[1337] 心弱い日曜日 2004年05月23日 (日)

早朝5時出社。
生放送と録音を1週分とったら午後1時になっていた。
8時間働いたので帰宅。

早速、遅れている原稿を書こうとパソコンの前に座るが、一行も
書けない。
気晴らしに、オークスの馬券を買う。
まったくかすりもせずに完敗。
ますます気弱になる。

夜も気がめいったまま。
歌人論を書かなければならないのだが、対象の歌人が手ごわすぎ
て、はねかえされてしまう。
こういうこともあるさ。とはいえ、気弱になるばかり。

明日は休むことにする。


[1336] ラジオビバリー昼ズ十五周年 2004年05月22日 (土)

昨日とは一転して肌寒い朝になった。
小泉首相が早朝、ピョンヤンにたつのをテレビでみる。

とりあえず帰宅。
競馬中継をラジオで聞きながらごろごろする。
集中力が出ない。書くべき原稿が書けない。

夕方から有楽町の読売ホールで開催される「ラジオビバリー昼ズ
十五周年」の記念ライブに行く。
この番組の初期にディレクター、プロデューサーとしてかかわった
ことは、私の人生にとって幸運なことだった。

高田文夫さんはじめ、松本明子、大東めぐみ、早坂好恵、せがわきり
乾貴美子、清水ミチコ、大西ユカリと歴代のアシスタントが勢揃い
したのも圧巻だった。

ウチアゲが新社屋の地下ですでにオープンしてる「綴」という店で
おこなわれる。
元情報センター出版局の鳥海さんに久し振りに会う。
鳥海さんは、出版社を辞め、鍼灸師の資格をとったそうだ。
元番組アルバイトで「おとなは勝手だなあ」との名言が「ビバリ
ー十五年史」にも記録されている木村嬢にも久々に面会。

夜10時半過ぎに、帰宅後テレビを見る。
地村さんと蓮池さんの家族が小泉首相とともに帰国したニュース。
家族会は小泉首相の弱腰外交に激怒している。


[1335] 台風からバッドテイスト 2004年05月21日 (金)

午前3時の時点では雨が強かった。
放送開始の午前5時には、雨風ともに強く、オープニングを外から
放送したスタッフは全身びしょぬれになっていた。
それが正午にはまぶしいほどの陽射し。

先日のスポーツ紙にサンボ浅子が糖尿病で死んだという小さな
記事が掲載されていた。
サンボ浅子は初期FMWを支えたプロレスラーである。
リングネームのとおり、サンボの日本選手権三位という肩書き
だったが、実は当時のサンボの選手権には四人しか出場者が居
なかったとのことだ。
確か築地の魚問屋の息子で、金には不自由がないという噂も聞いた。ともあれ、リングのカルトな傍役ではあった。
大仁田厚と一緒に一度、番組に出演してもらったことがあったが
悪い印象は残っていない。
まだ40歳とのこと。
自殺した荒井昌一社長、下半身不随のハヤブサ、そして早死にの
サンボ浅子と、FMWの関係者は、なぜ不幸に見舞われるのだろ
うか。

夕方、「キルビルU」を見る。
まあ、タランティーノの悪趣味を楽しむ映画だろう。
ユマ・サーマンとタランティーノの不同調さがシンクロした、きわ
めてバッドテイストな作品である。
もちろん、私は楽しめた。


[1334] 台風接近中 2004年05月20日 (木)

今日はゆっくり9時前に出社。

午前中、チーフ会。
そのあと、明日の準備いろいろ。
台風の2号と3号が接近中なので、明日は番組フォーマットが
変更になるかもしれない。
小泉首相の訪朝も週末にあるし、「ビバリー昼ズ」十五周年の
記念イベントも土曜日の夜にある。
おまけに、金曜日から土曜日にかけては宿直。
ついこのあいだ、佐久から帰って来た日の夜が宿直だったのに
あっという間に2ヶ月経って、また、会社に泊まらなけばならない。

秋庭俊・編著『写真と地図で読む!帝都東京地下の謎』とい
うムックを、週初めから読んでいたのだが、ようやく読了。
これは、東京の地下には戦前から軍用の地下通路が作られて
おり、戦後の地下鉄は、その地下通路を利用したものだ、と
の仮説を、さまざまな角度から検証したもの。
すでに、同じ著者が、『帝都東京・隠された地下網の秘密』
という本を出しているが、今回は大判のムックサイズなので
地図や図版、地下鉄の駅の写真が多数入っている。

例をあげれば、赤坂見附駅では、銀座線と丸の内線がむかい
あったホームに到着する。ということは、それぞれの線の上
りと下りは、平行ではなく、上下にわかれて停車しているこ
とになる。こんなことは銀座線、丸の内線でも、赤坂見付だ
けで、他の駅ではありえない。
なぜ、こんな奇妙な構造にしたのか。理由がなければ変だ。

と、まあ、こういうようなもの。
私は地下鉄と路線バスが好きなので、こういう本はこたえら
れない。
洋泉社MOOKとして1000円で出ている。



[1333] チルソクの夏 2004年05月20日 (木)

早出のあと一度帰宅、仮眠、再出社。

午後から新宿のシネマミラノに「チルソクの夏」を見に行く。
この映画の主題歌にイルカの「なごり雪」の韓国語バージョンが
使われているので、イルカオフィスのNさんとスタッフが一緒に
見ることになったもの。

感想としては、まず、佐々部清監督の丁寧な映画つくりに好感が
持てる。
カット割りがこまかく、下関の町の様子や陸嬢部の女子高校生の
日常を、飽きさせずに絵でみせてくれる。

水谷妃里、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代の四人組の女子高生役
も、ぴったりとはまっている。
運動部版の「桜の園」という感じもする。

時代設定が1977年から1978年にかけてということで、
四人組が「カルメン77」をフリ付きで歌う場面があるのだが、
この雰囲気が抜群によい。
下関の飲み屋街でバックにうすく流れる宗右衛門町ブルースとか
ヒロイン郁子の父親役の山本譲治が、ギターの弾語りで歌う「雨
に咲く花」なども生きている。

東京地区での上映は今週の金曜日までなので、興味をもった方には
見ておくことをおすすめしたい。

映画終了後、四谷三丁目の「名門」というきわめて業界的な焼肉屋
に行き、テイチクレコードの宣伝部員のN氏も合流して、焼肉をた
っぷり食べる。とはいえはじまりが早かったので、解散は午後七時
ときわめて健康的。


[1332] 文我えもんの会 2004年05月18日 (火)

早出。一時帰宅、仮眠、正午に再出社。
録音番組に立会い、明日の準備。

夜、紀伊国屋ホールの「文我えもんの会」に行く。
入り口で、東直子さんと会う。
彼女もこの会を見にきたのだそうだ。
短歌関係者に着々と落語ファンがふえてくるのは嬉しい。
やがて、吉井勇のような芸事短歌を詠む人も出てくるだろう。

桂まん我が前座の定石どおりの「東の旅」
桂つく枝がその続きの「曲芸」
そして、桂文我が、その続きが微妙にそれてゆく「こぶ弁慶」
という、秩序だった構成になっている。

ここで中入りだったのだが、残念なことに、異様な眠気に
襲われてしまい、椅子に座っていられない状態。
このあと、立川談春の「三方一両損」と文我の「三十石」が
あって、東の旅が終演するというのがわかっていながら、
断腸の思いで帰宅する。
明日も早出なので、ここでムリをして、体調をくずすわけに
はいかないのだ。
痛恨の一日になってしまった。


[1331] 月曜のキーボード 2004年05月17日 (月)

正午に会社に行き、録音番組に立ち会う。

午後六時から制作部会。
異動にともなう挨拶と担務の若干の変更の発表。
私自身は変化なし。
部会終了後、速攻で帰宅。

夜、書評の原稿を一本書き終える。


[1330] 月例歌会と勉強会 2004年05月16日 (日)

朝6時に会社に行き、いわゆる生ダビング。

午後から上野で「短歌人」月例歌会。
今月は司会ではないので、気楽な出席者。
詠草は50首以上なので、なかなか時間がかかる。

歌会終了後の勉強会は、木曽陽子さんが担当で
魚村晋太郎『銀耳』を読む。
修辞についてなど、かなり、議論が出る。
抄出資料の作品だけでも、魚村作品の独自の魅力は
出席者につたわったようだ。


[1329] 「コスモス」と「短歌往来」 2004年05月15日 (土)

今日は休み。
平和島の大恵クリニックにアトピの薬をもらいに行く。
帰りに八重洲ブックセンターに寄り、小林信彦の『定年なし、打
つ手なし』と宇多喜代子の『わたしの名句ノート』を買う。

帰宅すると「コスモス」と「短歌往来」がとどいていた。
「コスモス」の時評欄の「展望」というページで、
藤野早苗さんが、山埜井喜美枝さんの歌集『はらりさん』が
詩歌文学館賞を受賞したことに関して「功名を願わず、
純粋に歌と向き合ってきた歌人が、正当な評価を受ける機会を
得られたこと、それこそが今回の山埜井氏の受賞を喜ぶ理由な
のである」と結んでいることに、おおいに共感する。

「短歌往来」は前川佐美雄賞の発表が掲載されている。
選考委員の言葉に、共感するものが多くあった。
たとえば、三枝昂之氏が、小池光の『茂吉を読む』は茂吉と小池
光が縁台将棋をさしている。みんな気楽に覗き込めるが、よく見
ると、その中味は名人戦だ、と書いていることなど、実にうまい
ことを言うものだとおおいに共感し納得した。

また、加藤治郎氏が矢部雅之の『友達ニ出会フノハ良イ事』の
写真と文章と短歌に関して、これはコラボレーションなどではな
く、矢部雅之の総合力だ、と言っている点なども、私も全面的に
同感してしまう。
ちょうど、「NHK歌壇」の時評に、私もこの歌集をとりあげて
巷に流行しているヌルイ、コラボレーションと称するものとは
一線を画すものだ、と、書いたばかりだったので、加藤さんも
同じことを発言してくれていることに心強さを感じた。


[1328] 労役のクロニクル 2004年05月14日 (金)

金曜日はいちばんキツイ労働になる。
先週と同じく午前3時半から午後6時半まで15時間、ほぼ、休息
なしで働いた。先週より1時間少ない。

録音、編集作業を終えて、制作部のフロアにもどると、グループ
事務局のU事務局長から、「GALLOP」の別冊のDVD付録
つきのダービー特集の号とPOGのための2歳新馬特集がバック
便で届けられている。早速、お礼の電話をすると、時間がある時
に食事につれていってあげようといってくれる。
お言葉にあまえることにする。

文春文庫の新刊、小林信彦の『出会いがしらのハッピーデイズ』を
購入。これは「週刊文春」の「人生は五十一から」の2000年の
分をまとめたもの。時評的エッセイであるが、クロニクルとしても
きわめて有効なものと思われる。
この小林信彦のシリーズと中野翠のクロニクルが、ここ十数年の時
代状況を、個性的な視点で、記録した貴重な記録となるだろう。
文学作品として、時代とビビッドに切り結ぶことは困難でありつつ
このように才能のある人達が出てきてくれるのも、やはり、時代そ
のものの要請なのかもしれない。

