292] ダブり買い 2007年03月17日 (土)

一日じゅう本の整理。
けっこう、本をダブって買ってしまっているのが目の当たりになる。
しかし、『未読王購書日記』を読んだので、ダブり買いに罪の
意識は感じない。
ただ、なんでこんな本を二冊も買ってしまったのかとのくや
しい思いは残る。
だいたい、篠弘の『現代短歌史』なんて高価な本をなぜダブ
って買ってしまったのか。われながら不可解。

文庫のミステリやSFなどは、もっといろいろダブっている
感じである。
ハヤカワ・ミステリの87分署シリーズで今わかっているだ
けで、『クレアが死んでいる』と『凍えた街』はダブっている。
ミステリ文庫の方の『われらがボス』もダブっている気がする。
何を考えてこんなにダブってしまうのだろうか。


[2291] 後楽園ホール 2007年03月14日 (水)

「週刊プロレス」の別冊で「後楽園ホール40年伝説」という
ムックが出ている。
プロレスを中心にして、後楽園ホールでおこなわれた数々の名
勝負をふりかえったものだ。
私も1990年代の半ば過ぎくらいまでは、毎年50回くらい
は後楽園ホールに通っていた。
プロレスだけでなく、キックボクシング、ボクシングの新人王
戦、シューティング、女子格闘技など、とにかく通いつめたものだ。
つまり、後楽園ホールは格闘技マニアの聖地であり、しかも、
麻薬的な習慣性がある「場」だということだ。
階段の壁に書き込まれたプロレス関連の落書きも忘れられない。
いい加減な落書きのみではなくて、プロレス状況への鋭い批評
や、とんでもない裏情報が書き込まれたりしていて、聖地なら
ではのメディアの役目をはたしている壁だった。
この後楽園ホールの壁の落書きについて、プロレス雑誌に吉田
豪が書いていた。このときはさすがに目のつけどころがいいな
と感心したものだ。

角川の「短歌」の巻頭グラビア企画の「私の短歌の場」で、後
楽園ホールでのFMWのプロレス興行を撮影してもらったこと
も忘れられない。
このときは、ハヤブサがミスター雁之助と対立しているという
アングルの時期だった。

ポニーキャニオンが発売する「白いリングへ」というFMWを
モデルにしたスーパーファミコンの格闘ゲームソフトの制作発
表会をプロレス終了後のホールでやったこともある。
LLPWの興行の中入りで、アクション映画のパブリシティを
やらせてもらったこともある。
全日本女子プロレスで、ラスカチョーラスオリエンタレスの結
成10周年ということで、ニッポン放送からの記念品をリン
グ上で、三田英津子にわたしたのも忘れられない。

後楽園ホールでは数え切れないほどの名勝負を見たが、一つ選
ぶなら、やはり、全日本女子プロレスでの北斗晶VS紅夜叉戦。
北斗が紅夜叉に一方的に攻めさせて見せ場をつくったあと、ノ
ーザンライトボム一発で勝負を決めた。これがプロレスだと、
とても興奮した。北斗も紅夜叉もみごとなプロだった。

ということで、きりがないので、これでおしまい。


[2290] ひらがなの「ぬ」 2007年03月13日 (火)

あいかわらず心おちつかない日々で、日記もとぎれがちで申し訳ない。

「競馬最強の法則」にJRAへの転入試験に48歳で合格した
安藤光彰とターザン山本の対談が載っている。
その中でのアンミツの発言。
「だってオレ、ひらがなの「ぬ」の字はどう書くんだっけっ
てところから勉強始めたんだから」
実に感動的な発言。
JRAの2007年の新人にして最年長ジョッキーにはぜひ
華々しく活躍してほしい。

夜、門前仲町のてんぷら屋に行くと、先客にどこかで見たよう
な人が居る。
よくよく、その人の風姿を観察してみると、なんと役者の小島
秀哉だった。トクをした気分である。


[2289] 人ごみで疲れる 2007年03月08日 (木)

午後から有楽町のビックカメラへ行く。
ウイークデイの午後というのに、とても混んでいる。
用件はすませたのだが、がっくりと疲労感にさいなまれる。

帰宅後、本の整理をする。

いろいろと書くべきことはあっても、疲れでそういう意欲が
わかない。
もうしばらく、メモ的な記述でご海容ねがいたい。


[2288] とりこみ続きの一週間 2007年03月07日 (水)

