[198] 淋しのなかにとけてゆく午後 2001年04月01日 (日)

●かの子をつれて、横浜の実家に遊びに行く。
 東横線の大倉山駅からバスで10分、昭和40年代の初期に東急グループ
 が開発した住宅地である。
 現在、この家に住んでいるのは私の継母一人。
 この人は亡父の後妻で、実は私の実母の妹だから、もとは叔母であり
 のちに継母になった。現在は私とは養子縁組みをしてあるので法律的
 にも親子。

●お鮨をご馳走になり、三人でトランプをして遊ぶ。
 実はこの家と同じ番地に詩人の川端隆之さんの家があるはずなので
 探しに行く。同じ番地といっても、予想より広く、川端さんの家は
 2ブロックほど離れた場所だった。表札だけ確認して帰る。

●帰りはいつもの東横線、日比谷線、東西線というラインではなく、
 市営地下鉄であざみ野に出て、田園都市線から半蔵門線に乗換える
 路線で帰ってみる。
 神保町まで行き、東京堂と三省堂に行く。
 北川透『詩的メディアの感受性』を買う。

●横浜への行き帰りに高橋和彦著『完全現代語訳・樋口一葉日記』を
 読んでいたのだが、これがけっこう面白い。
 半井桃水が「武蔵野」という文学雑誌をつくって、5000部ほど
 刷って、世の中に広めたい、と言ったのに対し、
 一葉が「万世橋のたもとに立って往き来きの人々に無料で配ったら
  五千はおろか五万でも世にひろまりますよ」と言ったという。
 このどこが面白いかというと、当時(1892年頃)の万世橋は
 それほど繁華なエリアだったということ。
 東京の街の栄枯盛衰ということだ。

・淋し、とは少し異なる感情が淋しのなかにとけてゆく午後/荻原裕幸
 


[197] 時間は楯であるのか既に 2001年03月31日 (土)

●桜の花に雪が降る東京。
 午前中、平和島の大恵クリニックまでアトピー性皮膚炎の薬をもらいに
 行く。外は思ったほど寒くはないが、やはり、精神的に冷え込む気がす
 る。薬をもって外へ出ると霙になっている。

●品川駅経由で東京駅へ出て、八重洲古書館へ行く。
 八重洲古書館で買った本。

 筏丸けいこ『パプリカ・ブリーカー』700円
 水上勉『宇野浩二伝』上下     1600円
 滝田ゆう『滝田ゆう落語劇場』   800円

●病院の往復及び待ち時間に黒武洋著『そして粛清の扉を』を読了。
 女教師がクラス全員を人質にとり、生徒たちを殺してゆくという物語。
 少年法による少年犯罪者の過剰な保護へのアンチテーゼをフィクション
 のかたちで展開してみせたということだろう。
 漢語の使い方に変なクセがあるので、文章にうるさい人はひっかかるか
 もしれない。しかし、一気にこれだけのホラ話を読ませてしまうストー
 リーテラーとしての腕は信頼できる。
 第一回ホラーサスペンス大賞の受賞作ということで、巻末に選考委員の
 大沢在昌、桐野夏生、宮部みゆきの選評が載せられている。この中で
 宮部みゆきが、ストーリーテリングの腕を評価しながらも、少年法に
 対する著者の姿勢には私は賛成しない、とはっきり言明しているのも
 表現する人の潔さとして信頼できる。

・いま雨があの日は雪が、換へられない時間は楯であるのか既に/荻原裕幸


[196] まはる、以下略 2001年03月30日 (金)

●年度末で月末で週末なので道は混んでいるし、会社もざわついている。
 伝票作業や年度末の駆けこみ稟議などかどっと押し寄せてくる。
 何か仕事に行き詰まっているような気がする。
 稟議書を書いたり、伝票に捺印したりしている刹那
 「詩人になりたかったなあ…」などと考えている自分がいる。
 こんな心理的起伏をくりかえしながら定年の日を迎えるのだろう。

●今日、届いた本
 林口僥子歌集『電脳素描』
 『永田典子エッセイ集』
 佐藤通雅著『岡井隆ノート』
●今日見たテレビ番組
 「特集・爆笑オンエア・バトル チャンピオン大会出場11組の笑い
  への情熱」
 これは「電脳短歌の世界」の若手笑芸人版のようなもの。

・ぎんいろの缶からきんの水あふれ光くるくるまはる、以下略/荻原裕幸


[195] このやすっぽい傘でふせげるもの 2001年03月29日 (木)

●昨日の日記、金曜日となっているがもちろん水曜日。
 早く金曜日になってほしいという欲求のあらわれだろうか。

●冷たい雨が降りしきるなか、或る会社へ社内情報インフラシステムの
 見学に行く。
 
●「あなんじゅぱす」のライブCDを聞く。
 「言葉を発音する力」を感じる。こういう感触もめずらしい。
 田中庸介さんの詩「オフ、」が歌われている。やはり力を感じる。
 少なくとも私は詩集『山が見える日に、』で文字だけで読んだ時より
 ずっと、これらの言葉を感受できたと思う。

・コンビニで傘を買ふこのやすつぽい傘でふせげるものを愛して/荻原裕幸


[194] ひとりふたりさんにん、何の力だ 2001年03月28日 (金)

●朝から会議が三つ。疲れた。

●「関ケ原掲示板」というのと「BED&BREAKFAST」という
 掲示板で詩の朗読についての論争がかわされている。
 それぞれの詩、あるいは詩の朗読への思いが言葉にされていて、読み
 続ける意欲がわく。
 RADIO DAYSというユニットで詩の朗読をしている里宗さんと
 いうかたの意見が、パフォーマンスと文学性の距離感をいちばん認識し
 ている人の意見のように私には思えて共感できる。

●荻原裕幸歌集『デジタル・ビスケット』を読んでいる。

・三越のライオンに手を触れるひとりふたりさんにん、何の力だ/荻原裕幸

向田邦子に電車の窓から、線路沿いの家の中にライオンが居るのを見るという
エッセイがあるが、実はこれと同じエピソードを串田孫一も随筆に書いている。


[193] あかねさすあの午後の陽へ 2001年03月27日 (火)

●会社で海外研修に行ったタカヤナギくんの研修レポートがあった。
 タカヤナギくんはもともと俳優で「時をかける少女」では原田知世の
 相手役をやっていた。そのほかにも何本かの映画に出たあと編集者に
 なって、ここでも活躍、さらに放送局へ転職してきた異色社員である。
 会社の中でいちばんの美男であることはまちがいない。
 以前、かれが編成部に居たころ、夏に編成部員全員がユカタ姿で
 パブリシティ用の写真を撮ったことがあったが、
 彼だけは「明烏」の若旦那に見えたが、他の連中はみんな丁稚か番頭に
 しか見えなかったものだ。

●タカヤナギくんの研修は「フィンランドとスエーデンにおけるモバイルと
  インターネットの現状」というもの。
 この北欧二国は世界でも携帯電話の普及率がとても高い国。
 これは、人口が少なくて国土が広い上に気象もきびしいので、有線より
 無線のインフラに力をいれた方が効率的ということ。
 言われてみればそのとおりだ。
 とてもまとまったレポートでわかりやすかった。
 携帯電話がそのままキャッシュカードのように使えて、清涼飲料水などが
 買える自動販売機があるそうだ。このシステムで買える物は、値段の安い
 ものに限られるらしい。
 また、携帯電話にストラップをつける習慣はなく、本体をそのままバッグ
 やポケットに入れているらしい。それならストラップをはやらせれば、
 一儲けできるじゃないか。

●夜は短歌関係者と密談。

・都市はまぼろしあかねさすあの午後の陽へ向け発砲をくりかえすのみ
 /正岡豊『四月の魚』

 


[192] 耳蒼ざめてはりつめていよ 2001年03月26日 (月)

●年度末、月末ということで、道が朝からとても混んでいる。
 都バスで通勤している者にとっては、時間がよめなくなるのがつらい。

●紀伊國屋ホール「笑芸人大賞受賞ライブ」へ行く。
 夕方は朝よりもっと道が混んでいるので、新宿についたのが7時。
 あわててエレベーター前へ小走りに向かうと、うしろから声をかけられた。
 ふりむくと、山藤章二先生の奥様であった。このかたは、イッセー尾形の
 ライブのプロデューサーをずっとされている。
 二人でホールへ入る。オンタイムでライブが開始されていて、司会の
 浅草キッドの声がすでに聞こえている。
 山藤夫人と一緒にロビーを通ったら、編集者なのか演芸関係者なのか
 若い連中が十数人いっせいにたって、こちらに挨拶してくるので驚いた。

●司会は浅草キッドと高田文夫。
 優秀賞がいっこく堂、昭和のいる、こいる、春風亭昇太。
 最優秀功労賞は内海桂子。
 最優秀連載賞が立川談志。
 最優秀銀賞が爆笑問題。
 最優秀金賞はビートたけし。
 
●雑誌「笑芸人」の発行元が白夜書房なのでプレゼンターにあの末井昭が
 出てきた。
 爆笑問題だけがNHKの番組の収録と重なっているということで、
 テープのコメント。代理の受賞者として「タイタン」の社長で太田光夫人の
 太田光代が出てくる。彼女もむかしは芸人で楠田枝里子のマネなんかやって
 いたなあ、と思っていたら、司会の浅草キッドが「楠田枝里子やって」と
 ふったので、ちょっとだけやってくれた。なつかしい。

●浅草キッドのアピールで、爆笑問題と浅草キッドの対決ライブがおこなわ
 れることになりそうだ。
 この対決が実現したら、前座でツービートを復活してもいいとたけしさんが
 言ったので、一気に会場がもりあがる。いっそ、武道館でやったらどうか。
 たけしさんは、漫才というジャンルにおいてはツービートが、爆笑問題と
 浅草キッドにはすでに凌駕されているということに気づいている。
 ネタで爆笑問題、漫才の総合力で浅草キッドにツービートは及ばない。
 今年中にぜひ実現してほしい。

・橋落つるとも紫陽花の帆とおもうまで耳蒼ざめてはりつめていよ/正岡豊


[191] 映像なんかになりたくない 2001年03月25日 (日)

●朝起きると雨だった。
 雨でもすでにあたたかい空気をまとったような雨。季節の推移を感じる
 ことなどほとんど興味はないのだけれど、やはり、今年の気象は異常だ
 なあ、と思う。
 それにしても、もう三月も終わりなのか。

●「NHK歌壇」の時評を書きつつ競馬中継を聞く。
 友人たちとペーパーオーナーゲームをやっているのだけれど
 今年の私の持ち馬で活躍しているのはメイショウドウサンとダイワルージュ
 である。去年はチアズグレイスをもっていたのでダイナガリバー以来、
 十数年ぶりにクラシックオーナーになれた。
 このゲームを始めて、もう、二十年はこえている。なにしろ最初の年が
 シャダイアイバーのオークスの年だったのだから。

・ひまわりよ映像なんかになりたくないぼくのからだをつらぬいて咲け
 /正岡豊『四月の魚』


[190] だめだったプランひとつをいまきみが 2001年03月24日 (土)

● イトーヨーカ堂のバーゲンへ靴と春物の背広を買いに行く。
そのあと、かの子と二人で古石場図書館へ行く。
山口瞳の男性自身シリーズのここ数年に発行されたものがないかと思っていたのだが
まったく置いていない。
山口瞳の著書は新潮文庫でも端境期なのか、ごく一部しか書棚には残していない。
図書館を出て、門前仲町まで歩いて、サーティワンでかの子とアイスクリームを食べる。
13時半のマンションのバスを待って、家にもどる。

● 午後はだらだらと本の整理。休みの日は必ず本の整理をしている。
競馬中継を聞いていると、突然、地震のニュース。
震度6弱というのはたいへんな震度である。
中国、四国地方を中心にした地震のようだが、あまり地震の起こらない地方ではないか。
東海大地震、首都圏直下型大地震は警告されているが、それ以外の地域でここ1年は盛
んに地震が勃発している。
本当は、下北沢のアーティストに錦見映理子さんや岡田幸生が出る朗読会を聞きに行く
つもりだったのだが、会社から緊急呼び出しがあるかもしれないので、家に待機する。

● 結局、夜になっても呼び出しはなかったが、ライフラインの不調など、地震被害の実態
はこれから明らかになってくるはずだ。
夜、今まで読み残していた本の残りを一気に読みとおす。
読んだ本。
浅草キッド『お笑い男の星座』文藝春秋 1429円+税
浅草キッド。ターザン山本『プロレスLOVE論』東邦出版 1333円+税
伊集院光、みうらじゅん、山田五郎『会議室』 光進社 1400円+税
昨日の藤井青銅さんの本もふくめて、ここのところ、この手の本は水準が高く、笑いの
レベルも高くなってきた。これは明かに爆笑問題の本の数々がきちんとしたレベルを維持
し続けた効果だろうと思う。
こういう本はよみたくない人は読む必要がないのだが、時代の流れをかなりリアルに映し
だしていることは確かなのである。

・だめだったプランひとつをいまきみが入れた真水のコップに話す/正岡豊


[189] さめればいつかあかるき街よ 2001年03月23日 (金)

● 金曜日は会議が続く。
午前中が有楽町委員会。
午後一番で社内情報化プロジェクト
そして、足立区の町づくり課の人達とミーティング。
さらに午後4時から、民放車輛担当者会議から懇親会。

● 会議の合間に席にもどると藤井青銅さんが、著書の『TV・マスコミ「ことば」の真相』
をくれにきてくれる。
この本は枡野浩一さんの掲示板にも面白いと紹介されていた本。
ビアスの「悪魔の辞典」のギョーカイ版。

【向田邦子の最後の作品集】これが最後と言ったはずなのに、またぞろどこかの出版社
から、亡くなった著者の新しい本がでる。向田邦子と司馬遼太郎とプレスリーは生きて
いるのかもしれない。

と、いうようなもの。業界関係者は苦笑するものが多い。

・さめればいつもあかるき街よ花束を背にくくりつけておくれ 誰か/正岡豊


[188] どんなにか茜を追いかけて行きたかった 2001年03月22日 (木)

● 「短歌人」の編集会議のためにバスを待っていたのだが、浜松町行きが五台続けて
来たのに門前仲町行きが来ない。しかたがないので、タクシーで豊洲まで行く。
豊洲図書館に寄り、向田邦子のシナリオ『家族熱』と色川武大の『狂人日記』を借りる。
池袋についてから、ちょっと古本大学に寄って、向田邦子の『眠る盃』と山田太一の
『街への挨拶』を買う。どちらもエッセイ集。2冊で五〇〇円。

● 編集会議終了後、桜蘭で夕食。高田流子さんが毎日新聞の夕刊の枡野浩一さんのエッセイ
を読んでいて、正岡豊さんの『四月の魚』の新装版が出たことを知っていた。
高田さんは旧版が出たとき、正岡さんから寄贈されていたのだそうだ。
私は高田馬場の芳林堂書店で買ったような気がする。


・ つつがなく終れば朝 どんなにか茜を追いかけて行きたかったろう


[187] はるかなライト兄弟 2001年03月21日 (水)

●自分の中に新たな芽生えのようなものを感じている。
 何かわからないが新しい局面へ打って出たいという思いが湧く。

●会社のOBが亡くなり、その人の手元にクラシック番組のテープが
 五〇〇本ほど残っているということがわかる。
 これを受けとって、CD化して保存しなければならない。
 どういう段取りでやるかは遺族の方と相談。
 こういうふうに「談志・円鏡、歌謡合戦」のテープがごっそり発見され
 たりすれば、面白いのだけれど。