夜、バレーボールの韓国戦を見る。
TBSとの共同主催でありながら、無敗同士の韓国との戦いが、中
継の順番にまわってくるフジテレビはついている。
こういうところが、昨日も書いた放送の水モノ性のツキの有無とい
うことになるわけだ。


[1327] 真赤なポルシェが走る 2004年05月13日 (木)

今日はゆっくり出ればよい。
朝食をとりながらラジオをつけると、山口百恵が歌っていた「プレ
イバック・パート2」が、他の歌手の歌で流れている。
やけにタメの多い、バラード調の歌い方だ。
辛島美登里が歌っているとの旨のコメントがあった。
これは、山口百恵作品のトリビュートアルバム「MOMOE T
RIBUTE Thank You For」の中の一曲だ。

ちなみに、このアルバムのラインナップは以下のとおり。

ロックンロール・ウィドウ 藤井フミヤ
秋桜 福山雅治
さよならの向こう側 つんく♂
パールカラーにゆれて Sowelu
愛染橋 中森明菜
ひと夏の経験 PUFFY
夢先案内人 bird
プレイバック パート2 辛島美登里
しなやかに歌って サーカス
ロックンロール・ウィドウ SAKURA
乙女座宮 岩崎宏美

いちおう全部聞いたが、Soweluの「パールカラーにゆれて」
が、意表をついていて面白く聞けた。私の好みでは中森明菜。
私がこのトリビュートアルバムに参加したとしたら「イミテーショ
ン・ゴールド」を歌ったのに。残念。

出社すると、制作部がなんとなく騒然としている。
こういう時は何かトラブルが起こっているのだろうと思っていたら
案の定、そうだった。
そのため、木曜定例の番組チーフ会は召集されたものの、このトラ
ブルに関する報告のみで解散。

このように注意していたにもかかわらず夕方の生番組でもトラブル
が起こったとのこと。
全体のツキがなくなっているとしか言いようがない。
放送というのは水ものであり、ツキの有無は大切にしなければなら
ない。
打つ手打つ手が悪い方向へ向うこともある。
今はそういう状態なのだ。

書かなければならない原稿が溜まってきたが、なかなか手がつけら
れない。これもまた困ったものだ。


[1326] LIBLIEでの読書 2004年05月12日 (土)

今日も早出。
番組終了後、MOを使った編集作業。
午前中、人事部長と面談。
正午から番組の会議。
そのあと録音番組の立会い。
午後5時過ぎに帰宅。

実は四月の末に電子ブックの端末のリブリエを買った。
これで、タイムブックタウンという電子書籍の書店から、
好みの本をダウンロードして、端末の画面で読むというもの。
画面は文庫本の字が印刷してある面とほぼ同じ大きさ。
文字は縦書きで、けっして読みにくくはない。
ハードカバーの書籍のダウンロードの料金が、だいたい400円。
端末のLIBLIEの値段が実勢価格四万円とやや高い。
ただし、ハードカバーの本を買わずにすむということは、まず、
スペースの問題が解消される。
あと、ハードカバーの小説が一冊平均1500円前後と考えれば
この端末で、40冊読みきれば、四万円のもとはとれることにな
る。

ためしに、山本一力『いっぽん桜』『深川黄表紙掛取り帖』乙川
優三郎『五年の梅』、宇江佐真理『あやめ横丁の人々』、沢木耕
太郎『シネマと書店とスタジアム』の5冊をダウンロードしたの
だが、とりあえず、『いっぽん桜』と『五年の梅』を読み終った。
主として通退勤時の電車の中で読んでいたのだが、読みにくいと
か、目が疲れるとかいうことはなかった。
文字の大きさが5段階に変化させられるので、下から二番目の大
きさの字で読んでいる。これも目が疲れない原因かもしれない。

現在書かれている時代小説が多数ラインナップされているのも嬉
しい。当面、このような時代物の短篇集を中心にLIBLIEを
使っていこうと思う。
ただ、問題点は、現在の時点で、電子書籍として買える本が
400冊しかないということ。
もちろん詩歌関係の本や文藝評論などは入っていない。
この部分でバラエティに富んでほしいのと、新刊の小説は多少の
タイムラグはあってもいいから、電子書籍にどんどん入れていっ
てほしい。


[1325] 記憶がうすれてゆく 2004年05月11日 (火)

早出。
体調かんばしくなく、生放送終了後、一時帰宅。
仮眠2時間ののち再出社。

録音番組及びコーナーの録音に立会い。
夕方、再度、帰宅。

こういう時間帯で動いていると、記憶力がうすれてきて
昨日のことはともかく、一昨日のことが思い出せなくなる。
これで、不義理をしてしまったりするわけだ。

山内将史さんが山猫通信というはがきミニコミで、藤原龍
一郎の俳句は面白いと書いてくれる。
作品も二句引用してくれた。

寝る前にタビスタを少しやる。

岩波文庫の小島政二郎『眼中の人』を読み始める。
冒頭から、自分は説明ではなく、すぐれた描写の文章を書く
ことに、若い頃から腐心してきた、と、くどいほどに書いて
あるが、その文章じたいが、まだるっこしい説明になってい
るような気がするのだが。


[1324] ディレクター研修会など 2004年05月10日 (月)

本当は日曜の代休にしたいところなのだが、やむをえず昼前に出社。
録音番組に立会い、そのあと打ち合わせなどいくつか雑事をこなす。
午後6時から、ベテランのKさんを講師としての、ディレクター
研修会。つくづく、自分は放送機材の詳細に関して、何もしらな
いのだなあ、と反省させられる。

小雨模様の中をりんかい線で帰宅。

夜、『阿部昭十八の短篇』という本の中から、二つの短篇小説を
拾い読みする。「明治四十二年夏」と「怪異の正体」という作品。
どちらも、しみじみと心にしみてくる。


[1323] カメハメハ〜〜!!! 2004年05月09日 (日)

遅いほうの早出、ということで午前6時に出社。
生ダビングののちに、編集室でMOをつかって短い番組2本の編
集を終らせる。
気がつくと正午前。
社屋の二階の食堂でハンバーグ定食を食べてから帰宅。

九レースくらいからダラダラと馬券をI-PATで買いつづけるが
やはり気合が空回りしていて、的中には程遠い。
NHKマイルカップ、キングカメハメハは4コーナーで大外に位
置を定めてから、怒涛の追い込みでの横綱相撲。
マイラーとしてはかなり強いとの印象をもったが、他の世代の馬
と闘ったら、どうなるだろう。
次はダービーに出るらしいが、800メートルふえても、あの鬼
脚がつかえるのだろうか。
できれば、タービーも圧勝してほしい。

夜、「新潮」の谷沢永一と坪内祐三の対談「文壇と新潮の栄枯盛
衰一世紀」を読む。
さまざまな文壇のエピソードが語られているが、新人編集者の中
村武羅夫が、森鴎外に談話筆記原稿の取材に行ったところが、鴎
外は、原稿用紙に「森林太郎君の談話――中村武羅夫記」と書い
て、中村の目の前で、一気に原稿を書きあげてしまったという。
つまり、鴎外は新人記者の中村武羅夫を信用していなかっという
ことである。
この事件で中村武羅夫は大の鴎外嫌いになり、鴎外が亡くなった
ときに、「鴎外は生前も死語もイヤな奴」と書いて、こんどは荷
風を激怒させてしまう。この荷風の怒りの文章は読んだことがあ
ったのだが、つまりは、そういう裏事情があったわけか。
この対談を読んで、ふっと思ったのだが、坪内祐三は今後、勝本
清一郎みたいなポジションを獲得しようとしているのかもしれな
い。




[1322] 詩歌という文学 2004年05月08日 (土)

午前中、木場の駅前で、江東区短歌会の酒井勝利さんと待ち合せ。
酒井さんは「冬蕾」に所属していらっしゃる。
元材木屋さんということで、木場・洲崎近辺のむかしの話など、
興味深いくさぐさを教えていただくことができた。
本題は十一月におこなわれる江東区の短歌大会の件。


午後、一度帰宅して、競馬。一進一退。

夕方、図書館に本を返却に行きかたがた、東陽町の文教堂書店で
「新潮」の創刊100周年記念号を購入。

まず、車谷長吉の「小笠原和幸歌集」というエッセイを読む。
これは「この一作だけの感動」というテーマで、十六人の作家が
書くエッセイの特集の中の一篇ということなので、車谷氏は、
小笠原和幸歌集に感動したということである。
これは小笠原和幸さんにとっても、車谷氏が読んだセレクション
歌人『小笠原和幸歌集』を出版した島田牙城さんにとっても、本
望なことだろうと思う。

古井由吉、高橋源一郎、島田雅彦の三人による「罰当たりな文士
の懺悔」を読む。
こんな記述があって読み過ごせない。
 島田雅彦の発言
「俳句とか短歌って、その人の肉体感覚から出てくるというより
 は、ある決まったテクニックで出来ますよね。ある程度のトレ
 −ニングを受ければ天才俳句少女は作りやすいでしょう。書道
 や水墨画にもそういうところがある。だけど、水墨画の天才少
 女というのを、ピカソみたいな絵の天才と見なしていいかどう
 かというと、そうじゃないんじゃないか」
 
 高橋源一郎の発言。
「いまや若い歌人だと文語で書く方が珍しい。字数も五七五七七
 なんか守らなくて、一体何字になっているのかわからない歌、
 多いじゃないですか。それに比べると、現代詩はそういう新し
 い口語を入れ損ねたんですね。新しい口語を使った自由詩は、
 ほとんど書かれない。結局、そういうことを普通にやりたい
 奴はみんな短歌の方へ行っちゃうわけですね。
 だから、もしかしたら、短歌が古典的な芸術で、現代詩が現
 代的な芸術だというのは逆で、もはや、短歌の方がモダンで
 現代詩は一種の芸になってしまったのかもしれない。言葉の
 使い方っておそろしいなと思うんだけど、短歌にはそういう
 口語の先端の言葉が下りてきて、それで短歌という形式の寿
 命を延ばしたわけですね。」

 吸収すべきところが少なからずある鼎談だといえる。
ところで、文学界新人賞の候補となった荻原裕幸さんの作品は
どうなったのだろうか。ぜひ、受賞して、石川啄木以来の歌人
の小説コンプレックスを粉砕してほしいのだが。


[1321] 労働とその苦痛 2004年05月07日 (金)

早出で朝三時半に会社に入り、朝食のために30分休んだだけで
夜の七時半までほぼ休みなく労働。
これを通常の九時出社で換算すると午前一時まで働きつづけたこ
とになる。
もちろん、これくらい働いている人はたくさん居るのだろうが、
現在の私にはこのスケジュールはきつい。
帰宅すると全身の関節がぎしぎし痛んだ。

余裕をもって詩歌に親しむ時間がつくれないのだが、余裕がある
からといって、詩歌に深く親しめるかどうかは疑問。
帰途に書店による時間がなかったのだが、明日は「新潮」6月号
を買う予定。創刊100周年記念号なのだそうだ。
文芸誌が100年つづくというのも、一つの文化ではある。


[1320] 欝欝の日 2004年05月06日 (木)