ちょっと、とりこみごと続きで、日記を書けない状況が続いている。

この一週間で読んだ本。

真保裕一著『最愛』
ミステリの新作をハードカバーで久しぶりに読んだ。
読んでよかった。おすすめ。ヒロインを松雪泰子で映画化してほしい。

再読している本

未読王著『未読王の購書日記』
喜国雅彦著『本棚探偵の冒険』

この二冊を読むと読書&購書生活に自信がわいてくる。
初読の時は、読まない本を買ってもよいのだ、という自信をもらったし、
今回は、持っている本をダブって買っても恥ずかしくない、という思いを
バックアップしてもらえた気がする。
いずれ、私がダブリ買いしてしまった本を発表するかもしれない。


[2287] 介護の小説 2007年02月27日 (火)

いろいろとりこみごとや不義理をかさねることがあって、心や
すまらない日々を送っている。

オフィスでいろいろあって、帰宅後、耕治人の『そうかもしれ
ない』(晶文社刊)読了。
「天井から降る哀しい音」「どんなご縁で」「そうかもしれな
い」の三篇が収録されている。
もう20年以上前に発表された小説だが、老いた夫が老いて認
知症になった妻を介護するありさまと心理の動きがなまなまし
く書かれている。私小説として、語り手の夫の心理が煩雑なほ
どに描写されているので、読み手としては息苦しくなってくる。
介護にかかわる小説は近年多いのだろうが、すでに20年前に
耕治人がこういうかたちで表現していたわけだ。
私小説のひとつの終焉形かもしれないが、夫婦関係が最終的に
は、慈愛に至るということが、この小説の主題なのかとも思う。
この作品集の書評を書くことになっているので、もういちど
精読しようと思う。


[2286] 人間ドック 2007年02月27日 (月)

午前中は人間ドックの受診。
霞ヶ関ビルの健康医学協会。
ここへ受診にくるのはもう十回を超えているのではないかと思う。
バリウム検査はいつもながら辟易する。
バリウムを飲むのは平気なのだが、回転させられたりするうちに
気分が悪くなってくる。
以前、血圧が高かったときは、途中で中止してもらったこともあった。

受診後、お台場のオフィスへ行く。

ナショナルのソフトあんかのやさしさはいだき寝たりし病棟の冬より/酒井佑子「短歌人」3月号


[2285] 西王燦氏の新作 2007年02月25日 (日)

朝から空気がとても冷たい。やっと二月らしい気候になった
ということだろう。
一昨日、引用できなかった西王燦さんが「路上」に発表して
いる「隠れ里」から何首か引用してみる。

・七竈焚きつつ想へば若き日に忘れ去られし革命ふたつ
・雪の軒、雨の木陰と、かりそめの性愛ありき他生の縁か
・大寒の日に故知らず数株のバナナを食ひをりき敗残兵の父は
・みちのくに隠れキリシタン棲みゐしを知られざる間、虹数万回
・十里四方に人あらざれば単独の鹿と我との距離測りかね

こういう感じの二十一首。
引用五首目の「単独の鹿」とは小中英之の面影を喩にしていると私は読んだ。

こういう歌ならば何百首でも読みたくなる。


[2284] 歌集喫茶うたたね 2007年02月24日 (土)

噂の歌集喫茶うたたねへ行く。
神保町のすずらん通りにある富山房ビルの地下の喫茶店を借り
切って、書棚に珍しい歌集や最近の歌集を並べて、自由に手に
とれるようにしたもの。
最終日の今日はイベントも組まれており、私は朗読グランプリ
の審査員をする。
松本キックさんの司会、審査員は語りのプロフェッシヨナルの
北原久仁香さんと私。出場者は9組。会場最前列には作家の北
村薫さんの姿もみえる。
熱演のすえに、優勝は多田百合香さん。準優勝里都さん、キッ
ク賞は村田馨さんに決定。

「短歌人」の仲間もたくさんきてくれていました。
天野慶、村田馨ご夫妻の企画力と実行力の勝利でしょう。
村田家には、故筒井富栄氏所蔵の歌集がたくさんあるわけで
これを短歌の好きな人たちに実際に見てほしい、という発想
だったのでしょう。
そのために、空間自体をプロデュースしてしまうという発想と
実行してしまう力に心から敬意を表します。

ぜひ、年に一回はこの空間「歌集喫茶うたたね」を出現させて
ほしいと思います。
かつて田中槐さんが企画した「マラソン・リーディング」、五
十嵐きよみさん企画の「題詠マラソン」と時も、それらの企画
力、実行力に敬服しましたが、今回はさらに歌集という部分に
ポイントをしぼり、まさに「歌集よ、街へ出よう」を実現させ
てしまった。私などの固いアタマではとても思いつかない、す
ばらしい発想で、脱帽するほかはない。