●夜、銀座で食事。何かとてもはるかな時間が身体の奥底によみがえって
 くるような気持ちになっている。

・風に問わば風がこたえる約束をまもれはるかなライト兄弟/正岡豊


[186] 遠くからみよ春のあなたは 2001年03月20日 (火)

●休日、天気がよい。本の整理をする。
 押し入れにつっこんであった20年分以上の「競馬四季報」を
 山崎書店に送って、処分してもらうことにする。
 少し、トランクルームにあずけてある分もあるので、そちらは直接
 山崎書店へ送ってむもらう。
 これで、手元に競馬の資料が完全になくなってしまったことになる。
 でも、競馬への興味を失ったわけではないのだから、いつかまた
 好きな馬に関しての文章を書くこともあるだろう。

●午後から自転車で東陽町へ行く。
 汗ばむような陽気だ。
 また、古本屋で何冊か本を買ってしまう。
 本を処分しながら、本を買っているワタシ。
 そういえば、押し入れの奥から「JUNE」の大判時代のものとか
 まだ「JUN」といっていた時代のものとか10冊ほど出てきた。
 これはレアな雑誌ということになるのだろうか。

・このドアをはずしこわされゆく店を遠くからみよ春のあなたは/正岡豊


[185] 群れざる色がたそがれとなる 2001年03月19日 (月)

● 向田邦子の本を今まで読まずにいたことを後悔している。
いまさら、私が向田邦子のすごさをあれこれ書くまでもなく、各種の文庫本の解説で
水上勉や山口瞳や沢木耕太郎や久世光彦といった人たちが、的確な言葉で分析し、また
惜しみない賛辞をおくっている。

● 向田邦子は一九八一年八月二十二日に台湾上空で爆発事故をおこした飛行機に乗ってい
たことにより、唐突な死をとげている。
『父の詫び状』の文庫の解説を書いている沢木耕太郎は、まさにその解説を書いている
日に、この事故のニュースをラジオで聞いたのだという。
また、秋山加代は、その著書『叱られ手紙』の帯文を向田邦子に依頼しており、事故の
当日の早朝五時に向田から電話をもらって、今、書き上げたばかりの帯文を読んで聞か
せてもらった、と書いている。作家としての向田邦子が活躍した時期はほんとうに短く
「向田邦子は突然あらわれてほとんど名人である」と山本夏彦が言ったのも、その唐突
な死までの期間の短さをもふくめて突然ということなのだろうと思う。
エッセイ集の『父の詫び状』は今後、私のオールタイムベスト10の上位にランクされ続
けることになるだろう。

● 会社は休みの谷間ということで、ひっそりとしている。
総務部も石原、上村の両氏が代休をとっているので、とても静かである。
局長が土日に書いた原稿をプリントアウトして読ませてくれる。
本郷の家の近くのお寺が、樋口一葉が幼い頃に住んでいた場所であり、お母さんの納骨
をしたお寺に、半井桃水のお墓があった奇遇を書いたエッセイ。
もちろん、向田邦子とくらべるわけにはいかないが、上司がこういう文藝好きというの
も珍しい職場環境だと思う。

・さようなら群れて立ちたるきりん草群れざる色がたそがれとなる/正岡豊


[184] とびこす臓器バンクのビルを 2001年03月18日 (日)

● 朝方は雨が降っていたが、午前10時くらいになったら、晴れ間が見えて来た。
かの子と一緒に自転車で、東陽町の図書館に本を返しに行く。
ところが、着いてみたら、第三日曜日は図書館は定休日なのだそうだ。
しかたがないので、休日用の返却ポストに本を投函、こんどは文教堂に行く。
かの子にここで「かいけつゾロリ ぜったいぜつめい」を買ってやる。
さらに自転車に乗って、北砂の文庫とCDの安売り屋に行く。
ここで文春文庫の秋山加代著『叱られ手紙』と新潮文庫の須賀敦子著『トリエステの坂道』
を各200円、計400円で購入。内容を考えるととても安い買い物。

● 午後は本の整理をしながら、競馬中継をラジオで聞いて、だらだら過ごす。
インターネットのHPを見て居ると、菊池典子さんの「ひかりの方舟」と岡田幸生さんの
「なんという薔薇日記」に、昨日、秦野でおこなわれた、自由律俳人の住宅顕信に関する
講演会があったようだ。二十五歳で夭折した人物だが、鮮烈な時間を生きたということか。
菊池典子さんの「ひかりの方舟」の記述はとても詳細で読み応えがある。
菊池さんや岡田さんとMLを通じて知り合わなければ、こういうこととも無縁だったはず
であり、この人間関係の増殖はとてもありがたいことだ。

・いずこへとゆくかしらねどゆうぐもはとびこす臓器バンクのビルを/正岡豊


[183] ゆけよ涙の機雷を避けて 2001年03月17日 (土)

● 大学生で短歌をつくっている人達と話す機会があった。
男性3名、女性2名。いずれも結社には入っていない。
女性の一人は江戸川大学で、短歌の実作演習の授業があったので
それがきっかけでつくるようになったのだそうだ。
もう一人の女性は二松学舎でやはり短歌実作の授業があり、毎週二首ずつ
短歌をつくって提出しなければならないので、つくっているうちに短歌が
好きになったのだそうだ。彼女たちは、それぞれ大学の先生が居る結社に、
今後、入るかもしれないとのこと。
男子学生は京大、早稲田、國學院で、それぞれ学内の短歌会で短歌をつくっている。
彼らは卒業しても短歌をつくるが、結社に入る気持ちはないという。

● 夕方、久しぶりに荻窪のブックオフに行く。
時間と小銭があってブックオフへ行くとついつい本を買いすぎてしまう。
松田哲夫著『編集狂時代』、村松友視著『村松友視のプロレス塾』など、けっこう
持ち重りするほど買う。また、置場所に苦労しなければならない。
村松友視の本にはエッセイのほかに上田馬之助との対談が載っているのだが
その中の上田の言葉に面白いものがある。
「今の日本のプロ野球の選手がアメリカの大リーグで通用しますか?
オレはアメリカのプロレスでいつでもメシが食えるんですよ」
「私は八百長という言葉は嫌いだけれど、ショー・ビジネスという言葉には何の
 反感もないけどね。猪木なんかはそれで怒るかもしれない。でも、オレはショーは
 ショーでいいと思うんだよ。カネはもらっているんだからね」
1982年に出た本なので、ほぼ20年前の話である。
他にもプロレス団体はもっと所属レスラーの安全管理を厳しくおこなうべきだ、との提言
もしている。その上田は今、巡業先への移動中の交通事故で半身不随になっている。

・ゆけよ涙の機雷を避けて誘蛾燈ともるかにみゆ夜の海坂/正岡豊『四月の魚』まろうど社


[182] コトバトルなどやっていますが 2001年03月16日 (金)

●金曜日は定例会議があるので資料つくりなど、けっこう、うっとうしいこと
 が多い。とりあえず、適当にやりすごしてしまう。
 加藤治郎さんのようにバリバリのビジネスマンじゃないからなあ。
 加藤さんといえば、富士ゼロックスのコピー機を新機種に変えたので
 機械の搬入があった。使い方をシステム・なんとかという肩書きの女性が
 丁寧に教えてくれる。

●会社帰りに歯医者に立ち寄り。前歯が虫歯になりかけているというので
 削ってから詰め物を入れてもらう。
 簡単には治療は終了せず、あと3回くらい通わなければならないようだ。

●家に帰ってから、かの子と一緒に「コトバトル」というゲームボーイの
 ゲームをやる。
 これは一種のカードバトル・ゲームだが、面白いのは「山」「火」「水」
 とかのコトダマを集めてその属性のモンスターを召還して戦わせる一方、
 「火」と「花」で「花火」という単語ができると、それはそれで、また、
 別種の魔法やアイテムが成立するというもの。
 このコトダマのシステムが面白くてついつい長々とやってしまう。
 ゲームボーイアドバンスの発売前だが、まあ、まだこれだけをやっている
 うちは、今のゲームボーイカラーでいいかな、と思う。


[181] 猟奇王は今も夜を走っているか? 2001年03月15日 (木)

●コートを着ないで出勤。一年中、これくらいの陽気ならいいのに、と思う。
 商標登録関係の資料など読む。

●午後、短歌雑誌の編集者の方がお二人、来てくれる。
 打ち合せと雑談。
 お台場の景色を見てもらう。
 初めて見るとかなり刺激的な景色だけれど毎日通勤するのは辛い、との
 いつもと同じ感想を私は抱く。

●光文社文庫の「幻の探偵雑誌」シリーズの第6巻「「猟奇」傑作選」を
 拾い読み。夢野久作の「瓶詰めの地獄」が発表された雑誌。
 「コラムりょうき」という無署名のゴシップ的なコラムが評判で
 当時の作家や編集者を戦々恐々とさせたらしいが、確かに毒にみちていて
 今読んでも面白い。
 「短歌往来」4月号で、小高賢さんが、拙作『東京式』の書評を書いて
 くださっている。
 「藤原において、短歌はこれからどんな役割や位置を占めていくの
  だろうか」との問いかけは、身に応える。


[180] 春の日差しの心地よい一日とその夜 2001年03月14日 (水)

●丸の内警察に用があったので、有楽町経由で出勤。
 途中の郵便局で「ハッピーマウンテン」の代金を振り込む。
 お台場についたのは午前11時頃になった。あたたかい。

●山の上ホテルの喫茶店「ヒルトップ」で、錦見映理子さんと柳下和久さんと
 密談する。そのために、久しぶりに神保町に出たので、三省堂書店で
 高原英理さんや倉阪鬼一郎さんの座談会が載っている「幻想文学」を買う。
 「小松左京マガジン」も買う。

●帰宅後、史比古と一緒に爆笑問題の番組と島田紳介とダウンタウンの松本が
 しゃべる「松本紳介」という深夜番組を見る。面白いと思うが、この時間
 じゃ、毎週、見るのはムリだなあ。

●今日、いただいた本。
 菱川善夫『素手でつかむ火 90年代短歌論』ながらみ書房 2700円
 北川草子『シチュー鍋の天使』沖積社 1800円
 古島哲朗『短歌こぼれ話 歌会講話雑記』非売品
 増田まさみ『フロッタージュの沼』編集工房ノア2000円

 古島哲朗さんは、体調を崩されているとうかがって心配していたが、
 快方に向かっていらっしゃるとのこと。何よりうれしい。
 この本は講話を活字におこしたものだが、やはり、時評の鋭さ、暖かさは
 まったく失われていない。時評集「立見席」の第二冊目もまもなく本にな
 るとのことで、早く読みたい。
 菱川善夫さんの本も講演を起こしたもの。森本平を高く評価しているのが
 うれしい。


[179] 瀬川ことびを推薦する 2001年03月13日 (火)

●パヒコンのラックの上に文庫本を積み上げていたのだが
 突然、崩れてきた。
 しかし、本を買うのはやめられない。
 瀬川ことび『夏合宿』とちくま文庫の『横溝正史集』を買う。
 瀬川ことびは貴重な短編小説家。
 これで3冊目の短編集。表第作はじめ5篇の短編が入っているが
 何か、脱力ホラーという新分野を開拓したようだ。
 「本と旅する女」という作品は、筒井康隆の「熊の木本線」パターンと
 みせかけておいて、さらにひねって、みごとに脱力させてくれる。


[178] 泊まり明けのハタラキ者、それはワタシ 2001年03月12日 (月)

●月曜日だというのに寒い。気勢がそがれる週のスタート。
 おまけに昨日から会社に泊まっているのだから気分が良いわけはない。
 本当は「明け」ということで帰りたいのだけれど、そうもいかない。
 会議をいくつかやって、やっと退社時間になった。


[177] プラネタリウムの最後の日 2001年03月11日 (日)

●今日は渋谷の東急文化会館にある五島プラネタリウムが閉館する。
 小学生のときから10回くらい行ったことがあるだろうか。
 初めて行ったのは小学校1年生だったかな。
 科学評論家の草下英明が解説をしていたはずだ。
 星座や一等星や星雲の名前をおぼえたのも、このプラネタリウムの見学が
 きっかけになっていたように思う。
 野尻抱影著『星と神話、伝説』という子供向けの本を買ってもらって
 暗記するほど読んだ。
 光年という単位を説明するのに、この星の現在の光は実際にはノモンハン
 事件の頃とか人見絹枝が活躍した頃とか、今考えると、たとえが古臭かっ
 たのも、ほほえましく思い出す。
 さようなら、プラネタリウム。なんだか映画の「ラスト・ショー」みたい。

●「MUSE」に掲載してもらう源陽子歌集『雑歌』の書評を書く。
 「MUSE」は飯田明子さんが出している新聞形式の歌誌。
 岡口茂子さんが発行する「暗」や亡くなった吉本洋子さんが出していた
 「ぼあ」など、短歌の世界のミニコミ誌のはたしている役割が、もっと
 評価されても良いのではないか、といつも思う。

●今日は急遽、宿直を交代ということで、これから会社に泊まりに行く。
 今年になってから、毎月、泊まっているなあ。


[176] 花よりロゴス、象の花子 2001年03月10日 (土)

●午前中は面接試験の手伝い。
 学生達がいま面白いと思っているたれんとはコージー富田とか、
 雨上がり決死隊のミヤサコとかどんどこどんの声帯模写のできる方だとか
 いうことがわかった。メジャーどころではナインティナインがダントツ。

●午後は池袋で「短歌人」の月例歌会なのだが、少し早めに行って
 ジュンク堂やぽえむぱろうるをのぞく。
 新装開店したジュンク堂の広さはすごい。
 これは八重洲ブックセンターより広いから、まずまちがいなく都内一
 だろう。各階にはレジがなく、すべて、1階でお金を払うというシステム
 が変わっている。万引きできそうだが゛、絶対にできないように監視され
 ているのだろう。
 渡辺啓助の『鴉白書』を買う。渡辺啓助はすでに百歳近いのだが、
 夭折した弟の渡辺温のかわりに自分が生かされているとの思いが
 あるようだ。それも鮮烈な覚悟だと思う。

●ぽえむぱろうるでは、どうも、高取英さんらしい人物が書棚を物色して
 いたので、顔を合わせないですむように、ビブロの方に避難する。
 ここで、三角寛の『山窩物語』を買う。今月の「彷書月刊」が三角寛の
 山窩研究の特集だったので、読んでみる気になったのだ。

●歌会は新顔の人がたくさん来ている。
 司会は前半が扶呂一平さん、後半が小池光さん。
 歌会のあとの研究会は伊藤俊郎さんの歌集『ゴジラの卵』の批評会。
 伊藤俊郎さんが、シベリアの抑留体験を書いた本が講談社学術文庫に
 入っているということを初めて知った。
 中地俊夫さんが、批評会の終り頃に、突然、小学生のときに学校で
 うたわされたという「象の花子を歓迎する歌」というのを歌う。
 つまり、象の花子が贈呈されたことは国民的な事件だったということだ。


[175] 反応していただくということ 2001年03月09日 (金)