気分がすっきりしない一日。
職場の環境になじめないかもしれない。
20年も勤めて何を言っていることやら。

今日は早出ではなかったのだが、どうもアタマがボケていて
川上史津子さんに紹介してもらえるはずだったのに、時間を
まちがえて、帰ってきてしまった。結果的に約束をやぶった
ことになってしまい、恥かしく、申し訳けない。

「塔」の創刊五十周年記念号を少しずつ読んでいる。
佐佐木幸綱、永田和宏、河野裕子三氏の座談会、読み応えがある。
「歌会は距離感を学ぶ場所」という幸綱氏の発言は納得できる。


[1319] 童神と私小説 2004年05月05日 (水)

今日も夜明けの歌謡祭。
今朝は琉球王朝の末裔だという普天間かおり。
子供の日にちなんで「童神」を歌ってもらう。
歌唱力はあるし、目鼻立ちははっきりしているし
受け答えはアタマの良さを感じさせてくれるし
有望な新人だと思う。

テイチクのH君、今日も来る。
顔色が冴えない。昨日の午後、リベンジにパチンコ屋へ行き
おそろしいほどの金額を負けてしまったのだそうだ。
「ぼくはもう七月までパチンコができません」と言う。
五月のはじめにして、六月をとびこして、七月までパチンコが
できないとう状況は、かなりな傷の深さなのだろう。

車谷長吉の文庫『武蔵丸』を読み終る。
ハードカバーの時は『白痴群』というタイトルだったものが、
「武蔵丸」が川端康成文学賞をとったので改題したようだ。
ただし、小説の迫力としては「白痴群」がやはりすごい。
この小説は、車谷長吉が不遇の時代に何回もの没にもめげず
書きなおし書きなおし、完成させた小説であり、この時期のことは
長編『贋世捨人』にくわしく書いてある。
とりあえず、これで、車谷長吉の既刊本はすべて読了した。
とにかく、私小説家の業の凄みに圧倒される。
この本の中の「狂」という小説の末尾の一行の
「文士なんて、人間の屑である」を証明するために書き継がれて
いる作品群である。
俳人から名誉毀損で訴えられている車谷長吉だが、それもまた
人間の屑としての文士の背負うべき業だというのだろう。


[1318] 夜明けの歌謡祭 2004年05月04日 (火)

早出。
今日は国民の祝日なので、番組に生でゲストに来てもらう。
北島三郎の最後の弟子として先月デビューした北山たかし。
早朝の強風にもめげず、お台場のビルの玄関で、「まつり」を
歌ってくれる。
新人歌手はチャレンジャーであるということだ。

放送終了後、テイチクの宣伝部のH君と食堂で朝食。
H君は、昨日、パチンコで5万円負けてしまったので
何としてでも今日はリベンジしなければならないと、
いきまいている。
こういう時は、まあ、傷を深めるだけなのだが、若いうちは
そうやって傷を負うことも人生勉強なのだ。

午後2時過ぎまで会社に居て、帰宅。


[1317] マンデーは憲法記念日さ 2004年05月03日 (月)

風邪気味で、本当は休みたいところだったのだが、島敏光さ
んが「ラジオビバリー昼ズ」のゲストに入るということなの
で出社。
島さんはその著書『永遠のJポップ』(学研)のプロモー
ションを兼ねて、映画評論家というもう一つの顔で、ゴー
ルデンウィークに、ぜひ見ておきたい映画ベスト3の紹介。

ちなみにベスト3は以下のとおり。
1 スクール・オブ・ロック
2 ホーンテッド・マンション
3 パッション

出演を終えた島さんと、斎藤安弘さんの録音スタジオへ行き
少し、その雰囲気を味わう。
そのまま二人で2階の食堂で遅い昼食。
食堂は「コメディフェスティバル」の出演者の若い笑芸人さ
んとコンパニオンたちで満員。
島さんを送り、りんかい線で帰宅。

風邪が悪化していて、気分が悪い。
6時過ぎに、床に入りうつらうつら。


[1316] 完敗の日曜日 2004年05月02日 (日)

早出して番組の送出。

昼過ぎに帰って、ダビスタをやりながら競馬。
天皇賞は完敗。
こういう日もあるさ。

夕方、郵便受けをのぞくと『短歌WWWを走る。』が来ている。
予想よりも早くできあがった。
良い本になっている。
このイベントの意味は、あとになって、ますます重要さが
認識されてくると思う。
一回目に参加した勇気ある人たちに敬意を表したい。

そろそろ「題詠マラソン2004」も走り始めたいのだが
なかなか機運が盛り上がらない。困ったものだ。


[1315] 「燠」のシンポジウムなど 2004年05月01日 (土)

日経新聞の「交遊抄」というコラムに櫂未知子さんが、私のことを
書いてくれる。内容は身にあまるもので感激である。
こういうところに名前が出ると会社の役員連中が読んでいて、「フ
ジワラくん、日経に書かれていたねえ、読んだよ」などと話しかけ
てくる。

「燠」の創刊記念のシンポジウムを聞くために、王子の北トピア
へ行く。
第一部が、小高賢さん、柳宣宏さん、池田はるみさん、中村幸一
さんによる、「ビギン・ザ・ビギン」という座談会。
どのように短歌と出会い、現在、どんな短歌観をもっているかと
いった内容なので、気軽に聞くことができる。
印象に残ったのは、小高賢さんが言った「短歌を上達するには毎
月一万円分の歌集を買って読みなさい」という発言。
これは、実際、そのとおりだと思う。
1989年に『夢みる頃を過ぎても』を上梓したあと、私はもう一
度短歌を真剣にやろうと決心して、まず、現在、どんな短歌がつく
られているかを知るために、十万円もって、神保町の東京堂書店に
行き、棚に並べられていた歌集・歌書を、ごっそりと買って、すべ
てを読んだ。
たとえば『ラビュリントスの日々』とか『夏空の櫂』とか『世紀
末の桃』とか『シュガー』とか『びあんか』とか『サニーサイド・
アップ』とか『声だけが残る』とかである。
そして、このような人達の作品と似ていない短歌をつくって「短歌
研究新人賞」に応募したら、受賞できたわけである。
だから、他人と似ていないということが、表現の根拠になると確信
できたわけである。

だから、詩歌において、先行する誰かに似ていたり、他のジャンル
の作品のイメージを短歌に焼きなおしたりするものに価値はないと
考えている。
また、俳句が歴史的に、その言葉が共有財産だったという意見など
にも、その意味で賛成できない。俳句の歴史が類句の集積だとして
も、現在、俳句をつくる人の意識がオリジナリティをめざさないの
なら、表現しようという根拠がなくなってしまう。
俳句の世界では、アタマの切れる人ほど、詭弁を弄する傾向がある
のは、困ったものだと思う。


[1314] 愚か者の愚行 2004年04月30日 (金)

早出のあと会議をはさんで午後5時過ぎまで番組の録音。

勤め先で、きわめて、愚かな規則がつくられる。
愚かな者が愚かな規則をつくる。
やれやれであり、いやはやである。

駄句駄句会に遅れて参じる。
今月の題は「汗」と「釣堀」。
出席者は、宗匠、風眠、駄郎、斜断機、邪夢、粕利の諸氏に私。

・遠回りして釣堀を見て帰る

これがご披露できる拙作。

宗匠から紫綬褒賞を受賞すると、受賞記念のパーティーの設定、式
服の御仕立てからお祝い御返しの記念品、あげくのはてには銅像を
つくりませんか、との勧誘のカタログま送られてくる、との話を聞
く。A、B、Cのランクにわけられていても、一生に一度のことと
思えば、みんないちばん高い物を注文するだろう。
心理の弱点をついた、悪質な商売である。
宗匠のように笑いとばせる人は、あまり居ないはずだ。
世の中には、さまざまな人が居ると前に書いたが、さらに、さまざ
まなショーバイがあるものだ。

帰宅後、岡部隆志氏の短歌に関する評論集『聞き耳をたてて読む』
(洋々社刊)を少しだけ読む。
やっと明日は休みだ。


[1313] みどりの日のふらふら 2004年04月29日 (木)

休日なのだが番組の録音があるので出社。
早出でないだけまし。

午後三時に会社を出て、有楽町で家族と待ち合わせ。
ビックカメラでかの子にノートパソコンを買ってやる。
結局、メビウスを購入。
それにしても、ノートパソコンの売場だけでも、飛ぶように
パソコンが売れている。
パソコンを買ったポイントで、パソコンを入れるバッグ、電池、
メモリースティックなどを購入。

5時過ぎに帰宅。
「NHK歌壇」の原稿を書いて、メールで送稿。


[1312] ガラパゴスのライブ 2004年04月28日 (土)

早出で生放送終了後、旅行ライターのシェルパ斎藤さんにスタジオ
に来ていただいて、簡単料理の実演をしてしまう。
市販のじゃがりこをミニフライパンでマッシュポテトにしてしまい
コンビニのおにぎりとツナ缶でチャーハンをつくってしまう。
この二点をつくる時間が合計わずか五分。
世の中には、さまざまな技能をもった人が居るものだ。

急いで帰宅、二時間仮眠して、また出社。
会議、録音番組の立会い、明日の準備などをしているうちに夕方。

斎藤安弘さんと一緒にに渋谷の宮益坂「ハニー」というライブス
テージのあるお店に行く。
島敏光さんの『永遠のJポップ』の出版記念会をかねた、島さんの
バンドのガラパゴスのライブが開かれるのだ。
ライブの前に斎藤安弘さんが、一言挨拶して、乾杯。
さすがに、スピーチはみごとなものだ。

オリジナル曲の「カシスソーダをもう一杯」や「ガラパゴスへの
道」のほかに、数曲。
ゲストにマリ・クリスティーヌさん。客席には大石吾郎さんの顔
も見えて、すっかり1960年代の「ヤング720」の、雰囲気
が店に充満している。
島さんの軽く薄い歌声は、私にはとても魅力的に聞こえる。

こういうライブに来られるのも、島さんと知り合ったおかげだと
思う。

帰宅後、車谷長吉の短篇集『忌中』を読み終る。なんとも、暗い
人間の業を感じさせる作品ばかりの一冊だった。


[1311] 談志系宇宙 2004年04月27日 (火)

早出のあといろいろなことを社内で処理して、気がつくと夕方。
新宿の紀伊國屋ホールへ「山藤亭・談志系宇宙」を見に行く。

まず、たい平さんが出てきて軽くトーク、続いて談春さんの「替
り目」。左談次さんの「現代落語論」「談志が死んだ」などの本
を使ったいつものツッコミ落語。
そのあと、立川談志家元、山藤章二席亭、高田文夫、吉川潮、中
尾彬諸氏を囲んで、フジテレビの山中秀樹アナが司会するトーク
コーナー。
そして中入をはさんで、柳家小菊師の俗謡があり、トリが家元。

私は招待していただいていたので、招待席で見せていただいたの
だが、右隣が木村万里さん、左隣が大先輩の演芸プロデューサー
の塙宏さんだった。塙さんは、私の勤め先の先輩でもあるので、
ついつい、最近の勤務環境のことなど愚痴ってしまった。