[2283] 「路上」あれこれ 2007年02月23日 (金)

萩のシンポジウムに関連した産業遺産関連の打合せ。
ぜひ、実現してほしいものなのだが。

ここのところとりこみごとが多くて集中力が出ない。

「路上」が送られてきたので、なんとなくページをめくってい
ると、西王燦さんの短歌が載っている。
気をひきしめて読んでみると、良い作品が多い。
自分はこういう短歌が好きなのだ、と確認する。
これを書いている現在、手元に「路上」がないので、作品を引
用できないので説得力には欠けると思うが、「路上」が手元に
ある人は、ぜひ、西王作品を読んでみてほしい。

佐藤通雅さんが1972年に亡くなった元「短歌人」のメンバ
ーだった泉行尚さんのことを短い文章で書いている。心にしみ
こんでくる文章だ。
さらに「路上」の今回の号で特筆すべきなのは、「小中英之書
簡集」だろう。若き日の小中英之氏が若き日の佐藤通雅氏に出
した書簡の言葉がなんとみずみずしく熱気にみちていることか。


[2282] 藤沢往復 2007年02月22日 (木)

ちょっと所要があって、藤沢市の聖智文庫をたずねる。
オーナーのAさんは私の学生時代の先輩にあたる。
帰りは湘南ライナーで池袋に出て、謎彦さんご用達の洋食店の
タカセで昼食。
その後、サンシャインシティの古書展をのぞき、北上次郎の
『冒険小説論』を600円で購入後帰宅。


[2281] 大辻隆弘さんの好エッセイ 2007年02月21日 (水)

 先週書こうと思っていて忘れてしまったのだが「レ・パピエ・
シアン」2007年3月号が「『サラダ記念日』二十年」とい
う特集を組んでいる。
矢野佳津さん、小林久美子さんたちが、それぞれの思いをこめ
た文章を書いているが、大辻隆弘さんの「俵さんが泣いた日」
というエッセイが私には面白かった。

これは1987年6月14日に豊橋で開催された「短歌フェス
ティバル・イン・豊橋」でおこなわれたシンポジウムでの印象
的なエピソードを語ったもの。
この時、俵万智の『サラダ記念日』は出版されたばかり。
彼女も大辻さんもパネルディスカッションのパネリストだった。
 そのディスカッシヨンで佐久間章孔さんが俵さんを批判して
次のように語った。
「(前略)詩というものは、社会なり体制なり、あるいはそう
 いう内部にいる自己というものに対する批判精神を欠いたら
 詩ではない、と思うのです。だから、あなたは大歌人になる
 かもしれないけれど、そういう考えを持っている以上、詩人
 にはなれない」
 前提となる俵さんの発言をカットしたのでわかりにくいかもし
れないが、ともかく、そう言われたとたんに、
「彼女は、くやしさに顔をぐちゃぐちゃにして、視線を机に
 落とした。そして、その大きな目から涙がひとすじこぼれ 
 た」のだそうだ。

 このディスカッションは大辻さんのパネリスト初体験で、しか
も、考えをまとめることができないままに気押されて、一言も
発言できないままに終ってしまったのだそうだ。
そして、何もしゃべれなかった惨めさにぐったりして、同じ
「未来」の山田富士郎氏のところへ挨拶にいったところ、
「僕はね、君のような岡井エピゴーネンは認めないんだ」と
言われてしまったという。
「名古屋に向かう帰りの名鉄電車で、私は窓の外の闇に目を
 やりながら、俵さんと同じく、悔しさで胸がいっぱいになっ
 て、落涙した。」
と、大辻さんの文章は結ばれている。

 近過去を歯切れの良い文章でつづった面白く読める文章で感心
した。こういう過去の交遊録的なエッセイを知的な文体で綴る
のは、それこそ岡井隆氏が抜群に巧みなのだが、大辻さんの文
章力は岡井氏に匹敵している。
1987年は、私はまだ、「短歌人」の中にいるだけで、歌壇
へは出ていなかったのだが、大辻さんのこの文章を読んで、こ
ういう場に自分も居たかった、と、くやしく思った。
そして、もし、その場に私が居たとしたら、もちろん、佐久間
章孔さんと同じことを言ったにちがいない。


[2280] パソコン不安定 2007年02月20日 (火)