●私の歌集『嘆きの花園』に対する批評を菊池典子さんが、
 ご自分のHP「ひかりの方舟」に書いてくださった。
 この歌集は1997年に出したのだが、このあと『19XX』と『切断』と
 いう歌集をあいついで出したので、ほとんど書評むされなかったものだ。
 ただ、「東京」という主題にできる限り肉迫してつくった歌集だとの自負
 があるので、いま、あらためて、読んでいただけるかたに贈呈している。
 その中で、菊池典子さんが、丁寧な読みを展開してくださったのである。
 これほどの丁寧で懇切な読みは、初めていただいたように思う。
 残念ながら、短歌の世界では「藤原の作品だから」との先入観ができ
 あがってしまつて、通り一遍の感想を投げかけられるのみになって
 久しい気がする。
 まあ、自分も他人の作品に対して、そういう色眼鏡をかけているかも
 しれないので、偉そうにはいえないのだが、今回の菊池典子さんの
 先入観のない新鮮な反応をいただいたことは、私にとって大きな力に
 なってくれた。

●村井康司さんが、やはり、ご自分の日記に「セラフィタ氏」の懇切な
 感想を書いてくださった。
 今回は早い段階での読者の反応が切実に知りたかったので、この村井
 さんはじめ、錦見映理子さん、岡田幸生さん、村上きわみさん、五十嵐
 きよみさん、 なかはられいこさんたちの即座の感想は、やはり、
 とても身になり、次の作品のためのエネルギーになるものだ。
 インターネットでの詩歌のジャンルをこえた交流が今回ほどありがたく
 思えたことはない。ありがとうございます。


[174] 安全管理者としての充実 2001年03月08日 (木)

● 十二月から安全運転管理者というのになっているので、水上警察署管内の
安全運転管理者部会という会合に初めて出席した。
会場は竹芝にある弥生会館という宴会場と貸し会議室などがある場所。
ゆりかもめに乗って行ったのだが、車内はえらい混雑。
三月末に日商岩井が台場地区に移転してきたら、もっと混雑するわけだ。
事実上、ゆりかもめは通勤径路としては役にたたなくなるだろう。
安全運転部会は、議事進行ともに、いわゆるしゃんしゃんで終了。
すぐに懇親会になる。
水上署の新任の署長と交通課長に挨拶わして名刺交換。
雪が降りそうなので、そのまま帰る。

● 家に帰ると史比古が「ギルティギア ゼクス」と「ファンタシースターオンライン」を
買ってきていた。プレイわ少し見てから寝る。すぐに眠ってしまった。


[173] 判断停止を遠く離れて 2001年03月07日 (水)

●最近、感銘した言葉。
 「詩人とは判断停止からもっとも遠い存在であるべきではないか」
 
●これは「短歌」3月号の「<私>の革新について」という穂村弘さんの
 時評の一節。
  


[172] 英和辞典と恋の温度差 2001年03月06日 (火)

● 柴田千晶さんとのコラボレーションの第2作「情事」が「midnightpress」
の11号に掲載された。3月10日頃に発行予定と聞いていたので、どうせ遅れて、
3月下旬くらいになるのだろうと思っていたまで、こんなに早く出るとは正直、驚いた。
これで、先週の「現代詩手帖」の「セラフィタ氏」と一週間しか間をおかずに、二作品
の掲載誌が発行されたことになる。
第3作はまだ二人で思案中だというのに。
掲示板でさまざまな人達が「セラフィタ氏」の感想を書いてくれている。
素早く、率直な感想を聞けることはウエッブの大きな利点だろう。
何ヶ月か経ってから、社交辞令的な表現を誌面で読まされるより、ずっといい。
ストレートな反応がこのコラボレーションには必要なのだと思う。
● 今日いただいた本。
諏訪部仁編『ポケット英和辞典』研究社
水野麻里著『恋の温度差』青春出版
諏訪部さんは「短歌人」の同人で、先日、第一歌集『エトランゼ』の出版記念会を
開いたばかり。その記念会のお手伝いをした御礼に、この本を送ってくださったようだ。
諏訪部さんが英文学の教授だということは知っていたが、まさか、辞書をつくっていた
とは知らなかった。1960年安保世代の苦渋にみちた短歌は男っぽい魅力にみちている。
水野麻里さんは、元放送作家。玉置宏、山田邦子、サブロー・シローの番組を一緒にやっ
た仲間。サブロー・シローの番組にはコメンテーターとして仲谷彰宏さんにレギュラーに
なってもらっていた。二人とも今風の人生論を書く作家になってしまったわけだ。
水野麻里さんとは、風俗レポートで、一緒に渋谷のストリップの道頓堀劇場に行ったり
川崎堀の内のソープランドに行ったり、六本木のクリスタルというファッションヘルスに
行ったり、目黒のホテトル嬢の取材に行ったりした仲である。
今思えば、あの頃は楽しかったなあ。


[171] 神変白雲城を買う 2001年03月05日 (月)

●今日は、丸の内消防署管内での火事による死亡者ゼロの日10000日達成と
 いうことで、午後から大手町のJAホールへ行く。
 消防所長や自衛消防団の人達が表彰されて、後半は慶應大学のラグビー
 の総監督の上田昭雄さんの講演。
 さすがに、この人はキャスターをやっていただけあって話が巧い。

●帰り際にJAホールの売店の書店を覗くと、
 中公文庫の角田喜久雄の『神変白雲城』があったので、すぐに買う。
 この本は同じ角田喜久雄の『黒岳の魔人』と並んでレアもの。
 こういう場所に売れ残っているのか。
 ちょっと得をした気分の月曜日。


[170] 雨降る午前、曇天の午後 2001年03月04日 (日)

● 朝6時前に起きて、ホテルをチェックアウト。
史比古と二人で雨の中を実家に向かう。途中で家内の弟の久さんが車で迎えに
来てくれていて、声をかけられ、車に乗る。
飛行機が8時半関空発なので、7時前に関空へ向かった方が良い。
実家でサンドイッチを食べるのもそこそこに、再び、久さんの車で関空へ。

● 高速がすいていたので45分で関空へ到着してしまう。
東京への途中、気流が悪化していて飛行機はけっこうゆれた。
モノレール、JRと乗り継いで、東京駅で降り、史比古と八重洲ブックセンターへ。
史比古は電撃ゲーム大賞の受賞作、渡瀬草一郎『陰陽の京』と『そして粛清の扉を』購入。
私は文春文庫の『なんだかおかした人たち』と『孤高の鬼たち』を買う。

● 正午前に帰宅。
メールと掲示板のチェツクをすると、「セラフィタ氏」の感想を錦見映理子さん、
岡田幸生さん、五十嵐きよみさんたちが書いてくれている。
柴田千晶さんも、掲示板に書き込んでくれている。
こういう、雑誌発表の作品の感想を早く聞かせてもらえるのはうれしい。
短歌では、読者の感想、批評に対して或る意味で不感症になっていたので、今回の感想は
とてもうれしく、刺激になる。これを次への力としたい。


[169] マルジナリアとは傍注のことだそうだ 2001年03月03日 (土)

● 専養寺というお寺で四十九日の法要。
親戚と服部楽器の関係者だけなので四十人くらい。
一橋庵という料理屋に移って、精進落としの料理を食べる。
● 午後3時前に終了し、家内の実家へ戻る。
時間があったので、一人、外へ出て、倒産した丸正の近くの文庫の安売り屋へ行く。
都筑道夫の持っていない本や「猫の舌に釘を打て」や「紙の罠」「悪意銀行」といった
初期の長編の角川文庫版が一冊100円で出ているのでつい買ってしまう。
そのあと新刊書店の宮井平安堂をのぞいてみる。
こういう地方都市の大書店には、福武文庫が残っていたりしないかと思っていたら
案の定、20冊ほど残っている。お目当ての色川武大の『狂人日記』はなかったが
内田百閧ニ澁澤龍彦がけっこう残っている。
百閧フ『ものづくし』とか澁澤龍彦の『マルジナリア』『エピクロスの肋骨』等を
買う。また本が増殖してゆく。
● 夜、通子とかの子は実家に泊まり、史比古と私は東急インに泊まる。
私は『マルジナリア』を読んでいるうちに眠ってしまったが、史比古は
「爆笑オンエア・バトル」を見ていたようだ。


[168] 貨物船は曹達水の中を通過する 2001年03月02日 (金)

● 家内の父の四十九日の法要のために、夜20時30分羽田発の飛行機で
関空へ向かう。家族とは羽田空港で待ち合せ。
関空着が21時50分、それから南海電車で泉佐野へ行き、乗り換えて
和歌山市駅着が23時ちょっと過ぎ。
一度、実家へ寄って挨拶をしてから、近くの紀の国会館というホテルへ
向かう。家族四人で急いでシャワーを浴びて寝てしまう。
東京から和歌山への旅程で読んだ本は辻征夫『貨物船句集』と長谷川櫂編著
『現代俳句の鑑賞101』。

●辻征夫の俳句を少し紹介。
・ 噛めば苦そうな不味そうな蛍かな
・ 蝿二匹蝿蝿三匹蝿蝿蝿
・ 《蝶来タレリ!》韃靼ノ兵ドヨメキヌ
・ 衣出て衣にはいるまるはだか
・ 歳時記や昨日は猛暑けふ驟雨
・ 祖父の鳶 父の外套 /音も無き日差しかな

●いかにも俳句プロパーではない感じの句に惹かれる。


[167] 傘をもって赤坂まで 2001年02月28日 (水)

●赤坂にあるゼロックスのショールームへ行き、コピー機の最新機を
 営業の担当者から見せてもらう。
 ここはショールームだから、加藤治郎さんは居ないわけだ。
 コピー機自体にハードディスクみたいなものがついていて、一度読みこんだ
 原稿を記憶してしまうという機種があったが、こういうものを私が使うと
 極秘書類をうっかり記憶させてしまって、誰でもコピーできるようなミス
 をしてしまいそうだ。

●一通り説明を受けたあと、コーヒーをご馳走になりながら雑談。
 オンデマンド出版のことも聞いてみる。
 加藤治郎さんが、ラエティティアで書いてくれたようなことを
 説明してくれた。
 お土産にコージコーナーのマドレーヌをもらって帰る。
 
●家に帰る前に八重洲ブックセンターに寄り、長谷川櫂編著の
 『現代俳句の鑑賞101』と辻征夫句集『貨物船句集』を買う。


[166] なまあたたかいきさらぎの夜 2001年02月27日 (火)

●今夜は神保町の学士会館で、諏訪部仁さんの歌集『エトランゼ』の
 出版記念会。
 夕方の5時から会議があったので、会場についたのは午後七時になって
 しまった。ちょうど、食事が始まるところ。
 諏訪部さんは昭和十五年生れの英文学者。
 珍しく男性出席者の方が多く、世代的なおちつきのある良い雰囲気の会。

●二次会で、松原一成さんから、秘密の原稿を受け取る。
 柴田千晶さんとの詩と短歌のコラボレーションが掲載されている
 「現代詩手帖」3月号を、みんなに自慢する。
 池田裕美子さんが、うらやましがってくれた。
 ある年齢以上の歌人にとっては「現代詩手帖」や「ユリイカ」は憧れの
 雑誌なのだと思う。もちろん、私にとっても。

●帰宅後、いつものように、手紙とメールのチェック。
 「りとむ」の寺尾登志子さんから、『嘆きの花園』に関して、とても
 うれしい感想の手紙をいただく。
 田上伸次遺稿集『魂の辺境から』の日記の部分を読みながら、寝る。


[165] いのちのはてのうすあかり 2001年02月26日 (月)

●キャピトル東急ホテルで「春風亭昇太の芸術祭大賞を祝う会」があり
 出席する。先日の駄句駄句会のメンバーの人達が、発起人になっている。
 昇太さんの人柄が反映された暖かい気分の良い会になっていた。

●私が昇太さんと初めて仕事をしたのは平成2年の4月
「文夫と明子のラジオビバリーヒルズ」のディレクターになった時。
もちろん若手二つ目の有望株として名前も顔も知ってはいたが、
番組の仕事として、一緒になったのは、この時が初めて。
最初は番組の冒頭で、聴取者の家に一万円の賞金を届ける「イチマンマン」と
いうコーナーに出てもらい、しばらくしてから「昇太の東京ウクレレ男」として
ウクレレをもって、話題の人のところにレポートに行ったり、何かにチャレンジ
したりするコーナーに拡大してレギュラーになってもらった。
NHKの新人演芸コンクールで優勝した時も、真打に抜擢されたときも
うれしかったが、今回もうれしいなあ。
昇太さんの出世をずっと見てきた感じがする。

●高田文夫、山藤章二さんのほかにきていた人達。
 永六輔、高信太郎、玉置宏、吉川潮、高橋春男、島敏光、うわのそら藤四
 郎、「笑芸人」の浜さん、文芸座の永田支配人、CXの佐藤GP、
 立川志の輔、桂竹丸、春風亭勢朝、柳家花録、三増紋之助、ポカスカジャン
 石和の馬場さん、読売の田中さん、渡辺寧久さん、TBSの牧さん、
 木村万里さん、小口恵里子アナウンサー、昇太さんの両親、神田北陽
 もちろん他にもたくさん。

●帰宅すると「現代詩手帳」三月号が届いている。
 柴田千晶さんとの共作「セラフィタ氏」が掲載されている。
 「現代詩手帳」を初めて買ったのは浪人をしていた1970年。
 「赤色エレジー」の林静一が表紙を書いていた頃だ。
 あれから三十年が過ぎ、目次に自分の名前が載っているのを見るのは
 感慨無量。1990年に短歌研究新人賞作品が載ったとき以来の嬉しさ
 だなあ。


[164] 人生はバトルロワイヤル? 2001年02月25日 (火)

●「俳句現代」の久保田万太郎特集が面白かったので、十数年前に買って
 ほとんど開いたこともなかった『久保田万太郎全句集』をボール箱の底
 の方から出してくる。ぼちぼち読んでみようと思う。
 万太郎という人は、完全な下町っ子でありながら、性格的にはかなり狷
 介だったようで、「俳句現代」にも加藤郁乎が、そのあたりの挿話を書
 いている。世話になった先輩俳人のことを後年の年譜ではまったく触れ
 ていない、とか、イヤな人が来ると無視したり、と、まあ、実生活では
 あまり交際したくないタイプなのかも。

●午前中、家族全員で、六本木のヘア・サロンに行った。そこで読んだ
 週刊誌で、作家の加堂秀三が二月初めに自殺していたことを知った。
 これはショックだなあ。『涸滝』なんて、すごい作品だと思うのに。
 正直、売れる作家ではなかったので、たぶん、経済的な不安感もあっ
 たのだろうと思う。もちろん、書けないという強迫観念に苛まれても
 いただろう。

●帰宅してから、昨夜の放送で、史比古が録画しておいてくれた
 「めちゃイケ」の「お笑いバトルロワイヤル」を見る。面白い。
 今、私が必ず見ているテレビのバラエティは「めちゃイケ」と
 「笑う犬の冒険」。
 そのあと、中澤系さんが送ってくれたWWFの「ロイヤルランブル」の
 ビデオを見る。これは三十人のレスラーが参加する元祖バトルロワイヤル。
 優勝はストーン・コールド・スティーブ・オースチン。興奮できる。