21時少しあとで終演。
明日も早出なので、そそくさと帰宅。


[1310] 劇団ひとりは眠らない 2004年04月26日 (月)

今日は休み。
先週と先々週も月曜の昼間は家に居たわけだが、それは徹夜でスタ
ンバイしたり、番組を夜中と早朝にやってからの帰宅であり、正確
には休みではなく、明けである。

午前中は「短歌人」関係の原稿依頼状を書いて投函する。
本多稜歌集『蒼の重力』と関谷啓子歌集『硝子工房』の書評の依頼
である。

午後は「ダビスタ04」を少しやってから、銀座のソミドホールに
劇団ひとりのライブを見に行く。
劇団ひとりは、太田プロダクション所属の一人芝居をやる笑芸人。
私はいまイチオシだと思っている。
今日は、単独ライブということで、五分程度のネタを十本連続し
てみせてくれた。
中国人の学校の用務員、工業高校で営業をする紙きり芸人、ゲイ
の葬儀プランナー、子連れのホスト、手品師、茨城のヤンキーなど
十人のデフォルメしたキャラクターを演じわけ、きちんとオチをつ
けてみせる。その構成力はたいしたものだ。
イッセー尾形、本間しげるといった系譜につながるわけだが、キャ
ラクターの造形力が、より同時代的だといえる。
十本で一時間強のライブ。
帰りのロビーで太田プロの荻野さんに声をかけられた。
エレベーターの中では、古舘プロジェクトの放送作家の川野君に
久し振りに出会った。
「報道ステーション、たいへんでしょう」とたずねると
「ええ、たいへんです」との応え。さもあらんと思う。
私は古舘伊知郎という才能が好きなので、ぜひ、成功してほしい。

まだ明るい銀座の街を、足早にあるいて地下鉄で帰宅した。


[1309] パペットマペットの選択 2004年04月25日 (月)

朝五時にスタジオへ行き、「イルカのミュージックハーモニー」の
生放送。
今日はアシスタントディレクターとして、CDをまわしていたのだ
が、一瞬、あやうく提供クレジットにCDの曲をぶつけてしまいそ
うになり、かろうじてとどまった。集中力を欠くととんでもないこ
とになる。
気持ちをひきしめる。

一度帰宅。仮眠後、馬券をPATで買う。
本日は単複のみ。
目白まで行き歌会に出席する。
私の歌は下記のようなもの。

・晦渋を択ぶ決意をウシ君は肯いカエル君は嘲る

パペットマペットを素材とした歌。
中島裕介さんが、パペットマペットに関して、きちんと説明して
から批評してくれたので、トンチンカンな展開にはならなかった。
それどころか、けっこう好意的な発言もいただき、作者としては
びっくりし、恐縮してしまった。
歌会の終り頃に黒瀬珂瀾氏がやってきた。熱心な人だと敬服した。
黒瀬さんは僧侶の資格を持っているのだそうだ。
「ぜひ、金閣寺をもう一度焼いてくれ」と頼んでみたが、やって
くれるだろうか。

終了後、馬券の結果を確認したら、けっこう当たっていたので
新橋のキムラヤに行って、「ダービースタリオン04」を購入。
帰宅後は、久し振りにゲームに熱中。


[1308] 時代はきわめてフラジャイル 2004年04月24日 (土)

佐藤りえ歌集『フラジャイル』の批評会が、東京芸術劇場の中会
議室で開かれた。

パネリストはご存じ加藤治郎さん、俳人の櫂未知子さん、詩人の
林浩平さん、歌人の佐藤弓生さん。
私はこの方たちによる、『フラジャイル』に対する発言の司会進
行の役をやらせていただいた。

このパネリストのみなさんは、櫂さんと林さんが、短歌の実作経
験があり、佐藤弓生さんは詩集も出している詩の実作者であるわ
けで、このように複数の詩形に通暁しているという点で、発言に
きわめて説得力があったと思う。

会場にも正岡豊さん、本多稜さんといった珍しいメンバーの顔や
奥村晃作さん、久々湊盈子さんといった歌壇の重鎮のみなさん、
さらに、川柳作家のなかはられいこさん、俳人の浦川聡子さんら
も出席していただき、私としては、充実した会になったのではな
いかと思った。

花笠海月さんはじめ「短歌人」の仲間がスタッフとして、立ち働
いている姿も、私にはたいへんうれしい光景であり、高瀬一誌氏
の志がちゃんと継承されていると思うと、瞼が熱くなったりした。

「短歌人」からは、蒔田さくら子さん、中地俊夫さん、三井ゆき
さんはじめ、東京歌会のメンバーも集まってくれた。これも、世
代の断絶を感じさせないうれしいことであった。

二次会の会場で、私は壁を背負ったいちばん奥の席についたので
あまりたくさんのみなさまとはお話できなかったのだが、「星座」
の大石さんや松平盟子さん、加藤治郎さんらと一緒の席だつた。
加藤さんに「彗星集」をどう動かして行くかというお話など聞く
ことができたのは、収穫だった。若い人達の短歌作品をどのよう
に、短歌史の中に位置付けるか、これは私自身の問題でもある。

田中庸介さん、井口一夫さん、荻原裕幸さん、田中槐さんらとは、
ほとんど話すことができず失礼してしまった。

一日を顧みると、やはり、良い一日になったと思う。
佐藤りえにとっても、この一日が、さらなる高みへのスプリング
ボードになってほしいと思う。パネリストのみなさんの提起した
問題を、常に自分の中に持ち続けてほしい。


[1307] 永遠の金曜日 2004年04月23日 (金)

早出をして、生放送を担当したのち、食堂で朝食。

フジテレビの「目覚ましTV」に出演したあとの岡本依子が、スタ
ッフと一緒に、きのこ雑炊定食を食べていた。
ガラスの壁の外の廊下を「トクダネ」に出演する佐藤江里子が、
通っていった。

録音番組の収録に立会い、こんどは昼食。
そのまま帰宅して、仮眠。
4時半に起きて、中野サンプラザでの中川千折さんの『海のはな
びら』の出版記念会に出席。
今日はスピーチでは、しどろもどろにならずにすんだ。

帰宅すると、島敏光さんの新刊『永遠のJポップ』が届いていた。
島さんしか書けない本になっているはずなので、おおいに楽しみ。
私は島さんの『ビートでジャンプ』を1960年代の青春の書と
して愛読している。

史比古が、みうらじゅんのFM番組の録音を聞かせてくれる。
「大巨獣ガッパ」の主題歌を流して、日本人はもっとこのような
カルトな知識をたくわえて、タランティーノが日本のサブカルチ
ャーを映画にとりいれても、感心などせずに、日本人はそんなこ
とは誰でも知っているよ、と、言ってやるべきだ、としゃべって
いる。この件はまったく同感。しょせん、タランティーノの知識
は、金にあかして、あとから身につけたものなのだということを
あらためて主張したい。


[1306] 読書がすすむ 2004年04月22日 (木)

今日は遅出とはいいながら、8時半には勤め先に到着。
職場の空気が濁っている気がする。

8時間在社して帰宅。

『文士の魂』と『贋世捨人』を読了。
短篇集の『忌日』を読み始める。
とにかく、文章を書くということの業をこれほどなまなましく
実感させてくれる作家は、現時点では、車谷長吉以外にはいない
のではないか。
『忌日』の表題の短篇「忌日」は、珍しく三人称の作品。
日本ホラー大賞の短篇賞も受賞できる内容だが、これがエンタテ
イメントとは一線を画して、やはり、文学であるのは、傍役に厚
みをくわえることで、主人公の老人の行動を、特殊なものではな
く、普遍の人生の中の出来事に回収して描こうという強い書き手
の意志があること。

短歌に関しても、それが何かの代償行為であっては、心打つ作品
は書きえないだろう。
ストレス解消や遊びや自己充足のために短歌を書いている人も、
たくさんいるわけだが、やはり、現在の文学としての短歌とい
うことを、私は真剣に考えていきたい。


[1305] 自己嫌悪 2004年04月21日 (水)

昨日、明治記念館に行っていた時間に、実はレコード会社のHさん
と待ち合わせており、無駄足をさせてしまったことが判明。
手帳にもはっきり、Hさん来社と書いてあるにもかかわらず、失念
してしまうという体たらく。まったく情けない。
アタマがボケているのだ。自分のぼんくらさ加減にはげしい自己嫌
悪におちいる。

なまぬるい強風が吹き荒ぶ中の早出。
今日の番組の流れはうまくいった気がする。

午後三時過ぎに一度帰宅して仮眠。
夜七時に、神宮前の食味の店で、オールナイトニッポンエバーグー
リーンのメンバーと会食。
斎藤アンコーさんから、洋楽に関する興味ふかい話をたくさん聞く。
ついつい食べ過ぎてしまい、帰宅してから胃がむたれ、胸焼けが
する。
寝ながら、車谷長吉の『文士の魂』を読み始める。
これは作家の読書遍歴の一冊。


[1304] 新人歌手と贋世捨人 2004年04月20日 (火)

まず会社へ行き、雑務をこなしたあと、明治記念館へ行く。
北島音楽事務所の新人・北山たけしのデビューの記念イベ
ントに出席する。
「片道切符」という楽曲で、デビューするということ。
八年間、北島三郎の付き人をしたのちのデビューということ
で、事務所もレコード会社のテイチクもおおいに力が入っ
ている。テイチク70周年の記念新人ということでもあるら
しい。
北島三郎御大はじめ、テイチクの社長の飯田久彦、先輩にあ
たる山本譲二と、大きな顔ぶれが並んでいる。
立食パーティだが、人いきれがするほど、マスコミ、レコ
ード店の関係者などが集まっていた。
何年か経って、ああ、北山たけしも、そんなデビューだったねえ、と言われるか、そんな奴いたっけ、と言われるか、
芸能人も弱肉強食の世界である。

帰宅後、車谷長吉の長編『贋世捨人』を読み始めると、その
文章の力のためか、ぐんぐん引き込まれてしまった。
内容自体は、私小説なので、エッセイ集の『銭金について』
に書かれていることがらが、繰り返し出てきたりするのだが
実の中に虚点をつくるという小説作法の成果か、小説の中に
いつのまにか、とりこまれてしまっている。
なにより、傍らでテレビのバラエティ番組を家族が見ていて
も、まったく気にならないほど。
これは、現在の私の意識が、車谷長吉に完全にシンクロして
いるということなのだろう。
この『贋世捨人』も、明日には読み終わるだろうから、こん
どは別のエッセイ集『文士の魂』を読むつもりでいる。


[1303] 耳の穴に流し込まれる毒 2004年04月19日 (月)

朝6時に仕事が終り、7時前に帰宅。
パンを食べて、すぐに蒲団にもぐりこみ、午後2時過ぎまで眠る。

『銭金について』のどのエッセイにも、銘記すべき言葉が散りばめ
られている。
中でも心に突き刺さるのは、こんな言葉。

「批評で褒められるのは、作家にとって、耳の穴に毒を流し込まれ
るようなものだ」

私など、短歌専門誌に作品を発表する機会があっても、次号の批評
欄では、ほとんど黙殺されてしまう。だから、たまに褒められてい
たりすると、有頂天になって、そのページをコピーしてファイルし
たりしてしまうのだけれど、それが、耳の穴から流し込まれる毒と
言われると、うなだれるしかない。