体調をくずして休む。
午後、区役所に行き、いくつか手続き。
夕方帰宅。

昨日こわれたパソコンがなんとか夜になって復旧。
とはいえ、不安定であることは変わりない。
パソコンで書いた原稿がメールで送れなくなってしまうのが
いちばん困る。

夜、短歌作品をメールにて送稿。
ちょっとだけほっとする。


[2279] とりこみごと 2007年02月19日 (月)

ちょっととりこみごとで終日おちつかず。


[2278] 東京マラソン2007 2007年02月18日 (日)

東京マラソンのスタッフとして、朝六時半に都庁の都議会棟の
エントランスへ行く。
五時に起きたら強い雨。五時半に家を出て、三つ目通りに出て
タクシーを拾おうと思ったが、ラッキーにもマンションの前で
タクシーと出会う。
門前仲町までタクシー。大江戸線で都庁前駅まで。
すでに地下鉄の駅も東京マラソンの飾りつけがなされている。

東京マラソン事務局の人と一緒に、招待者の受付を担当するこ
とになる。陸連関係者とスポンサー、メディア関係の受付。
スタート直前まで、ひきもきらずやってくる招待者対応。

9時10分に雨の中のスタート。
第一庁舎と第二庁舎を結ぶ5階の渡り廊下から、見下ろすかた
ちで、スタートを見る。
すでにテレビでも、この場面は何度も放映されているが、とに
かく、群衆の河がえんえんと流れていくような光景。
最終ランナーがスタートラインを超えるまで20分以上かかっ
たことになる。
この光景を空撮で見たら、人の河が延々と蛇行しているさまが
面白かっただろう。東京の血管の脈動として見ることもできた
かもしれない。

ゲスト、招待者の出欠確認もすんで、10時過ぎに一度解散。
私は一時帰宅して、昼食を食べて、競馬などをしばらく見てか
ら、四時半に京王プラザホテルに行く。
ここで、表彰式がおこなわれるのだ。
ここでも、メディア、スポンサー関係の受付を手伝う。
マラソン事務局側もかなり疲れており、けっこう、ミスがあっ
たが、なんとかトラブルにはいたらず、お客さんの迷惑にも
ならなかったのでほっとする。
とりあえず、目の当たりに有森裕子とその配偶者のガブリエル
を見ることができたのがささやかな収穫か。

七時過ぎに解散。朝夕あわせて7時間立ちっぱなしで、ランナ
ーでもないのに、ふくらはぎの筋肉が痛い。困ったものだ。
来年も手伝いに行くことになるのだろうか。




[2277] 明日は雨らしい 2007年02月17日 (土)

朝から石田比呂志氏の歌集『萍泛歌篇』の書評を書く。
好きな歌がたくさんあるので、どのように書評を展開しようか
迷ってしまい、けっこう、難渋してしまう。
書き終わらないままに、六本木に髪をカットしてもらいに行く。
家を出た時は曇り空で、地下鉄の六本木駅で地上に出たら、
小雨がぱらついていた。
明日の東京マラソンは、主催者側のスタッフとして、手伝いに
行くことになっているのだが、この分だと、朝のスタート時点
では、まちがいなく雨だろうと思う。

帰りには、地下鉄を日比谷で降りて、JRの有楽町まで歩き、
一駅だけ東京駅まで乗って、八重洲古書館と八重洲ブックセン
ターに寄る。
古書館の方で、ヘンリー・スレッサーの『うまい犯罪、しゃれ
た殺人』のポケミス版があったので購入。
ジャック・リッチーが短編の名手として再評価されている昨今
スレッサーも再びきちんと評価されても良いのではと思う。
もっとも、この『うまい犯罪、しゃれた殺人』は、ハヤカワ
ミステリ総目録のオールタイムベスト10で10位にランク
されているので、すでにじゅうぶんに評価されているのかも
知れないが。


[2276] アン・フェア・ザ・ムービー 2007年02月16日 (金)

3月公開の「アンフェア・ザ・ムービー」の試写を見る。
テンポがよくて、最後まで一瞬も気をぬくことなく見終える
ことができる。
こういう感じなら、原作の小説を読んでも面白そうだ。
原作者の秦健日古は作家の秦恒平氏の息子。
ヒロインがとにかく動いてゆくというのが、チャンドラー的な
ハードボイルドとは違う新しさだろう。もちろん、そういう小
説は、すでにいくらでもあるだろうが、要はヒロイン雪平夏見
像の造形が成功しているということだ。

夜、書くべき原稿があるのだが、眠ってしまう。