●Iさんから、私の歌集『嘆きの花園』の丁寧な感想の手紙をいただく。
 中に収めてある「窓」という「窓」という七首の連作に目をとめてく
 れたということで、これは何よりうれしい。もう七年くらい前に発表
 した作品だけれど、七首の作品それぞれと全体の構成が近・現代の短
 歌の悲傷とつながるように、すごく凝ってつくった作品。初出時も歌
 集でも、まったく、気付いてもらえなかった。今回のIさんが初めて
 この構成に言及してくれたわけだ。やはり、わかってくれる人が必ず
 居ると、信じているべきなのだろう。嬉しい気分で手紙を読み返して
 から眠る。


[163] 千葉方面へ赴く日もあれ 2001年02月24日 (土)

●千葉の歌人藤田武さんのご厚意で、千葉の文化教育センターというところで
 「現代短歌の前線」という話をさせていただく。
 会場には千葉県在住の歌人、俳人、川柳人の方たちが100人くらい集まっ
 てくださっていた。
 『精霊とんぼ』と『弛緩そして緊張』からの抜粋作品及び飯田有子さん、
 岡崎裕美子さん、池田裕美子さん、小笠原和幸さんの作品をテキストにして
 文体の変化や現在の短歌の方向性などを話したつもりだったが、ちょっと
 作品を引用しすぎたようで、バランスの悪い構成になってしまった。
 最後にオンデマンド出版「歌葉」ブランドの話もし、実際に5冊の歌集を
 聴衆の方々に手にとってみてもらった。

●終了後、藤田武さんの息子さんご夫婦がやっている稲毛駅前の「とまとま
 と」というレストランでうちあげ会。
 五賀祐子さん、佐波洋子さんたちもかけつけてくれる。
 五賀さんがアカペラで、「世界の果てに」というシャンソンを歌ってくだ
 さる。これはもう涙ものの歌唱力、表現力。キャラクターもふくめて、
 お金がとれる芸だと思う。帽子がまわされ、みんな、財布をはたいて、帽子
 にお金をいれまくる。
 五賀さんは、明日、日曜日にオーロラを見るためにフィンランドへ行くとの
 こと。フィンランドでも街角で歌ってほしいなあ。

●この千葉の会では、関原英治さんや菅輝江さんにお目にかかれるのが嬉し
 い。関原さんは塚本邦雄と一緒に「短歌研究」のモダニズム特集に作品を
 発表した、前衛短歌の先駆者。菅さんは、昨日の駄句駄句会で、ご一緒さ
 せていただいた立川左談次さんの実のお姉さん。しゃべりかたや気性が、
 左談次さんそっくりで小気見よい。

●帰りの電車の中で、「俳句現代」の久保田万太郎特集号を読む。
 戸板康二や三島由紀夫の久保田万太郎に関する文章が再録されているのが
 面白い。万太郎の小説の処女作「朝顔」という作品を読む。
 袋物の職人を主人公にして、旅役者の世界と職人の世界をえがいた渋く、
 また救いのない小説。こんな作品を二十二歳で書いていたというのは、
 たしかに驚きである。
 「俳句現代」は現在の俳人のつまらない作品や文章なんか載せないで、
 このように毎号、特集を組んで、資料的価値の高いよみものを再録して
 くれればいいと思う。


[162] 気に入らぬ風邪もあろうに聴診器 2001年02月23日 (金)

●午前中から昼過ぎにかけて渋谷のNHKで、在京放送局の警備担当者会議。
 警備という立場から、どのような事例があったかを報告しあう会議なのだ
 が、放送局には実にいろいろな人達が来るものだと、いつも驚く。
 呆れることもあるし、さびしくなることもある。
 心に暗闇をかかえて、それが時に外側へ噴出してしまうということか。

●夜は神楽坂の「かつ田」で駄句駄句会に参加。
 二月だというのに、高橋春男さんと松男貴史さんをのぞく11名が参加。
 参加者
 山藤章二(三魔)、高田文夫(風眠)、吉川潮(駄郎)、玉置宏(一顔)、
 島敏光(邪夢)、木村万里(寝ん猫)、立川左談次(斜断鬼)、
 林家たい平(中瀞)、橘右橘(粕利)、宮田昭宏(小竹)、藤原(媚庵)。

●席題 残雪、海苔。

高点句 
・ひとっ降り来るか湿った宿の海苔/三魔
・雪残る校舎の裏の不良ども/駄郎

話題の句
・上野発青のり駅は雪の中/風眠
・残雪で合戦をして五針縫う/邪夢

私がつくった句
・残る雪富山の薬売りに来る/媚庵  この句は三魔、邪夢両氏の選で2点。

●吉川潮さんから新潮文庫『突飛な芸人伝』をいただく。
 これは昭和63年に出た『芸人奇行録・本当か冗談か』の改訂新版。
 旧版には載っている早野凡平、林家正楽の両氏はすでに亡くなっている。
 そして、この本が校了になってから、マルセ太郎さんも今は亡い。
 また「究極の貧乏」というタイトルで収録されている祝々亭船伝さんも
 現在、癌で入院中だそうだ。

●句会の最中の雑談の中で、桂三木助さんのお通夜の日にマルセ太郎さんの
 「殺陣師段平」の舞台があり、段平が死の間際に舞台に這って行って殺陣
 をつける場面が鬼気迫るものであったこと、最後まで舞台に執着したマル
 セ太郎という人の執念、そして、その十数日後の葬式の様子など語られる。
 
●帰りに「小説新潮」と久保田万太郎特集の「俳句現代」を買う。
 「小説新潮」で吉川潮さんの「桂三木助 死の真相」を読む。
 心のこもった追悼文。十二月の池袋演芸場での「三題噺の会」の時、
 そのプレッシャーに負けて、夜中に10時間も徘徊し、戦争中の歩兵が
 かかる行軍症で、足が腫れあがっていた、という話は悲痛な感じだ。

●寝る前に岩井志麻子の「きちがい日和」という短編を読む。
 大江健三郎の「飼育」みたいな話。もっとねっとりと書くと
 宇能鴻一郎が一九六〇年代に書いていた異常性愛ものに近い味が出そう。


[161] ノイズを遠く離れて 2001年02月22日 (木)

●社屋の中が何か騒然とした感じだなあ、と思っていたら、フジテレビの方で
 反町隆史と松島菜々子の会見があったらしい。

●池袋藝術劇場で「短歌人」編集会議。
 夏の会の夜の企画が小池光さんから提出された。
 もう、夏の会のことを考え始める季節になったということか。
 会議のあとの食事のときに、吉浦玲子さんの歌集『精霊とんぼ』は
 生活感覚が独自の個性になっていて実に面白いという話になる。

・いろいろとものをおもへる表情に駄菓子屋「ビリケン」へ吾子は入りゆく
・「もう一回死んだらやめる」子の声がふいにとなりの部屋より聞こゆ
・身に覚えあれど疎まし女性徒がはづかしさうに体操しをり
・明日が見えぬといふやすらかさ月かげは築十九年のマンションに降る
・一時間と十分家出せし吾子が帰りきたりて早々に寝つ

吉浦玲子歌集『精霊とんぼ』砂子屋書房 2800円+税


[160] 時間は今日も流れてゆく 2001年02月21日 (水)

●今日は史比古が都立高校の入学試験。
 朝七時に家を出るので、みんなで五時に起きてしまう。
 しかし、早起きするのが、まったく苦にならなくなってしまった。
 苦にならないどころか、ますます、朝早く目が覚めるようになってしまっ
 ている。

●文庫本の整理をする。
 ブックオフに行くようになってから、とにかく、異常ないきおいで文庫本
 が増殖して行く。もちろん、買うからふえるのだけれど。
 まず、会社に置いてある文庫を整理して、残すものとトランクルームに
 預けるものとに分類する。
 これを家に持ち帰り、家に置いてある文庫も分類して、トランクルーム
 用のボックスに詰めてゆく。
 今回は4箱分。
 大仏次郎、村上元三、長谷川伸などの時代物の箱、山田風太郎の箱、
 そしてクリスティーやレンデルを合わせた箱、雑多な箱の4箱になる。

●石田柊馬氏に、私の拙い歌集をお送りしたところ、丁寧な礼状を頂き
 かえって恐縮してしまう。川柳ジャンクションでお目にかかれるのが
 待ち遠しい。
 「短歌研究」3月号を拾い読みする。
 歌集・歌書の書評欄に古谷智子さんが『東京式』の紹介と短評を書いて
 くださっている。
 「歌の新しい分野を開拓するパワーを感じる」という結語がうれしい。
 新しい領域へ踏み出す意欲がなければ、もう、私が短歌をつくり続ける
 意味はなくなってしまうだろう。
 
●『浅草紅団』の続編の「浅草祭」を読み終わったところで寝てしまう。


[159] そのように人生はある 2001年02月20日 (火)

●今、私は職場で各種チケットの配分作業というのをやっている。
 チケットの種類はいろいろ。
 基幹社からグループ各社へそれぞれの持分を配布するというもの。
 まあ、あまり楽しい作業ではない。
 古いテープやレコード類の保存と廃棄も担当しているのだが、これも
 なかなかやっかい。思いきって棄てるという行為はなかなか実行が
 むずかしいものだ。

●評判になっている佐野眞一の『だれが「本」を殺すのか』を購入。
 ブックオフの社長のインタビューの部分を先に拾い読みする。
 「再販制度があるからブックオフが栄える。再販神社をつくって
  拝みたいくらいだ」という言葉は、言われてみればそのとおり。
  一般書店が一律の値段で本を売らざるをえないからブックオフが
  栄えるのはもっともなことだ。

●また、一般書店の側からいえば、ブックオフが近くにできると万引が
 増加する、という。これも言われてみれば、もっともだ。
 つまり、一般書店で万引した本をそのままブックオフで換金する連中が
 少なからずいるわけだ。
 だからブックオフの本は新刊書店なみにきれいだったのか。
 逆に、一般書店がブックオフで本を買って、出版社に返本として戻したり
 という事例も増加しているそうだ。
 そういえば、或る編集者の方から、週刊誌などを買って、途中で読み終って
 棄てる場合、バーコードの部分を破ってから棄てるように、とのお達しが
 会社の上層部からあったということを聞いた。これも、拾ったりされて
 返本されたり、もう1度、新刊書店で定価販売されたりするからだそうだ。
 また、新刊書店がブックオフのフランチャイズに入り、店舗を併設させて
 本の還流をさせている例もあるそうだ。そういえば、荻窪駅前のブックオフ
 は新刊書店と隣接している。

●川柳作家の普川素床さんから川柳作品集『考梨集』を送っていただく。
 齋藤史さんの『過ぎて行く歌』河出書房も著者謹呈という短冊入りで
 送っていただいた。うーん、緊張するなあ。


[158] 少し業界的な月曜日 2001年02月19日 (水)

●ポニーキャニオンから発売されているいっこく堂の博品館ライブのビデオが
 ベストセラーになったというので、今日はいっこく堂関係者が集まっての夕
 食会。ホテルニューオータニのガーデンコートの中にあるガンシップという
 レストラン。
 私はすでに現在の職務では、いっこく堂とはもちろんかかわっていないのだ
 が、一本目のビデオの「にぎやかな一人」の博品館までは、芸術祭参加絡み
 で、前のセクションにいたときおぜん立てに係わったので招待されたのだ。

●エレベーターをおりたら、いきなり、いっこくさん本人が居て、びっくりし
 た。すぐにレストランの人が彼に気づき、会場に案内してくれた。
 参加者はポニーキャニオンの映像制作部の人達、いっこく堂プロジェクトの
 人達、ニッポン放送の企画開発部の人達、そして、いっこく堂の奥様とお嬢
 さん。一人のタレントがブレイクするために、いかに多くの人々が係わり、
 そして、おおげさにいえば、タレントと一緒に運命も変わって行く、という
 ことだ。たとえば、いっこく堂のマネージャーの小久保さんはダイエーの
 小久保選手の弟だが、本田技研に勤めていたのをやめて、マネージャーに
 なったのだそうだ。ライブの台本を藤井青銅さんと一緒に書いているN君は
 もとDBurnというコントのコンビを組んでいたタレントだが、現在は
 構成作家として、いっこく堂ばかりでなく、さまざまな番組に係わってい
 る。さらにいえば、家族だって、極端に人生の色合いが変化したはずだ。

●最近のお笑いライブを見ていると、いっこく堂絡みのネタをやる芸人が
 多い、という話になる。たいていは衛星中継のネタを一瞬芸的に真似る
 ものだ。それだけ、いっこく堂現象が若いお笑い芸人に強いインパクトを
 与えているということだろう。
 昨夜の「笑う犬の冒険」でもネプチューンの名倉が、出前の岡持ちに
 「そうだよねえ、岡持ち君」と話しかけ「オレはいっこく堂か!」と
 自分でツッコミをいれるギャグをやっていた。

●食事会のあと、参加者みんなが、自分はいっこく堂と知り合いだという
 ことを家族や親類に証明するため、いっこくさんとツーショット写真を
 撮影する。こういうのは、ほほえましくていいなあ。

●と、いうことで、20時という早い時間に食事会は解散。
 そういえば、今日、私は水上警察署から、安全運転管理者証を交付された。
 これで昨年交付された防火管理者と合わせて、二つも資格をとってしま
 った。ますます、世間に有用な人間になっていくようだ。

 


[157] なにもしなくてもよい日曜日、なのに 2001年02月18日 (日)

●今の勤め先に入ってから、というより、その前のフリーライター時代も
 学校を出てすぐの婦人雑誌の編集者見習の時代も日曜日を何もせずに
 過ごすというようなことはほとんどなかったように思う。
 ディレクター、プロデューサーの頃は土日の番組を担当している時期が
 多く、出社していることが多かったし、事業部の頃は土日はもろにイベ
 ントの実施日だったから、これはもう現場でチラシの挟み込みや配布を
 やっていた。その前のフリーライターの頃はほとんど月曜日に締切の原
 稿ばかり書いていたから、日曜日は修羅場だった。
 そう思うと現在の幸福を噛み締めずにはいられない。
 とはいえ、あこがれの何もしなくて良い日曜日を有効につかえているか
 と問われれば、けっして、そう巧くはつかえてないけれど。

●と、いうわけで、また、本の整理をしながら、読みかけの『浅草紅団』と
 『活字三昧』を気の向くままに、あちらを読んだり、こちらを読んだり。
 さらに、詩人の川端隆之さんからおくっていただいた
 『ポップフライもしくは凡庸な打球について』を読む。
 この本は詩集篇が「pop fly」、文章篇が「凡庸ナ打球」という
 二冊の分冊で、箱入りのいまどき珍しいつくりの本である。
 「凡庸ナ打球」の方から読み始める。詩誌の月評や時評が抜群に面白い。
 私が川端隆之という人の名前を意識したのは、2001年版の現代詩手帖の
 年鑑の座談会や文章で、唯一、詩壇の外へ向かった発言をしているよう
 に感じられたから。
 前にも書いたが、俳句雑誌や短歌雑誌が過剰に啓蒙的、初心者向きの
 記事ばかり掲載しているのに反して、詩の雑誌はまったく啓蒙という部分
 がなく、読みにくいことこのうえないと、昨年から「現代詩手帖」とか
 「ユリイカ」とかを読み始めた私としては思っていたのだが、そのなかで
 川端隆之さんの文章はくだけていて読みやすく、しかも、主張が明確で
 とても印象的だつたということなのである。
 あらためて、一冊の本で読むと、10年以上前からこの文体で書きつづけ
 ていたということがわかり、これは貴重な人だとあらためて思った。
 「pop fly」のほうには他ジャンルの人とのコラボレーションが
 収録されているので、明日からじっくり読もうと思う。