河野愛子賞が日高尭子さんの『樹雨』に決定したそうだ。
日高尭子さんは、仕事の結晶度の高さに比して、顕彰されることの
すくない人だったので、心からおめでとうございますと言ういいた
い。
ただ、意外だったのは、田中槐さんの『退屈な器』が、受賞できな
かったこと。
河野愛子の歌人精神、たとえば、短歌表現の領域を果敢に拡大して
いこうという意志を、もっとも感じさせてくれた女性の歌集は私に
とっては田中槐歌集『退屈な器』だった。
少なくとも候補には入っているだろうから、選考委員がどのような
批評をしているのか注目したい。

歌壇には、河野愛子賞のほかにも、歌人の名前を冠にした賞がいく
つもあるが、少なくともその歌人の表現意志のありかたに近い作品
が選ばれてほしいと思う。
若山牧水賞の小島ゆかり歌集『希望』、と言われても、小島ゆかり
さんの実績とは別に、何か違和感を感じてしまう。
これは、前川佐美雄賞の小池光著『茂吉を読む』にも感じている。
前川佐美雄の冠の賞が斎藤茂吉の解読書に与えられるというのは
文学的な問題ではないかもしれないが、ちょっとスジが違う。意地
悪くいえば、選考する側が奇を衒った感じがしなくもない。

もちろん、ここで私がこだわっているのは、選ばれた作品の価値
ではなく、冠の歌人賞のコンセプトと、その回の授賞意図という
ことなので、選考委員が選後批評で、こういう部分をきちんと説明
してくれていれば、簡単に解消する疑問ではあるのだが。

つまり、『茂吉を読む』に、斎藤茂吉の名前が冠となった賞が授与
されるのなら、何の違和感もありませんよ、という、まあ、私の気
分の問題にすぎない。


[1302] 立川談春と車谷長吉 2004年04月18日 (日)

朝六時に出社。
九時まで、スタジオで、いわゆる生ダビング作業。
残務を手早く片付けて帰宅。
すぐに二時間ほど眠る。
テレビで皐月賞を見る。
ダイワメジャーが勝ち、コスモバルクが二着。
デムーロの乗り馬なのにダイワが人気薄だったので、
コスモバルクを本命にして、ダイワを対抗の一番手に
していたので、いちおう的中。

車谷長吉の『銭金について』を読み続けている。
直木賞受賞前後のエッセイ集だが、人間関係の苦しさが
もろに前面に出てくる文章が多くて、読んでいても苦しい。
癖のある読みやすくはない文章なのだが、私にはシンクロ
するのか、内容がきちんとアタマに入ってくる。
新刊の『忌中』や長編の『贋世捨人』も、読まねばならない
と思った。

夕方から築地のブディストホールへ行き、立川談春独演会。
昨年、毎月一回づつの談春独演会に皆勤したことが、私の
いちばんの充実といえる。
今夜の演目は「六尺棒」と「姐妃のお百」の二本。
「姐妃のお百」は珍しい怪談噺。もちろん高座で聞くのは
初めて。
談春さんは、姉御肌の女性をやらせると抜群なので、この
お百も、実にリアリティたっぷり。
こうなると「鰍沢」もぜひ聞いてみたい。

終演後、築地から六本木へ行き、青山ブックセンターで、
車谷長吉の文庫本を買う。
『金輪際』『漂流物』『赤目四十八滝心中未遂』
どれもハードカバーで読んでいたので、文庫は買わなかった
のだが、手元に置いておきたくなったので購入。

六本木から恵比寿へ出て、りんかい線で東京テレポートへ。
本日二度目の出社。
このあと、オールナイトニッポン・エバーグリーンの生放送
と朝刊フジの生放送わおこなって明日の朝6時まで労働。


[1301] カラダの疲れは癒せるけれど 2004年04月17日 (土)

休日。
終日在宅し、本の整理などする。
夕方、イラクで行方不明になっていた二人のジャーナリストが
解放されたとのニュース。

「歌壇」5月号が「最近、おもしろい歌集を読みましたか――私
のみつけた名歌集」という面白い特集を組んでいる。
執筆者も、鈴木竹志、佐藤通雅、小高賢、三枝浩樹といった良識派
ともよぶべき人達が並んでいる。

小高賢氏が紹介しているのは浅田源次『傘を開かむ』と寺松滋文
『璽余は沈黙』の2冊。

・サラダなくチョコレートなく人間(ひと)ありし葉月半ばは敗戦
 記念日/浅田源次

・プラウダといふ新聞ありき<プラウダ>は<真理>この世紀に生まれ
 て死にし/寺松滋文

「つまり体験や蓄積が半端ではないからである。それが凝縮して
 短歌に向ったとき、若手歌人の第一歌集など蹴散らしてしまう
 力を持っている」
小高賢氏の文章の末尾の一節。首肯できる。

鈴木竹志氏は加藤淑子歌集『朱雲集』を紹介している。
著者は眼科医だそうだ。

・霧うごく中庭越えて窓のうちレントゲン写真かざし合ふ見ゆ/加
藤淑子

・雨やみて夜の更けにけり板の床つめたくサッポオ詩集を探す/加
藤淑子

「次々と評価され、賞を受ける歌集が現われるが、加藤の歌集を
 読む時のように、豊饒な時の流れに身をまかすことのできる歌
 集との出会いが滅多にないのは寂しい」
鈴木竹志氏の文章の結びにも、私は深くうなずいた。

このように、見落とされていたすぐれた歌集をきちんと評価する
ことは、絶対に必要なことなのだ。
ただ、この特集の中で、今井恵子氏が喜多昭夫歌集『夜店』を高
く評価していることには違和感をおぼえた。
喜多昭夫氏の短歌は、悪い意味でのフェイクだと私は思っている。
前の歌集の『銀桃』にも、同じ感想を抱いたが、対象に対する思
いのかけかたがうすっぺらなのだ。歌の中にはさまざまな素材が
あらわれるが、それはすべて素材に過ぎず、ついに主題として昇
華されることはない。思い付きのレベルで簡単に一首の中にはめ
こまれてしまう。『夜店』の作をきちんと読めば、その浮薄さが
わかるはずなのだが、今井恵子氏は、そこまで思いが及ばなかっ
たのだろうか。二流の人、というのが私の喜多昭夫氏への評価で
ある。






[1300] バッドテイスト・ヤポネスク 2004年04月18日 (金)

生放送は当然、日本人三人の解放のニュースが中心。
そのため、冒頭の一曲目はカット。
これで2週続けて、曲がカットされた。
予定していた曲はコロンビア・ローズの「東京のバスガール」。
6時前の2曲目はママス&パパスの「夢のカリフォルニア」で、
こちらはきちんとかけられた。

夜、史比古が「キル・ビル」のDVDを買ってきていたので見る。
実はこのDVDは、私も買おうと思っていたので、ダブらなくて
よかった。
このところ、史比古が買ってくる本と私が持っている本がダブる
ことが多くなっている。
まあ、趣味嗜好が似ているからだろうが、それは良いことなのだ
ろうか。

「キル・ビル」は、タランティーノの幼児性・映画オタク性が、
存分に発揮された作品。
B級映画と反体制的な劇画へのオマージュとなっているが、それ
らの本質をタランティーノが、どこまで理解できていることやら。

ジュリー・ドレフュスが出ていたり、栗山千秋の役名が「GOG
O夕張」だったりするところに、元ゆうばり国際冒険ファンタス
ティック映画祭の東京事務局長の私としては、若干、忸怩たるも
のがあるが、最初から最後まで、一気に時間を気にせずに見られ
たことは確か。

梶芽衣子の歌が使われているばかりでなく、オーレン・イシイの
履歴がアニメで語られる趣向など、「女囚さそり・第41雑居房」
あたりの影響が濃厚に見てとれる。
最後の雪中の血闘のシーンはもちろん「修羅雪姫」のパクリ。

料亭?青葉屋の大殺陣も、時代劇の影響なのだろう。
ちゃんと階段落ちも仕込んであるし。
女性だけのバンドがステージで歌っていて、バッドテイストな感
じを強めていたが、あそこは、大西ユカリと新世界をぜひ使って
ほしかった。
他にもちょっとずつツメの甘さを私は感じた。
タランティーノが事前に相談してくれたら、いくらでもアイデア
を出したのに、残念である。

雪の中のシーンでシシオドシが鳴ったりの小細工なども、バッド
テイストの延長として私は良かったと思う。
ただ、日本の雪月花の美意識、つまりモノノアハレをタランティ
ーノは理解できていない。それを知った上でのキッチュ、バツド
テイストだと、もっと底の厚みが出たのに、と思う。

しかし、ユマ・サーマンの怪演はみごとといえる。
戦闘服に滲んだ血糊というより汚い染みが何ともいえずエロチック。

まだまだ復讐は続く、という映画だが、このあとも見てしまうだろう。


[1299] ヘリコプター旋回 2004年04月15日 (木)

夕方5時過ぎに、スタッフと一緒に北の丸公園に居たのだが、上空
を、軍用と見られるヘリコプターがずっと旋回していた。
何かを偵察しているのだろうか。
ヘリコプターの爆音というのは、不穏な雰囲気をかきたてる。

科学技術館の中にある千代田スタジオという撮影スタジオで、演歌
歌手のMさんの録音。

帰宅すると「短歌往来」5月号が着いている。
巻頭作品は小池光「東京景物詩」。

・さやうなら李もうひとりの李いかになりし雨の降る品川駅昭和四年

中野重治の詩を背景に置いた一首。
小池光はいま絶頂期かもしれない。
多作がたくさんの秀歌を生んでいる。
上記の一連など、児玉暁の批評をぜひ聞いてみたかった。

短歌に興味を持つ人がふえるのはもちろん良いことだ。
ただ、サラダブームの頃から私がいつも思い続けているのは
広い門から入ってもかまわないが、狭い門にも入れるだけの
感受性をぜひ養ってほしいということ。
そしてもう一つ重要なのは、優れた詩歌を感受するためには、
読者の側にも才能と訓練が必要ということ。


[1298] 書評のミスマッチ 2004年04月14日 (水)

「未来」四月号に、道浦母都子さんが、加藤治郎歌集『ニュー・エ
クリプス』と笹公人歌集『念力家族』の書評を書いている。

笹公人さんの作品解釈に以下のような記述があるのだが、いかが
なものだろうか。

・エジソンに勝たんと発明繰り返す父の背中の鳩時計鳴る
・落ちてくる黒板消しを宙に止め3年C組念力先生
 一首目には修司、二首目には俵万智の世界が重なり合い、作品
 としてのオリジナル性が薄れてしまう点が、今後の課題となる
 だろう。

これを読んで、私は唖然とした。
鳩時計→寺山修司、先生→俵万智、という連想かもしれないが
笹公人には、そんなつもりはまったくないのではないか。
一首目は、世紀の大発明をしようという父がアナログ的で装飾的
な鳩時計をつかっていることの意識のずれによる笑いが狙い。
二首目の「3年C組念力先生」は武田鉄矢の「3年B組金八先生」
のパロディのフレーズで、黒板消しを頭上に落とすという古典的
悪戯を、念力で防御してしまうチープなSF的構図による笑いが
狙いの歌だ。

鳩時計だから寺山修司、学校の先生だから俵万智という連想は、
むしろ現代短歌という狭いエリアでの連想ゲームであろう。
ニュートラルに読めば、この二首に限らず『念力家族』全体が、
四コマ漫画的な笑いをこころみた作品集だということがわかるは
ずなのだが。道浦母都子さんのマジメさが、笹公人の方向性を感
受できていないことがあらわれてしまっている。

笹公人の歌集を道浦母都子が批評するというミスマッチ性を編集部
は狙ったのかもしれないが、今回は、笹さん、道浦さん両者にとっ
て、何もプラスにならない企画だったと思う。
私は「短歌人」で、歌集・歌書の書評の担当をしているのだが、ミ
スマッチな組合せによる、新鮮な批評の発生という意図は、常にも
っている。そしてそれが、きわめて困難なことも実感している。
今回の道浦母都子・笹公人という組合せの失敗を他山の石としたい。


[1297] 短歌ヴァーサス003号の作品 2004年04月13日 (火)

短歌ヴァーサス003号の作品で、いちばん刺激を受けたの
は、結局、島田修三の「残秋夜想曲」30首ということにな
ってしまう。
これは世代的なこととは異なり、30首という単位で作品を
発表するときの、テーマの提示のしかたの巧さだと思う。

  おう?てめえ、さしずめインテリだな(車寅次郎)
・焚書官ガイ・モンタークの物語あはれ古書肆の棚にぞ黄ばむ

詞書(引用)と作品が絶妙のバランスを保っている。
30の詞書と30首の作品が、私の感受性をきちんと刺激し
てくるのだ。短歌をつくるというのは、気の利いたことを、
五七五七七に載せるなんてことではなく、きちんと一語一語
の効果をあらかじめ読みつくして、それを最適な組合せで提
示することなのだと私は思う。

・粉々の雪が舞うので閉めてしまうドアなりわれはどこで
 もドアなり/盛田志保子

・客一人、給仕百人パーティーの終りごろでる蜜酒煮の鯉/
 林和清

・阿部定のみだれし髪をおもひをりもろ手に頬をはさまる
 るとき/多田零

・ふたりいて鼻歌うたわぬほうの祖母身に雪つもらすほう
 の祖母/飯田有子

・幾千の雨のしずくが映しだす見ていなかったはずの昨日
 を/ひぐらしひなつ

・<わたしはカモメ>ああワレンチナ・テレシコワ <吊り
 穴>はなぜ<吊り革>なるや/大松達知

・ファイティング・ポーズでうなる俊成の「皇宮警察」み
 たいな官位/謎彦

これらの作が心を刺激してくれた。

短歌は、多少オシャレにみえる捨て台詞ではないし、うわご
とでもない。
何度もくりかえすが、格助詞一つにまで気をつかい、心をこ
めて選択し、組み合わせてこそ韻文定型詩なのだと思う。


[1296] 短歌ヴァーサス003号など 2004年04月12日 (月)

明け方4時にスタンバイ解除になり、タクシーで帰宅。
結局24時間起きていて、そのうち16時間会社で勤務して
いたことになる。

すぐに寝て、次に起きたら正午。
今日はさすがに休み。
「短歌ヴァーサス」の003号を読む。

明らかに他の雑誌とちがう方向性を出そうとしている内容
なので、短歌の流行上の前線が今どこにあるかということ
に興味がある人には、充実した読み応えがえられるだろう。

インタビュー加藤治郎「「うたう世代」以後の現代短歌」が
興味深い問題に触れている。
たとえば、次のような発言。

「選者をやり始めて改めて思ったのが、やっぱり短歌という
 のは、社会的にも精神的にも弱い人たちがすがっている詩
 型だという側面。(中略)現実問題として、そこは短歌の
 詩型という中で外せない側面です。そうだと知ることは、
 この詩型の奥行きを自分で実感するという意味でいいこと
 じゃないかなと思っています」

この問題は私も感じていながらねこのように言葉にすること
ができなかったので、やはり、加藤治郎もそう思っていたの
かと、胸のもやもやが晴れた気がした。

次に佐藤真由美に関する次のような指摘。

「しかし最新歌集を見てみると、そういった毒みたいなもの
 がきれいに消去されてしまっています。(中略)いかにも
 な十代の女子高校生、女子中学生のイメージに感性と文体
 をすり寄せている」

これもまったく同感。「うたう」の中で私がもっとも感性の
冴えを感じたのが、佐藤真由美だったのだが、今の歌集の失
速ぶりはひどい。結局、商業的な短歌の書き手としての歌人
というものは、この程度のレベルなのだということを露見さ
せてしまって、がっかりだった。
それを、彼女を発見した加藤治郎が指摘したことの意味は大
きい。
歌集の編集者が悪いのだろうかとも思うが、佐藤真由美自身
も編集者じゃなかったっけ。自己プロデュースとして、今の
状況を選んだのなら、もう短歌をつくるのはやめて、ライト
エッセイの書き手としてやっていってほしい。
今号に掲載されている佐藤真由美の「愛と恋はちがうのよ」
も、センスの合せかたのハードルが低すぎてがっかり。
結局、キャラメルコーンの歌とかは、まぐれあたりだったと
いうことなのだろうか。

やや楽観的だなあ、と思える部分もあるが、加藤治郎の現代
短歌に関する問題意識は信頼できると思わせてくれるもので
あった。


[1295] 仕事・歌会・仕事 2004年04月11日 (日)

朝5時にスタジオに行く。
「イルカのミュージックハーモニー」の生放送。
イラクの日本人人質事件に関して、24時間以内に、3人の日本人
を解放するという朗報が入る。

生放送終了後、別のスタジオに移って、録音番組を一本。
これで気が付いたら、もう午後1時。
8時間勤務したことになる。
もちろん、食事もしていない。

急いで三軒茶屋へ向かう。
りんかい線で渋谷へ行き、半蔵門線へ乗り換える。
車内に扶呂一平さんと稲垣浬さんが居た。
しゃべりながら、三軒茶屋へ到着。
食事をしていないので二人と別れて吉野家へ入る。
キムチ豚丼を食べてから歌会の会場へ入る。

今日の私の歌は次のとおり。

・ガガーリンよりボブ・サップこそ聖者沈丁匂う闇過ぎて闇

批評にあたった上原泰子さんが、ボブ・サップの現状について
魔界倶楽部やIWGPチャンピオンになったことまで、丁寧に
解説して鑑賞してくれた。
その上原さんの歌はこういうもの。

・なくすものなき若者の激情か刺されし後の棚橋弘至

思わず自分の作品かと思ってしまった。
この歌の鑑賞に当たったのが、宇田川寛之さんだったので
この歌も丁寧に鑑賞された。

勉強会が斉藤斎藤さんのレポートで「短歌の中の「私」について」。
このレポートは興味深かった。
ただ、現在の一つの傾向として、徹底して一人称にこだわる
方法として今橋愛作品に言及してきたところが、私には納得しが
たいところだった。
とはいえ、『水葬物語』だって、まったく認めないという人ばか
りだったのだろうから、今橋愛の歌集が現代の『水葬物語』かも
しれないということもありうるのかもしれない。まあ、ありえない
とは思うが。

そして、職場へ戻る。
本日の夜中に、ヤンキース対ホワイトソックスの試合が中継される
ことになっており、その試合が雨で中止になった場合、私が担当し
ている「オールナイトニッポン・エバーグリーン」が、いわゆる
雨傘番組として生放送ということになる。
そのために、出社して待機するわけだ。

会社へもどったら、イラクの日本人人質事件は、解放されるどこ
ろか、振り出しにもどったような状況になっていた。

というわけで、斎藤安弘さんと一緒に、今、待機している次第。
早く家に帰りたい。


[1294] 鈴木しづ子という女性 2004年04月10日 (土)

六本木のコモワイズヰガワへ、髪を切りにゆく。
カットだけでなく、濃いグレーのヘアマニキュアもしてもらう。
行きかえりで、『風のささやき』を読了。
評伝的小説または小説的評伝ということで、面白く読めた。
著者の思い入れが過多に感じるところも多いが、少なくとも
この本の中で描かれている鈴木しづ子という女性像には好感
がもてる。

巷間に流布している娼婦俳人という説を打破しようというこ
とで、取材した事実を積み重ねてゆくのだが、やや想像が
入っているところがあることはある。
黒人兵の恋人が居たことは事実だが、いわゆるオンリーとい
うことではなく、実際に結婚の約束があったという。
除隊し帰国する際に、米国が結核患者の入国を拒絶していた
ということで、既往症のあるしづ子は、恋人と一緒に渡米す
ることはできなくなる。
さらに、帰国直後に当の恋人が事故により急死してしまう
という不幸が重なったということらしい。

この本のもう一つの眼目は、恋人と別れたのちのしづ子が
小樽にわたり、細谷源二の主宰誌に群木鮎子という変名で
投句していたのではないか、という説をとなえたことにあ
る。これは、昭和30年代に、俳人の山田緑光氏が唱えた
説らしい。
群木鮎子という人の俳句を読むと、確かに、鈴木しづ子と似て
いるような気もする。ただし確証はない。

いずれにせよ、鈴木しづ子という現代俳句史に特異な句業
を刻んだ女性に肉迫してみせた意欲は買える本である。


[1293] 人質事件 2004年04月09日 (金)

昨夜からイラクでの日本人の人質事件が起こっているので
特番化するのだろうと思っていたら、やはりそうなつた。
会社へ向かうタクシーの中と、スタジオへ向かうエレベーター
の中と二回も携帯に電話がかかってきた。
そして、結局、ほぼニュース特番化したが、新しいニュース
はない。

番組終了後はテープの編集る
気がつくと午後になっている。
そして、さらに気がつくと夕方。
人質事件にはなんの進展もないままだ。
日本がこういう事件に直面するのは、史上はじめてだろう。

疲れきって、夕方六時過ぎに帰宅。
夜、『風のささやき』を半分くらいまで読んで就寝。


[1292] ダイヤモンドホテル 2004年04月08日 (木)

今日はゆっくり出社。

元制作部長だったY氏がワタナベエンターテインメントの執行役員
になったそうだ。
業界の中で生きてゆくことは、そこでしか生きてゆかれないという
ことにも通じる。これは皮肉ではない。皮肉か。

社屋内にある流水書房に注文しておいた江宮隆之の『風のささや
き』が届く。俳人・鈴木しづ子の評伝的小説。


半蔵門にあるダイヤモンドホテルで、演歌歌手Yのインタビュー。
この人の話はいつきいても面白い。
しかし、半蔵門にこんなホテルがあるのははじめて知った。

イラクで日本人三人が人質になったというニュース。


[1291] 六本木界隈 2004年04月07日 (水)

取材に六本木のテレビ朝日に行く。
一回のロビーに「報道ステーション」のセットが、お客に
見えるように展示してある。
昼間は一般客の観覧コースになっていて、夜、このセットを
そのまま使って生放送しているようだ。