●夜、『浅草紅団』読了。再読だつたけれど、まったく初めて読んだような
 印象。前に読んだのは予備校生の頃だったろうか。大学1年くらいの頃
 だっただろうか。
 ストーリーはあってないようなもので、今となっては昭和ヒトケタの時代
 の浅草の風俗記録というイメージで読んでしまった。
 松旭齋天勝一座のプログラムが記録してあるところなど、昔は何の興味も
 もてなかったが、今回はとても興味深く読んでしまった。
 再読シリーズ、今週は幸田文の『流れる』と『おとうと』にゆく予定。

●正岡豊さんの掲示板で、宗左近は俳句がわかっていないようだ、という
 ことを書き込んだら、田中庸介さんや村井康司さんも意見を書いてくれ、
 あながち、私の思い込みだけではなかったようだ。でも、そういう人が
 詩壇のいろいろな賞の選考委員をしているというのはやはり困ったことだ。
 歌壇でも各種の賞の選考委員はあまりにも重なりすぎていると思う。
 つい最近、発表になった「現代短歌新人賞」は大宮市市制試行60周年記念
 とのことで、要は大宮市が実施主体なのだが、選考委員長中村稔、
 選考委員、加藤克巳、篠弘、馬場あき子というおなじみのメンバーで
 受賞者が梅内美華子『若月祭』というのはいかにも意外性がない。
 『若月祭』は良い歌集ではあったが、新しい才能の発見とはいえない。
 私には才能の追認でしかないと思う。選考委員にせめて小池光を入れられ
 ないものだろうか。先は長そうだが、こういうことは何度でも言い続ける
 つもりでいよう。


[156] 医者へ行ったり、古本買ったり、馬券も買ったよ 2001年02月17日 (土)

●アトピー性皮膚炎の薬がなくなったので、平和島のTクリニックへ行く。
 今年はインフルエンザで、年頭からこの病院にはお世話になった。
 ここで、点滴してもらわなければ、もう、絶望的だったんだよな。
 基本的には皮膚科、肛門科なのだが内科的治療も上手な医者だと思う。

●平和島から京浜急行、都営地下鉄三田線、地下鉄東西線と乗り換えて
 南砂町の古書店たなべ書店へ久しぶりに行く。
 色川武大の福武文庫から出ていた『狂人日記』とか『虫喰い仙次』とか
 文春文庫の『あちゃらかぱい』とか『花のさかりは地下道』で、とかを
 探しに行ったのだが、やはり、見当たらない。
 そのかわりに、ずっと探していた朝日文庫の酒井寛著『花森安治の仕事』
 がみつかる。これなら来た甲斐はあった。 
 他に集英社文庫の『超時間対談』を買う。これは、田中小実昌とハンフ
 リー・ボガードとか寺山修司とアルチュール・ランボーとかが対談する
 という読み物。もちろん、日本人の方が、もし、自分が対談したら、と
 いう設定で書いているわけだ。組み合わせもくふうしてあるし、それぞ
 れ、対談方法やオチにひねりがあって、面白く読める。昭和五七年に
 原本が刊行されたらしいが(この文庫版は昭和60年刊)、初出が掲載
 されていないのは不親切。どこかの雑誌に連載されたはずだと思うが。
 イラストはすべて和田誠というのもお買い得。たなべ書店は原則として
 定価の半額なので、この本は280円で買ったことになる。
 けっこう面白いので組み合わせだけ列記してみる。

 ハンフリー・ボガードVS田中小実昌
 ベートーベンVS山下洋輔
 アンリ・ベルグソンVSタモリ
 レイモンド・チャンドラーVS河野典生
 ジャン・ギャバンVS池波正太郎
 エドガー・アラン・ポオVS都筑道夫
 チャーリー・チャップリンVS虫明亜呂無
 アドルフ・ヒットラーVS開高健
 シェイクスピアVS唐十郎
 アルチュール・ランボーVS寺山修司
 ルイ・アームストロングVS植草甚一
 ウォルト・ディズニーVS赤塚不二夫
 シラノ・ド・ベルジュラックVS星新一
 成吉思汗VS高木彬光

 以上だが、グルーチョ・マルクスVS小林信彦なんてのも読みたい気分。

●午後は競馬を聞き、PATで馬券を買いながら読書。 
 再読シリーズの色川武大の『離婚』『恐婚』の、すみ子シリーズ。
 昭和五十三年から五十八年にかけて書かれていた一種の私小説。
 出てすぐに読んでいるのだが、当時、二十代後半の私としては
 作中の奇怪な人間関係がもうひとつピンとこなかった。
 今回、読みなおしてみると、これは色川武大という人の人生の認識を
 人間関係に託して語ったものだということが理解できた。

 「ふだんはどうでも肝心のところでチャランポランになること。これが
 なかなか素人にはむずかしいですね。肝心のところでどうしても一所懸
 命になりがちですから」

 こういう認識は今にして身に沁みて理解できる。

●色川武大と平行して再読シリーズで川端康成『浅草紅団』を中公文庫版で
 読み始める。これも30年ぶりの再読だ。さらに、気軽な読み物として
 目黒考二の『活字三昧』も拾い読みする。読書計画をたてるべし、との
 提案に刺激されるが、やっぱり、買うほうが多くて、読みきれないこと
 には変わりない。

 


[155] スタイリッシュな文体が好き、脂まみれのカルビが嫌い 2001年02月16日 (金)

●昨日の日記の日付け欄の曜日が金曜日になっていますが、これはもちろん
 木曜日の間違い。

●今日、読み終わった本。
 秋里光彦著『闇の司』ハルキ・ホラー文庫 520円+税
 この著者の秋里光彦というのは『少女領域』の評論家高原英理さんの
 ホラー小説時のペンネーム。
 文庫で130ページくらいの中篇。
 「女殺油地獄」を下敷きにして、映画の世界を舞台に残酷美の限りを
 つくした描写と物語が展開されるが、作者が一人称でありながら、
 一人称代名詞をいっさいつかわないという凝った文体を選択している
 ので、変におどろおどろしさを強調する下品さがなくなり、読者とし
 ては、一気に読まされてしまう。
 この文体が様式美的完成度の高さを保証したともいえる。

●一人称代名詞をつかわない小説として思いつくのは、久生十蘭の「水草」
 などの短編とか、大坪砂男のやはり短編の「天狗」とかだが、これだけの
 長さを、一人称代名詞をつかわずに押しきった秋里光彦の技量はたいした
 ものだと思う。
 大坪砂男は、一箇所、どうしても「私」に類する言葉をつかわざるをえな
 くなって、苦肉の策といて「当方」という言葉で逃げたというエピソード
 がある。
 この『闇の司』では、私が気がついたかぎりでは「自分」というのが
 一箇所出てくるが、もちろん、これはアラ探し的な読みで、しかも、
 この部分はアラではない。

●私はやたらに長いホラーは読む気がなくなってしまうほうなので、これ
 くらいの長さで、これほど怖くて美しい世界を味合わせてくれる作家の
 存在はとてもうれしい。
 この文庫にはもう一作「水漬く屍、草生す屍」という短編も収録されて
 いるが、これも読み応えがある。
 日露戦争の時代に舞台をとった少女と高等遊民的青年と坊さんと婆さん
 が出てくる、いかにもの道具立てではあり、期待どおりの妖幽な物語が
 展開する。そしてやはり叙述の部分の巧さにトリックが融合していて、
 巧いなあ、と読み終わって思う。
 この小説は一九八六年に発表されたもので初出誌が「小説幻妖」という
 ことだが、いったい、どんな小説雑誌だったのだろう?
 幻想文学新人賞を受賞したという「少女のための鏖殺作法」という小説
 も、ぜひ、読んでみたいと思う。

●会社に通勤、退勤時のバスの中で、勝野かおり歌集『Br臭素』を読む。
 営業現場の女性の歌ということでまず鮮烈なオリジナリティがある。
 基本的には強気のベクトルでいながら、ときおり、ふっと引いてみせる
 ところが、読者としての私にはたまらなく魅力である。
 巻末に加藤治郎氏が解説を書き「ギミックからアプローチしてみるのも
 意味のある試行だろう」と書いているが、まさに、こういうキャラクタ
 −は成功したギミックそのものなのだと思う。

・言われたる「どん突きを右」突き当たり右折の果てに道はあらざり
・敵じゃない、敵じゃないよといいながら敵は微笑む銃口をむけ
・すずなりの葡萄が丘を陽をはおちて多数派ばかりの酢臭き酒舗はも
・まあそれはそれとして午後二十五時脂まみれのカルビが嫌い
・今月もおそらく届かぬ基準値のバスは定刻通りに着かない


[154] ごみ箱が四十個届いた二月の夕暮 2001年02月15日 (金)

●先日、引越した蚕糸会館のオフィスに、灰皿やゴミ箱やホワイトボード
 が届くことになっていたので、石原副部長と一緒に待っていると
 夕方6時前に到着する。しかし、営業の発注のまちがいなのだろうが
 ゴミ箱が四十個も届く。こんな狭いフロアに四十個もゴミ箱をおける
 わけがないだろう。しかし、営業と搬入は別会社がおこなっているので
 伝票にミスがあれば、そのまま搬入されてしまう。いくらなんでも
 四十個はいらないので、十二個だけ置かせて残りは引き取らせる。

●銀座のくまざわ書店、教文館書店、近藤書店、八重洲ブックセンターを
 まわって、また何冊か文庫を買う。本は増える一方だが、もう、居直る
 ほかはない。読みたい本を買って読まずに、なぜ生きている価値がある
 のだ、と、まあ、それくらいに考えよう。

●帰宅すると歌葉に注文しておいた歌集の
 『イージー・パイ』
 『キマイラ』
 『Br臭素』
 以上の三冊が届いている。前の二冊に劣らずいいできの本になっている。
 このあとどういうラインナップが続くのか。
 できればたたみかけるかたちで、優れた新人の歌集を出してほしい。

・「ほら、あれがピアノ座です」と空を指す嘘つきの指なんだかきれい
  /村上きわみ

・どんづまり傘もいらざるどしゃ降りのまひる あわざる辻褄たのし
  /勝野かおり

●今日の「ファイト」によるとWWCが巻き返しを狙ってWWFから
 HHHを引き抜こうとしているらしい。これはタイヘンダ!


[153] ジョニー・バレンタインのエルボー・ドロップ 2001年02月14日 (水)

●世間ではバレンタイン・デイの義理チョコとか、あいかわらずの話題だが
 いわゆる業界では、数年前から、この習慣は絶えてしまっている。
 レコードとかタレントのプロモーションでも、もうバレンタイン絡みは
 ほとんどない。バブルの頃は実際、チョコレートがどのディレクターの
 デスクにも山になっていたものだが。禁煙、喫煙の流行も世間とは逆に
 なっている。禁煙ブームは十数年前で、今は煙草を吸う人がふえている。

●廊下でメディア推進部のNさんにあったら、加藤治郎さんが
 『イージー・パイ』を送ってくれたと教えてくれる。Nさんは、5年前に
 コンパックと組んで、いろいろなサイトを立ち上げる企画をやっており、
 その時に歌人の加藤治郎さんにWAKAというHPをつくってもらった
 のだ。畑彩子さん、東直子さん、小守有里さんたちに来ていただいて
 六本木やお台場で吟行会をやってもらい、その様子をインターネット中継
 したり、さまざまに協力していただいたものだ。
 そういう試行錯誤をくりかえしていた頃を思うと、現在のラエティティア
 の活発な動きや歌葉のオンデマンド出版の実現というのは
 素晴らしき新世界、という気がする。
 Nさんに歌葉というシステムがたちあがったこと、それがどのように
 歌人たちの歌集出版の状況を変えるかを、手早く説明する。

●塚越孝アナウンサーが、所蔵する寄席関係の資料を画像にしたものを
 ノートパソコンで見せてくれる。
 立川談志が昭和46年に参議院全国区選挙に立候補した時のポスター
 これは中央選管の証書付き。写真はなくて、橘右近の文字で談志と
 大きく書いてある。これはとても貴重な資料だ。
 他にも松竹演芸場のポスターなどもある。
 佐々木つとむ、とか、小野栄一とか声帯模写大会のときのポスターなど
 やはり貴重だ。佐々木つとむなんて愛人に刺殺されて
 しまったんだからなあ。小野栄一も病気らしい。
 こういう資料は価値観を共有している人間同士には、きわめて刺激的なの
 だが、その価値観に無縁であれば、まったく無意味なわけだ。

●無料配信してもらっている本に関するメルマガにHiroeBailey
 というニューヨーク在住の日本人ライターが書いたコラムが紹介されてい
 た。タイトルは「WWFに熱狂するニューヨーク」。
 ラエティティアでは中澤系さんと私がこの話題に時々ふれているが
 WWFというプロレス団体が現在のアメリカでは熱狂的なブームをよんで
 いる。この現地レポートであらためて確認できる。
 タイムズ・スクエアに昨年オープンしたWWFショップでは無数のグッズ
 が販売され、巨大モニターでプロレスを見ながら、食事ができるとのこと。
 この日本人の女性コラムニストは、プロレスにはまったく知識がないよう
 で、レスラーのフィギュアやTシャツばかりでなく、料理の本まで売って
 いる、と驚いている。これは実況中継アナウンサーのJRことジム・ロス
 が書いたクッキング・ブック。また女子レスラーのチャイナのことを
 チャイナ・ディーバスとフルネームで書いているのもシロウトっぽくて
 かえって新鮮。このチャイナをはじめとするWWFの女子レスラーたちが
 リング上で男と闘っている、とびっくりしている。でも、日本でも井上京子
 なんか、FMWのリングで男子レスラーと互角に闘っているのに。
 と、プロレスの世界でも大きなウェーヴが起こっているということ。

●正岡豊さんの日記に、無人島でも短歌をつくるか、というようなことが
 書いてあったが、私はつくるような気がするな。紙と筆記具があれば
 つくった短歌を壜にいれて流す。夢野久作の瓶詰めの地獄だね。

●夜、柴田千晶さんが、「現代詩手帖」三月号掲載の作品のゲラ刷りを
 校正のためにファックスで転送してくれる。詩の雑誌はこのように
 著者校正があるのだ、と新鮮なショックを感じる。

●ずっと読みかけだった有明夏夫の『骨よ笑え』を最後まで読んで、寝る。


[152] 連休明け、ふと、亡き父の年齢に思いをはせる 2001年02月14日 (水)

●私の母は昭和四十九年に50歳で亡くなった。
 父は母より一歳とししただったので、あの時、四十九歳だったわけだ。
 つまり、これは現在の私と同じわけですね。
 うーん、もっと老けてるようにみえたけれど、親の年齢に実感をもつのは
 なかなか難しいものだ。
 あの時、私は二十二歳の大学生で、弟は十六歳の高校二年だった。
 今、私の長男は十五歳の中学三年生、長女は十歳で小学四年生。
 父にくらべて、この子供の年齢差の6年分くらいは、現在の私の意識
 だけは若いかもしれない。
 まあ、だから、どうってこともないが。