地下の控え室で、女性歌手のYさんにインタビュー。

その後、六本木ヒルズの例の回転ドアも取材する。
しかし、再開発によって、六本木界隈はすごく変わったと
思う。裏通りにあったハリウッド化粧品も、新ビルになって
いる。

SアナウンサーとTディレクターとロースかつ定職を和幸で
食べて解散。

帰宅すると、「中部短歌」が届いていた。
この号には、古谷智子さんの『都市詠の百年』の書評を書か
せてもらっている。
彦坂美喜子さんの連載、やっと次号から、論じる対象が香川
ヒサさんにうつるそうだ。正直いって、今号までの、穂村弘
論は、私にはわかりにくかったので、次号以降の展開に期待
したい。


[1290] 作家の家へ行く 2004年04月06日 (火)

昨日の日記の日付がまちがっています。
正しくは4月5日(月)。

ということで、やはり、昨夜から三時間も眠れないままに早出。
あたたかくなってきたので、多少は楽といえなくもないが、や
はり、午前二時半に起きるのは楽ではない。

生放送が終り、編集作業などを正午までして、無頼派作家のA氏
の家に取材に行く。
目的は「忘れられないこの味」というものなのだが、それ以外に
話が脱線したところが、きわめて面白い。
しかし、なにぶんオフレコにしなければならない内容なので、放
送には使えない。
しかし、面白い。世の中には、一般人の知らない秘密があるのだ
なあ、と感心する。
帰り際に書斎も見せてもらう。
本棚は予想していたより、巨大ではない。
井家上隆幸氏の『量書狂読』が目立つところに置いてあった。

午後五時前に帰宅して、素早く夕食。入浴とすませ、七時前に
蒲団に入って、色川武大の新潮文庫の短篇集『百』に入ってい
る「永日」という中篇を読み始めたら、30ページも読まない
うちに眠くなる。
次に目覚まし時計の音で目がさめたら、午前二時半だった。
なんと、7時間も眠ってしまった。


[1289] 証券会社へ行く 2004年04月07日 (水)

今日も無理矢理休んで週休二日にする。

午前中は原稿執筆、意外とはかどる。
昼食を食べて、午後から証券会社へ口座をつくりに行く。

証券会社の中へ入るのは15年ぶりくらいだが、
以前よりずっとおちついた雰囲気になっている。
けっこう書類が多く、小一時間かかった。
無事に口座がつくれたあと丸善へ行く。
詩歌書の棚に『岡本眸読本』があったので購入。
今までは、ほとんど、読んだことがなかったのだが
「俳句」4月号の島田牙城氏によるインタビューと作家論を
読んで、もっと作品を読みたいと思ってむいたところだ。
こういうタイミングで、この本に出会うというのは、やはり
機が熟したということだと思う。

有楽町のビックカメラにまわって、プリンタのインクカート
リッジを購入。
デスクトップパソコンのカタログをもらって帰宅。

夜はまた原稿執筆。
またまた、はかどったのだが、明日は早出なので、アタマに
興奮が残って、眠れなくなっても困るので、途中であえて、
休息して、布団に入る。


[1288] スタジオの怪談 2004年04月04日 (日)

6時に会社に行く。
7時から、いわゆる生ダビング方式で番組を送出する。
8時の時報の前に奇妙なノイズが一度入った。
そのあと、時報をはさんで、また、立て続けに4回ほどノイズが
入る。テープのノイズや静電気でもないようだ。
ミキサーさんも、こんなノイズが入るはずがないと首をひねっている。

変だ変だと言っているところへ地震。
東北から関東地方にかけて、震度4から3、2といったところ。
さて、さっきのノイズは地震の予兆だったのだろうか。
たとえば、地磁気の乱れを、放送機器が感知したとか……

念の為に、番組終了後、同録テープで、8時の時報の前後を聞き
なおしてみたが、テープにもMDにもノイズは録音されていなか
った。
ノイズが入ることはありえない状況で確かにノイズが聞こえてい
るのに、それがテープには録音されていない。
そして、直後の地震。
まあ、こういうこともあるということか。
スタジオには、他にもいくつも怪談があるが、その例が一つふえ
た。

午後になって帰宅。
競馬をやりつつ短歌をつくる。


[1287] 若い一人のジョッキーの死 2004年04月03日 (月)

先週の中山競馬で落馬した竹本貴志騎手が死亡したとの記事が朝刊
に載っていた。
竹本騎手は、三月六日に新人としてデビューしたばかり。
翌七日にナイキアカウントという馬で初勝利をあげていた。
今年デビューの新人の中で、もっとも早い勝利獲得だった。
その前途有望だったはずの騎手が、はじめての落馬で、
亡くなってしまった。
一ヶ月にも満たない騎手生命だった。
武豊のように、スター街道を疾走する騎手も、常に死と隣り合わせ
ている、ということなのだ。
競馬を長く見て居ると、騎手にも運不運や風の変り目がある、とい
うことがよくわかる。
昭和61年くらいに、斎藤という不器用な騎手が居た。
彼は勝ち鞍もほとんどあげられぬままに、落馬で死んでしまった。
また、平成に入ってから、関西に岡という騎手がいた。
彼は武豊のライバルとして、重賞レースをいくつも勝った。
そして、順風満帆の或る日のレースで落馬して、あっけなく死んで
しまった。

「競馬が人生の比喩なのではない。人生が競馬の比喩なのだ。」
寺山修司の言葉が重く響く土曜日だ。


[1286] ながいながい一日 2004年04月02日 (金)

早出。家を出た時は、土砂降り。
正午過ぎに雨があがって、カンカン照り。

生番組を終らせたあと、デスク作業。
オールナイトのスタッフが帰宅できずに椅子に背をあずけて昏々と
眠っている。
11時になったので、T君と会社を出て、新宿のコマ劇場へ行く。
Sアナウンサーも合流して、コマの稽古場で、コロッケさんの録音。
サービス精神にあふれた人で、インタビューの途中で突然、
声帯模写をやってくれたりする。
暑いくらいの日差しの中を再びお台場へ戻る。

こんどは、社内で健康雑誌「ゆほびか」の取材をSアナウンサー
が受けるのに立会い。
1時間半ほどかかって、写真撮影も終る。
そのあと、こんどは、野球解説者の江夏豊さんの録音取材。
思っていたより、ずっと、言葉がよどみなく出てくる人なので
びっくりする。昭和43年9月17日と19日に達成した、
48時間に2回完封勝利という記録も、日時まで完全にアタマに
入っているし、昭和47年のオールスター戦での9人連続三振の
ことも、どの順番で打者が出て来て、どう打ち取ったかを、完璧
に語ってくれた。
このインタビューの構成原稿を書いてくれたK君は、親子二代の
江夏ファンで、父親と自分のために二枚の色紙を持ってきて、
江夏氏にサインをもらった。
放送作家は、数々のタレント・有名人と仕事で話をするわけだが
仕事の場では、絶対にサインをもらったりはしない。また、スタジ
オでサインをもらったりするのは一種のタブーでもある。
K君も、現在、多くのビッグなタレントと仕事をしているわけだが
今回ばかりは、仕事を離れて、江夏豊という少年時代からのあこが
れの大スターに出会えたことに感激していた。
たまには、こういうことがあっても良いのだと私は思う。

これで、本日の予定はともかく終了。
午後5時半前に帰宅。ながい一日だった。


[1285] 久し振りに新宿 2004年04月01日 (木)

今日はゆっくりと、といっても、午前8時30分に出社。
放送局というのは、サービス業だと思っていたが、実は工場と
同じ性格も持っていて、機会(放送機器)を停めることができ
ないということもある。

普通に出社した日の時間の経過はきわめて遅い。

5時過ぎに会社を出て、りんかい線から埼京線に乗り入れて
久し振りに新宿へ行く。
紀伊國屋書店で、光文社文庫の江戸川乱歩著『続・幻影城』を
購入。講談社文庫版の江戸川乱歩全集の、古書の値段があがって
しまったので、評論関係だけは、光文社文庫版を買って、そちら
で読むことにしたのだ。
いちおう、ことわっておくが、いくらなんでも『幻影城』や
『続・幻影城』は学生時代に一度読んではいるので、今回は再読。

詩歌コーナーをのぞいたら、俳人鈴木しづ子の評伝『風のささや
き』という新刊が出ていた。鈴木しづ子は、終戦後に、娼婦とし
ての自分の姿を赤裸々に詠んだ異色俳人。
興味深い一冊だが、今夜は購入を見
合わせる。いずれ、読むつもりではある。

その後、中村屋の三階にあるフランス料理の店で秘密の打合せ。

明日、また、早出だと思うと、イライラしてくるので、とにかく、
終り次第、帰宅。9時20分だった。
あと5時間したら、また、起きて出社だと思うと心が重い。
あと何時間しか寝られない、と、考えずに、まだこんなに眠れる
のだと思うのが心理的には良いのだそうだが、そう簡単に、心の
重さは切り替えられない。


[1284] 記憶がまた乱れてくる 2004年03月31日 (水)

また、ほとんど眠ったという意識がもてないままに、目覚まし時計
に起こされて、タクシーで会社へ行く。
まだ、雨はやんでいない。
数誌間前に会社から帰ったばかりなのに、また、出社というのは、
精神的には良いことではない。
なんとか生放送を終らせる。
体調は悪かったが、放送自体はわるくなかった感じ。
番組終了後、番宣スポットと局報スポットを録音する。

エバーグリーン宛のメールをプリントアウトして、ディレクター
さんのデスクにメモをつけて置く。
疲労困憊しているので、とにかく帰ることにする。
電車に乗るつもりだったが、全身が重く、歩くとつらいので
またまたタクシーで帰宅。
トーストを1枚食べて、寝床に入る。
川端康成の『掌の小説』の中の「めずらしい人」という掌編を読む。
気がついたら眠っていた。
午前11時に、かの子に起こされる。
急いで服を着替えて、こんどは電車で会社へ向う。
これで、32時間くらいのあいだに4回会社へ行ったことになる。
正午から二時まで番組の会議。
会議終了後、スタッフみんなでデックスの小香港の一店に、マーボ
豆腐を食べに行く。
そのあと、放送作家のMさんとアナウンサーのSさんと喫茶店に行く。
オープンカフェ型の店。
かたわらのステージで、外国人の二人組が曲芸パフォーマンスを
見せ始める。軽妙な日本語をあやつりながらの、コミック曲芸だ。
こういう人達の人生は幸せなのだろうか。
1時間ほとおしゃべりをして解散。
りんかい線で帰宅。


[1283] 忙中忙あり 2004年03月30 (火)

早出。
前夜からうまく眠ることができなかったので、ほとんど寝ていない
気持ちのまま出社。
体調は悪いが、本番中にそういうことを口に出すわけにもいかない。
生放送をなんとかこなす。
まずい朝食を食堂で食べて、二時間番組のダビング作業。
いわゆる、ヌキという声だけ録音しておいたテープに曲を重ねて
ゆく。
昼前になんとか終了。
次の録音番組に少しだけ立会い。
紀尾井町にある別会社で、ラジオリビングの商品の選定会議。
たっぷり2時間かかって、もう夕方でおまけに雨が降り始める。
会社に戻り、録音番組のアシスタントディレクター作業。
終ったのが九時。
夕食を抜いてしまったが、食欲はない。
雨の中、タクシーで帰る。
明日もまた早出だと思うとうんざりする。