●連休明けの出勤はだるいなあ。
 会社に居るのもうっとうしいなあ。
 伝票書いたり、稟議書書いたりするのもめんどうだなあ。

●家に帰ると、目黒哲朗さんから、『東京式』と『嘆きの花園』に対しての
 丁寧な感想の手紙が届いていた。東京に対する私の思いを自分の東京体験
 に重ねて、きめこまかい読みを展開してくれている。こういう、読み方を
 してくれると、とてもうれしいなあ。
 最近、自分の歌集を読み返してみて,『東京式』と『嘆きの花園』をセット
 で、読むとあるいは私の東京への思いが、よりよく伝わるのではないかと
 勝手に思って、何人かの方たちに、この二冊を謹呈したのだが、この目黒氏
 のように、読んでいただけたことで、必ずしも手前味噌ではなかったという
 ことになるのだろう。
 目黒氏が手紙の中で引用してくださった短歌も、私のとりわけ思い入れの
 深いものだった。
 一首だけ引いておこう。

・文楽メトロカード団七差し込みて所詮一定距離は越えねど『嘆きの花園』


[151] ああ、確かに、こんな休日もあるさ 2001年02月12日 (月)

●今日は休日なので、ゆっくり寝ていてもいいのに、朝6時に目が覚める。
 メールチェックをしてから、もう一度、寝床にもどり、田口ランディの
 短編集『縁切り神社』を読む。
 短編というより、一昔前の文芸感覚でいうと掌編集。だいたい文庫本で
 15ページから25ページのあいだにおさまってしまう作品が12本入
 っている。幻冬舎のネットマガジンに1年間、読みきり連載されたもの。
 今は売れ線の作家ということで、六本木の青木書店あたりでは、平台を
 全部占領してこの本が積み上げてあった。
 小説というより、人間関係の心理の陰翳のスケッチという感じだが、や
 はり田口ランディのブランドがすでに確立しているので、読まされてし
 まう。表題作のほかに、「悲しい夢」という少女たちが外界の異常な事
 件に反応して悪夢を見るという小品が面白い発想で印象深い。
 あと、私が好きだったのは妻子もちの男と不倫をしている女性が、男の
 妻が急死したので、葬式にでかけるまでの心理を綴った「エイプリルフ
 ールの女」という作品。
 特徴としては、ほとんど、外界の描写などせずに心理描写のみでストー
 リーを進行させている方法。当然、意識的なものだろう。
 錦見映理子さんの「うみゆり日記」のモノローグなど、こういう方法論
 に近いので、錦見さんも小説を書けるのではないだろうか。

●昼前に史比古と一緒に一昨日に受験したS高校の合格発表を見に行く。
 首尾良く合格していたので、わが家と両方のおばあちゃんに電話で報告
 し、食事をしたあとで、九段下で史比古とわかれる。
 久しぶりに神保町の書店街を散策。
 色川武大の『虫けら太平記』(文春文庫)と田口ランディのエッセイ集
 『もう消費すら快楽じゃない彼女へ』(晶文社)を買う。

●夕方からWWFの「RAW IS WAR」のビデオを3週間分、早送
 りしながら見る。プロレスファンも楽じゃないのだ。


[150] 総天然色の夢の終焉 2001年02月11日 (日)

●十時前に会社から家にもどる。
 長女のかの子が「ワンピース」の17巻を買ってほしいというので
 東陽町の文教堂書店へ行く。
 そのまま、「安売りのいきいき」へ行って牛乳パック三つと食パンの
 6枚切りを二つ買う。マツモトキヨシでイソジンも買う。
 ビデオ屋兼古本屋に行き、新潮文庫の小林信彦『夢の砦』上下を200円
 均一コーナーで買う。

●家に戻ってから、仙田弘著『総天然色の夢』を一気に読了。
 著者の仙田弘さんは、東京三世社という出版社の元編集者で
 現在は編集プロダクションの経営者。
 そして、一九七九年から一九八五年の三月まで、私を食べさせて
 くれた人でもある。
 本の内容はもっと以前、仙田氏が東京三世社の面接試験をうける
 場面から始まり、わずか3年で『SMセレクト』という雑誌の編
 集長になるまでの社内での奮闘記であり、同時に一九七〇年代の
 エロ系の雑誌のインサイド・ストーリーでもある。

●同書の234ページに、「翻訳と銘打ったポルノ小説も出しました」との
 記述があるが、私も実はこの手の本を仙田さんの依頼で何冊か書いた。
 『女騎手・興奮』というディック・フランシスに怒られそうなタイトルの
 ものもある。先日、オーストラリアの元女性騎手が、現役時代に同業の男
 たちにレイプをふくむ性的虐待を受けつづけたとカムアウトしたが、まあ
 さういうようなことを想像で書いたものだ。ただ、アメリカの三冠戦を
 サブストーリーにして、競馬のディテールはきっちり書き込んである。

●仙田さんの本を読んで、あのころのことをいやおうなく思い出した。
 毎月、原稿用紙で300枚から400枚は書いていた。
 食べるためだけの原稿を。
 もちろん二度と、あんな時代にはもどりたくない。
 
・原稿用紙の反故もてつくる紙飛行機アデン・アラビアまでとどかざる


[149] さらにまた、ソープオペラのように 2001年02月10日 (土)

●午後はひたすらパソコンの前で原稿を書きつづける。
 時々、ラジオの競馬中継を聞く。
 実は今夜は宿直なので、夕方5時半までに会社に行かなければならない。
 特別職宿直という制度で、大地震がおこった時に、この宿直者が放送現
 場の指揮をとることになっている。土、日、休日の場合は昼間にも日直
 が置かれる。現実的には、休日の昼間でも生放送をやっているねわけだ
 し、ディレクターもアナウンサーも報道部員も居るし、日直も宿直も無
 意味なのだが、やめねきっかけを失って、今でもずるずると続いている
 わけなのだ。まあ、実際、何もなければ、会社に一泊するだけなので、
 原稿を書いたりすることもできるのだけれど。

●5時20分過ぎに家を出る。遅れ気味なのでタクシーで行くことにする。
 40分頃、会社に到着する。土曜日なので、やはり、全体的には社員の
 数は少ないわけで、ビル全体がひっそりしている。
 6時30分くらいまで、「短歌人」4月号のための作品をつくる。
 5首の一連で「綺麗」というタイトルにする。
 とりあえず、作品も書けたので、2階のラポルトという社食に夕食を食
 べに行くことにす。このラポルトは、オフィスタワーというフジテレビ
 エリアにあるので、ツインタワーをつなぐ、長い渡り廊下風の通路を歩
 いて行かねばならない。この廊下はタレントクロークにつながっていて、
 廊下の両側には楽屋が並んでいる。
 今日は「馬なりくん」の収録があるようで、楽屋のドアに「爆笑問題様」
 と書かれた紙が貼ってある。ドアのほかに、クロークの入口のところに
 掲示板があり、そこに、やはり、番組ごとに出演者の名前と、何番楽屋
 か、ということを書いた紙が掲示されている。ここには「爆笑問題様、
 3番楽屋にお入りください」という紙と「タイタンの5番、6番様、マ
 ネージャー控室でお待ちください」と書いてあった。タイタンは爆笑問
 題の所属事務所名、5番6番は、一昨日のお笑いライブにも出ていた新
 人のお笑い芸人。たぶん、爆笑問題と抱き合わせで「馬なりくん」に出
 るのだろうが、マネージャー控室でお待ちください、というのは可哀相。
 
●ハンバーグ定食を食べる。今ごろ、ここで食事しているのは、防災セン
 ターのガードマンや美術関係のスタッフが多い。
 食事を終えて、来た通路をまた逆向きに帰る。タレントクロークの出口
 で、前から来るのは、なんと浅草キッドの玉袋筋太郎。
 「フジワラさん、お久しぶりです。本、読んでくれましたか」といきな
 りいわれる。「爆笑 男の星座」のことだ。「ああ、昨日、買ったとこ
 ろ、読みかけだけど面白いね」と反射的に答えてしまったけれど、まず
 い、まだ買ってない。今日、ジュンク堂でみかけたのだけれど、小澤書
 店の本が重かったので、買わなかったのである。とり急ぎ、買っておか
 ないと、今度またあったらマズイ。

●席へもどって、テレビを見る。8時からは「メチャイケ」。
 「しりとり侍」がイジメを助長するということで中止になったことは、
 まだ、耳新しいが、今回は最終回という名目でパロディーをおこなって
 いる。わが家では実は「メチャイケ」の中でも「しりとり侍」のコーナ
 ーが好きで、子供がお風呂に入っていても「しりとり侍が始まるよー」
 と急がせてまで見ていたものなのだが。まあ、袋叩きを子供がまねれば
 確かにイジメには通じるけれども、外部からの抗議でコーナーを中止に
 させられるというのもナンダカナーという気はする。
 後半のコーナーでは、ナイナイたちがノアの練習に乱入して、小橋や田
 上にムリヤリ、ダンスを躍らせている。小橋は膝が悪いんだから、あん
 なことさせたらダメだよ。秋山の姿が見えなかったのは救いだったけど。
 こういうのはルチャをこなす丸藤が上手いのに、と思っていたら、やは
 り、オチに丸藤が使われていた。

●そのままフジテレビを見つづけると『極道の妻たち・最後の戦い』が始
 まる。岩下志摩はもうひとつ好きになれないのだが、かたせ梨乃が出る
 ので見ることにする。学生時代がもろに『仁義なき戦い』の時代にぶつ
 かっていたので、東映のヤクザ映画といわれると、ついつい見てしまう。
 ご贔屓のかたせは迷彩模様のコンバットジャケットで登場。こういうの
 は、はっきりむいって好き。バイソン木村の勇姿を彷彿とさせる。ただ、
 かたせの子分が哀川翔ってのがいただけない。哀川翔が出てくると、も
 う、しょせんはVシネマって感じになってしまう。
 かたせ梨乃のお得意のチャイナドレス姿にならないのだろうか、と思っ
 ていたら、10時15分過ぎに、チャイナドレスで出てきてくれた。
 しかし、いきなり、亭主の仇のヤクザの親分の中尾彬を銃で撃とうとし
 て子分たちに反撃されて死んでしまった。
 かたせ梨乃が好きという人とはあまり遭遇しないが、彼女が主演した、
 五社英雄監督の最後の傑作『肉体の門』はマイ・フェバリット・ムービ
 ーの日本編ではベスト3に入る傑作。パンパンたちのパラダイスをつく
 るという夢やぶれたかたせの顔のアップがストップモーションになり、
 いきなり八代亜紀の「星の流れに」に乗せて、スタッフロールが流れて
 ゆくエンディングは今でも印象に残っている。
 映画というのは一つ印象的な場面があれば良いと思う。今日の映画では
 岩下志摩が不甲斐ない亭主の小林念侍の日本刀を奪って、白足袋の上か
 ら、みずから足を突き刺すシーンかな。
 それで、今、見終わって、キーボードを叩きながら11時25分。
 まだ今日は35分も残っている。終りなきソープオペラの日常よ!



[148] ソープオペラのように長い一日 2001年02月10日 (土)

●長男の史比古が高校の入学試験なので、朝7時のマンションのバスで
 家を出る。木場で地下鉄東西線に乗り換え、九段下で都営新宿線に乗
 り換える。終点の笹塚で京王線の各駅停車に乗り換えて一駅、代田橋
 で降りる。ここから、くねくねした長い道を10分くらい歩くと、目
 的のS大付属高校に到着する。
 すでに東西線の中で、やはり受験に行く同級生とであっていたので、
 史比古は友達の方に行ってしまう。親と一緒なのが恥ずかしいのだろ
 う。九段下と代田橋で、それぞれの友達とわかれたのだが、降り際に
 ガンバレよ、と声をかけあっているのがほほえましい。
 結局、やはり、恥ずかしかったようで、学校が見えたところで、もう
 一人で行くから、帰ってくれ、と言われる。

●というわけで、まだ8時ちょっと過ぎだというのにフリーになってし
 まった。そこで、代田橋から明大前まで一駅進み、そこで井の頭線に
 乗り換えて神泉駅まで行くことにする。渋谷行きの各駅停車で、渋谷
 の一つ手前が、神泉駅。ここへ来るのは二度目。
 駅の階段を降りて、踏切とは反対方向へ10メートルくらい歩くと右
 側に居酒屋の看板が見える。半分が地面に埋まっているような古い木
 造の建物で、その居酒屋の上に二階分の部屋が乗っかっている。
 ここが喜寿荘。東電OL事件の現場である。建物の右側に石段があり
 それを登ると101号室と102号室のわずか二部屋の貸間の汚い扉
 が並んでいる。この102号室で東電OLが殺され、その遺骸は十一
 日間も発見されずに放置されていたのだ。
 あれから丸四年が経過し、どちらの部屋にもすでに人の住んでいる気
 配はない。私が登ったのとは反対側の石段には、ひからびた吐瀉物の
 あとがこびりついている。

●神泉、円山町をはなれて道玄坂を下り、渋谷の駅前まで歩く。まだ9
 時なので、映画でも見ようと渋谷パンテオンの前に行ってみたが、ど
 の映画も1回目の上映は10時過ぎ。一時間以上も待つ気もないので、
 こんどはJRに乗って池袋に行くことにする。車中で読みかけの田口
 ランディ『ぐるぐる日記』を読む。
 つい、先週までは、ランディといえば、マッチョマン・ランディ・サ
 ベージのことに決まっていたのだが、ここ数日は、この田口ランディ
 の世界にひきずりこまれている。自然とかアニミズムとかに対しては
 毅然として拒否し、ノイズにみちた電波を浴びることこそ現代の都市
 人の恩寵だ、とうそぶいていたのに、なんだか、あやうくなってきた。
 WWFのギミックで、ポン引きキャラクターのゴッドファーザーが、
 改心してグッドファーザーと名乗り始めたように、私もランディ派に
 ひきこまれて、藤原グッディとか名前を変えてしまいそう。

●池袋で降りて、東口方向へ出る。住友信託銀行でお金をおろして、その
 まま、ジュンク堂へ向う。ここは、去年の12月だったか、正岡豊さん
 が、やはり、早朝に来てしまい、扉の前で開店を待っていたという伝説
 の地である。時刻は9時40分。当然、まだ鉄格子みたいなシャッター
 が降りたままだ。
 しかたがないので、筋向いのマグドナルドで時間をつぶすことにする。
 コーラとナゲットを前に、『ぐるぐる日記』の残りを読む。ちょうど、
 読み終わったら10時だった。

●ジュンク堂はレイアウトが大胆に変わっていた。一階のフロアが雑誌と
 キャッシャーのみ。各階にはキャッシャーはなく、すべて、この一階で
 支払いをするらしい。万引き対策なのだろうか。
 文庫の棚を見るつもりで三階にあがると、なんと、小澤書店の書籍の自
 由価格セールというのをやっている。倒産時の在庫処理ということだろ
 うが、ほとんどの本が半額以下なので、これは見逃せない。
 じっくりと、棚の本を吟味する。たぶん一時間以上、この棚の前に居た
 だろう。結局、以下のような本を買う。
 前登志夫『山河慟哭』
 山中智恵子『存在の扇』
 清水昶『詩歌よ、光の夢の中を』
 清水昶『自然の凶器』
 北川透『現代詩前線』
 北村太郎『詩へ 詩から』
 平出隆『攻撃の切尖』
 平出隆『光の疑い』
 など、いろいろ衝動買いしてしまう。
 さすがに重い。
 ぽえむぱろうるへも行くが、手が痺れて耐えがたいので、もう帰ることに
 する。
 池袋で有楽町線に乗ったのが、11時30分過ぎ。豊洲駅着12時3分。
 駅前の中華料理店でレバニラ定食を食べて、帰宅が12時45分。


[147] さて、さて、さては南京玉すだれ 2001年02月9日 (金)

●有楽町分室に置いてある大量のアナログ版レコードと放送済みの
 オープンリールテープを倉庫に引き取ってもらうために、倉庫会社の
 営業の人と、分室で待ち合せていたのだけれど、途中でケイタイに
 会社から「営業さんが急病で行けなくなった」との連絡が入る。
 とりあえず、無駄足にしないように、分室でレコードとテープの箱の
 数だけ数える。レコード120箱。テープ200箱ある。

●浜松町経由でバスでお台場へ。途中、浜松町のブックストア談で
 田口ランディの新刊『縁切り神社』を買う。20枚くらいのショート
 ストーリーを集めた文庫オリジナルの短編集。幻冬社文庫。
 バスの中で表題作だけ読む。

●午後は設備投資計画の会議。しかし、これは思ったより短時間で終る。
 会社の帰りに歯医者によって、20時30分に帰宅。

●田口ランディの『ぐるぐる日記』は、もう少しで読み終りそう。
 こういう書き手が出現してくることもネットワークの効用なのだろう。
 『コンセント』は今のところ、あえて読まずにいるのだけれど
 来週には買ってしまうだろうと思う。
 


[146] 六本木センセーション 2001年02月08日 (木)

●昨日、久しぶりに六本木に行った。
 企画開発部にいた頃は映画配給会社にしょっちゅう行っていたので
 ブエナビスタ、フォックス、GAGAと密集している六本木には、
 一週間に3回くらいは来ていたのだが。
 やはり、仕事の内容によって行動範囲というのは変化する。

●青山ブックセンターで、衝動的に文庫の新刊など買ってしまう。
 買った本
・日下三蔵編『岡本綺堂集』ちくま文庫
・『20世紀SFB』河出文庫
・新青年傑作選『ひとりで夜読むな』角川ホラー文庫
・丸谷才一・山崎正和『二十世紀を読む』中公文庫
・大岡信『詩の日本語』中公文庫
・正岡容『明治東京風俗語事典』ちくま学芸文庫

あと、贈呈していただいた本が一冊
・内野光子『現代短歌と天皇制』風媒社

●六本木に行った目的は「第一回お笑いコンベンション」という新人発掘の
 ライブを見に行くため。
 お笑い芸人をかかえるプロダクション16社が一緒に協力しあって、お笑
 いの新人をテレビ、ラジオのプロデューサーたちに売り込むための見本市
 というもの。場所は「六本木センセーション」というライブハウス。
 新人歌手の売り込みにはプロダクションはお金をつぎ込むが、お笑いの芸
 人にはまったく、お金をかけないというのが、現状だったので、16もの
 事務所が、こういう企画を実施するのはとてもよいことだ。

●出演者と所属プロダクション。
・やめまいだー ニュースタッフエージェンシー
・スピードワゴン M2カンパニー
・ホームチーム マセキ芸能社
・5番6番 タイタン
・ポプラ並木 ホリプロ
・どーよ サンミュージックプロダクション
・はなわ ケイダッシュ
・プラスドライバー プロデューサーハウスあ・うん
・ドランクドラゴン プロダクション人力舎
・火災報知器 太田プロダクション
・エレキコミック トゥインクルコーポレーション
・北京ゲンジ オフィス北野
・北北西に進路を取れ 浅井企画
・磁石 サワズカンパニー
・熊本キリン プライム・ワン
・品川庄司 吉本興業
司会進行 つまみ枝豆

●上の事務所名を見て、あれっ、変だな、と気がついた人はギョーカイ通。
 そう、びびる、TIM、ネプチューンをかかえる渡辺プロダクションが
 どうやら参加していない。これは何かあったんでしょうね。
 私が面白かったのは、どーよ、のバトルロワイヤルのパロディのネタ。
 はなわ、の佐賀県の歌というのも、構成自体は金谷ヒデユキなどの先例は
 あるが、いちおう笑えた。北京ゲンジは最近のニュースをブラックに料理
 して行く、という意欲は買うが、爆笑問題のセンスには及ばない。
 ドランクドラゴンの新人アナウンサーとアイドルオタクというコントは
 手馴れていて、安心して笑える。

●会場に居るのは、みなテレビ、ラジオの局の関係者ばかりなので、演者
 たちはやりにくかっただろう。
 質問コーナーで、フジテレビの佐藤さんがしゃべる時、酔っていたらしく
 舌がもつれていた。若い芸人たちが「あの人、酔ってるじゃん」とかの
 ツッコミを入れると、つまみ枝豆が「バカ、あの方には、ツッコムんじゃ
 ない。ひょうきん族をつくった大プロデューサーであられるぞ」と、
 まとめようとしていたが、若い芸人には「ひょうきん族」を知らない連中
 も居るようだった。
 この佐藤プロデューサーといえば、先週、私は会社のエレベーターで佐藤
 さんと乗り合わせた。それどころか、私が先に乗っていて、あとから来た
 佐藤さんに気がつかなかったので、「閉めるボタン」を押して、なんと
 佐藤さんをエレベーターのドアにはさんでしまったのだ。
 すぐにあやまったが、あのひょうきんディレクターのゲーハー佐藤さんを
 エレベーターで挟む日が来るとは、あの「オレたち、ひょうきん族」を
 テレビで見ていた頃には、想像もつかなかった。
 そう、月日は無意味に流れているのではない、ということだ。


[145] 終りなき日常というパラダイス 2001年02月07日 (水)

●社内でまた風邪が流行り始めている。
 年末年始の二週間のあの苦しみはもう一度体験するのはうんざりなので
 ぶり返さないように気をつけなければならない。

●蚕糸会館の引越しにともない、各セクションから、あれがほしいこれが
 ほしいという新たな希望が出てくる。ファックスとか予備の電話回線と
 かパテーションとかね。まあ、管理セクションの側の私にいわせれば、
 ほとんどがわがままなのだけれど。いちおう、オフィス移動に関する予
 算内でまかなえるものは、了承し、手配する。
 塚越孝アナウンサーが、先日、貸してあげた昭和40年代の大阪の花月
 演芸場のプログラムをかえしにきてくれた。芸人、演芸の話でもりあが
 る。つかちゃん(塚越アナの番組での愛称)は、立川談志が参議院全国
 区に立候補した時の橘右近師匠が書いた寄席文字の選挙ポスターを所有
 しているという。額装して家にかざったら、奥さんにいやがられたそうだ。


●夜、内田君が送ってくれたWWFのビデオのうちのサバイバーシリーズ
 を見る。これは去年の11月のものだから、スカパーでWWFを見て居
 る中澤系さんにくらべると三ヶ月遅れで追いかけているわけだ。
 イヤミなイギリス人というギミックで出ているステイーブン・リーガル
 が「あなたたちアメリカ人は大統領さえいつまでも決められない」とマ
 イクでお客を兆発したのにはウケてしまった。
 このサバイバーシリーズの開催地はフロリダ洲のタンパ。カート・アン
 グルも「アメリカ1の人気者は僕に決まっているが、このフロリダの投
 票だけは信用できない」とギャグをかましていた。WWFの面白さのひ
 とつに、こういうタイムリーでブラックなジョークのセンスがあるのだ
 ろう。すべて構成作家がつくっているわけだが、それをどのレスラーも
 キャラクターにあわせて、巧みに演じてしまうところもスゴイのだ。

●今、読んでいる本。読もうとしている本。
 田口ランディの『ぐるぐる日記』は、まあ、面白く読み進んでいる。
 再読シリーズは有明夏夫の『骨よ、笑え』。この本は文庫もオリジナルの
 本も古書店にあまり見当たらない。内容は、大阪の葬儀屋の養子の藤原重
 助という男が、江戸時代からずっと土葬の骨をすてる埋葬地だった千日前
 を明治政府から買いとって、現在の繁華街の端緒をつける、という話。
 大阪弁、和歌山弁、名古屋弁などの言葉のちがいをみごとに書きわけてみ
 せてくれる文章力はすごい。明治初期の世相と芸人やテキヤたちが沢山、
 登場するので、そういう世界に興味がある私には面白く読める。
 阿佐田哲也の短編集『ギャンブル党狼派』も再読中。といっても、もう、
 たぶん数十回目の再読だろう。「人間競馬」という短編の最後のところ
 で、主人公のタカヒカリという相撲取りくずれが
 「ああ、また、運の変わり目が来ているな」とつぶやくところなど、何度
 読み返してもゾクゾクする。
 これから読むつもりの本は、仙田弘著『総天然色の夢』本の雑誌社1600円
 プラス消費税。著者の仙田弘氏は東京三世社というエロ雑誌系出版社の編
 集者。内容は一九七〇年代のはじめから八〇年代にかけてのエロ雑誌繁盛
 記。実は私はこの著者の仙田さんには、一九八〇年代前半にとてもお世話
 になっているのだ。その詳細はいつか書いてみたいと思っている。


[144] 心地よくなく秘密めいた場所 2001年02月06日 (火)

●飯田有子歌集『林檎貫通式』が届く。
 歌葉シリーズの一冊。ウメコという人の描く女子中学生のイラストがいい。
 話題の「枝毛姉さん」もついに歌集におさまってしまった。
 いつまでも歌集に入らず、口承だけで話題になる一首という存在も
 いいな、と思っていたが、まあ、こうして歌集にはいれば、さらに
 多くの人に知られることになるのだから、まあ、いいか。

・生ごみくさい朝のすずらん通りですわれわれは双子ではありませんのです
・さてごはんにかけたらいやなもの第一位はdrrrr除光液でした
・なぜ涙が砂糖味に設定されなかったそんなの知ってる蟻がたかるからよ

 こういう歌集の後半に入っている作品の圧倒的なオリジナリティーに
 魅力を感じる。

●夜は中野で七月一日におこなう朗読イベントの打ち合せ。
 辰巳泰子さん、松原一成さん、池田はるみさん、森本平さんと
 ミーティングをおこなう。

●今日買った本。
 田口ランディ『ぐるぐる日記』筑摩書房 1600円+税
 


[143] 平穏で不穏なこの日常を 2001年02月05日 (月)

●今日は長男の史比古の高校の推薦入学の発表日だった。
 九時過ぎに会社に電話があって、残念ながら、ダメだったとのこと。
 これで、週末に私立高校、その後、都立高校の一般受験をおこなう
 ことになる。

●首都圏営業部が移転したという、会社にとっては、さして大きな事件
 ではないことに関しても、封筒の住所の変更とか電話回線の変更工事
 とかBS放送がそのビルで受信できるかどうかの調査と工事依頼とか
 鍵の受け渡しのルール化とか飲料自動販売機移転とか移転先のビルの
 清掃委託業者への詳細の確認とか、とにかくこまごまとやらなければ
 ならないことが出てくる。そしてそのすべてを総務部が処理していた
 のだ、ということを今さらながら理解した。会社ぐるみでお台場へ移
 動した四年前は、さぞ、煩雑だっただろうと思う。その頃は自分も文
 句を言っているだけだった。

●昨日の「シンデレラ物語の裏側」で聞いたさまざまな事実の衝撃がま
 だ頭の中に燠のように残っている。会場からの質疑応答のコーナーも
 あったのだが、「私も父から性的虐待を受けた」とか「摂食障害で家
 族が自殺した」とか「もう、何十年も家族の前でものを食べたことは
 ない」「私は東電OLのように売春に近いことをした」とかの人達が、
 とにかく驚くほどたくさん世間には存在する、という事実。虐待され
 た人、子供を虐待してしまう人、虐待する父を憎む子供、思考停止の
 母親。心の闇、という言葉が内包するすさまじい人間関係の錯綜。

●佐野眞一氏の話によると東電OLが神泉駅近くで夜毎、売春行為をし
 ていたことは、会社の同じセクションの人達も家族である妹や母も知
 っていたのだそうだ。そして、殺された彼女のバッグの中には、来週
 のノルマとしての24個のコンドームが入っていたという。重いなあ。
 ということなのだ。


[142] 日曜の午後、すみだリバーサイドホールで 2001年02月05日 (月)

●浅草の吾妻橋の近くの、すみだリバーサイドホールで
 「シンデレラ物語の裏側・東電OL殺人事件を読み解く」という
 催しがあるので行く。10時から始まっているのだが、私がついたのは
 ちょうど正午。すでに会場はぎっしり。現代歌人協会の「西美を詠う」の
 イベントと同じ会場だが、フラットな床にぎっしりと椅子が並べられ、
 400人以上は入っている。
 日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオンという団体が主催で、摂食障害、
 親からの虐待、性的暴力、自傷行為などに悩む人達のためのカウンセリ
 ングやワークショップなどを積極的に実施している団体らしい。
 
●午前中は、そういう障害からたちなおった人達、つまりサバイバーの
 発言と精神科医の斎藤学氏の対論。
 私が入場したときは、摂食障害と母親との関係の不具合に悩んでいた
 女性が斎藤氏と対論していた。会場全体の空気がなんともヘヴィで、
 緊張してしまう。

●まもなく、昼休みに入り、ホールのロビーで柴田千晶さんと待ち合せる。
 アサヒビールのビアホールでジャーマンポテトなど食べつつ歓談。
 ミッドナイトプレスの岡田幸文さんと詩人の山本かずこさんとも、待ち
 合せをしているが、まだ、来ていない。そのまま柴田さんと、午後の部
 のために、会場へもどる。聴衆の数は午前中よりさらに増加している。

●午後の部は佐野眞一、田口ランディ、斎藤学の三人のそれぞれの話と
 鼎談、質問コーナーなど。
 とても濃密な内容で、精神的な刺激を受けっぱなしだったが、その話を
 再現するのは、かなりむずかしい。
 もっとも印象的でしかもわかりやすい点をひとつだけ紹介すると、
 田口ランディ氏が言った、「人の死にざまは生きざまを語るダイイング
 メッセージ」だとの言葉。ダイアナ妃は激突死という死に方が、その生
 のシンボルであり、東電OLもあの円山町のアパートでの死が
 「私は死ぬまで働いた」
 「私は孤独だ」
 「私は汚い」
 こういうメーセージを放っているというもの。確かにそうだな、と思う。

●佐野眞一氏はとても理路整然として説得力のあるしゃべり方をする。
 東電OL事件には、現在、報道されている以上のさまざまなデマや
 トリックやミスディレクションがかくされている、という主旨の発言
 には、やはり、そうだろうな、との重さが感じられる。
 本筋とは関係ないが、佐野氏がステージ上にいるとき、二、三度、
 客席で携帯電話の着メロ音が短く鳴ったのだが、そのたびに、氏が
 びくりとした表情で、そちらを見るのは、すごく携帯電話の音にナーバス
 になっている、という印象だった。

●終了後、岡田氏、山本氏とも合流。
 四人で浅草の居酒屋へ行く。ここでの会話もまた、私にとってはとても
 有意義で充実したものだった。
 現代詩をつくっている人達と、初めて親しく話しをしたことになるが、
 四人ともが感じたのは、歌人や俳人や川柳人や詩人といったエリアや
 ジャンルにおたがいに閉じこもっているのではなく、もっと交流する
 ことが必要だということだと思う。
 昨日とはうったかわって充実した一日であった。
 帰宅して、子供たちと「笑う犬の冒険」を見る。
 