[1282] 『岸上大作の歌』 2004年03月29日 (月)

高瀬隆和さんが「炸」に連載されていた「岸上大作の歌」とそれ以
外の岸上関連の文章及び詳細な「岸上大作年譜」と「岸上大作文
献目録」が収録された単行本『岸上大作の歌』が、雁書館から刊行
された。今日、一気に読了した。
岸上大作に興味をもつているものにとっては必読の本といえる。

高瀬隆和さんは岸上大作の國學院大学での一年先輩で、岸上の親友
といってもよいかただ。
岸上の自殺のあと、作品をまとめて、遺歌集『意志表示』を白玉
書房から刊行したのも、高瀬さんだし、遺品の管理をされていた
のもこの高瀬さんである。
そして、1999年に姫路文学館で「60年ある青春の軌跡 歌人岸
上大作展」の開催にも尽力された方である。

高瀬隆和さんにしかできない岸上大作の短歌の分析がこの本の最大
の特徴だが、もうひとつ、遺品、遺稿を管理していた高瀬さんにし
か書けない、未発表作品に関する記述が、私には興味深かった。

岸上大作の作品を培養した文学的体験、政治的体験をあらためて
文章で読むと、1960年の大学生の短歌に賭ける
情熱の濃密さを思い知らされずにはいられない。

時代がちがうとはいえ、今の二十歳の人がつくる短歌は、岸上の
表現の根拠よりも、ずっと、幼いように思える。
私の二十歳の時も、もちろん、岸上よりは幼かったわけだが。

この高瀬さんの本は、岸上に興味をもっている人にはもちろん、
岸上大作をまったく知らないという人にも、ぜひ、読んでほしい
と切望する。


[1281] サニングデール 2004年03月28日 (日)

六時に出社して、七時から九時までの番組を担当。
残務を早めに切り上げて、正午前に帰宅。

二時間ほど仮眠。
そのあとは、競馬中継をみながら、すでに締切を過ぎている
原稿を書く。
高松宮杯、福永騎手騎乗のサニングデールが初戴冠。
予想ははずれたが、福永騎手にはおめでとうと言いたい。

明日は、会社に行けばいろいろとやらねばならないことは
あるのだが、あえて休んで、週休二日を確保することにする。


[1280] 対談など 2004年03月27日 (土)

銀座の三笠会館で対談のお仕事。
相手はワセダミステリクラブのKさん。
主としてKさんの詩歌に関する著書を話題とする
ものだったのだが、私の悪い癖で、話の方向がとっちらかり
Kさんにも、編集のみなさまにも迷惑をかけてしまった。

自己嫌悪のまま帰宅。

夜、少し風邪の気配。
寝ながら豊崎由実・大森望共著『文学賞メッタ斬り』読了。


[1279] お花見日和 2004年03月26日 (金)

午前三時過ぎに家を出た時には、雨が降りしきっていたのに
夜が明けてから、日が射し始め、午後からは風が強くなった。

生放送終了後、MOを使って編集作業。
オープンのテープに録音した素材をMOに移して、編集作業を
して、さらに放送用にもう一度、オープンのテープに移すとい
う煩雑な作業をしていたら、昼前になったので、もう帰る。

少し昼寝。
夕方から神楽坂へ駄句駄句会。
今日の題は「花」一切。

花冷えの部屋にチェホフの文庫本  媚庵

演芸界の情報など聞く。
面白かったのは、山藤章二さんが
いつもここからが「哀しい時」のネタでみせる絵が巧くて
感心したと言ったこと。
しかも、見るたびに巧くなっているそうだ。
平凡な状況を描いて、実にこまかい部分まで描きこんである
というのがポイントだとのこと。
私は絵の巧拙にはうといので、鉄拳の絵と同じようなものだと
あなどっていたが、きちんと見てみようと思う。

帰宅すると高瀬隆和さんの著書『岸上大作の歌』(雁書館・2800
円)が、届いていた。
高瀬さんは、岸上大作とは高校の一年先輩で、東京の大学生活で
もいちばん親しかった人。
日曜日に一気に読もうと思う。


[1278] ブロードバンド 2004年03月25日 (木)

マンションがBフレツツに加入したので、思い切って、プロバイダ
ごと乗り換えることにする。

やはり、スピードはダイヤルアップとはぜんぜんちがう。

夜、アドレス変更のメールを諸氏に送信する。


[1277] 打合せと執筆 2004年03月24日 (水)

ワセダミステリ時代の友人のT氏が勤め先まで来てくれる。
T誌に掲載する座談会の打合せのため。
しゃべるというのは、とても緊張するので、事前に打合せを
してもらえるのはとてもありがたい。
しかし、いざ、本番になると、その打合せの段取りも忘れて
しまうのだけれど。

帰宅したら、原稿の催促の電話あり。
もうギリギリとのこと。
泣きそうになりながら深夜まで書き続けてやっと終了。
実働の長い一日になってしまった。


[1276] 品性の問題 2004年03月23日 (火)

早出で生放送のアシスタントディレクター業務をすませ、
そののち、明日の素材を編集。
さらに、録音番組を一ヶ月分収録する。

一度帰宅して二時間ほど眠る。

夕方五時過ぎに再度出社。
四月からの新番組およびスタッフを、音楽関係の各社の人や
各プロダクション関係者に説明する会及び懇親会。
オールナイト・ニッポン・エバーグリーンのプロデューサー
として紹介される。
斎藤安弘さんのスピーチを聞くが、さすがに巧い。
ポイントだけを話して、それでいて、あたたかみがある。

再度帰宅すると「短歌」と「俳句」と「俳壇」が届いていた。
「俳壇」の夏石番矢の作品を読んで呆れかえる。
俳句形式をつかって他人のワルクチを書くというような
はずかしいことが、平気でできる神経が信じられない。
品性の問題ということだろう。


[1275] ライバル 2004年03月22日 (月)

今週も週休二日になんとかできて、本日はお休み。
とはいいながらも、けっこう原稿がたまっていて、
完全な休みというわけではなく、ただ、勤め先に行かない
というだけ。

まあ、それでも、気持ちは休まる。

「短歌ヴァーサス」3号が来る。
表紙が早坂類さん。
まぼろしの歌人が短歌雑誌の表紙で見られるというのも
そういう時代になったのだなあ、と、ふと感慨にふけって
しまう。
「NHK歌壇」4月号も来る。
今月の時評には、田中えんじゅさんの歌集『退屈な器』と
魚村晋太郎歌集『銀耳』について、思うところを少し書いた。
そういえば、佐久で佐々木六戈に魚村晋太郎の歌集がおも
しろいと言ったら、六戈さんは魚村さんのことを知らなか
った。
私にとって佐々木六戈、魚村晋太郎の二人のマルチ詩歌人
は、作品上のライバルである。


[1274] なべて過程のなかの惑いか 2004年03月21日 (日)

昨夜は、佐久からもどって、そのまま、宿直。
社屋内は空気が乾燥しているので、喉が痛くなる。

11時過ぎに眠って朝起きたら、いかりや長介の訃報が新聞の
一面を飾っていた。
とりあえず、7時から9時まで、2時間の放送。

終了後、残務と週明け以降の準備。

正午過ぎに三日ぶりに帰宅。
西勝洋一さんから砂子屋書房の現代短歌文庫版の「西勝洋一歌集」
がとどいていた。ご厚情に深謝。

・ゆうべゆうべのわがさびしさの樹々の揺れなべて過程のなかの惑いか/西勝洋一『未完の葡萄』


[1273] 第3回・朗読火山俳 2004年03月20日 (土)

第3回・朗読火山俳
プログラム
オープニング朗読島田牙城・母
ユぴ ぷわぷわと漂う音符
北大路翼 頭蓋骨
森泉巨山 長屋の句会2
土屋郷志 自らが光となりて
目黒新樹 にほんご
春日三亀 余命五分
仲寒蝉  河童の博物誌
宮崎ニ健 咲く草
櫂未知子 食う+飛び入り マブソン青眼・依田明倫
佐々木六戈 ヘンリー・ダーガーの主題による子供殉教者たち
藤原龍一郎+ユぴ 月光値千金
島田牙城 雪

ということで、三時間近い熱演。
マブソン青眼さんは、まったくの飛び入りでびっくり。
それぞれに主題が明確であり、表現手法が、好みに応じたものに
なっていたということだろう。
文学性を先立たせるか、イロモノ的味わいを前面に押し出すか、
きわめて興味深い試行の数々だった。

土屋郷志さんの「村越化石とハンセン病」を主題とした「自らが
光となりて」など、意欲的な試みに、心を打たれた。

また、櫂未知子さんの呼び込みによって登場した、ホトトギスの
依田明倫さんのバラライカ漫談には驚き!イッセー尾形のアトム
おじさんを彷彿とさせる哀愁にみちたトークで、いやおうなく
印象にのこった。

・バイカルの忽忘草に空高し 明倫「ホトトギス―虚子と100人の名句集」

「俳」の名のもとに集った同志の熱情と志を私は忘れない。


[1272] 憂鬱のち佐久 2004年03月19日 (金)

生放送ののち、録音番組のタビング作業。
専門職のミキサーなしでおこなわなければならないので
不器用な私には、きわめて憂鬱な作業。
案の定、失敗を重ねてしまう。
一緒にやっているKさんに申し訳ない気持ちになる。
三時前になんとか終了。
アクアシティの中華料理店で、ゲキからマーボ豆腐定食を食べる。
本日はそのまま東京駅へ向い、長野新幹線で、佐久平へ向う。

島田牙城さんが駅に迎えにきてくださる。
そのまま、ホテルにチェックインし、夕食。
牙城さんのご好意の鯉料理。
昨年の朗読火山俳の会場になった古い料理旅館。
もとは本陣だったのだそうだ。
通された部屋も、一茶の間という名前がついていた。
お勘定の時、女将が牙城さんに、去年の火山俳の時の写真が
新聞に載っていましたね、と話しかける。
今年の予告記事が昨年の牙城さんの写真とともに掲載されたの
だそうだ。

明日の本番があるので、食事のあと、またホテルまで送って
もらって解散。

ホテルの部屋で、明日の朗読テキストを音読し、ストップウォッチ
で、時間を計測。
BGMの時間とのタイミングを原稿に書き込んでから就寝。


[1271] 雑然とした桜の開花日 2004年03月18日 (木)

東京は今日が桜の開花日なのだが、小雨模様。

チーフ会がある。何か雑然とした会議内容。

『ホトトギス虚子と100人の名句』がアマゾンから届く。
これは、かぐら川さんのHPで紹介されていたのを見て、
注文したもの。
虚子時代、年尾時代、汀子時代と「ホトトギス」の歴史を三つに
わけて、100人の作品をアンソロジーにしたもの。
ホトトギス系の俳人は特定の人をのぞいて、ほとんど読んだことが
ないので、拾い読みしてみようと思う。

一都一府六県越えて花の旅  大久保白村