 


[141] さして愉快でない一日 2001年02月03日 (土)

●昨日と同じメンバーで、有楽町分室に集まって、蚕糸会館への引越し。
 日通から柴田さんをチーフにした二十五名のチームがやってきて、整然
 と荷物が移動してゆく。
 蚕糸会館の方のおくれていたパテーションも同時進行で設置。

●途中で局長と部長がやってきて、建設事務局の什器レイアウトを急に
 変更させられたりもしたが、とりあえず、夕方5時過ぎには、引越し
 は終了。解散する。

●帰りに、八重洲ブックセンターによる。
 「詩学」を買うつもりだったのに、見当たらない。
 「東京ヘップバーン」とかは置いてあるのに。週が明けたら、池袋の
 ぽえむぱろうるに行くしかないようだ。
 色川武大の『私の旧約聖書』『引越し貧乏』『百』などの文庫本を
 買って帰る。色川武大の文庫も、再版されず、棚から消え始めている。


[140] 防災用品にレッテルを貼る 2001年02月02日 (金)

●午前中、有楽町分室に直行し、防災用品に引越し用のレッテルを貼る。
 8−Gという記号を書いたレッテルなのだが、これは、引越し先の
 蚕糸会館の8階のGエリアに運ぶ荷物ですよ、という意味。

●11時前に作業は終ってしまったので、警備室に行くと、新生舎の沖喜さん
 が、うなぎを食べに行きましょう、と誘われる。
 石原副部長、上村さん、沖喜さんと一緒に帝劇の地下の「きくかわ」に行き
 うなぎを食べる。せっかくのおごりなのだが、風邪気味なので、正直、
 あまりおいしいと思えない。もったいないはなしである。

●午後、お台場の本社にもどる。
 東京都の水道局の人が来て、私の勤め先が足立区にもっている土地の一部
 に、水道管をとおしたいので、土地を一部分、売ってほしい、との交渉に
 くる。試算金額というのを聞いたら、高額なので、売ってしまえばいい
 のにと思ったが、部長が会社の資産なので、売ることはできない、と断って
 しまう。まあ、しょうがないか。

●せっかく、お台場まで来てくれたのだから、ということで、水道局の人達
 を、球体展望台からフジテレビの番組見学コースを案内する。


[139] 二月は逃げるというけれど 2001年02月01日 (木)

●寒い朝。吉永小百合と和田弘とマヒナスターズがそういう歌をうたっていた。
そう思いながら会社に行ったら、山田邦子の番組で、その「寒い朝」がかか
っていた。

●『チーズはどこへ消えたか』という扶桑社の本が管理職に配られる。

●スポーツ部のロッカーを買うために、イトーキの田村さんに来てもらう。
 いくらロッカーを買っても、すぐに、さまざまな荷物が積み上げられて
 しまうのだけれど。

●会社の帰りに久々に東陽町の安売り文庫屋へ行く。
 100円均一コーナーで買った本。
・井沢元彦『逆説の日本史・聖徳太子の称号の謎』小学館文庫
・柄谷行人『反文学論』講談社学術文庫
・大岡信解説『谷川俊太郎詩集・空の青さをみつめていると』角川文庫
・北川透編・解説『谷川俊太郎詩集・朝のかたち』角川文庫
・見沢知廉『天皇ごっこ』新潮文庫
・浅野建二校注『人国記・新人国記』岩波文庫
・石川淳『焼跡のイエス・処女懐胎』新潮文庫
・糸井重里『糸井重里の萬流コピー塾』文春文庫

これで、消費税込み840円。古本は安く、新刊は高い。

●歌集を図図しくお送りした、詩人の薦田愛さんから、メールで丁寧な
 返事をいただく。


[138] 二十一世紀も千二百分の一が終り 2001年01月31日 (水)

●特別職会という月に一度の会議。
 なぜか、この会議の準備は、総務部の中間管理職がおこなうことになって
 いて、それはつまり私なので、会議室の椅子の数をそろえたり、灰皿をそ
 ろえたりする。
 一月一日付けで、新特別職になった三人の挨拶がある。
 女性二人、男性一人。この女性の一人は、もともと短大卒の主務職という
 職種で入社し、社内試験で、総合職に転向し、そして管理職である特別職
 に、なったのだから、これは会社始まって以来の快挙。彼女とは、イベン
 ト関連の部署で、一緒に仕事をしたが、正直、抜群の能力だった。私は
 彼女の上司だった時期もあるが、まあ、私より仕事ができることは確か
 で、藤原斑の成績は、彼女に頼りきっていた。うーん、すごいね。

●筒井康隆の『大いなる助走』を読み終わったあと、再読シリーズは
 野坂昭如にする。短編の「執念夫婦添い節」と「砂絵呪縛後日怪談」を
 寝ながら読む。格助詞の少ない、あの独特の野坂文体、久しぶりに読む
 と、なつかしい。一九六〇年代の後半から一九七〇年代の前半にかけて
 これらの短編は書かれたわけだが、多彩な作品を書き分けていたのだな
 と、あらためて感嘆する。文藝評論家的にいえば、「砂絵」の方の陰惨
 な暗さは、七〇年安保後の後退戦のはらむ暗い情念ということになる。
 もう少し、この時代の短編小説を読んでみようと思う。


[137] さらにまた会議は踊り、会議は続く 2001年01月30日 (火)

●朝5時に目が覚める。
 すぐに昨夜書きかけの原稿の続きを書く。
 気が弱いので、こういう朝は逆にすっきり目がさめて、原稿の続きにも
 いやいやながら、没頭することができる。まあ、他人に迷惑をかけるよ
 りは、このほうがいいだろう。朝7時前になんとか書き上げ、ファック
 スで送信する。

●会社では今日は設備投資計画の会議。この会議は昨日の予算折衝よりも
 時間的にはハード。一時半から七時まで、まったく休息なしで続いた。
 一昨年までは、この時期は、ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画
 祭の追い込み時期で、やはり仕事的にはハードだったのだが、それぞれ
 のセクションで、会社という組織の維持・発展のために力をそそいでい
 るということだ。

●途中で歯医者によって、帰宅は8時半。
 内田君から「RAW IS WAR」のビデオが4本も届いている。感謝!
 「かりん」2月号もきている。表紙が若っぽくかわった。去年の「心の花」
 のジェリービーンズの表紙もびっくりしたが、この「かりん」の表紙のデ
 ザイン変更も、びっくりではある。

●寝る前に「現代詩手帖」2月号を拾い読み。
 本当は柴田千晶さんとのコラボレーションがこの号に掲載されるはず
 だったのだが、来月号に延期になったという。このことは、柴田さん
 からメールで知らされていたので、了解済み。
 あとがきに「なお、予定していた「新人作品10人集」は来月号に掲載
 することにした」と書かれている。まあ、急遽、台割の変更があった
 ということだろう。現在の現代詩の新人というのは誰でどういう作品
 を書いているのか興味深い。

 


[136] 会議ばかりの月曜日 2001年01月29日 (月)

●予算時期なので会議が続く。
 今日も午後から経理局長はじめとする経理部と総務部の予算折衝。
 一時半から六時まで、みっちりかかってしまう。
 総務部の場合、会社全体の費用、あるいはグループ会社関連の共有物
 の費用なども担当することになるので、費用の項目が他部にくらべて
 とても多くなる。
 こういうことも、総務に異動するまではまったく知らなかった。

●ぐったり疲れて帰る。
 30日締切の原稿があるのだけれど、今夜はとても書けそうも無い。
 とはいえ、そうもいかないので、とにかく書き始める。
 半分くらい書いたところでダウン。寝ることにする。


[135] 間仕切りの立会いをする日曜日 2001年01月28日 (日)

●来週の土曜日に有楽町分室にある首都圏営業部はじめの一団が
 蚕糸会館に引っ越すことになっている。
 そのため、蚕糸会館のフロアを、設計図に沿った間仕切り工事を
 してもらう。
 昨日と今日の二日間なのだが、私の立会い担当は今日ということで
 午前10時前に蚕糸会館に行く。
 雪のため東京競馬が早々と中止決定をだしていたので、心乱れること
 もない。

●いちおう、顔だけだして、新規購入の什器類の搬入を見て、納品書と
 照合してチェックする。この什器が納品されてしまえば、あとは工事
 の終了まで、することがないので、イトーキの諏佐さんに、何かあっ
 たらケイタイに電話してくれるように頼んで、一度、家に帰る。

●昼食にうどんを食べて、そのあと「短歌ルネサンス」という九州の
 梓書院という出版社からだされた短歌の専門雑誌を拾い読みする。
 安永蕗子と岡井隆の25ページにわたる対談が読み応えがある。
 時評欄で宮原望子が小高賢編著の『現代短歌の鑑賞101』に
 九州の歌人は石田比呂志、伊藤一彦、浜田康敬、安永蕗子の四人しか
 入っていない。竹山広も築地正子も山埜井喜美枝も志垣澄幸も入って
 いないと指摘しているのが面白い。

●午後、再び家を出て、有楽町へ行く。
 ケイタイで゜諏佐さんに連絡をとってみると、あと一時間ほどかかり
 そうだというので、交通会館の地下の古本市に行く。
 ここは常設の古書市場で、文庫中心で、ブックオフほど安くはないが
 けっこう掘り出し物がある。

●交通会館の古書市で買った文庫本。
 大西民子歌集   短歌研究文庫    300円
 倉坂鬼一郎『不可解な事件』幻冬舎文庫 300円
 泡坂妻夫『妖盗S79号』文春文庫    300円
 半村 良『かかし長屋』祥伝社文庫   300円
 久保田二郎『最後の二十五セントまで』 250円
 銀座百点篇『銀座ショートショート』旺文社 200円

 というあたり。久保田二郎とか銀座百点あたりが掘り出し物といえる。

●結局、午後6時過ぎに工事終了、搬出も終る。
 帰宅して、贈呈本の梱包をおこなう。


[134] 東京が雪にうもれて 2001年01月27日 (土)

・東京が雪にうもれてゆくゆふべうつくしうもれゆくといふこと/下村光男

●↑ふと、こんな歌をくちずさんでしまう雪降る土曜日。 
 外へ出る気はしないので、文庫本の整理をする。
 ブックオフに代表される、文庫安売り屋の進出のおかげで、ここ3年ほど
 大量の文庫本を買ってしまっている。
 新刊書店をこまめにのぞいているつもりでも、こんな文庫が出ていたとは
 知らなかった、というのがたくさんある。
 ブックオフの良い所は、なにより本が綺麗で安いということに尽きる。
 
●昔、文庫本は何度もくりかえして読むというイメージだったが、現在は
 一度読んでしまえばそれで終り。そしてブックオフに流れるわけだから
 本が綺麗なのは当然。しかも、買取時も汚い本は買われないし、買取本
 のクリーニングのノウハウもブックオフはしっかりしている。
 私が時々行く、荻窪のブックオフはパチンコ屋のイメージで、たえず
 店員がマイクで、「今日は単行本がお買い得、なんでも二冊で1000円」
 などと、怒鳴り続けている。そして、お客はスーパーマーケットにある
 籠を腕にさげて、本を買うわけである。

●というわけで、買ったまま積み上げておいたり、キャリーバッグに入れ
 っぱなしだった本をジャンル別、読みたい順番などを考慮して、分類す
 る。こういう時間はとても楽しいが、よく考えてみると、今日、整理し
 た本だけでも、全部読了するとしたら、3年くらいはかかりそうだ。

●実はあまり新しい本を真剣に読まず、読まなければ、との、強迫観念に
 追われて、読み流しているのではないか、と年初から思い始めて、今、
 意識的に昔、読んだ本で印象深かった本を再読し始めている。
 阿佐田哲也の『麻雀放浪記』四部作を始めとするギャンブル・ピカレスク
 を再読しているのも、その一貫なのだ。
 阿佐田哲也のあとは筒井康隆に行こうと、本をそろえながら決心する。
 とりあえず、筒井康隆の『大いなる助走』を読み始める。

●ところで、ブックオフと阿佐田哲也で思い出したが、現在、阿佐田哲也の
 文庫、新書ノベルスは、私が行くブックオフ系の本屋では品薄になっている。
 『麻雀放浪記』はあるのだが、講談社ノベルスから出た『ばいにん
 ぶるーす』などはまったく見当たらない。これは、阿佐田哲也の読者は
 読み捨てではなく、何度も読み返しているということなのだろうか。

●夜になって、雪はみぞれに変わる。明日の日曜は晴れるだろう。


[133] かけがえのない一日 2001年01月26日 (金)

●朝、柴田千晶さんから作品「情事」がファックスされてくる。
 剥皮の苦痛と都市的感性の虚実皮膜。とても面白い作品だと思う。
 この作品は共作『交歓』の第二作目になる。
 第一作の「セラフィタ氏」は「現代詩手帖」二月号に載るはず。
 「情事」の方は「ミッドナイトプレス」春号に掲載される予定。
 今年はこの共作にすべての力を注ぎ込むつもり。
 既成の短歌の世界の常識になじまないことこそ積極的に実行する意味がある。
 
●夜は新高輪プリンスホテルのパミール館で、放送作家でこの一月五日に
 亡くなった腰山一生さんのお別れ会。
 会場につくと、業界の人達がクロークにもエスカレーターにも受付にも
 列をなしている。
 腰山一生さんは、テレビ、ラジオの業界では知らぬ人のない、第一線の
 放送作家で、古舘伊知郎さんや松尾貴史さんやヨネスケさんの事務所で
 ある古舘プロジェクトに所属していた。
 癌のために、四十六歳で亡くなったのだ。

●会場正面には腰山さんの笑顔の大きな写真が飾られ、白い花で祭壇が埋
 めつくされている。式の進行は古舘伊知郎さん。
 お別れの言葉は横沢豹さん。
 会場にはいわゆるギョーカイの人達が六〇〇人以上、あふれかえっている。
 これだけの業界人がみなおしなべて沈痛な表情をしている。
 
●会場で会った人。見かけた人。
 太田プロの副社長、財津取締役、バーニングのナベちゃん、藤井青銅さん、
 CXの佐藤GP、歌人では田中章義さんがいた。
 田中さんは、かつて「青春島田学校」で腰山さんと一緒に仕事をしていた
 のだそうだ。
 松原一成さんも居るはずなのだが、これだけ多人数だと、みつけるのは
 困難だろう。

●業界の人の葬儀で、これだけ、参会者の悲痛な思いがみなぎっていた
 会は初めてだ。
 腰山一生さんの若すぎる死をキイとして、誰もがかけがえのないこの
 一日ということを、自分にひきつけて考えたのではないか。


[132] 中野で密談の木曜日 2001年01月25日 (木)

●中野駅で夜七時に辰巳泰子さんと松原一成さんと待ち合わせ。
 七月に企画している或るイベントのために、辰巳さんに松原さんを紹介
 することにしたのである。
 松原さんは「短歌人」の会員で本業は放送作家。小劇団の芝居やコントなども
 書いている。
 構成作家のプロに入ってもらうことで、イベントの内容がかなり具体的に
 なってきた。

●家に帰って、インターネツトにつなぐと、すでに歌葉がオープンしている。
 玲はる名さんと飯田有子さんの歌集を早速、注文する。